8,700人の日本人「投資家」達がアメリカの詐欺師に計1,300億円を騙し取られたと言う投資詐欺事件を検証する

詐欺的譲渡の主張は却下 ~アメリカの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のマッキベン判事は、2015年4月10日に以下のような決定を下した。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区
(原告らの表示省略)
(被告らの表示省略)

2:13-cv-01183-JAD-VCF
決定


当裁判所に申し立てられているのは被告鈴木順造と鈴木ポール武蔵(集合的に「鈴木親子」)の、第4次修正訴状(#233)の12項にある原告らの詐欺的譲渡に関する主張の却下である。この申し立てには被告LVTインク(以下「スターリングエスクロー」)も加わる(#238)。原告らはこれに反対(#238)し、鈴木親子は返答した(#243)。

鈴木親子は(1)連邦民事訴訟規則12(b)(6)の下では適用される時効で禁止されているため(2)連邦民事訴訟規則9(b)の下では不十分に議論されたので原告らの詐欺的譲渡の主張は却下されるべきと反論する。

連邦民事訴訟規則12(b)(6)を根拠とする申し立てを考慮すると、当裁判所はそのような弁証から惹起されるkも知れない全ての妥当な影響を含む訴状中の本質的な弁証について真と認めざるを得ない。<判例>訴状の弁償はまた日移動的当事者に最も有利に解釈されねばならない。<判例>しかしながら法的結論は真実の推定に基づくものではない。<判例>

<判例>

<判例>

主張が時効により禁止または消滅しているとの根拠に基づいて第4次修正訴状の項目12を却下するように求める主張は、証拠開示の終結における即決判決としての再出を排除することなく否定される。

申し立てられている議論に関しては、ネバダ州は積極的な詐欺的譲渡の主張を含む実際の詐欺的譲渡の主張を提供する。<判例>

訴状を鷹揚に解釈すれば、原告らは両方の主張をここで展開してきている。特に、訴状は、実際の詐欺的譲渡の主張の要素である騙し取る意図を持って譲渡が行われたと弁証する。<判例>訴状はまた、積極的な詐欺的譲渡の要素であるMRIが投資家らに払い戻しできないと信じていたかまたは信じていたとみられる合理的な理由がある時に「譲渡若しくは債務に合理的にみあう価値を受領することなしに」譲渡がなされたと申し立てる。<判例>従って、当裁判所は、原告らの実際の詐欺的譲渡の主張は規則9(b)に依るものであり故に要求される特定性を持って弁証されなければならないと結論する。当主張は特定の詐欺的譲渡の詳細、特に申し立てられているそれぞれの詐欺的譲渡の日付、金額、特定の受領者、を欠いており、原告らの実際の詐欺的譲渡の主張の弁償は風十分である。

以上より、鈴木親子とスターリングエスクローの却下の申し立ては、原告らの実際の詐欺的譲渡の主張に限り認められる。その他すべてに関しては棄却する。原告らが実際の詐欺的譲渡に関して追求したければ、2015年5月26日までに訴状を連邦民事訴訟規則9(b)に要求されるように実際の詐欺的譲渡の主張を適切に述べるよう訴状を守勢すべきである。

以上のように決定する

日付:2014年4月10日

ハワード D. マッキベン
合衆国地方判事


何とも難解な決定文だが、要するに「実際に詐欺的譲渡があった」という原告らの主張は詳細な記述がなく特定性を欠いているので、これを却下するように求める被告ら鈴木親子とスターリングエスクローの申し立てを認め、「もし原告らが詐欺的譲渡の主張を展開したければ訴状を修正して出直しなさい」と言うことらしい。

ネバダ州の民事訴訟で「被害者」・原告らを代表するロバート・コーエン弁護士は、2014年5月にも裁判所から主張の疎名不足を指摘され訴状の修正を命じられている。どうもあまり優秀な弁護士先生ではなさそうだ。
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「被害者の会」活動終息へ ~口座閉鎖~

一木堅太郎氏の主催する「MRIインターナショナル被害者の会(一木会)」は2015年4月9日付メイルマガジンで、2015年4月3日付で口座を閉鎖したことを発表した。

「被害者の会」は2013年4月の本件MRI「MARS投資」の実質的破綻発覚直後に発足し、初期には弁護団と並んでマスコミへの露出に傾注するなど存在感を強調し、特に2013年中は署名集めだとか、合衆国大使への意味不明な質問状だとか、安愚楽牧場事件の被害者をダシにして政党への働きかけだとか、警察庁・警視庁への申し入れだとかの活動を活発に行った。しかしながら、署名集めは「万単位まで待つか?」との公言にも拘らず実際に集まったのは二百人台、合衆国大使館からは一切反応なかったらしい。在京政党本部への働きかけは、左翼泡沫政党に自党のプロパガンダ文句の回答のみを得、中規模政党から自民党政権に批判的な一般政策の宣伝はあるも「個別の案件については…」と紋切り型の返答を受けただけで、大政党からは相手にされなかったらしく、また警察からは「被害があれば地元の警察に被害届を」と体よく追い返されるなど、対外的には何一つ具体的成果を上げたとは言い難い。

唯一成果を上げたように見えるのは、MRIのタダ飯が忘れられない「被害者」達を集めて「懇親会」と称する同窓会で飲み食いさせて憂さ晴らしを図る事だったように記憶する。実質的な成果は何もなくとも、情報隠蔽体質の被害弁護団に代わっていろいろ荒唐無稽の寸劇を「被害者」達に見せて飽きさせないようにしていたことにはそれなりの存在意義があったようにも思える。

イチキ氏は、「被害者の会」としての最後の活動は、2013年に考案した、「再投資」に費やされ実際には現金で受け取っていない「MARS投資」の配当に対する所得税と地方税などの納税済課税、所謂「みなし税」について、2015年1月に合衆国ネバダ地方裁判所がSECの裁判で「MARS」投資がMRIとフジナガの詐欺によるポンジースキームだったとを認めて、これにより得られたMRIとフジナガの不当利得を返還するよう命令する判決を出したことを根拠として、税の還付を求める請願書を1,866人分の署名を添えて1月に国税庁、財務省、総務省に提出したことだと報告している。この1,866人と言う数字は、「被害者の会」が今まで公表している署名人数などの数字の中では群を抜いて大きなものだ。

「MARS投資」はポンジースキームで「投資家」達の「出資金」が返還される見込みはなく、従って「配当」も自分の「出資金」の一部が払い戻されたに過ぎず実態のないことはほぼ明らかだが、ネバダ州の裁判はまだ一審の終結前段階でありMRI側が今後控訴する可能性もある中、税務当局がどう判断するかは予断を許さない。

この還付を求めている税額がいったいどのくらいになるかと言うと、「被害者」総数8,700人、総被害金額1,365億円と言われるから、「被害者」一人あたりの被害額は約1,500万円。配当率を年8%、税率を25%として、5年分とすれば、一人当たり平均約150万円、或いは30%、3年として100万円ぐらいか。被害金額の分布は明らかでないが、中央値としては100万円前後だろう。まぁかなりの金額であることに間違いはない。イチキ氏は、本件は「オプションB」即ち配当金を現金で受け取らずそのまま「再投資」して複利を狙ったカモだけに関係しているように述べているが、「オプションA」即ち毎年単利の配当を現金で受け取っていたカモはどうなのだろう?「元金」が戻ってこなくても実際に配当所得があったならそれに対する課税は合理的であろう。日本の税制度は詐欺による損失は災害などの損害と違い、一定の自己責任を認めるので税控除の対象にはならないから元金を摩ったことは税には関係ない。カモによっては配当で既に出資額は回収していると豪語している者もいたが、そのような配当膨れでモトを取ったり事件発覚前に償還してしまっていた幸運なカモに対して、「オプションB」で配当を再「投資」し続けていたり、ごく最近になり「MARS投資」を始めてまだ一度も配当を受け取っていない憐れなカモ側からは嫉妬があるかも知れないが、それは巧く勝ち逃げした奴らとババを掴まされたままゲームが流れた奴らとの違いであり、勿論税務当局の関知するところではない。

「被害者の会」は「寄付」と称して金集めをしていた。集めた総額は公表されている会計報告によれば現在まで総額31万1千円になる。イチキ氏は「被害者の会」の終息を「口座閉鎖」と言う形で発表しており、この金の行方が気になるが、口座の残高はゼロになっており財務上清算されたことになっている。

公表されている会計報告を閲覧すると、イチキ氏の住居のある名古屋から東京への「出張」旅費関係の支出が突出して多いことに気付く。「収入支出明細書」では「名古屋-東京(打ち合せ)諸費用」として2014年4月~2015年4月で合計20万9,200円を計上している。

以下は「平成26年4月から9月 会計報告」と「平成26年4月から27年3月 会計」から「出張費」関連の抜粋(両者とも2015年4月8日時点で監査報告なし)。
日 付適 用金 額
2014年4月5日(土)名古屋⇔東京 交通費(新幹線)10,000円
弁護士打合せ費用11,000円
2014年5月8日(木)
 (被害者団発足準備会会合)
名古屋→東京 交通費(新幹線)10,350円
東京→名古屋 (バス)3,800円
2014年5月24日(土)
 (被害者団準備会議)
名古屋⇔東京12,000円
宿泊代金5,000円
2014年7月15日(火)
 (被害者団準備会議)
名古屋→東京(新幹線)10,350円
東京→名古屋(バス)4,000円
2014年8月7日MRI 被害者団発足施行の準備金仮払50,000円
2014年8月25日(月)
 第一回鈴木ファミリー裁判ビラ配り、会議
名古屋→東京(新幹線)20,000円
2014年9月22日(月)
 (被害者団会議)
東京⇔名古屋(新幹線)15,000円
宿泊代金6,000円
2014年10月24日(金)(一木) 名古屋-東京 新幹線20,000円
2014年11月17日(月)(一木) 名古屋-東京 新幹線20,000円
裁判後打合せ費用(弁護士出席)10,000円
2014年12月24日(水)(一木) 名古屋-東京 新幹線20,000円
2015年1月27日(水)名古屋→東京 新幹線10,350円
品川→霞ヶ関 タクシー2,170円
宿泊費用2,500円
2015年1月28日(木)東京→名古屋 バス7,680円

支出日付を見ると、合計10回の「出張」のうち週末は僅か2回で、残りは全て週日に東京に出かけたことになっている。しかも週日の宿泊が2回あることには少々の驚きを感じる。伝え聞く大手建設会社従業員と言うイチキ氏の職業でよくもこのような活動ができたものと感心する。

月曜日の「出張」が3回あるが、これらはいずれも下記のような裁判所法廷期日に傍聴とその後の弁護団との面会のためと思われる。
 ・2014年8月25日 国内第二次訴訟第一回
 ・2014年9月22日 国内第一次訴訟控訴審第三回
 ・2014年11月17日 国内第一次訴訟控訴審判決

「弁護士打ち合わせ費用」と言うものが2014年4月5日と2014年11月17日にそれぞれ11,000円と10,000円計上されているが、所謂「飲み食い費」だろうか?

「MRI被害者団」との会議名目の「出張」が4回記されている。まぁ最初の2回程度はin-personで仕方がないにしても、イマドキの人なら例えばSkypeのグループビデオ会議で済ますところだと思うが、参加者のネットリテラシの低さ故そのようなことができなかったのか、或いはイチキ氏がどうしても自身で上京する理由があったのだろうか?

新幹線の名古屋・東京間の片道は10,360円。10,350円だとか往復で15,000円、20,000円は金額を切り捨てたり金券ショップから購入したのか?

「被害者の会」と言うかイチキ氏は、「収入支出明細書」の2015年4月3日残高333円全額を「MRI被害者団」に寄付し、これで「会」の会計を清算して閉めたつもりらしいが、公表されている会計報告では実は清算されていない。2014年8月7日の「MRI 被害者団発足施行の準備金仮払」が「仮払い」のまま残っている。「収入支出明細書」でもこの支出は「MRI被害者団へ無償貸付」となっており、会計上は債権資産として残っている。単なる出納記録を「会計報告」としたためであるが、お粗末な印象は否めない。

真偽の程は確認できないが、実はイチキ氏自身は「MARS投資」には関わっておらず、イチキ氏の近親者がMRIに金を騙し取られたので「被害者の会」を立ち上げと言う情報もある。金を摩った高齢親族本人がMRI事件に対する関心を失いイチキ氏も一人相撲の興味を失ったのか、それとも署名だ嘆願書だと「被害者」達の個人情報収集が実質終息してこれ以上の収集が見込めないと判断したのか、或いは上記のように「被害者の会」が何ら具体的成果を上げられなかったことを反省したのか、また将来も「被害者の会」が事件の解決に成果をあげられる見込みがないことが漸く認識できたのか、「寄付金」がもう集まらないと判断したのか、活動終結判断の真の理由は本人にしか分からない。

「被害者の会」は2013年中は活発と言うかそれなりに目立つ活動を続け、その卓越した行動力と体育会系風の面倒見のよさを強調して一部「被害者」達には一目置かれる存在だったたようだが、2014年に入ってからはウェブの更新も滞り気味になりお座なりの印象が強くなってきた(「口座を閉鎖した」と公言しながら「 当会の活動への寄付・ご支援をお願い致します! 」と言うウェブページは現在も健在)。これは本来MRI事件が社会問題などとは程遠い、単に詐欺師とそれに騙されたカモと言う私的事件であり、問題解決活動の主役が弁護士と裁判所と言うプロに移ったことが鮮明になり「被害者の会」とイチキ氏と言う素人の出る幕がなくなってきたからだろうか、それとも単にイチキ氏の事件に対する興味が薄れただけなのか。MRI事件被害者支援活動の後継とされる「MRI被害者団」は更にお粗末な情報発信力と行動力しか持ち合わせていないように見える。

