北京五輪柔道金メダルの総合格闘家・石井慧(28)が、1年ぶりの勝利を挙げた。ニック・ロズボロウと対戦。相手をコーナーに追い詰め、1回4分22秒、腕固めで快勝した。この試合を最後に引退をほのめかしていたが、試合後、引退問題は封印。週明けにも所属事務所と会談し、結論を出す方向となった。

 リングの中では、引退問題も関係なかった。石井は、勝ちに徹した。ロズボロウをタックルでコーナーに追い込み、すかさず足を掛けて倒す。そのままマウントポジションからパンチを出して、相手のスタミナを奪う。必死で逃れる相手を、4度倒し、1回4分22秒、腕固めでギブアップを奪った。

 ミルコ・クロコップ戦の連敗もあり、昨年4月5日の両国大会以来、1年ぶりの勝利に、石井はリング上で2度「ヨッシャー!」と絶叫。セコンドと抱き合った際には、感極まった表情にもなった。「いつも以上に緊張した。3連敗はさすがにまずいんちゃうかと」と、勝利者インタビューでも格闘家のプライドをのぞかせた。

 8日にオランダから帰国した成田空港で「勝っても負けてもこの試合が最後」と引退をほのめかす発言をした。その際、オランダでの練習も「今回は気が向いたときにしかやらなかった」と話したが、実はロズボロウ戦へ入念な準備をしていた。体重115キロと、自分より約10キロ重く196センチの長身を相手に「柔道家だったんで、そういう戦いで今回はいこうとハードな練習をしてきた」と明かした。

 引退問題について石井は「明日以降、事務所と話すので今日は何も言えないです。この試合に勝ったから、どうということはない」と、引退の意思は変わらないことを強調した。所属事務所は「事務所としては選手を続けてほしい」と話している。所属事務所との契約はタレント活動も含んでおり、総合格闘家を引退したからといって、事務所との契約が切れることはないという。【桝田朗】