戦いの場をリングから県政へ―。福井県議選福井市区初陣でトップ当選を決めたプロボクシングの元世界王者・清水智信氏は、詰めかけた200人以上の支援者らを前に「県外に進学した子どもたちが福井に帰り、家族仲良く助け合っていけるような古里にしたい。福井から地方創生ができるよう、全力で頑張る」と高らかに勝利宣言した。
今回の県議選立候補者の中で最も若い33歳。選挙戦では、ボクシング仕込みの情熱とフットワークで有権者と握手を重ねてきた。当初はぎこちなく映った街宣活動も、日を追うごとに「板に付いていった」(陣営)。
午後10時半、開票率0%の段階でテレビに当確の速報が流れると、福井市開発5丁目の事務所内は興奮に包まれた。清水氏は同い年の妻静恵さんと事務所に現れ、大きな拍手と歓声を浴びながら晴れ晴れとした笑顔で左拳を何度も掲げた。
壇上でマイクを握った清水氏は、まず「現役時代もそうでしたが私はつくづく福井の皆さまに応援され、生かされていると思う」と深々と頭を下げ、決意に満ちた顔つきで「これから福井県を背負っていかなければならないとの自覚で、非常に身の引き締まる思い」と続けた。
福井市区の投票率が46・79%にとどまったこともあり「若い世代がもっと古里を思い、自分たちの力で頑張ろうという決意を持たなければならない」と強調。「自分が少しでも、そのきっかけをつくっていきたい」と述べ、若者が率直にモノを言える「風通しの良い県政、身近な政治家を目指していく」と誓った。
「皆さんの期待に必ず応えたい」と繰り返し語った清水氏。2011年に3度目の挑戦で悲願のボクシング世界王者に就きながら、負傷を理由に理不尽な「休養王座」という扱いを受けた。「栄光と挫折」を経験したからこその「正直者がばかを見てはいけない。世の中は公平でなければいけない」との信念は、県政の舞台でも揺らぐことはない。