2015年4月11日追記
当ブログの読者よりタレこみがあり、イチキは上記新幹線とバスを使った「出張」以外にも頻繁に自動車(私有車と思われる)でMRI事件がらみで東京に行っていたらしい。拙者もこれを承知しており、現に2014年度上期の「被害者の会」の「会計報告1」には2014年1月13日~1月14日の「警察庁、警視庁、裁判所等の活動」のための「東京出張」として以下の出費が計上されている。
高速料金(名古屋―東京)往復     7,000円
ガソリン代金                 3,000円
池袋ホテル宿泊               4,800円
池袋パーキング駐車料金         2,000円
しかしながら会計報告に見られるイチキ氏の「被害者の会」としての「東京出張」の上記の一件を除けば全て新幹線とバス利用であり、その他にイチキ氏が東京に何百往復しようと、また車中で同乗の異性に善からぬことをしでかそうと、それらは少なくとも「被害者の会」との金銭上の関係はなくイチキ氏の私生活であるからここでは検証の対象にしない。

情報提供にお礼を申し上げる。なおイチキ氏がラスベガスに出張したと言う情報は承知していない。
2015-04-09 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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詐欺被害情報ポータル、新サイトへ移行

2013年4月のMRI事件発覚直後から「被害者」達の情報交換、愚痴の言い合い、妄想の演説場所を提供し、2014年秋ごろから発生した数回のアクセス障害の末2014年11月に閉鎖したとみられるネット掲示板「詐欺被害情報ポータル MRIインターナショナル・インク」のドメイン登録が2015年3月25日に期限切れとなり、更新はなく失効した模様(レジストラはお名前.com)。

以下はWHOISの一部。
Domain Name: sagihigai-portal.com
Registry Domain ID: 1788825242_DOMAIN_COM-VRSN
Registrar WHOIS Server: whois.discount-domain.com
Registrar URL: http://www.onamae.com
Updated Date: 2015-03-26 00:28:16
Creation Date: 2013-03-25 06:41:42
Registrar Registration Expiration Date: 2015-03-25 06:41:41.0
Registrar: GMO INTERNET, INC.
Registrar IANA ID: 49

過去に書き込まれたほとんどの記事はこちらで閲覧できる(一部欠損あり、新規書き込み不可)。

ところが、更に調査したところ、詐欺被害ポータル MRIインターナショナル・インクのクローン或いは承継サイトしきものを発見した。記事は2013年9月24日3:19PM分までしか再掲されておらず、書き込みも行えるようであるが新規書き込みは確認していない。

ドメインの登録を見るとレジストラントは「ナカイ・ユウ」と言う人物で、連絡先住所及び電話番号は
・150-8512 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー11階
・03-54656-2560
となっているが、この住所はGMOと言うインターネットの会社お名前.comの運営元らしく、消滅した本家のsagihigai-portal.comもこの会社がレジストラだったからこのサイトは「正統な」承継サイトかも知れない。事実、サイトのデザインや機能なども完全に一致しているようだ。またsagihigai-sos.jpのドメイン登録日は2015年3月10日になっているから、ごく最近の登録のようだ。

もう一つの類似掲示板サイトは健在のようであるが、2013年末以来実質的に書き込みの無い状態が続いている。
2015-04-04 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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フジナガの自宅は3億円足らず

合衆国ネバダ地方裁判所ジェイムズCマハン判事は2015年2月23日に、フジナガ・MRIの関連会社の所有する6軒のオフィス不動産を管財人に引き渡す命令を下したが、ついでに以前調査したことのあるフジナガの自宅と目される居住用不動産がその後どうなっているかを調べてみた。

  • 住 所:9009 Greensboro Ln, Las Vegas, NV 89134
  • 区画番号:138-29-110-019
  • 所有者:C S A SERVICE CENTER L L C
  • 評価額:$ 2,089,420(2015-2016年度固定資産税課税基準)
  • 面 積:居住7,445平方フィート(約209坪、車庫含まず) 敷地36,590平方フィート(約1,038坪)
  • 建 物:築1996年 2階建て
  • 部屋数:寝室3 浴室(便所あり)3 便所3
  • 車 庫:5台分


写真はbingから。前庭には車寄せがあり、裏庭は小さめだがプールサイドにはあずまやがある。ラスベガス近郊の金持ち住宅の典型なのだろう。

居住面積の割には部屋数が少ない(7,445平方フィートなら6寝室でもおかしくない)が、これは多分通常の夫婦用寝室一部屋+子供の寝室と客用寝室と言う造りではなく3寝室ともウォークインクローゼットなどを備えた夫婦(カップル)用なのだろうことが(多分シャワーとバスタブの両方を持つ)浴室が寝室ごとにあるらしきことから想像される。また、この広さなら家族用と客用の食堂と居間がそれぞれ別にあるのは当然として、デン(書斎)とかミニバー、裁縫室などがあってもおかしくない。これが雪国ならマッドルーム(mud room)に長靴やスキー、防寒外套、雪かき道具などを置けるようになっているかも知れないが、ラスベガスは砂漠の真ん中で雪は降らない。ただし湿度の低い乾燥した気候なので夏でも夜は寒いことがある、と言っても3台ある暖炉は多分実際に暖を取ると言うよりインテリアの飾りだろう。

この物件の取引記録を見ると、1999年末に3,050,000ドルで購入した先代オーナが2003年初めにローンを払えず抵当流れになったようで、その年の年末にフジナガの持ち会社の一つのCSA Service Centerが2,150,000ドルで購入し、そのまま現在に至っている。ゆかしメディアによればこの物件は2013年4月のMRIインターナショナル事件発覚直前から売りに出されたと言うことだが、クラーク郡の固定資産台帳によれば今でもCSAの所有になっているから、多分CSAからフジナガに貸し出す形になっているのだろう。不動産サイトによれば、もしこの住宅が賃貸されているとすれば妥当な家賃は月10,620ドルと言うことだから、もしフジナガがCSAからタダで借りていたとすれば毎月約1万ドルが「現物給付」となり、その20%、2千ドル、或いは最高税率の35%(3,500ドル)程度の連邦所得税を納めなければならない。フジナガは相応の家賃をCSAに払っていたのだろうか?それともタダで借りて、2004年から現在まで11年間、累計約26万ドル~40万ドルの所得税を納めたのだろうか?

気になるこの住宅の現在の価値は、この物件が現在売りに出ていないので不動産業者によって鑑定に幅があるものの、約200万ドルから270万ドル(約2億4千万~3億2千万円)と言ったところらしい。前回の取引から11年も経って評価・鑑定価格が殆ど変っていないのは奇異に感じられる。隣の州にある拙者の住宅はこの物件のような豪邸でも新しくもないが、購入後16年で評価額は25%増し、鑑定・査定価格は2倍以上になっている。ちょっと面白いのはReMaxのサイトにある直近1年間の推定価値の変動(下のグラフ)。

greensboro-value.png

昨年後半から今年初めにかけて1割ほどダウンしているが、まさかMRI事件とは無関係だろう。

あ、この住宅はSECの裁判などの差し押さえの対象にはなっていないようであり、と言うことはフジナガがまだそこに居住している証左のように思える。

場所はぐぐるの地図などで簡単にわかるが、忍び込むのは止めた方がよい。セキュリティゲート付のコミュニティだから、フジナガの招待なしで侵入して下手をすると撃ち殺される。
2015-03-26 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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「プロ向けファンド」を巡る問題 ~毎日新聞の記事~

MRIのそっくりさん ~株式会社MMS~」で「適格機関投資家等特例業務」なる言葉を検証したが、これは、プロの投資家(機関投資家)が少なくとも一人出資すれば、一般投資家49人までの出資なら比較的簡単な手続きでファンドを組成できると言うもの。MMSの場合は「出資金」が実際には全く運用されておらず首謀者たちの懐に入った残りを配当として「出資者」に払い戻すと言うポンジースキームだったことに加え、少なくとも一つのファンドには適格機関投資家等特例業務によるファンドの組成条件であるプロの投資家が一人も出資していなかったことが判明したため金融当局から業務停止の警告を受けた。

このMMSの適格機関投資家等特例業務違反について「プロの投資家(機関投資家)とは何ぞや?」に関連する毎日新聞の記事。
プロ向けファンド:名ばかり…ほぼ全額、一般から
毎日新聞 2015年02月21日 15時00分(最終更新 02月21日 21時20分)

◇被害続出 証券取引等監視委が警戒
 プロの投資家が出資していれば一般投資家からも資金を集められる「プロ向けファンド」を巡り、本来は出資の大部分を占めるはずのプロ投資家がほとんど資金を出さないなど、問題のある事例が相次いでいることが証券取引等監視委員会のまとめで分かった。偽のプロ投資家をあっせんする業者もおり、監視委はプロ投資家の出資があったように装う「偽装ファンド」の出現に警戒を強める。「出資金が戻ってこない」などの被害も相次いでおり、金融庁も規制強化を検討中だ。【牧野宏美】

 プロ投資家は金融庁に届け出た、金融商品に十分な知識を持つ機関投資家ら。プロ投資家1人以上から資金を集めれば、49人以下の一般投資家にも販売できるのがプロ向けファンド。簡単な手続きで販売可能になり、金の先物取引や株の売買、事業への投資などをうたい資金を集める。

 監視委が検査の結果、資金の流用や虚偽説明などで問題があるとして、業者名の公表に踏み切った販売業者は37業者ある(昨年9月末現在)。このうち、プロ投資家からの出資額が判明したのは25業者で、出資額は1万超〜10万円が12業者で最多。次は10万超〜50万円の8業者で、50万円を超えていたのはわずか4業者。100万円超は1業者もなかった。募集金額全体に占める割合では、22業者が1%以下で、1%超〜2%以下が2業者。2%を超えていたのは1業者だけだった。金融商品取引法がプロ投資家の出資額や出資比率を定めていないため、脱法的なファンドが横行しているとみられる。

 金商法上、株式会社の形態をとるプロ投資家は資産を10億円以上保有している必要があるが、「投資事業有限責任組合」ならば資金的裏づけは不要で、この点を悪用した事例も目立つ。監視委によると、問題のある業者の多くはこうした組合から出資を受けており、監視委幹部は「要件を満たすために組合を設立し、わずかな額を出資させる一方、一般投資家から大量の資金を集めている」とみる。

 プロからの出資を偽装するケースもある。神奈川県小田原市のコンサルティング会社は、プロ向けファンドの販売を希望する23業者から依頼を受け、プロ投資家(証券会社)の「代理人」と称する法人を紹介。この法人が出資してファンドを販売した。

 監視委の調べで、この法人が金融庁にプロ投資家として届け出をしていない、偽のプロ投資家であることが分かり、偽装プロ向けファンドと認定された。23業者はコンサル会社に数十万〜100万円の紹介料を支払っていたとされ、金融庁は昨年10月、コンサル会社に対し「投資助言業」などを取り消す行政処分をした。

◇プロ向けファンド
 主に証券会社や銀行など、金融庁に届け出た適格機関投資家(プロ投資家)を対象にしたハイリスク、ハイリターンのファンド。新規事業や企業と関係を持つ一般投資家からの出資も可能にすることで、資金調達を容易にするなどの目的で2007年に導入された。昨年12月末現在の届け出業者数は約3000。虚偽説明や損失補填(ほてん)を行えば刑事罰の対象になる。監視委は10年以降、悪質な業者名を公表している。

◇「カネ戻らない」相談10倍、「必ずもうかる」勧誘も
 国民生活センターによると、プロ向けファンドを巡っては、主に高齢者を対象に制度を悪用した詐欺的な勧誘が行われ、被害が広がっている。

 センターへの相談件数は急増しており、2009年度154件▽10年度836件▽11年度1235件▽12年度1518件−−と3年間で約10倍になった。被害者は60歳以上が約9割を占め、判断力に問題があると思われる認知症患者も含まれていた。勧誘の際「必ずもうかる」とうその説明をするなど、問題のある事例が目立つ。「配当が滞った」「返金できないと言われた」などの被害相談もあるという。

 金融庁は規制強化を検討しており、昨年5月には勧誘できるプロ以外の一般投資家を1億円以上の金融資産を持った人物などに限る案をまとめた。「出資者に限らず全体的な対応を行う必要がある」とする意見も根強く、金融庁はさらに、プロ投資家にも「一定額以上の資産を持つ」などの要件を設けたり、問題のある販売業者への罰則を強化したりする方向で検討を進めている。【牧野宏美】

「プロ(機関)投資家が少なくとも一人出資」「(機関投資家でない)一般投資家が49人以内」なら簡素な手続きでファンドが組成できるのは、プロの投資家が出資していればそれなりに「プロの目」でスクリーニングされたファンドの健全性が期待でき、一般投資家が少人数ならもしファンドに問題があっても大きな社会問題にならずに済むからだろうと想像する。

一定の制約の下で簡便な手続きで投資事業を始められるようにする「規制緩和」自体は、社会コスト(=税支出、手数料等)を低く抑えながら国民により多くの投資の機会を与え、ひいては経済の発展に寄与すると考えられるので歓迎すべきことだが、問題はその裏をかいてインチキをする奴らがおり、更にそれに引っかかるカモが後を絶たないこと。

MMSの場合、二つのMMSファンドのうち片方にはプロ投資家が一人もいなかった(これが金融当局の行政処分の理由の一つ)とされ、またもう片方のファンドには一人いたことになっているが、その「一人」も実は上記のようにごく少額出資のダミーだった可能性もある(ただし金融当局の発表にはこれに関する事実の記載はない)。まぁ、MMSはもっと致命的と言うか決定的に、「投資話」自体がインチキのポンジースキームだったと言うオチがあるが…。

記事の執筆者の牧野宏美は「米MRIインターナショナル:資産消失疑惑 銀行と結託、日本人狙う ハワイで勧誘、口座開かせ」と言う内容に疑問のある記事を書いた毎日新聞社会部記者。牧野宏美はこの1年近く前にも「プロ向けファンド」について似たような記事をもう一本(下記)書いているが、こちらは「プロ偽装」より「素人」に売りつけることに主眼を置いた記事のようだ。
プロ向けファンド:「お金働かそう」高齢者狙い売りつけ トラブル急増、流用も
毎日新聞 2014年03月26日 東京夕刊

