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出張版・アリエナイ理科「毒のハナシ」

“猛毒”ダイオキシン、人間には毒性がない?なぜ本当に有害な物質の研究が進まない?

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「Thinkstock」より
 30歳以上の人は子供の頃に小学校でゴミを焼却する光景を見てきたと思いますが、現在、ほとんどの学校には焼却炉がありません。

 その原因の1つが、2000年から施行されたダイオキシン類対策特別措置法などの環境法です。それによって、人に対する発がん性があるとされるダイオキシンが発生しやすい低温の焼却炉では、ゴミの焼却が認められなくなりました。

 その結果、自宅の庭でゴミを焼却していた人をはじめ、企業や学校もゴミ処理を業者に依頼せざるを得なくなりました。それだけ、ダイオキシンは猛毒で厳重に注意すべき化学物質だと認識されているのです。

 しかし、このダイオキシン、一般人と科学者では認識が大きく異なります。

 それは、「実はダイオキシンは大して毒がない」という研究結果が数々示され、法律制定から十余年、疑問点も多く指摘されるようになった。もちろん、専門家たちはダイオキシンを無害と言っているわけではなく、「かつて騒がれていたほど猛毒ではない」という見解が多数派になりつつあるのです。しかし、多くの一般人は、「ダイオキシンは猛毒」という認識を持ち続けています。

 環境科学は新しい学問なので、定説が急にひっくり返ることも多いのですが、ダイオキシンに関しては原因物質が明確であったため、時間をかけて追跡調査し、全体像が見えてきたのです。しかし、地味な話題なのでテレビ番組で取り上げられることもなく、学校でも積極的に教えられず、あまり知られていないのです。

ダイオキシンとは

 あらためて、ダイオキシンとは一体どのようなものなのでしょうか。

 猛毒で知られるダイオキシンですが、実はただの総称であって、ダイオキシンという名前の毒物は存在しません。化学的には、ベンゼン環を酸素原子1つ挟んで骨組みしたジベンゾフランと、酸素原子2つでつないだジベンゾダイオキシンという基本構造に塩素が付いた化合物を総称して「ダイオキシン類」と呼んでいます。

 200種類近くあるダイオキシン類は、「完全に無害なもの」「わずかに毒性があるもの」「猛毒のもの」(いずれも動物試験)など、多様な性質があります。ダイオキシンという言葉は果物でいうところの「イチゴ」くらいのカテゴリーと考えられます。つまり、「ダイオキシンは猛毒」と一括りにすることは、酸っぱいイチゴや甘いイチゴ、赤いイチゴ、白いイチゴなど、さまざまな品種があることを無視して「イチゴは赤くて酸っぱい」と論じるようなものです。