名物の大クスノキに囲まれたスコアボードに表示される、150キロ超えの球速。投げる度に、藤崎台球場を埋めた1万5088人の観衆がどよめく。歓声を力に変えて、大谷が徐々にギアを上げていった。
「立ち上がりをどう乗り切るか(が課題)なのですが、きょうも一回を乗り切れたのがすべてですね」
一回無死満塁のピンチにも動じなかった。「割り切る部分があった」と開き直り、内川を155キロの直球で見逃し三振。李大浩(イ・デホ)のライナーは中田が好捕し、無失点で切り抜けた。
圧巻は味方が先制した直後の七回一死で松田に投じた4球目。球場表示は157キロながらテレビ中継局の計測では160キロをマークし、今季初めて大台を突破。「意識して三振を取りに行った」と自慢の直球で押し、3者連続三振で締めた。
偶然の巡り合わせで、元祖二刀流、宮本武蔵が晩年を過ごした熊本でのプロ初登板がまわってきた。刀は一本の方が扱いやすいのは当たり前-。かつての武蔵は、常識にとらわれず、“邪道”といわれた二刀流に果敢に挑戦し、自分のものにした。