 投資経験の乏しい高齢者らに「プロ向けファンド」を販売してトラブルになるケースが急増している。国民生活センターによると、2012年度の相談件数は3年前の約10倍に達し、13年度も同様のペースで増え続けている。現行制度では、プロの投資家向けのファンドは金融庁への簡易な届け出だけで販売でき、一定数の一般投資家の勧誘も可能。証券取引等監視委員会は、ハイリスクで複雑な金融商品を「素人」に売りつける業者が横行しているとみて警戒を強めている。金融庁も制度見直しに向け検討を始めた。【牧野宏美】

 「新規のお客様に限り、優先的に割り振っています。金融庁に届け出のある業者だから安心して」。監視委が調査した東京都内の業者は、こんなうたい文句で新規公開株の購入を電話で持ちかけ、1年半の間に約100人から約4億円を集めた。しかし実際は株を購入しておらず、別の経費に流用したとみられる。

 関係者によると、業者は営業員に詳細なセールストークマニュアルを配布。消費増税や低金利などの話題の振り方や、断られた場合の切り返し方をパターン別に例示していた。「年金暮らしだし」と言われた時は、「自分で働く代わりに『お金に働いてもらう』ことを考えてみて。難しいことは代行するから安心」と投資を勧めるよう指導。自宅を訪問し、出資金は現金で受け取っていた。

 この業者に限らず、金融商品についてうその説明をしたり、規定数以上の一般投資家を勧誘したりして金を集め、流用して消失させる違法行為が相次いでいるという。監視委幹部は「届け出によって国からのお墨付きを得ているように装い、最初から高齢者らを狙って強引に勧誘している」と指摘する。

 国民生活センターのまとめでは、相談件数は09年度154件▽10年度836件▽11年度1235件▽12年度1518件と増加。トラブル当事者は60歳以上が9割を占めた。金融庁は、勧誘できる投資家の要件を厳しくするなどの制度改正を検討している。

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■ことば
◇プロ向けファンド販売業者
 証券会社や銀行を含む適格機関投資家(プロ投資家)にファンドの勧誘・販売をする業者で、ベンチャー企業の資金調達をしやすくする目的などで2007年に認められた。取引相手に1人以上のプロ投資家がいれば、49人以下の一般投資家にもファンドを販売できる。

ここで注目したいのは、「プロ向け」かどうかの判定は「プロ投資家」と「一般投資家」の人数と言う、外形的要素でなされ、決してファンドの投資先だとか投資方法だとかリスクの評価だとかでなされるのではないこと。そりゃそうだ、日本は資本主義・自由経済国家であり、国家はファンドの格付け機関でもファンドマネージャでもない。法律で明示的に禁止されていたり公共の秩序と善良な風俗に反しない限り、当事者が納得していれば火星(MARS)への投資だろうが何だろうが自由であり、そこから生じる問題の一次的な解決は当事者が行う私的自治が原則だ。これは政府の行う許認可制度に須らく共通している。だから、一部小数の狂信的MRI事件「被害者」達がMRI・フジナガの資金のトンネルとなっていたスターリングエスクロー社にエスクローのライセンスを与えたネバダ州政府の責任を声高に叫んだところで、州政府がエスクローライセンスの手続きで重大なルール違反を犯したのでなければ全くナンセンス(そもそもSECの裁判でスターリングエスクローに詐欺行為があったことを認める申し立ては却下されている)。

NHKは総合テレビジョン放送で2014年5月1日午後2時05分に「情報まるごと ~ 資産を増やすつもりが・・・」と言う番組を放映し、この中でMRI事件に少々触れたが、メインのテーマは「『プロ向けファンド』を投資知識の少ない高齢者を中心として一般投資家に販売することによるトラブル続出」だった。番組では「プロ向けファンド」とは何なのかの説明が一切なく、制作者・リポーターの力量・知識不足などでガッカリする内容だったが、主題は上記毎日新聞の記事の二つ目の方によく似ていたように記憶する。時期的に見て毎日新聞記事のパクリの可能性もある。

まぁ、これで「プロ向けファンド」の実態が何となく明らかになってきた。

テーマ : お金の勉強
ジャンル : 株式・投資・マネー

2015-03-12 : マスコミ報道 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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元祖「被害者の会」ウェブサイト復活?

2013年6月2日の記事以来沈黙してきた「MRIインターナショナル被害者の会」ウェブサイトが2015年になり記事2本(2015年3月11日現在)を掲載している。

ただしだけであり、内容的には読むべきものは何もない。

なおこの「MRIインターナショナル被害者の会」ウェブサイトイチキ氏の主催する同名の会とは全く別物らしく、イチキ氏の「会」は当初「MRI被害者の会」と名乗っていたが、後に「インターナショナル」を追加している。
2015-03-12 : 被害者の会 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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一審は終結へ ~SECの裁判~

2015年2月25日、合衆国ネバダ地方裁判所のジェイムズ・マハン判事は、これまでの一連の決定が最終判決であるとの認証を発した。

以下は決定文のテキストの翻訳。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区
原告:合衆国証券取引委員会



被告:エドウィン・ヨシヒロ・フジナガ及び
MRIインターナショナル・インク

及び

交替被告:CSAサービスセンター・LLC、
ザ・ファクタリング・カンパニー、
ジューン・フジナガ、及び
ユンジュ信託基金

事件番号:2:13-cv-1658-JCM-CWH

規則54(b)認証

当裁判所は合衆国証券取引委員会の判決請求(文書188)を認める決定をし、裁判所書記は被告エドウィン・ヨシヒロ・フジナガ及びMRIインターナショナル・インクに対して判決(判決)を下した(文書189)が、当裁判所は連邦民事訴訟規則54(b)に従い、判決の抗告と執行について遅らせるべき正当な理由はなく、当判決が更なる通知の有無に拘わらず、被告エドウィン・ヨシヒロ・フジナガ及びMRIインターナショナル・インクに対する最終判決であることをここに認証する

日付:2015年2月25日

James C. Mahan
ジェイムズC.マハン閣下
合衆国地方判事

拙者は専門家でないのでよく分からないが、これで原告対被告の争いは一応終結し、今まで「見込み」だった様々な決定が一審段階では確定したのだと思う。

ただし、被告側(原告側もそうだが)は上級裁判所に控訴することができるのでこの判決が「確定」したわけでない、と言うのが「final judgement」の意味らしい。

今後、控訴の申し立てがなければ、管財人に引き渡しを命ぜられた不動産資産は競売され「被害者」達への配当資金などに充てられるのだろう。他の資産、例えばフジナガの個人資産やフジナガの離婚した元妻のユンジュの個人資産にも何らかの処分が下る可能性があるが、今後の推移を見守るしかない。
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MRI所有不動産の価値が明らかに ~SECの裁判~

2015年2月23日、合衆国ネバダ地方裁判所のジェイムズ・マハン判事はフジナガとMRIが所有する6軒の商用不動産の管財人への引き渡しを命令したが、この決定文から拙者が調査したところ、これらの不動産物件の評価額が判明した。

以下はネバダ州クラーク郡財務局から得られた今回の命令の対象となった不動産物件の2015年度の固定資産税評価額。
住 所用 途区画番号
所有者
登録年度
評価額
(固定資産税年額)
最終納税日
延滞金を含む債務税額
5330 S. Durango Dr. Las Vegas, NV
5370 S. Durango Dr. Las Vegas, NV
MRI

Claims Servicing of America
163-28-301-001
C S A SERVICE CENTER LLC
2001
1,759,649
(51,606.99)
2012年11月
163,463.00
5420 S. Durango Dr. Las Vegas, NVMRI Building No. 3163-28-301-007
C S A SERVICE CENTER LLC
2003
2,452,852
(71,937.24)
2012年12月
214,952.97
2955 Coleman St. North Las Vegas, NVMed-Health Medical Supplies139-17-610-006
C S A SERVICE CENTER LLC
2006
947,658
(31,573.67)
2013年9月
76,981.53
2865 Coleman St. North Las Vegas, NVMed-Health Pharmaceutical Products139-17-610-007
C S A SERVICE CENTER LLC
2006
413,141
(13,764.85)
2013年3月
33,174.45
2875 Coleman St. North Las Vegas, NVMed-Health Pharmaceutical Products139-17-610-008
C S A SERVICE CENTER LLC
2006
470,230
(15,666.91)
2013年2月
37,757.49
150 East Harmon Av. Las Vegas, NVHarmon Medical Center162-21-202-004
H M C SERVICE CENTER LLC
2002
1,910,985
(56,045.37)
2012年10月
188,295.16
合 計7,954,515551,161.60
評価額は土地と建物の合計で単位はドル。合計でおよそ8百万ドル、現在の為替レートで約9.5億円。2001~2006年に登録されており、拙者はネバダ州の商用不動産の固定資産税評価には詳しくはないが、拙者の在住する州の住宅用固定資産税評価額のルールである
  • 登記移転(売買)があるとその取引価格
  • 毎年市場の状況に合わせて州の委託を受けた鑑定人が再評価するが評価額上昇の上限は毎年4%
と似たルールだと仮定すると、拙者の自宅の例から類推して市場の実勢価格は評価額の数十%増しになっている可能性がある。それでも十数億円分、消失したとされる「投資」被害金額1,350億円の1%程しかない。しかしこればかりは不動産市場の需要と供給で決まるので何とも言えない。

決定文中では、MRIは当該不動産の物理的アクセス(鍵の引き渡し、退去)はもちろんのこと、これらの物件に関する全ての財務記録などを管財人に引き渡すことを命じており、更に管財人は120日以内に当該不動産物件の市場価値の鑑定評価を提出することになっているが、これはもちろん専門の鑑定業者(Appraiser)が行うのだろう。

上記不動産に、MRIが最後に回収したMARSの1,610万ドル(約18億円)と什器などの売却価値の数万ドル(数百万円)程度を加えて、多分MRIに残っている資産はこれで全てだろう。あとはフジナガ(と鈴木一家)の個人資産。フジナガの離婚した元妻ジューン・ユンジュは交替被告に載っているが今のところ離婚前にフジナガが多分ポンジースキームの金で買い与えたラスベガスの投資用不動産などのユンジュ名義の財産に関する命令は出ていないようだ(鈴木一家はSECの裁判の当事者ではないので無関係)。

アメリカでは個人開業医は開業医や検査機関(血液、レントゲンなど)ばかりが入居する(多くの場合大病院に近接した)「医療コンプレックス」にオフィスを構えることが多い。医者は診察・治療に専念して薬はドラッグストアで購入と言う医薬分業が徹底しているだけでなく、検査は専門の「ラブ(Laboratory)」に患者が検査項目依頼用紙を持参する(結果は医者に直送)し、開業医が自分の手に余ると判断すれば大病院の専門医にすぐ紹介し、また開業医が大病院の手術室を麻酔医や看護婦込みで借りることもあるし、入院などの人員と設備の必要な処方は大病院任せにするなど、分業と効率化が進んでいる(それでもアメリカの医療費は世界で一番高額)。ハーモン・メディカル・センターは、裁判所の決定文中にそこに現在テナントが入居していると再三述べられていることから考えても多分個人開業医などへの場所提供ビジネスだったと考えられるからフジナガが不動産を所有していたことに納得がいくが、MRIやCSAは医療分野に特化しているとは言え、金融屋であり事務ビジネスだから、フジナガ・MRIが不動産を所有していることには驚く。

アメリカの中小企業は上記開業医の例のように賃貸で営業することが多い(と言うか、日本のような「自社ビル」への拘りが薄いように見える)。その方が初期投資が大幅に少なくて済むし、事業規模の変遷に従って別の場所を借り直したり借り増したりが容易だからだ。ただし日本のような「雑居ビル」は都会部を除いて殆どなく、(日本から見ると)郊外の平屋や二階建て程度の低層建物が多い(都会部は狭く賃料が高額でまた顧客と従業員のための駐車場の確保が難しいなどの問題があるが、弁護士事務所のような舌先三寸・はったりビジネスは都会部の高層建物に事務所を構える傾向があるようだ)。従業員数百人程度なら建物丸ごと一軒借り上げることも一般的。

上記のような拙者の経験と感覚からすると、フジナガがMRIとCSAのために不動産を所有しているのは異様と言うか不思議だ。MRIは実際の従業員数は30人程度だったにも拘わらずカモ達には300人が働いていると大嘘を言い、一部の高額カモ達をラスベガスへのタダ飯旅行に招待したときはキューブだけ揃っているが人気のあまりないオフィスと(多分見せかけだけの)古いコンピュータを見せびらかしていたようだが、まさかそのようなハッタリのために数億円単位の不動産を揃えたのだろうか?

当局の発表などによれば、MRIは遅くとも2011年頃からは本業・謳い文句の「MARS回収ビジネス」は殆どあるいは少なくとも宣伝文句の数字より大幅に小さい規模でしか営業していなかったらしいが、多分古参のカモへの支払いを新規のカモからの集金で賄うポンジースキームはそれよりだいぶ以前から始まっていたのだろう。2012年には資金が枯渇してきて、日本のオフィスに更なる新規カモの積極的勧誘を促している。この時点で不動産を売却して(MRIやCSAが入居したままでも可能)資金手当てをするなどもできた筈なのに何故そうしなかったのだろう(もっとも、消失したとされる金額の1%程度の不動産売却では焼け石に水かも知れないが)?ポンジースキームは理屈から言っていずれ破綻するものなのにフジナガにはそれが分からなかったのか?「MARS投資詐欺」はかなり長期間続いていたようなのに、何故不動産のような処分しづらく存在が明らかな資産を持ち続けていたのだろう?フジナガにもう少し知恵があれば行き詰まりが見え始めたら不動産などさっさと換金して外国に逃げてしまうことだってできただろうに?

