橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会は大阪府・市両議会で第1党を守った。一方、野党側も自民が府議会で大幅に議席を増やし、維新の過半数を阻んだ。

 大阪市を廃止し、五つの特別区に分割する「大阪都構想」の前哨戦となった大阪の統一選は、両者の痛み分けとなり、決着は5月17日の住民投票まで持ち越した格好だ。

 だが、残念なことがある。

 接戦が多く、争点がはっきりしていた大阪の選挙ですら、投票率は低かったのだ。府議選は45・18%、市議選は48・64%で、ともに前回を下回った。

 なぜなのか。一つは構想のわかりにくさにあると思う。

 朝日新聞の出口調査では、都構想への賛否はほぼ半々で割れた。今でも都構想が「よくわからない」と話す市民は多い。

 選挙が終わった今こそ各党はスローガンやパフォーマンスではなく、構想を冷静かつ具体的に論じ、市民の関心を掘り起こす工夫がいるのではないか。

 こんどの住民投票の結果は法的拘束力を持つ。極めて重い選択機会だ。賛成が反対を1票でも上回れば、17年春の大阪市の廃止が決まる。

 どんな投票率でも結果は有効だが、投票した市民が半分にも満たないようでは、後で民主的な正統性が問われかねない。

 大阪市は今日から市民向け説明会を26日まで連日、計39回開き、橋下氏が自ら説明にあたるという。反対派の各党も反対を呼びかけていく方針だ。

 両派とも全力を挙げて市民の関心を高めてもらいたい。

 今回の住民投票は、大都市のあり方を直接民主主義で問う戦後初の試みだ。人口構成や税収構造、望まれる行政サービスが変化するなか、これまで通りの政令指定都市でいくのか、より小さな自治体に切り替えるのか、市民自身が考え、答えを出さなければならない。

 これまでの論戦を振り返ると、橋下氏ら賛成派は都構想の意義や効果を強調する半面、デメリットの説明が乏しい。

 例えば5分割された特別区に生じる財政格差は府や区の間で財源を調整し、不満があれば話し合いで解決を図るという。将来、首長が交代したら政治的な紛争の火種とならないか。

 反対派は都構想のデメリットを列挙する。だが、大阪市を存続させたとして、疲弊したまちをいかに立て直すか。将来のビジョンははっきり見えない。

 判断にあたっては、賛否両方の意見を一度に聞くのが最も参考になる。両派がともに参加する公開討論があってもいい。