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【戦後70年】
特攻(8)人間魚雷「回天」隊員が遺した「2分半の肉声」…円盤に刻まれた感謝と日本人の心
▼連載を終えて
多くの特攻隊員は遺書などで、感謝とともに「後に続くを信ず」と書き残している。この言葉を最初に言い残したのは、ガダルカナル島で戦死した第38師団歩兵第228連隊の若林東一中隊長といわれる。死が間近に迫った瞬間、若林中隊長は何を思ったのか。勝つまで戦争の続行を信じるという意味なのか、それとも、日本の歴史と文化、精神を守ることや日本の復興を託したのか。特攻隊員たちの最後の言葉をみると、「将来を託す」強い思いが伝わってくる。
筆者が触れることができた特攻隊員や遺族の言葉はほんの一部にすぎない。だが、自らの命を差し出すことで、家族を、愛する者を、日本を守るという逃げ場のない自己犠牲の精神を感じざるを得ない。
想像を絶する苦悩を克服し、肉親との恩愛を振り切って、従容(しょうよう)な態度で出撃したのである。特攻を美化するあまり、特攻隊の誠に気付かず、彼らの心情や「将来を託す」思いを見過ごしてしまうことを恐れる。(編集委員 宮本雅史)