何ともおバカな詐欺師だ。もっとも、そのおバカな詐欺師に騙されて大金を巻き上げられたカモ達がいるのも確かだが…。

2015年4月6日追記
クラーク郡の固定資産記録を更に眺めていて興味深いことに気付いた。フジナガは差し押さえの対象になった不動産の固定資産税を2012~2013年頃から現在に至るまで滞納しているのだ。滞納加算額を含む現在の固定資産税債務額を表に追加しておく。合計約55万ドル(6千万円余)。滞納の開始時期は「MARS回収ビジネス」を隠れ蓑にしたポンジースキームの行き詰まりが発覚した辺りからで、この時期にはMRIの資金が絶望的に枯渇していたのか、それともフジナガはもうどうせこれらの不動産は差し押さえられるからと腹をくくったのか?いずれにせよMRIにはもう金は残っていないだろう。差し押さえられた不動産が競売され「被害者達」に配当される前に滞納されてきた固定資産税を含む公租公課が優先的に差し引かれるのは言うまでもない。
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6軒の不動産を管財人に引き渡し命令 ~SECの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所は、2015年2月23日、フジナガとMRI、及び関連会社の所有する6軒の商用不動産を2015年3月2日までに管財人に引き渡すよう命令した。

以下は「Courthouse News Service」からの抜粋。
2015年2月26日木曜日 最終更新:午前7時43分
8億ドルのスキーム、ポンジーに終わる
マイク・ヒューアー
ラスベガス発 ― 8億ドルのポンジー詐欺をはたらいた件で6億4百万ドルの罰金に処せられた所有者の6軒の医療不動産物件が管財人に引き渡される。

(SECの裁判での先の吐き出し命令の要旨省略)

月曜日、マハン(判事)は6軒の商用不動産物件を抵当流れと消失から守るために管財人の管理に置くよう命令した。

これらの不動産物件には、ハーモンメディカルセンターとクレイムズサービシングオブアメリカとMRIの事務所が含まれる。医療品サプライ物件1軒と2軒の医薬品物件もまた管財人の管理に置かれる。

マハンは、MRIに対して、これらの不動産物件を管財人ロブエバンズ・アンド・アソシエイツに3月2日までに引き渡すよう命令した。管財人は、これらの物権と金庫、コンピューターおよび情報システム、そして封鎖されたキャビネットを管理する。

(以下略)
この記事は「1月に合衆国地方裁判所のジェイムズマハン判事は即決判決でMRI、LVT、エドウィンフジナガ、鈴木順造、鈴木ポール武蔵に4億4,222万8,611.70ドルの吐き出し、1億212万9,752.28ドルの利息、各々2,000ドルの民事制裁金の支払いを命じた」(実際に支払いを命令されたのはMRIとフジナガだけであり、鈴木親子は被告でさえなくSECの裁判とは無関係)、「被告のLVTはネバダのエスクロー会社で、またの名をスターリングエスクローと言い、MRIの簿記を行っていた」(実際にはLVTはスターリングエスクローの親会社であるラスベガスのリムジン会社)などと、かなり不正確。

以下は関連する裁判所の命令文。
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MRIのそっくりさん ~株式会社MMS~

財務省東海財務局は、2015年1月30日、愛知県名古屋市の「株式会社MMS」に実質的な投資詐欺と見られる案件に対する警告書を発出した。
警告書の発出を行った適格機関投資家等特例業務届出者について

平成27年1月30日
東海財務局

1.適格機関投資家等特例業務届出者である株式会社Money Management Strength(名古屋市中区、代表取締役 河合 礼子(かわい れいこ)、資本金1800万円。以下「当社」という。)に対する調査の結果、以下の法令違反等の事実が認められたことから、本日、当社に対し、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針Ⅱ-1-1(7)、Ⅸ-1-1(2)及びⅨ-1-2(3)に基づき、直ちに当該行為を取り止めるよう警告書を発出した。

2.事実関係
 当社は、平成24年11月から同26年7月までの間、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)として、匿名組合型ファンドⅠ(以下「ファンドⅠ」という。)及び同Ⅱ(以下「ファンドⅡ」といい、ファンドⅠと合せて「本件ファンド」という。)の取得勧誘を行っていた(当社の業務執行については、代表取締役河合及び専務取締役の原 学(はら まなぶ)が、指示、決定、統括している。)。
 当社の主張等によれば、本件ファンドの投資対象は、米国事業会社Money Management Strategies,LLC(同社のディレクターはJohn Holdawayなる人物とされている。以下「米MMS社」という。)に対する「信用供与のサポート事業」であり、米MMS社によって米国の銀行に開設されたファンド名義の口座(以下「ファンド口座」という。)へ出資金を送金するだけで、米MMS社から高額の手数料報酬を受領できるとのことである。その具体的内容は、以下のとおりとされている。
イ.当社は米MMS社との間で資産運用に関する「EXCLUSIVE PRIVATE PROGRAM」という名称の契約(以下「EPP契約」という。)を締結し、同契約に基づき、米MMS社は米国の銀行にファンド口座を開設する。
ロ.当社は、募集した出資金をファンド口座に送金する。
ハ.米国の銀行と米MMS社間の合意に基づき、ファンド口座の残高相当額のクレジットラインが米MMS社口座(トレーディングアカウント)に対して設定され、口座残高相当額が米MMS社口座に信用供与される。
ニ.クレジットラインの設定に伴い、ファンド口座は米国の銀行によって封鎖(ブロック)され、かつ、担保にも供されない状態に置かれる。
ホ.米MMS社は、米国の銀行から信用供与を受け、資産運用の極秘プログラムである「EXCLUSIVE PRIVATE PROGRAM」によりデリバティブ等による運用を行うが、当社に対しては、当該運用の成績に関係なく、EPP契約に基づき、ファンド口座残高の40%をクレジットライン開設のための手数料報酬として支払う(2月、5月、8月及び11月に1年分の報酬が分割して支払われる。)。
ヘ.当社は、米MMS社から受領した手数料報酬の50%(すなわちファンド口座残高の20%)を上限に出資者へ配当し、残りを営業報酬として取得する。

 そして、当社は、平成24年11月頃から同26年7月頃までの間に、延べ65名の顧客に対し、総額約5億3000万円のファンド持分を取得させている(ファンドⅠ:延べ33名、約3億5000万円。ファンドⅡ:延べ32名、約1億8000万円。)。

 そのような中、本件ファンド業務の運営状況等を検証したところ、以下の問題点が認められた。

(1)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
  ア 出資金の使途等に関する虚偽告知
 当社は、本件ファンドに係る匿名組合契約の締結又はその勧誘に際し、出資金の使途等に関して、「本件ファンドの出資対象事業はクレジットライン開設への信用供与サポート事業である。出資金はその他の目的には使われない。」などと説明しているほか、本件ファンドの契約書にも「出資金は信用供与のサポート事業のためにのみ使う。」と明記している。
 また、当社は、「出資金の送金先である米国の銀行に開設されたファンド口座は、同行によって1年間封鎖(ブロック)される。」などと説明しているほか、その旨を明記した契約締結前交付書面等を顧客に交付している。
 しかしながら、ファンド口座に送金した出資金は、本件ファンドの手数料報酬の支払、同報酬とは別の河合及び原の各個人に対する金銭支払、米MMS社の関係先会社への振込出金、米MMS社関係者によるクレジットカード決済への支払等に充当されるなど、全く封鎖(ブロック)されておらず、信用供与サポート事業には充てられていなかった。
  イ 配当金の支払に関する虚偽告知
 当社は、配当金の支払に関して、「配当金は信用供与サポート事業の成果の分配として、米MMS社から当社へ支払われる手数料報酬から、当社によって支払われる。」などと説明しているほか、本件ファンドの契約書においても、「本件ファンドの収益は米MMS社から支払われる手数料報酬である。」と明記している。
 しかしながら、ファンド口座の内容は、上記ア記載のとおりであり、配当金の支払原資には、ファンド口座に送金された出資金が充てられていた。

 当社によるファンドⅠの出資持分に係る上記説明は、金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為に該当する(金融商品取引法(以下「金商法」という。)第63条第4項・第38条第1号。なお、下記(2)の無登録営業に該当するファンドⅡの出資持分に係る説明は、投資者保護上問題のある行為に該当する。)。

 なお、当社は、ファンド口座は封鎖(ブロック)されておらず、出資金が信用供与サポート事業以外に使われていることなどの可能性が高いことを認識していたにもかかわらず、出資金が引き出されないようにするための適切な措置等を講じることなく漫然と出資者に対する取得勧誘を継続していたものである。

(2)第二種金融商品取引業に係る無登録営業
 特例業務については、1名以上の適格機関投資家を相手方とする取得勧誘が行われることが要件の一つとされている。
 当社は、ファンドⅡに唯一の適格機関投資家として出資しているのは、X投資事業有限責任組合としていた。
 しかしながら、当社は、実際には、ファンドⅡに係る特例業務の開始当初から、X投資事業有限責任組合を含む適格機関投資家からの出資を全く受けていないことから、ファンドⅡの出資持分の取得勧誘は、金商法第63条第1項第1号に規定する特例業務の要件を充足していない。

 したがって、当社が業として行った上記行為は、金商法第28条第2項に規定する「第二種金融商品取引業」に該当し、当社が同法第29条に基づく登録を受けることなく、上記行為を行うことは、同条に違反するものと認められる。
証券等取引監視委員会も同文の調査発表をしている。
株式会社Money Management Strengthに対する調査結果について

1.調査結果

東海財務局長が株式会社Money Management Strength(名古屋市中区、代表取締役 河合 礼子(かわい れいこ)、資本金1800万円。適格機関投資家等特例業務届出者。以下「当社」という。)を調査した結果、下記のとおり、当該適格機関投資家等特例業務届出者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、金融庁長官に対して、適切な措置を講じるための情報提供を行った。

2.事実関係
(以下東海財務局発表と同文省略)

金融当局の発表文はよくまとめられており、この「ファンド」の性格を解り易く記述しているが、拙者なりに更に解釈してみると、
  • 「投資家」は日本のMMS社経由でアメリカのMMS,LLC(Limited Liability Company≒有限会社、アメリカで一般的な法人形式)に送金する
  • MMS,LLCはその資金をファンド名義のウェルズファーゴ銀行口座に入金する
  • ウェルズファーゴ銀行はその口座中の資金を「ブロックする」代わりに、残高に見合った「クレジットライン(信用・融資枠)」をMMS,LLCに設定する
  • MMS,LLCはその信用枠を使ってウェルズファーゴ銀行から無担保で融資を受け、「極秘デリバティブ投資」をする
  • MMS,LLCはデリバティブ投資の運用実績に拘わらず毎年「出資金」の40%の「信用枠資金手数料」を支払い、それを日本のMMS社と「投資家」が山分けする
と言うものらしい。下は金融当局が作成したこのスキームのダイアグラム。一見複雑そうだが要は上記の如し。mms-scheme.png

で、このファンドのどこが他の投資商品と違っており何が「投資家」にとって魅力かと言えば、投資資金は直接運用されるのではなくウェルズファーゴ銀行のMMS,LLCの開設するファンド口座で「ブロック(封鎖)される」ので安全だと言うことのようだ。「出資金で金融商品を購入しません」をやたら強調している。勿論、出資金を元にした信用で融資される「極秘デリバティブ投資」の運用実績に関係なく支払われると言う年利20%相当の超高配当も然り。

mmsjapan.png

いやはや、「クレジットライン」を「MARS」に、「ブロック」を「ロックボックスとエスクロー」に置き換えると、MRI事件と瓜二つではないか!MMS,LLCがネバダ州所在であることとウェルズファーゴ銀行の口座を使うことまでそっくりだ。ただしMMSに引っかかった「投資家」数は延べ65人、総金額は約5億3,000万円とMRI事件のそれらより二桁以上少なく、カモ一人当たりの平均「出資」額も約800万円でMRIの1,500万円余の半額と、いささか小規模。

で、結果はどうだったかと言えば、MMS,LLCに送金された「投資資金」は銀行で「ブロック」などされることなく蛸足配当・ポンジースキームの配当金支払いに使われただけでなく、アメリカのMMS,LLC幹部の個人消費支払いや別会社に送金され、また日本のMMS社幹部へは公表されている「信用枠資金手数料(四半期ごとに10%、年利40%相当、MMS社と出資者で山分けの筈)」以外の「隠しキックバック」も払われたらしい。これもMRI事件によく似ている。多分、最初から「デリバティブ投資」などは真っ赤な嘘で、元々ポンジースキームで「出資金」を騙し取るのが目的の可能性があり、おそらく資金の大半はもう残っていないだろう。

結論から言えば、「信用供与のサポート事業」だとか何だとか名前を変え、「出資金で投資商品を購入しません」などと尤もらしいことを言い、投資金が大銀行の預金口座に送金されたところで、公開市場で日々取引されている信用のある機関が扱う金融商品とは異なる、得体の知れない私募ファンドに一旦金を送ってしまえば、その金はもはや詐欺師のものであり彼らが自由のままになるのだ。そう言うことをカモ達は想像できなかったのだろうか?特に、送金先が日本国内でないと、いくら日本国内に代表・代理人がいたところで、不正が発覚しても捜査当局も「国境の壁」で実態解明は困難を極めるどころか最初から及び腰と言うより「できないものはできない」で活動しない・できないことはMRI事件の経過を見なくても数百万円もの金銭を「投資」するに前に少々の考察をすればそれ程困難なく想像できたはずなのに。

■MMS, LLC
MMS、Money Management Strategiesと言う名前を検索すると、同じ経営者によるグループあるいは実質的に同じかも知れないいくつかの名前がヒットする。
  • Money Management Strategies
  • Money Management Solutions
  • MMS Private Investment Corporation
本社はネバダ州でもMRIと違ってもっと北の方の州都Carson Cityに登記されているらしいが、どうもここには物理的なオフィスはないようで、以下の代理店がリストされている。
GKL REGISTERED AGENTS/FILINGS, INC.
1000 EAST WILLIAM STREET STE 204
CARSON CITY、NV 89701

業務内容は不明だが、ネバダ州で2013年6月25日に登記されており、登記番号はNV20131381528。

幹部と思われる人物の氏名と所在は以下のとおりで、全員隣のカリフォルニア州在住となっている。
  • FRANK FERREIRA President (社長)
    3153 BARLETTA LN
    SAN JOSE, CA 95127
  • JOHN HOLDAWAY Director (専務)
    237 KEARNY ST #223
    SAN FRANCISCO, CA 94108
  • KEVIN KEYS Treasurer (財務)
    15466 LOS GATOS BLVD SUITE 109-364
    LOS GATOS, CA 95032

