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便座まで爆買いする中国人の“日本製信仰”(上)

――ジャーナリスト・中島恵

中島恵
2015年4月14日
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春節が過ぎても終わらない“爆買い”
人気商品に温水洗浄便座が急浮上

杭州市の日本メーカーのショップで便座を物色する中国人。彼らは何故、日本の製品やサービスに群がるのか
Photo:Imaginechina/アフロ

 2015年の春節に吹き荒れた、中国人の「爆買い」旋風がいまだに脳裏に焼きついている人は多いだろう。春節期間中に日本を訪れた中国人は約45万人。消費金額は約60億元(約1140億円)と過去最高となった。

 中国の微博(中国版ツイッター)などを分析した結果によると、日本での購入商品の第1位は医薬品、第2位は化粧品だったが、第3位には今年初めて、温水洗浄便座が食い込んだ。家電量販店の温水洗浄便座のコーナーには、中国人の人だかりができるほどだった。

 彼らはなぜ、これほどまでに日本に押し寄せ、温水洗浄便座を大量に買って帰ったのか。ここに、本音では密かに日本に憧れる“中国人の本心”が隠れている。

 今年、中国政府は反ファシズム戦争勝利70周年として、より一層対日強硬姿勢を貫いており、今夏に発表される予定の安倍談話の内容次第では、日中関係は再び一触即発となる可能性もある。だが、中国政府と国民の考え方が全く同じかと言えば、そうではない。もしそうであれば、彼らの「爆買い」行動は説明できないからだ。

 彼らが日本を目指す背景には、実は日本人から見れば想像もつかないほど過酷な、中国での暮らしの不便さがある。中国はGDP世界第2位になったが、中国人はまだそれに見合った“豊かな暮らし”を実現できていないからだ。日本人も気がついていない、そうした日中の“生活格差”こそ、彼らを「爆買い」へと走らせ、彼らが日本をうらやむ真の原因である。

 「胃腸薬にハンドクリーム、熱を下げるシート、粉ミルクにシャンプー――。そうそう、皮むき器まで買っていったことがありましたね」

 こう語るのは、在日20年になる中国人女性。彼女は北京に帰省するたびに、友人や親戚から大量の買い物を頼まれるという。それらを持ち帰ると、みんな手を叩いて大喜び。ときにはシャンプー1つのお礼として、「日本円にして数万円はする高級料理」をご馳走してもらうこともあるというから、驚きだ。

 昨今、円安元高や中国の経済成長を背景に、日本旅行をする中間層以上の中国人が激増している。春節の時期を過ぎても、平日でさえも都内で中国人客を見かけることが多く、「爆買い」は継続中だ。彼らが日本製品を欲しがる第一の理由は、日本には「高品質で廉価な商品」があまりにもたくさんあるということだ。

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