紙の本を読まないと、人はバカになる
鈴木幸一×松本大「ネットの未来」を語る
おとなしくアメリカの掌に乗っていれば儲かる
──どのようにすれば、日本のインターネットビジネスも、より深まっていくのでしょうか。
鈴木:そもそも、インターネットは誰が仕切っているのか。本にも書きましたが、例えばドメインについては、ICANN(Internet Corporation for Assigned Named and Numbers)という世界のドメインを管理している団体があって、それはアメリカの民間団体です。
ここは非常に難しい構造がある。こういうところには触らず、おとなしくアメリカの掌(てのひら)の上に乗って、アプリケーション・レイヤーだけをやっているほうが儲かる。
でも、IIJはエンジ ニアの会社ですから、スタンダードを取ろうと挑んだわけです。IIJが作り出したスタンダードは、インターネットをダイアルアップで接続するためのPPP ソフトウェアや広域イーサネットなどがありますが、儲からなかった。僕がだめだったのでしょうが、うちがやってきたことは、日本では、いつも早過ぎて大変な思いをしてきた。
──なるほど。これからどっちの方向に進むべきでしょうか。過去のことを踏まえて、未来に向けての提言をお願いします。
鈴木:いやいや、提言なんていうものはありません。ただ、もうちょっと、「インターネットは怖い」と思ったほうがいい。究極の分散は、究極の集中になる。これが大前提。情報統制できる社会というのは、どういうものなのか。そして、誰でも情報を発信して、それを誰でもタダで読める世界とはどういうものなのか。 それは、やっぱり怖いことだと思います。
あと、よく言うことですが、究極の集中になるということは、本当のビッグデータが機能するわけで、 一切プライバシーがないという社会は、すぐにやってくるかも知れない。それは、逆説ですが、素晴らしいことことかもしれない。当然のことながら、反面では怖い。多くの人が怖いということばかり強調していますが、プライバシーなんてそもそも何なのか。世界中でプライバシーが大事だ、なんて本気で言っているインターネット関係者なんかいませんよ。