写真は、ぐぐるから得た、金融当局の発表にあるJohn Holdawayの住所であるサンフランシスコ・チャイナタウン近くの古びた建物。他の2名の幹部、Frank FerreiraとKevin Keysの住所は、それぞれ一般住宅とスーパーマーケットの入居するコンプレックス。

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■クレジットライン
「クレジットライン(credit line、line of credit)」とは「信用枠」のことで、金融機関が事前審査をした顧客に対して、顧客が実際に融資を必要とするときにその都度審査をすることなしに「この金額までなら何時でも使途を問わずに融資」する上限金額のこと。クレジットカードの「与信限度額」もクレジットラインと似ていて、その金額までの使用残高までなら使途を問わずに買い物やキャッシングができる。例えば、銀行によっては取引実績のある優良個人顧客に対して毎月少額の手数料でクレジットラインを維持させ、顧客はその限度額内で自動車の購入や家の修理などの出費をその都度審査されることなく借金できる。

これに対して、普通の融資は毎回審査があり多くの場合使途が限定される。例えば住宅ローンは審査を通った当該住宅の購入とそれに関わる諸費用にしか使えない。

クレジットラインによる借金は無担保と担保ありの両方があるらしい。「担保ありのクレジットライン」なら、例えば車の購入なら車に抵当権が設定されるだろうし、または予め担保を設定しておくなら「根抵当」に相当すると思うが、浅学の拙者にはよく分からない。

これがどうして投資の対象になるかと言うと(MMS社の説明によれば)、出資金でアメリカMMS,LLCに一種の信用貸しをして、MMS,LLCはその信用で銀行から融資を受けてデリバティブ投資を行うと言うことらしい。

■信用貸しビジネス
他人の資産を使って金融機関から信用を得て融資を受けるビジネスは昔からあるようで、代表的なのは「担保貸し」だろう。AはB銀行から融資を受けたいが担保にする目ぼしい資産を持たない。そこで現金を持たない或いは貸し出したくないが担保的確資産を持つCに「担保使用料」を払うことでその資産を借りて銀行に担保として差し出し融資を受ける。A社が融資金を返済すれば目出度しだが、焦げ付くとCの担保は差し押さえられ抵当流れになってしまう。何ともリスクの高いビジネスだ。

信用貸しとはちょっと違うが、「導入預金」と言うものを聞いたことがある。拙者の知っている「導入預金」は下で解説されているものとは少々異なるバージョンで、担保的確資産を持つAがB銀行から融資を受けたいが、銀行は取引実績の欠如や手持ち融資資金が乏しいなどで融資に難色を示すとき、取り敢えずの使い道のない現金を持つCにAが「導入預金手数料」を払ってその現金をB銀行に定期預金してもらうと、その見返りに銀行はAに融資する。Cは通常の定期預金利息に加えて導入預金時にAから先払い手数料(「裏金利」とも呼ばれる)を受け取れ、万が一融資が焦げ付いてもそれは元々Aが差し出した担保で解決され、Cには無関係だから安全この上ないし、銀行は定期預金を右から左に貸し直せば融資金利と定期預金金利の利ざやが入るので目出度しと言うものだ。

こういう「信用貸し」は日本が高度成長期で仮名預金口座などが当たり前であった時代には結構あったようだが、その後日本の社会が落ち着きフェアな経済活動を重視するようになり規制が厳しくなってからは姿を消したようだ。

ところが金融当局の発表を見ると、MMSの「信用供与サポート事業ファンド」では集めた「投資資金」がMMS,LLCの開設するファンド名義の銀行口座に入金されそれを元に与信限度額が設定されるが、当該預金はMMS,LLCに対する融資の担保にはならないと言い、上記「担保貸し(担保の名義は担保所有者本人、また融資事故=焦げ付きがあれば銀行は担保に対して抵当権を行使できる)」とは明らかに違うスキームだ。

そんなことが可能なのか?

拙者はこう言うことに詳しくなく誤解があるかも知れないが、もし集めた「投資資金」からなるMMS,LLCの預金が本当に融資の担保になっていなければ、万が一融資が焦げ付いてMMS,LLCが破産となると、銀行にとってその融資は担保なしの一般債権になるから、いくら「ブロックされた」預金があっても(担保付債権、労働債権の配当後に)他の一般債権者と同列に配当されなればならないのではないのかと思う。果たしてそんな危険な融資を銀行が実行することが許されるものなのだろうか?ウェルズファーゴは全米第4位の歴とした大銀行だ。また、そもそも銀行預金を「ブロック(封鎖)する」とは、例えば定期預金のように途中引出し・解約不可能にする(それでも通常の定期預金ならば違約金・罰金の類を払えば解約できる)以上にどれだけの条件があるのだろうか?金融当局の発表によればMMS,LLCの預金ブロック期間は最初の一年だけらしいから、その後は返済がなければ預金は担保になると言うことなのだろうか?よく分からない。

しかしマネー百科の記事には
導入預金 (どうにゅうよきん)

 導入預金とは、金融機関が、裏金利など「特別の金銭上の利益」を得る目的がある者(預金者)から受け入れた預金等を担保にとることなく、特定の第三者に融資をすることを条件に預金等を受け入れることをいいます。たとえば、預金者Aが預金等をすることを条件に、第三者Bに融資をすることが導入預金です。これらを媒介(紹介)する紹介者Cが絡むこともあります。導入預金は、「預金等に係る不当契約の取締りに関する法律」によって、預金者、媒介者、金融機関のいずれに対しても禁止されています。融資を受けられるような信用力がない第三者が、預金者に謝礼として裏金利を支払うなどの共謀をしていることが多く、また、金融機関はその預金等に担保設定をしているわけではなく不良債権となることも多くあるからです。導入預金をした者、媒介をした者、導入預金に応じた金融機関の役職員などはすべて違反者となり処罰されます。
とあり、よく読むと、MMS社の言うところの「信用供与(クレジットライン)サポート」そのものではないか!

日本では導入預金はその預金者、受け入れ金融機関、媒介者などが罰せられる違法行為(1957年の「預金等にかかる不当契約の取り締まりに関する法律」、出典はこちら)だ。導入預金がネバダ州で違法であるとの確証は得ていないが、フェアな経済取引を重視するアメリカでも違法であってもおかしくないだろう。ただし、導入預金が預金者と被融資者が別人であるのに対して、MMS社の「信用供与サポート」ではカモ達から集めた金はMMC, LLC自身のファンド口座に入金し、そのファンド口座の預金を元にクレジットラインを開設するとしているところが異なる。しかし、いずれにせよ銀行が適切な担保なしに百万ドル(億円)単位の大金を融資するなどと言うMMS社の「信用供与」は常識的に考えられないことは確か。

拙者はこのスキームのフィージビリティについて非常に懐疑的であるが、MMS社の口車に乗って金を注ぎ込んだカモ達はどのように考えたのだろうか?ま、実際はこんなバカげたスキームは実施されず、「出資金」はポンジースキームの払い戻し分を除いて目出度く詐欺師たちの懐に収まったようだから議論するだけ無駄のようだ。

■適格機関投資家等特例業務
以下はMMSの2012年11月15日付発表。
MMSファンド(適格機関投資家等特例業務)

平成24年11月吉日

お客様 各位
MMSファンド(適格機関投資家等特例業務)

 この度は、MMSファンドの説明をお聞きいただき、心よりお礼申し上げます。
 さて、株式会社Money Management Strengthは、東海財務局に適格機関投資家等特例業務業者として届出を行ない、日本で初めて「信用供与サポート事業」ファンドを組成いたしました。そこで、今回に限り、取引中にお客様負担となります振込手数料、為替交換手数料、分配事務手数料、会計決算費用の直接費用及び間接費用を当社負担とさせていただくことにいたしました。したがって、お客様にご負担いただくものは、販売手数料及び源泉徴収税でございます。但し、途中解約なしで満期償還日まで保有して頂くのが条件となります。
当社が今回に限り、諸費用を負担させて頂く事でお客様負担が減り、目標利回りに大きく近づけていく事が可能になります。
 上記の件に関しまして、日本で初めてのファンドであること、当社といたしまして初めて組成するファンドであること、また、当社と末永いお付き合いをしていただける思いを込めて、決定させていただきます。
 但し、リスクに関しましては、充分にご理解ご納得の上、ご参加していただきますようよろしくお願いします。
例) 5口の場合、250万円(販売手数料を含む)振込手数料込みでお振込みください。
   配当は、243万円米国ドル相当額に対して、円に交換後お振込みいたします。
   満期償還金 243万円米国ドル相当額を円に交換後お振込みいたします。

株式会社Money Management Strength
代表取締役 河合 礼子

結婚式の招待状でもあるまいに「平成24年11月吉日」には笑ってしまう。

  • 「当社が今回に限り、諸費用を負担させて頂く事でお客様負担が減り、目標利回りに大きく近づけていく事が可能になります」
  • 「243万円米国ドル相当額を円に交換後お振込みいたします」
は何を言っているのか拙者には理解できない。諸費用をMMS社が負担しようが出資者が負担しようが「目標利回り」とは無関係の筈。「243万円相当米国ドルを円に交換」とは結局「243万円」のことなのか?また「当社負担とさせていただくことにいたしました」「お客様にご負担いただくものは」「途中解約なしで満期償還日まで保有して頂くのが条件」「諸費用を負担させて頂く事で」と「いただく」「頂く」があっちに行ったりこっちに行ったり。更に、250万円の出資なのに配当対象と満期償還金が「243万円米国ドル相当額」と言うことは、7万円分の「販売手数料」と言う名のフロントロードが徴収されると言うことなのだろうか?よく分からない。金を送ったカモ達はこんなお粗末な発表文をどう理解したのだろう?

ここで「適格機関投資家等特例業務」と言う耳慣れない言葉が出てきたので調べたところ、法令で定める銀行、保険会社、投資会社・組合など「プロ」の「適格機関投資家」が少なくとも1名、そうでない投資家が49名以下の匿名組合に対する投資サービス提供ならば、MRIが取得したような金融商品取引業務の認可を得ることなく、より簡単な手続き・審査で投資業務ができると言うもので、そう言えばMMSの募集要項には「49名まで」が強調されていたことを思い出す。要するに顧客にプロが一人でもいれば、その存在自体が当該投資商品が「投資プロの目利き」を通った健全な商品である可能性が高いことの証明であり、そっちの方の自己責任・情報収集能力に期待できるので、大人数の一般大衆投資家相手の投資業務に対するような厳格な行政の介入が省略できると言ったところだろう。また万が一投資商品に不具合・事故があっても、素人投資家が少人数ならば大きな騒ぎにならずに済むだろうと言うことかも知れない。

MMS社は「少なくとも1名のプロ投資家」として「X投資事業有限責任組合」から出資を受けたとしていたが、金融当局は少なくともMMS社の募集した二つのファンドのうち「ファンドⅡ」についてはこれが虚偽であり「適格機関投資家等特例業務」要件を満たす「適格機関投資家」が実は一人もいなかったと断定している。つまり「適格機関投資家等特例業務」と謳ってプロ投資家が顧客にいると言いながら、その実カモ達は(騙し易い)素人ばかりだったと言うことだろう。




下はぐぐるから得たMMS社が入居している愛知県名古屋市中区丸の内二丁目14番4号「エグゼ丸の内」と思しき建物。名前は凄そうだが、どうと言うことのない雑居ビルディングに見える。

exe-marunouchi.png

実は、この「株式会社MMS」の「クレジットライン投資」は、今はなきMRI事件の掲示板でも一時話題になったことがある。
これも怪しげな金融商品ですが、
http://mmsfund.mmsjapan.co.jp/
 
この商品でも
出資金はWELLS FARGO銀行の口座でブロックされます
とWELLS FARGO銀行が出てきています。
 
他の詐欺だと確定した金融商品でも、
WELLS FARGO銀行の特別信託口座で厳重に管理されています
と謳っていながら、勝手に使い込みをしていました。
 
WELLS FARGO銀行は、詐欺師御用達の銀行のようです。
 
弁護団のおっしゃっていましたが、WELLS FARGO銀行からも損害賠償を行い、資金回収に向けて頑張っていきましょう。

2014年6月15日 11:15 PM


ちなみに上で書いた金融商品の本社は、ネバダ州とあります。そして、日本の支社で販売をしています。
http://mmsfund.mmsjapan.co.jp/company/
円建てとドル建てで資金を集めたり、全くMRIと瓜二つですね。

2014年6月15日 11:24 PM

で、そのMMSとやらに「投資」するつもりなんですか?
お止めなさい。
またカタカナ言葉で煙に巻こうしているみたいですが、「クレジットライン」て、銀行が顧客に「この金額までなら審査手続きなしで金を貸しますよ」という「与信限度額」のこと(無料の場合も有料の場合もあり)で、とても「投資」の対象となるものではないと言うより、それ自体は「投資」とは関係ないものです。
それに、あの「目論見書」は何だ?普通ファンドの目論見書は50~100ページぐらいあって、投資の性質や金の流れの詳細、リスクなどを事細かに記すものだけど、これはたった1ページのほとんど内容のない表だけ。
お止めなさい。

2014年6月16日 12:00 PM

投稿文章内でこれだけ否定・皮肉を述べているので、これを見て投資しようという人はいないんじゃないかと・・・
確かにMRIとよく似てますね。なにか関連性でもあるのかな?
>出資金はWELLS FARGO銀行の口座でブロックされます
どういう仕組みでブロックされるのか気になりますね。
ロックボックスアカウントとか言わないだけマシかも

2014年6月16日 12:38 PM

どんなに説教しても「クレジットラインと言う言葉だけ切り取るのは意味がない」とか「ローンとは違うクレジットラインがある」とか言って引っかかるカモはいるもんだよ

2014年6月16日 4:44 PM


拙者もこれらの書き込みを見てMMSのウェブサイト(残念ながら記録がない)を閲覧したが、僅か1ページのメモのような「目論見書」などお粗末の限りの勧誘情報で、「冗談も程々に」との感想でそれきりにしたが、まさかこんな見え見えの与太話に引っかかるカモが延べ60人以上もいて5億円以上もの金を出すとは想定外だった。目論見書などの記録を残しておかなかったことが悔やまれる。




