社説:統一選前半戦 自治の基盤は大丈夫か
毎日新聞 2015年04月14日 02時32分
統一地方選は前半戦を終え、10道県知事選すべてで与党の支援する現職候補が当選した。41道府県議選も自民党が堅調に議席を得た。
国政での自民1強構図を反映した形だが、政党の存在感は総じて乏しかった。道府県議選で無投票当選が2割を超え、28府県で投票率が5割を割るなど「燃えぬ選挙」を印象づけた。これでは、住民による自治という、地方自治の基盤の弱まりを危惧せざるを得ない。
与野党対決型の知事・政令市長選で与党は北海道、大分県知事選を制したが、新人対決の札幌市長選は民主党などが推す候補に敗北した。東京都知事選が今回から統一選から外れたうえ、与野党相乗り型の首長選も多く、政党の影は終始薄かった。政党の勢い以上に現職有利の構図を反映した投票結果だろう。
41道府県議選では自民党が総定数の過半数を制し、地力をみせた。野党第1党の民主党が前回当選者数を下回る候補しか擁立できず、そもそも自民優位の構図だった。
地方選挙でも都道府県や政令市単位の選挙の場合、政党の役割は大きい。道府県議選で民主党は前回より大幅に獲得議席を減らす一方で、共産党は躍進した。最近の国政選挙同様、民主党が政権批判票の受け皿となれない構図が繰り返された。
大阪府・市議選で「大阪都構想」実現を目指す大阪維新の会はいずれも「第1党」を確保したが、目標とする府議会の単独過半数獲得には至らなかった。構想への賛否が拮抗(きっこう)する状況の反映ではないか。大阪市民投票に向けて一層、是非の議論を深めねばなるまい。
政党の埋没感と同時に際だったのが、選挙の空洞化である。
道府県議選では候補数が定数を上回らず無投票で当選した候補が定数の約22%に達し、人材参入の停滞を浮き彫りにした。有権者の選択の機会を奪い、住民と議会の距離を広げかねない。女性の当選者数は207人で過去最多を更新した。ただ、当選者の1割未満では、まだまだ政党の候補擁立の努力が不足している。
投票率の落ち込みも危機的だ。知事選平均で5割を割ったほか、道府県議選で40選挙が前回を下回り、平均投票率も45.05%と過去最低を更新した。「選挙離れ」傾向は最近の国政選挙でも顕著だが、候補擁立が進まず有権者に十分な選択肢が示されなかった可能性がある。
首長や議会の新陳代謝が妨げられ、それが有権者の無関心に拍車をかける悪循環に地方自治全体が陥りつつあるのではないか。候補の発掘はもちろん、地方政治の足腰の衰えをどう防ぐのか、政党は検討に着手すべきだ。