前回のこのコラムで、エンジンもプラットフォームも一新した仏プジョーシトロエングループ(PSA)の新世代車「プジョー308」について原稿を書いた直後に、トヨタ自動車が同社の次世代車両技術「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」について発表した。PSA、トヨタだけでなく世界の自動車メーカーが車両技術の一新に取り組んでいる。そこで今回は、なぜ世界の自動車メーカーが車両技術の一新に取り組んでいるのか、その狙いについて解説したい。
トヨタのTNGAについては、今年最初のこのコラムでも取り上げたので、内容が重複する部分があるが、ご勘弁いただきたい。まず最初にTNGAとは何か、について改めて簡単に説明しておこう。TNGAは、トヨタの言い方を借りれば「もっといいクルマ」を作るための包括的な取り組みである。単にエンジンやプラットフォームを刷新するだけでなく、クルマの開発プロセスから、製造工程までを含めた全社的な取り組みということになる。
従来、TNGAの具体的な内容としては、以下のような項目が明らかになっていた。
- 複数車種の同時開発(グルーピング開発)によって部品の共通化を推進。
- エンジンの搭載方法を統一して共通化を進めるとともに、エンジンの搭載位置を下げて車体の重心を低くする。
- 購入部品を「トヨタ基準」から「グローバル基準」にして部品の調達コストを引き下げる。
- 乗員の着座位置などを標準化して部品の種類を削減する。
これを見て明らかなように、TNGAの大きな狙いは共通化・標準化であることが分かる。トヨタはそれによって実現したコスト削減分を、商品力の向上に振り向けることで「もっといいクルマ」を実現することを目指している。今回の発表では、共通化によるメリットだけでなく、TNGA導入でどの程度商品力が向上するかもある程度定量的に明らかになった。
- 共通化の推進で、従来に比べて20%以上の開発リソースを削減。
- エンジンや変速機も一新し、パワートレーン全体で燃費は約25%、動力性能は約15%以上向上。またハイブリッドシステム(エンジンを含むシステム全体)でも燃費を15%以上向上。
- 新開発のプラットフォームでは、クラストップレベルの低い重心高を実現するとともに、ボディ剛性を従来比30〜65%向上。新プラットフォームは、まず2015年中に発表予定のFF(フロントエンジン・フロントドライブ)系中型車から導入し、FF系のコンパクト車・大型車、FR(フロントエンジン・リアドライブ)系の車種にも、それぞれに対応する新プラットフォームを順次展開して2020年頃には全世界の販売台数の約半数に導入する。
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