■「虚偽とは知らなかった」
この金融当局の処分についてMMS社は直ちにウェブ上で弁解している。
本日の東海財務局の発表について
お客様及び関係各位
                                          平成27年1月30日
                                          株式会社Money Management Strength
                                          代表取締役 河合礼子

本日の東海財務局の発表について

 本日、東海財務局から、当社に対する調査の結果として、警告書が発出されました。
関係各位ならびにお客様方に、ご心配とご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。

 なお警告文書にあります。「当社は、ファンド口座は封鎖(ブロック)されておらず、出資金が信用供与サポート事業以外に使われていることなどの可能性が高いことを認識していたにもかかわらず、出資金が引き出されないようにするための適切な措置等を講じることなく漫然と出資者に対する取得勧誘を継続していたものである。」と記載された内容については、当社においては、「出資金が目的外に使われていることなどの可能性が高いことの認識」も無く、当社の見解とも相違しているため、東海財務局に対して異議を申し立てております。当社がお客様へ対して説明した内容も、当社が把握している内容を、虚偽の内容でなく説明したのみでございます。

 常日頃より当社をご愛顧いただいておりますお客様方に、多大なご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

以上
おやおや、これもどこかで聞いたストーリーだ。MRI事件では、鈴木親子が「アメリカで運用実績がほとんどないなどとは知らなかった」と言い訳したが、後で実際にはフジナガからポンジースキームの資金が枯渇しそうだと言うファックスを受け取っていたにも拘らず、カモ達にはその事実とは異なる事を吹き込んで、フジナガの指示に従い古参の「投資家」達への配当と償還のために資金に充てるべく更なる「投資金」を巻き上げるために新規「投資」の勧誘を積極的に行ったことがネバダ州の裁判で明らかになった。金融当局に日本のMMS社幹部が公表以外の「隠しキックバック」を受け取っていたと指摘されているにも拘わらず、そのことには全く言及せず「『出資金が目的外に使われていることなど可能性が高いことの認識』も無く、当社の見解とも相違している」など「事実」ではなく「見解」を持ち出すとは白々しい限りだ。

「出資金」の行方や今後の処置などについても全く記述がなく、多分これがMMS社の最後の公式コメントだろう。




本件について現に「出資金」返還のトラブルが発生し、訴訟などが提起されているのかどうか拙者は承知していない。しかし、本件「出資金」が実際には「信用供与サポート事業」とやらには全く使われておらず、「配当金」は「出資金」の一部の払い戻しに過ぎず、且つ資金が関係者の私的費消や関連会社への支払い、日本のMMS社幹部への「隠しキックバック」など完全に公表事業目的外に使われていると言う東海財務局の発表からして早晩破綻は免れず、いずれ配当金支払い及び出資金償還不能になる或いは既になったことに疑いはない。MRIの場合は、公表された数字とは桁外れに小さく細々とした金額(1,365億円=被害弁護団発表、或いは8億ドル=SECの試算の「被害総額」のうち18億円程度)ではあるが実際に「MARS回収ビジネス」を営んでおり、また「投資家」達への配当も年利6~10%であったが、こちらの「極秘デリバティブ投資」なるものの実態は不明で、しかも「投資家」達への約束配当が年利20%にもなるので、破綻はMRIより高速に進む可能性がある。

仮にMMS社の主張通り「出資金」が本当に「信用供与ビジネス」とやらに使われていて、それを元に調達した融資金でデリバティブ投資が行われていたとしても、日本のMMS社と「投資家」達に合計年利40%もの「手数料」(配当金、利息、呼び方は何でもよい)を払うためには、MMS,LLCはその2倍の年利80%相当或いは少なくとも50%程度の投資収益を出資金全額について継続的に実現できなければならないだろうことぐらい容易に想像できる。そんな投資話はあるか?拙者には考えもつかない。しかも「運用の成績に関係なく」そのような法外な配当を払うことを約束し、更には出資金は銀行の預金口座で「ブロックされる」からと暗に元本保全を保証するような「投資」なるものの実態がどのようなものなのかを、総計5億円3,000万円ものカネを注ぎ込んだカモ達は理解できなかったのだろうか?

■教訓
ここでMRI事件とMMS事件に共通する教訓らしきものを考察する。

MRIの詐欺に引っかかって平均1,500万円以上の金を摩ったカモたちの多くは「エスクローとロックボックスによる資金保全の説明を信じた」と口を揃えて言っていた。MMSに金を騙し取られたカモたちの発言はまだ明らかになっていないが、おそらく「資金は銀行口座でブロックされクレジットラインの供与に使われるから保全される」と言う説明が決め手になったのではないかと拙者は推察する。つまり「投資資金の安全性」が最終的にカモ達の送金を促したのではないかと。

で、何が教訓かと言えば、MRIでもMMSでも、金を騙し取られたカモたちは「資金の安全性」について致命的な誤解をしていたのだ。「致命的な誤解」とは何か?小切手の入金業務の銀行アウトソーシングに過ぎない「ロックボックス・サービス」を、その「ロック」と言う「切り取った」言葉に引かれて何か特別に厳重な管理がされる銀行口座であるかの如きMRIの出まかせ与太説明を信じたMRIのカモ達のアホさ加減は別格としても、「エスクロー」「クレジットライン」「ブロック」などのカタカナ言葉に「お、何だかよく分らないけど凄そうだ」と引っかかることもそうだが、次のことを強調したい。即ち、資金が安全かどうかを決めるのはエスクローだの第三者管理だのブロックだのの仕組みや道具ではなく資金の実際の運用者だと言うこと。つまり、これらの仕組みや道具はそれなりに資金の使途を限定したり厳密な管理を支援するものかも知れないが、そんなことは資金の安全性の本質ではなく、誰が資金を扱っていてそれを誰が監視しているかが問題なのだ。

拙者は若輩の時分に自分の事業を経営していたが、あるとき先輩から他人との契約について、「いくら立派な契約書を作っても信用できない相手とは契約するな」と言う金言を戴いたことがある。水爆にも耐える金庫に資金を保管したところで、その金庫の鍵を詐欺師が持っていればそれまで。現にMRIは「エスクローが資金管理をしている」と言いながらその実フジナガが自由に銀行から資金を引き出して自分のための不動産や高級車を買っていたと言うし、MMSも「資金は銀行口座でブロックされてクレジットライン供与に使われる」は真っ赤な嘘で、タコ足配当以外の金は首謀者らの懐に入ったらしいと言うことだ。資金の安全管理など、他人から資金を預かって(「信用を供与され」でも何でもよい)投資運用する限り資金の不正使用の防止・安全管理など当たり前のことで、わざわざそんなことを強調する輩は却って怪しいのかも知れない。

また、多分何万、何億回も言い古されたことだが、リスクのない投資はない。リターンとは、ある意味リスクを取ったことに対する報酬のようなものであり、ハイリターンを期待させる「投資」は当然ハイリスクで、もしハイリターンを「約束する」なら、それはもはや真正な投資の可能性が殆どないバッタものと思って差し支えない。そこにいくらエスクローだクレジットラインがブロックだと小賢しいカタカナの道具を持ってきたところで超ハイリスクの本質に変わりはない。そんなものでと言うよりそもそもリターンだけ取って元金を減らす・失うリスクなしで済ませられる、そんな都合のよい「投資」が存在すると期待するのが大間違いであり、「リスクがない」などと宣伝或いは仄めかすものは「詐欺だ」と自ら宣伝しているのと同じだと認識すべきなのだ。

もう一度言う。「出資金で投資商品を購入しません(ので元本を減らす・失うことがない)」などと戯けたトリックロジックを幾らほざいたところで、リスクなしでリターンだけ得られるようなスキームは「永久機関を発明した」と同じくらい原理的にあり得ないのだ。

おそらくMMSに送られた「出資金」の大半は消失していて、「投資家」達に戻ってくることはないだろう。

では、またMRI事件と同じように弁護団が結成され自称「ボランティア」の弁護士が(自称)手弁当で活動し、慈悲深くも合衆国証券取引委員会(SEC)がアホな欲深外国人の救済のために不当利得の吐き出しを求める訴訟を我々合衆国納税者の血税で提起するのだろうか?拙者は懐疑的である。MRI事件は総計8,700人、総額1,365億円と言われる巨大詐欺事件であるが、こちらは人数でMRI事件の1/100未満の延べ65人、金額は5億3,000万円と1/200以下に過ぎない。個々の「被害者」にしてみれば損失は損失に変わりはないが、その解決・救済のための社会的費用と効果の割合が違う。MRI被害弁護団は、2015年初め現在総被害者数8,700人中4,700人余りの委任者から推計1億2,000万円程度の着手金相当を集めたが、では「被害金額」が1/200だからこちらは着手金も1/200の総額60万円で弁護団が結成され弁護士たちが活動するかと言うと、そう言うものでもなかろう。またMRI事件の場合、日本の弁護団の積極的な働きかけの結果として「被害者」にアメリカ人が一人もいないにも拘わらずSECが訴訟に踏み切ったと聞いたように記憶するが、そう言うことも起こりにくいだろうと思う。

今後の展開は予断を許さないが、少なくともアメリカで訴訟を起こしたりSECが積極的活動する可能性は低いだろう。特に、金融当局の発表に「ロ.当社は、募集した出資金をファンド口座に送金する」「ヘ.当社は、米MMS社から受領した手数料報酬の50%(すなわちファンド口座残高の20%)を上限に出資者へ配当し、残りを営業報酬として取得する」とあることから、カモ達を騙して金を巻き上げたのは日本のMMS社であり、アメリカでの裁判は管轄違いだと見做されると思われ、精々日本国内で日本のMMS社に対して「出資金」返還請求或いは損害賠償請求訴訟などが有志カモ達から提起されるぐらいに止まるのではないだろうか?

■タダ飯
本件とMRI事件との類似性は上に挙げた以外にもいくつもあるようだ。例えば「出資者」と言う名のカモ達に食わせるタダ飯。
懇親会 東京・名古屋 会場
2014年04月28日
この度、当社匿名組合のお客様とお知り合いの方をお招きして懇親会を開催いたしました。

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東京会場は東京八重洲 アンジェロコート東京、名古屋会場は名古屋丸の内イタリアンレストラン 4ONで開催いたしました。両会場ともお招きしたお客様には、ご満足頂けたと思います。
見れば見るほどMRIのやり口に似ている。まさか首謀者たちはMRI事件を参考にしてスキームを練ったのではないかとさえ思う。ただし上の写真を見る限りカモは(5番目の写真手前のまばらな髪の頭を除いて)比較的若い人間が多いように見え、MRI事件のときに見られたような「退職金を全部突っ込んで老後資金が…」などと言う世代や75歳投資家安仲(やすなか)MRI被害者団代表のような人物はいないように見えるが、これは勧誘に新聞広告などの古典的媒体を使わずネットだけだったからと言うことを意味するのだろうか?また「本社見学ツアー」が行われたと言う情報もない。そりゃそうかも知れない、ラスベガスと違ってカーソンシティは観光地でも何でもなく、行って面白い所ではないから。ま、いずれにせよ騙される方はMRI事件から何も学ばなかったようだ。

■結論
MMS事件に関する興味は尽きないが、その小規模さ故かマイナーなニュースサイトの金融当局発表の丸ごと掲載数件を除いて大手マスメディアの報道など今のところは確認できておらず情報が限られているので、今回はこの辺で止めておく。

拙者はMRI、MMSのどちらとも投資勧誘などを含めて直接関わったことはないが、ネットで得られる情報を基にする限りMRIのスキームの方が幾分巧妙で「もしかしたら本当かも」と言う印象を受けさせないこともないのに対して、MMSの方は運用実績に拘わらず年利40%相当の配当支払いなどおよそ投資常識からは考えられないバカげた数字を並べるなどかなり稚拙な印象を受ける。しかしそのバカげた数字を信じて大金を注ぎ込んだバカが実際に存在したことには驚き、呆れる。このブログで何度か書いたが、常に社会の一定割合はありもしない投資話に大金を注ぎ込んで自ら進んで金を失うことを運命づけられている「騙されたがる人達」らしい。2013年4月にMRI事件が明るみに出た1年後に開催された「懇親会」でタダ飯に憂かれご満悦そうなカモ達のお目出度い写真を見てつくづくそう思う。

2015年2月15日追記
日本時間2015年2月16日になり、MMSのサイトから上に引用したページの殆どが削除された。サイトそのものの消滅も時間の問題かも知れない。
2015-02-10 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRIとフジナガにはいくら残っているのだろう? ~SECの裁判~

2015年1月27日、合衆国ネバダ地方裁判所のマハン判事は合衆国証券取引委員会(SEC)の請求を認めてMRIとフジナガに連帯及び個別に合計約6億ドル近くの支払いを命じたが、最大の関心事は、MRIとフジナガが実際にいくら払えるかと言うこと。

SECは、元々MRIの会社資産とフジナガの個人資産が混合していて分離できないと言うMRI・フジナガの申し立てに基づいて彼らの資産記録や銀行の口座明細書などを精査するために会計事務所を雇ったと記憶する。結果的に会計事務所の報告は、MRIには2008年12月31日の時点で「投資家」達へ債務が5億1,916万7,484.11ドル存在し、そこから2009年1月1日から現在に至るまでの「投資家」達に正味金額7,682万7,872.41ドルの支払いがあったとして、裁判所はSECの請求に基づきこれらの金額の差の4億4,222万9,611.70ドルが不当利得であったと認定し、その吐き出しと決定までの利息の1億212万9,752.38ドルの連帯債務、およびMRIとフジナガにそれぞれ個別の2,000万ドルの民事制裁金を科したものだが、この資産記録などの精査の過程で当然MRIとフジナガの現在の保有資産額も明らかになっている筈だ。

