昨年、Dvorak配列というキー配列があるのを知った (http://ja.wikipedia.org/wiki/Dvorak)。
使用頻度の高いキーがホームポジション付近にあるのが特徴で、一般的なキー配列 (QWERTY配列) と比べて指への負担が小さくなるよう配慮されている。
興味本位で練習してみたら、この配列がものすごく便利で驚いた。
もともと英語圏の人が考案したものらしく、英語を打つ際には特に効力が大きい。This, that, these, those, thus, then, is, at, in, on など、使用頻度の高い語句をホームポジションの位置でタイプできる。これらをタイプすること自体はQWERTY配列でも問題ないが、ストレスの度合いが桁違いだ。
さらに、英文向けだから日本語を打つときにはそれほどでもないかと思いきや、意外と効果絶大。左手のホームポジションの位置に AIUEO の母音が揃っているから、日本語を打つときには右手と左手で交互にタイプすることになる。これが中々素晴らしい特徴で、音ゲーをやっているがごとくリズミカルにキーを叩いていけるので、めちゃくちゃ楽しい。その上、DvorakJPというのを考案している方が居て (http://www7.plala.or.jp/dvorakjp/)、通常のDvorak配列だけでは少し使いにくい部分の解決策が提供されている。
Dvorak配列の大きな難点は、その学習コストの高さにある。実際、私はDvorak配列でまともに文章が書けるようになるまでに2週間はかかった。QWERTY配列でのキータイプ速度に追いつくまでには、半年近くかかったと思う。
しかし、何より特筆すべきは、Dvorak配列を学習する上で体験した奇妙な感覚だ。私は10年以上前からQWERTY配列のキー配置に手が馴染みきっており、キーをタイプするときには手元を見ない習慣になっていた。分かる方も多いと思うが、キー入力に慣れてくると、頭に浮かんだ文字列をそのまま画面に映し込むように半ば無意識で指がキーを叩くようになる。ところが、Dvorak配列を練習し始めて数日経ち、キー入力に慣れてきた頃、なんと「QWERTYのキー配置が分からなくなって」しまったのだ。それまで何気なくできていたタイピングが、その時、突然できなくなった。頭の中にあるQWERTYの配置が、徐々にDvorakによって上書きされていたということだ。そこから焦ってPCの設定をQWERTY配列に戻し、文字を数十秒タイプすると、以前と変わらない感覚を思い出し、全く問題なくQWERTY配列が使えるように「戻った」のだった。今ではQWERTYとDvorakのどちらの配置も自在に使いこなすことができるが、この時は、頭の中の歯車が狂ったような、普段の生活では中々得がたい感覚を味わうことになった。
以上のように、Dvorak配列は実用的である上、学習の過程で面白い体験をすることができる。興味のある方は、頭の体操だと思って、一度試してみることをお勧めする。
Windowsでは、DvorakJ (http://www.vector.co.jp/soft/winnt/util/se480857.html) のようなソフトが必要なため厄介だが、MacintoshやLinuxならばデフォルトの設定項目からDvorak配列を選ぶことができる。
>以上のように、Dvorak配列は実用的である上、学習の過程で面白い体験をすることができる。 語族語派の異なる新しい外国語を学習するときも似たような面白さを体験することが出来る...