2015年4月12日02時05分
北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)が開かれ、朴奉珠(パクポンジュ)首相が今年の課題を報告した。
「農業と畜産、水産業を軸として人民の食を解決」するという。また、経済の発展と核開発を同時に進める「並進路線」を貫くとも強調した。
父、金正日(キムジョンイル)総書記の急死を受け、息子の金正恩(キムジョンウン)氏が朝鮮労働党第1書記という最高指導者の地位に就いて、きのうで3年。
正恩氏が、真に経済の再建を望むなら国際社会からの支援が欠かせない。そのためには核開発を断念するしかないことを悟り、行動に移すべきである。
北朝鮮はこの数年、農民に対して、一部の収穫物の自由な流通を認めるなど、遅ればせながら独自の改革に取り組む。
実際にはすでに市場経済が流入しており、そのメカニズムなしには国民の生活が維持できないほどになっている。また、厳しい統制下にあっても、スマートフォンを含む携帯電話が広く普及するなど、国の外の情報が入りやすくなってきた。
最大の後ろ盾である中国からは、これまで何度も改革開放を迫られてきたが、金正日氏はかつて中国の改革を「修正主義」と呼ぶなど批判的だった。
だが、世界で指折りの閉鎖国家といわれる北朝鮮にさえ、変革の波は確実に押し寄せている。3代世襲という異常な体制を維持するには、もはや国民生活の向上が不可欠なのである。
朝鮮半島の非核化を話し合う6者協議が最後に開かれたのは6年以上も前のことだ。
日米韓は、協議再開には北朝鮮が非核化に本気で取り組む姿勢をみせる必要があるとしており、核に固執する北朝鮮側と意見が対立している。
北朝鮮指導部はいま、イランが核開発問題の解決に向けて米英独仏中ロと結んだ枠組み合意の行方を注視していることだろう。もしイラン核問題が最終合意すれば、北朝鮮が非核化に取り組むポーズをみせながら対話の場に出てくる可能性がある。
だが、核不拡散条約(NPT)に加盟するイランと、NPT脱退を宣言して核実験を繰り返した北朝鮮を同列には扱えない。約束を守らない北朝鮮への信用は地に落ちている。
何をするにしても核開発が支障になっているのである。
朝鮮労働党は今年10月、創建70年を迎える。節目の年を盛り上げるためにも、正恩氏は目に見える成果を国民に示したいはずだ。最高指導者としての責任を果たすために選ぶ道は、一つしかない。真の非核化による国際社会との融和である。
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