SECの裁判でMRIとフジナガの保有資産額が公表されているかどうか拙者は承知していないが、これらの数字が明らかになれば、「被害回復が前進する可能性が出てきた」などのマスコミ報道が無責任に「被害者」達にぬか喜びをさせる絵に描いた餅かどうかが判明するだろう。
2015-02-02 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRIとフジナガに6億ドルの吐き出し命令 ~SECの裁判~

既報のとおり、2015年1月27日、合衆国ネバダ地方裁判所ジェイムズCマハン判事は、合衆国証券取引委員会(Securities Exchange Committee、SEC)の訴えの請求を全面的に認め、MRIとフジナガに連帯して総額5億8,435万9,364.08ドルの不当利得吐き出しなどを命令する決定を下した。

フジナガとMRIの詐欺的行為とそれによる「投資家」達の損害等については今まで決定文などで議論し尽くされており、決定の金額も昨年にSECが請求した金額そのものだから特に目新しいことはないが、「判決」と言う形でフジナガとMRIの金銭的責任が明確になった。

決定文テキストが手に入ったのでこれを検証する。

先ず結論部分から。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
IV. 結論
したがって、
SECの裁定請求(文書#178)及びこれと同じくするものを認めることをここに命令し、宣告し布告する

被告らは4億4,222万9,611.70ドルの利得の吐き出しと決定までの利息の1億212万9,752.38ドルの連帯債務を負う。被告らはそれぞれ2,000万ドルの民事制裁金の債務を負う。

裁判所書記は判決文を交付するものとする。

日付 2015年1月27日

合衆国判事 ジェイムズC.マハン


決定文を全文逐文訳するのも飽きてきたから、今回は特に興味を引いた部分だけを検証する。

■不当利得金額の算定方法
A. 吐き出し
SECは吐き出し金額を4億4,222万9,611.70ドルと概算する(文書#178-1)。SECはこの数字を被告らの貸借対照表と銀行口座明細書を精査することで得た。述べられている吐き出し金額は、2008年12月31日時点での投資家らに対する負債額5億1,916万7,484.11ドルと、2009年1月1日から現在に至るまでの投資家らに支払われた正味金額7,682万7,872.41ドルの差額を反映する(文書#178-1)。
これらの数字を、MRIが発表していた「日本でのMRIシリーズ商品販売に伴うお預かり資金総額」とそれを基にした拙者の推計と比較すると面白い。

先ず、SECの調査による2008年末の貸借対照表上の「投資家」達に対する負債金額5億2千万ドル弱は、「投資家」達が実際に払い込んだ「実損」金額だけか、それとも貸借対照表には「MARS投資」の累積利息も含まれるのだろうか?当時の円・ドル換算レートからして円での金額は450億円程度。ところが上記「MRIシリーズ商品販売に伴うお預かり資金総額」は2008年度は1,066.4億円であり、倍・半分の開きがあるから、「実損」の方かも知れないがよく分からない。拙者の試算では2008年までの累積「投資金」収入と累積払戻金の差(「実損」に相当)は約700億円で、当時の換算レートからすると、これはむしろSECの主張していたポンジースキーム全体の総金額8億ドルに近い。

更に、2009年以降「投資家」達に支払われた「正味(net)金額」があると言うことは、この7,783万ドル(≒70億円、当時のレートで換算)はその分利息や償還などの払戻金額がカモ達から新規に集めた金額を上回っていたと言うことだが、拙者の推計は2009~2011年の「投資」資金の流出(減少)は約37億円で、こちらも半額である。拙者の推計はかなり大胆な仮定を基にしているこんなものかも知れないが、ちょっと外れが大きい。

しかしながらMRI被害弁護団の公表によれば、被害金額総額は1,365億円でその内弁護団に委任のあった金額は974億6,650万円(1,365億円中71.4%、平成27年1月19日現在)であり、またそもそもこの裁判でSECは、MRIが総額8億ドル(現在のレートで約940億円)をカモ達から集めたと主張していたらしいが、これらの数字との不整合も拙者にはよく分からない。

まぁ、5億ドルだ、450億円だ、と数字を並べたところで、フジナガ・MRI側にそれを払える原資がなければ同じこと。

いずれにせよ、2008年末の残高を基準にしているところが、それ以前のことは不問と言うことに思え興味深い。これは、2008年まではMRIが額面通り誠実に「MARS回収ビジネス」を営んでいたと言うことなのか、それともネバダ州の書面による民事契約の時効の6年間を考慮したものなのか?

■MRI側の反論
当然のことながら、MRI側はありとあらゆる方法でこの算定にいちゃもんをつけている。曰く
  • 計算には会計事務所担当者(公認会計士)の主観が入っている
  • MRIの(過去の)税申告には誤りがあった
  • 計算には2008年以前に受領した資金が不適切に含まれている
  • MRIは2008年9月から2013年4月にかけて合計5億6,113万3,206.50ドルの投資資金を受け取ったが、その内3億6,061万5,705.70ドルは払い戻しているので実際の債務は2億51万7,501.80ドルだけであり、この計算はフジナガの指示によりMRIの従業員の一人が作成した
等々。

裁判所の結論は
  • 会計事務所担当者は、不当利得計算の合理的な一方法は被告らが投資家らから受け取った金額から投資家らに払い戻した金額を差し引いた残りだから、単純に被告ら自身の財務記録と銀行口座明細書から得た数字を足したり引いたりしただけで、担当者の科学的・技術的・専門的な如何なる主観も介在していない
  • MRIは1998年10月から投資家らから資金集めを始めており、2006年の勧誘パンフレットには嘘の記述が見られるから、2008年以前から不法行為があった
  • 被告らは払い戻したとされる3億6,061万5,705.70ドルを証明する具体的証拠を何一つ提出していない
などのSEC側の返答を全て認め、MRI側の主張を全て否定した。

■利息計算、連帯責任、民事制裁金
MRI側は、判決までの利息計算は2008年からではなく、提訴があった2013年からであるべきだと主張し、またそもそも利息計算の基になる吐き出し金額が不当だと主張したが、裁判所は「吐き出し」の目的は被告らが不法行為により何一つ利益を得ないようにするためであり、またその計算の起点は裁判所の裁量に任されているから2008年を起点とすることは適切であるとした。

更に、裁判所がMRIとフジナガが不可分の存在であることを認定していないから連帯債務は不適当であると言うMRI側の主張にも、SECのフジナガはMRIの唯一人の所有者であり支配者であって、例えば宣伝パンフレットに署名をしてそのことを誇示していたなどの主張を採用して、フジナガとMRIが実質的に不可分であり連帯責任を負うとした。

フジナガとMRIに科せられた各自2千万ドルの民事制裁金も、SECの主張通り、被告らの行為は反復的、言語道断、且つ故意的であり、制裁金額は被告らが不当に儲けた金額のたった4.5%に過ぎず、被告らが多年にわたってポンジースキームを継続してきたことと、他の裁判では制裁金額は吐き出し金額と同額であることなどを踏まえ、また被告らが将来同様の行為をしないと言う保証がないことなどを考えると、第三段階の制裁金は適当であるとした。これに関して被告側は「MRIはもはや事業として存在していない」ので支払いは保証できないなどと言っている。

最後に、裁判所は被告らが今後決して証券違反を犯さないように禁止命令を出し、被告側もこれに同意している。

■交替被告らについての言及がない
今回の決定で一番興味を引くのがこれ。交替被告(relief defendant)とは、直接不法行為に加担したわけではないが結果としてそこから得られた不当利得の恩恵に与ったもので、善意(事情を知らなかった)かどうかに拘わらず不当利得返還の責任を問われることがあり、この裁判ではフジナガの離婚した元妻のジューン・ユンジュとCSA(Claims Servicing of America、フジナガが実質的にオーナーの別の医療向け金融会社)が議論されていた

交替被告らについての言及がないと言うことは、既にこれらのものに支払われた金員(ジューン・ユンジュには過去には毎月2万5千ドルの扶養料が払われていて、ラスベガスのダウンタウンに複数の投資用コンドを所有していると言う)はお咎めなしと言うことで、ある種の資産隠しが成功したと言うことなのだろうか?それとも今後の裁判の中で交替被告らの責任についても別個に判決があるのだろうか?



連邦裁判所は、フジナガとMRIに連帯して不当利得の吐き出しとそれに関わる利息、およびそれぞれに制裁金、合計約650億円を払うことを命令した。

しかし、だからと言って
 「1,365億円のうち650億円の支払い命令だから半分は帰ってきそうだ。よかった、よかった
などと喜ぶのは
 「いざと言うときは州政府が保障します」
などと言うタワゴトを信じたのと同じ。

MRIはポンジースキームが行き詰り、古参のカモ達に利息や償還金を払うための資金が枯渇したから破綻したのだ。MRIに残っている金は、破綻時に所有していたMARS(18億円程度とされる)をその後裁判所の許可の下に営業を続けて現金化した分と当座の手持ち資金程度で、合計数十億円のオーダーと想像されるし、フジナガが数億ドル・数百億円相当の換金可能な資産を所有しているとも考え難い。

またSECの裁判には鈴木親子は含まれていないから、彼らの財産はこの裁判の支払い命令の対象にはならないし、フジナガ・MRIが控訴の可能性もある。今のところ確実なのはフジナガとMRIの資産の分離などの計算のための会計事務所への支払いはもうなさそうなことぐらい(フジナガと彼の元妻ジューン・ユンジュには毎月千ドルづつの生活費が凍結財産から支払われており、また請求に応じて被告側弁護士費用もフジナガとMRIの残余財産から支払われているらしい)。

今回の不当利得吐き出しと利息及び制裁金の支払いを命令する決定は「被害者」達にとって喜ばしいことに違いないが、それが火星(MARS)の土地の境界線紛争で有利な判決を得たこととどのぐらい違うのかは、今後レシーバー(管財人)が明らかにしていくだろう。
2015-01-30 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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【速報】 MRIとフジナガに6億ドルの吐き出し命令 ~SECの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のジェイムズ・マハン判事は、2015年1月27日、SEC(合衆国証券取引委員会)が訴えていた裁判で、MRIとフジナガに不法利得吐き出し(Disgorgement)など合計約5億8,435万ドルの支払いを命ずる決定を下した。

以下はMRI被害弁護団のサイトから。
【米国SEC手続】MRI,フジナガに対し違法収益を吐き出すよう命じる判決が出ました。

2015.01.28

SECの違法収益吐き出し等を求める裁判において,米国ネバダ地区連邦地裁は現地時間1月27日付で,MRI,フジナガに対し,以下のとおりの支払を命じる判決を下しました。
① MRI,フジナガにて吐き出すべき違法な収益として約4億4222万ドル
② その判決に至るまでの利息として約1億0212万ドル
③ 民事制裁金としてそれぞれ2000万ドル(MRI,フジナガについて。合計4000万ドル)
以上合計 約5億8435万ドル(1ドル118円換算で約689億円)

同裁判所はすでに昨年10月3日付でMRI,フジナガらの違法行為を認定し,その責任を認める判決を下していましたが,今回の判決は,その責任を前提にして本件の損害額を認定したものです。

MRI,フジナガらが運営していた「MRIインターナショナル」は設立当初から投資家への説明と実態とが乖離した違法な詐欺行為であることが判明しており,今回の判決は当然の結論です。SECがMRIの時間稼ぎ的抵抗をはねつけつつこのような形で手続きを着実に進めていることに深く敬意を表するものです。

今後,SEC手続は,1月7日に選任されているレシーバーの管理下で資産回収,配当手続きに進むと思われ,投資被害者への被害回復の実現段階に来たと言えます。

弁護団は今後もSEC手続に積極的に関与して,資産回収・配当手続きが適正かつ迅速に進むよう働きかけていきます。
また,米国クラスアクション訴訟,日本での裁判を通して他のMRI関係者からの資産回収も進めていきます。
[註]レシーバー≒管財人

Law360の記事
MRIインターナショナルにポンジースキームに関わる5億8,500万ドルの支払い命令

Law360、ニューヨーク(東部時間2015年1月28日12時44分) 合衆国判事は、証券取引委員会の要求を認め、8億ドルの医療売掛に関わるポンジースキームの申し立てに関して、MRIインターナショナルとその所有者に対する5億8,500万ドルの判決を下した。

ジェイムズ・マハン合衆国地方判事は、スキームの重大性に鑑み、2千万ドルの第3段階懲罰金を含む委員会の請求を認めた。

「被告らは詐欺的なポンジースキームを数年に渡って続け、投資家らに重大な損失をもたらした」とマハン判事は述べた。
この命令は、2014年11月24日のSECの申し立ての満額を認めるもの。

日本のマスメディアのサイトで確認できたのは以下の記事。

47NEWS > 共同ニュース > 日本人投資被害で支払い命令 米運用会社に690億円
MRIに523億の返還命じる判決…米連邦地裁 2015年01月28日 19時37分 讀賣新聞
米連邦地裁:日本人詐欺被害MRIに690億円支払い命令 毎日新聞
MRIに690億円支払い命令 米裁判所、資産消失で 日本経済新聞
米連邦地裁、MRIに690億円支払い命じる TBS News
MRIに640億円返還命令=顧客資産消失で-米連邦地裁 時事通信
MRIに690億円支払い命令 米連邦地裁 日テレNEWS24
MRI owner to pay $584 million for bilking Japanese investors The Japan Times
詐欺行為認定、MRIに約520億円返還命令 米連邦地裁 テレビ朝日
米連邦地裁、MRIに690億円支払い命じる 毎日放送

詳細は後日に。
2015-01-29 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRI「日本支社」(元)社員一覧

掲示板などで明らかになっているMRIインターナショナル「日本支社」の(元)社員情報記録。

なお、「日本支社」は日本では法人登記はされていない模様。

ナワーズ・アメッド・クレシ COO(最高執行責任者)
鈴木 順造 エグゼクティブ・バイスプレジデント(副社長) 日本地区統括責任者
中町(鈴木) 啓子 鈴木順造の妻(中町は旧姓)。顧客サービスセンター代表
鈴木 ポール 武蔵 鈴木順造と中町啓子の息子。カスタマーリレーションズマネージャー

