政府にセウォル号引き揚げを要求する遺族ら(5日) Associated Press
【安山(韓国)】昨年4月16日に起きた韓国のフェリー「セウォル号」の沈没事故で、250人の犠牲者を出したソウル南西にある檀園高校の幾つかの無人の教室には、今も机に花束と遺影が置かれている。助かった生徒はわずか75人だった。
事故から1年が経った現在も、韓国社会は事故の再発を防ぎ前進することに悪戦苦闘している。3月に新たに設置された事故調査委員会は、調査の範囲をめぐる対立から作業を始められずにいる。最後の9人の遺体捜索は昨年11月に打ち切られたが、セウォル号を引き揚げるべきかどうかについてはまだ決定が下されていない。
事故の徹底究明を求めて丸刈りになる遺族(5日) Yonhap/European Pressphoto Agency
事態の進展の遅れは遺族の怒りを買った。多くの遺族が事故原因の徹底究明がなされていないと抗議のデモを行い、そのうちの一部は徹底究明を求める断固とした決意を示すため頭を丸めた。
事故後規制当局は船舶への監督を強化し、緊急事態の対応手順を見直した。安全性の点検に手を抜いた監督官は厳罰に処せられ、救難訓練が頻繁に行われるようになった。これまでの調査で、セウォル号は過積載や増築など安全基準違反が原因で転覆したことが分かっている。光州地裁は、救助された船長など同号の運航担当者を業務上過失致死罪で有罪を宣告したが、運航担当者らは控訴した。
専門家らによれば、事故を受けた安全対策の抜本見直しには10年掛かるのではないかとみられている。政府は、公共の安全対策を調整する新省庁の設置について、「計画の初期の段階」にとどまっていることを認めた。公共の安全がどの程度向上したのか判断するのは難しい。
セウォル号沈没事故現場 Zuma Press
安全対策で問題となっているのは、監督当局と監督される民間企業との癒着である。地裁は昨年12月に、セウォル号沈没事故に絡んで、フェリー船の運航会社から賄賂を受け取っていたとして、港湾当局者と沿岸警備隊員を収賄罪で有罪を言い渡した。当局は控訴している。
政府は腐敗撲滅への取り組みを強化している。国会はこのほど、公務員が高額な織物を受け取るのを制限する法律を成立させた。また公務員に対して、自分が監督していた業界への再就職禁止期間が延長される。
しかし専門家の間では、こうした措置より政府と民間の癒着の伝統が断ち切られるかどうかには懐疑的な見方もある。政治腐敗防止を唱える国際的な監視団体であるトランスペアレンシー・インターナショナルによれば、韓国の透明度は経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中の27位である。