青木 朋恵
上田 千代丸
牛山
榎本 貴之 顧客サービスセンター
大出 晋也
金代 ナオト
上村 京子
黒米 幸彦 顧客サービスセンター 投資の相談、ツアー同行、セミナー受付
斉木 広報部
斉藤 ゆう子
柴田 香里 (山崎事務所)
瀬尾 大祐 顧客サービスセンター
福住 陽介 
高橋 美夏 
遠山 樹● 顧客サービスセンター          
仁科 結子
西村嘉津絵
橋本 麻利子
福住 陽介
松田 浩幸 東京顧客サービスセンター
松村 麻由美
柳澤 真一 VIMOチーフエディター
山崎 理史 (山崎事務所)
山田 友紀子 ツアー同行、セミナー受付
山野 顧客サービスセンター、広報室 ブログ担当
吉岡 真奈美 顧客サービスセンター



MRIは2009~2010年頃複数の求人サイトで積極的な従業員集めも行っていたようだ。
MRIインターナショナル インク
【カスタマーサポートのマネージャー】アメリカの医療保険制度から誕生した「MARS」。新しいスタイルの投資商品を取り扱っています。 ※即戦力として、ご活躍いただける方を求めています。

デューダ 2010/07/25

MRIインターナショナル インコーポレイテッド
カスタマーサービス
日本の顧客の各手続のサポート 電話での問い合わせ対応 米国との伝票のやりとり エクセル・ワード入力

事務職
顧客データーの手続きの事務処理 庶務 エクセル・ワード入力

ジョブセンス 2009.01.19

カスタマーサポート(マネージャー)正社員
学歴不問転勤なし
募集要項
日本での事業拡大には、強い組織づくりが欠かせない。
私たちの事業は、アメリカで生まれた『MARS回収ビジネス』と呼ばれるもの。
公的な医療保険制度のある日本と異なり、アメリカでは医療機関が診療費をそれぞれの保険会社に個別で請求を行なっています。その請求先は3000を超え、複雑な回収方法もあいまって、回収率はわずか30%台と言われているほど。そこで、保険会社への医療費の請求権(MARS)を医療機関から債権として買い取り、医療機関に代わって回収する『MARS回収ビジネス』が高い注目を集めています。

私たちは、このMARSを運用対象とする新しいスタイルの投資商品を日本で販売開始し、既に10年以上の歴史があります。当社独自の回収ノウハウにより、投資家の方々に6.0~10.32%という高い固定利率を提供しつづけてきました。全国で約7800名のお客様に投資をいただいています。

さらなるお客様の増加が見込まれる今、組織体制の強化が急務となっています。発展を遂げゆく成長ビジネスを担う一員として、あなたのマネジメント経験を新しいフィールドで活かしてみませんか。
日本のオフィスには、22名の社員が在籍しています。

エン転職 2010/09/24 - 2010/10/28



2015年4月3日追記
以下はネットで入手したラスベガス本社勤務(だった)と思われる人物の情報。
リチャード・ヒロユキ・シンタク:MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社 の元CIO(最高情報責任者)。海外担当副社長として在任時は日本支店とのつなぎ役になっていたが既に死亡。
ウォルター・ナガサコ:MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社の監査役
シュー・リン・ラン:(SHIU LING LAM) MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社の海外投資担当。カナダ生まれの中国系アメリカ人
ユキ・グリーソン:(YUKI GLEASON) MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社の海外投資担当アシスタント。
クマサワ・マユミ:(Kumasawa Mayumi)[[MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社の日本人顧客ツアー担当。
コバヤシ・リョウタ:(Kobayashi Ryota): MRI INTERNATIONAL,INC.米国本社の日本人顧客ツアー担当。

本件に関して情報を求めます。MRI「日本支社」の元社員について、氏名、肩書、担当業務などについてご存じの情報や写真(VIMO表紙・本文などを含む)をご提供ください。ブログのコメント機能をご利用ください。情報取得元の秘密は厳守します。
2015-01-28 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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日本にもある「MARS買取り屋」 ~株式会社オプティファクター~

マスメディアによるMRIの「MARS=診療報酬債権(売掛)」投資詐欺事件の初期の報道などでは、診療報酬債権の買取りと言うビジネス自体が日本では馴染みのないものだ(アメリカでも「MARS」と言う言葉自体ほとんど普及していないと言うよりMRIの造語のようにさえ思え、少なくとも一部の日本の「知ったかぶりアメリカ通」の言うような一般大衆投資家が相手にする程ポピュラーな金融商品としては存在しない)とし、拙者も「官(国民健康保険)」と「半官半民(健康保険組合)」の運営する日本の国民皆健康保険制度と点数制度の下では日本にはMRIのような診療報酬売掛買取りビジネスは存在しないものと思っていたが、その後の調査で日本にも診療報酬債権買取りを営む金融会社が存在することが判明した。

optifactor-logo.png

株式会社オプティファクター」と言う会社は「レセプトファクタリング」と称して医療機関から診療報酬請求債権を買い取る。この会社の説明によれば、買取り時に額面(請求診療報酬額)の20%を「保証金」として差し引いた80%を支払い、「国保・社保」(「国民健康保険団体連合会」と「社会保険診療報酬支払基金」のことらしい)からファクタリング会社に診療報酬支払い後に、請求額の過誤分などの精算をして「保証金」分の残り20%が医療機関に支払われると言う。

ファクタリング会社は診療報酬請求債権を買い取る際に債権を譲渡する医療機関から「買取り手数料」を徴収することがさりげなく書かれており、この「買取り手数料」がファクタリング会社の主たる収益と思われるが、その手数料の金額或いは割合はどこにも明示されていない。また初回申込時と概ね6ヶ月ごとに(信用)調査(「監査」と言う言葉を使っている記述もあるがこれはおかしい)をする費用も別途徴収となっているが、この費用の具体的金額の記述もない。

このファクタリングサービスの説明の冒頭では以下のように「診療報酬債権の流動化」と「証券化」を強調している。
診療報酬債権の流動化とは

レセプトファクタリングを可能にするもの-----
          それは「診療報酬債権の流動化」という金融システムです。

現在、金融取引においては「証券化(Securitization)」形態での取引が一般的となっている、といっても過言ではありません。「証券化」とは 様々な債権や不動産等を「証券」に換えてそれを市場で取り引きすることにより、「資金を必要とする側」と「資金を投資したい側」をダイナ ミックにつないでいく仕組みのことです。この仕組みは、例えば大規模土地開発など、場合によっては大きな資金を必要とするプロジェクト等に活用されてきました。それを医療機関の持つ資産に転用したものが「診療報酬債権の流動化」です。

診療報酬債権の流動化とは

「診療報酬債権の流動化」とは、医療機関の診療行為に対して、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会などから将来支払いを受ける診療報酬を、「証券」に組替えて投資家に譲渡し、その資金を「診療報酬の先渡し」とし て医療機関に提供するシステムのことです。投資家としては、良質資産への投資手段であり、医療機関としては、医療報 酬を早期に現金化できることで資金の調達が可能となり、また、キャッシュフローの増加によって資金繰りが改善されるという大きなメリットがあります。

「借入れ」と「診療報酬債権の流動化」との違い

「借入れ」は金融機関等が資金を貸付けることですので、借りた側には返済負担が生じるとともに、財務諸表には「負債」 が計上されます。一方「診療報酬債権の流動化」の場合は、あくまでも「診療報酬の先渡し」となるので、当然のことなが ら返済負担は生じません。つまり、医療機関はバランスシートを傷めることなく資金調達ができることになります。

「借入れ」と「診療報酬債権の流動化」との違い

「診療報酬債権の流動化」の仕組み自体は、従来から存在していました。しかし、様々な金融機関等が関わる大掛かりな 体制が必要となることから、その対象は大手医療機関との相対の取引に限定されていました。それを中小の医療機関でも利用できる汎用的なシステムとして商品化したものが、オプティファクターの「レセプトファクタリング」です。「レセプトファクタリング」では複数の医療機関の診療報酬債権をSPC(特別目的会社)に集約・束ね直し、これを証券化することにより幅広い投資家に販売しています。だからこそ、比較的規模の小さな医療機関でも安定してご利用いただくことができるのです。
「社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会」を「民間保険会社」に置き換えると、MRIの(営業していたと称する)医療機関向けファクタリングサービスと酷似している(ただし診療報酬が点数制で請求内容に虚偽や過誤がなければ報酬金額がほぼ確定的な日本の診療報酬と、保険会社・診療内容により不確定部分の大きい大幅な値引きが常態化しているアメリカの医療保険支払いの違いなどは存在する)。MRIと無関係であることをわざわざ強調しているあたりが微笑ましい。

特定の債権(貸付、売掛など)を証券化して市場で売買することによる資金調達は珍しくない。2008年に発生したリーマンショックは、不動産ローン債権を小口化して他の債権と組み合わせていた証券を世界中に流通させていたが、不動産市場の低迷とともに一挙に不良債権化した不動産ローン債券に引きずられる形で世界中の金融が混乱した。これに比べると診療報酬債権は金融市場の動向に左右されることが少なく安全な投資対象だから…、とはどこかで聞いた話。

しかしながら、この会社が買い取った診療報酬請求債権が実際に証券化されているのか、もし証券化の事実があるならその証券はどの証券市場で取引きされ、どのようにして「投資家」に販売されるのかなどの「投資」サイドの情報はこのサイトからはよく分からず、またこの会社がファクタリング資金集めのための投資募集をしていると言う記述もない。むしろ
当社は、個別の有価証券・金融商品について、取得又は売買の推奨、媒介及び勧誘等を一切行っておりません。
と言う断り書きまで掲載している。またこの会社の「流動化のモデルケース」と称するチンケな説明チャートには精々1~2ヶ月分の売掛回収の前倒ししか示されていないし、「国保・社保」の支払いが請求からそう何ヶ月も遅れると言うのも考えづらいから、売買単位が小さく、まとまったリターン金額を稼ぐには少なくとも数ヶ月、通常は1年から数年の単位で購入金融商品を保持すると考えられる一般大衆投資家にはは不向きで、拙者の目にはこの会社の買取り外部資金源はMRIのカモになった個人「投資家」達ではなく銀行や私的アセットマネージメント会社のような「機関投資家」であり、「証券化」とは言ってもその証券は誰でも売買できる公的市場に上場されているのではなく、少数の限られた投資家による「クローズドインベストメント」の印象が強いが、真相はよく分からない。

オプティファクターのQ&Aには以下のような説明もある。
売却した診療報酬債権はどこが買取りをするのですか?

流動化された診療報酬債権は信託銀行が管理する買取り会社(SPC ― 特別目的会社)が買取りをします。この際、保険請求という債権を買取りするのであって、レセプトの請求行為は医療機関の皆様との信頼関係に基づいてお願いすることになります。従って、レセプトそのものが他に流出することは全くなく安心です。
この説明からすると、「証券化」だの「流動化」だの言っても、診療報酬債権はこの「買取り会社(SPC=Special Purpose Corporation、特別目的会社)」だけがその証券を買い取り、一般にはその証券は出回らず、その買取り資金は証券とは別個の外部からの投資或いは融資で賄うような印象を抱くがよく分からない。

…と考えていたら、この会社とMRIとの比較ページに、オプティファクター社の資金調達はレセプト証券とは直接関係のない自社の社債であることが明記されていた。

つまり「証券化」だ「流動化」だと騒いだところで、その「証券」を引き受けるのは特定の「SPC(特別目的会社)」だけで、その証券は少なくともオープン市場で流通することはなさそうだ(ただし、例えば個人の住宅ローンも銀行間で売買されることがあるから、こう言うSPC間で「証券化」されたレセプト債が売買されている可能性はある)。

なお、MRIが販売していた「投資商品」もまた、理屈の上でもまた実質的にも診療報酬請求債権を「証券化」したものではなく、MRIは上記の「SPC(特別目的会社)」に相当し、カモが貢いだ金はこのSPCの外部資金源、実質的な社債であったと考えられる。

拙者はこう言う分野は詳しくないが、「金融大学」と言うサイトの説明によれば、「証券化」とは金融資産を有価証券を利用して小口化や流動性(譲渡の容易さ)を高めるもので、特に企業が保有する債権を資産担保証券(Asset Backed Security)に形をかえて市場で流通させることを「債権の流動化」と言うらしい。つまり、本来紙切れに過ぎない証券をその背後にある価値のある資産の信用を基に価値を持たせていると拙者は解釈する。

そうすると、証券の価値はそれを担保する資産の価値に依存し、またどんなに複雑な経路を辿ろうと、究極的には証券からその担保資産に必ずたどり着けるはずだ。例えば住宅ローンを証券化した商品なら、それがたとえ数十のローンを組み合わせたものであっても情報を持ってさえいればその証券の元となっているのはどれとどのローンかが分かり、診療報酬債権を証券化したものなら(投資家は直接知ることはできなくても証券の販売者から見れば)どの病院のどの診療報酬債権かが分かると思うのだが、MRIの「MARS投資」にはそう言うことが一切なかったように思えるどころか、MRIがカモからいくら金を集めたかと言う数字以外の、売掛の購入件数だとか購入額だとか、資金の回転率だとか、収益率だとか「投資商品」としての基本的な情報が一切明らかにされていない「闇鍋投資」だった。もっとも、遅くとも2011年以降は「MARS」の購入はほとんど行わずに新規の「投資」金で古参の償還や利払いを賄うと言う所謂「ポンジースキーム」または蛸足配当をやっていたそうだから、運用情報など出したくてもなかったのだろう。なおSECの裁判などで、被害総額1,365億円と言われる中、実質総被害額は約900億円、その中のたった18億円(1.2~2%)程度が実際の「MARS」購入に使われていたことが明らかになっている。

その存在が非常に疑われる「MARS市場」なるものを宣伝して、あたかもその「MARS市場」で投資しているのだと錯覚させてカモから金を巻き上げたMRIと言い、どうもこの業界は哀れな大衆を騙すことに長けているようだ。

オプティファクターの関連会社として「株式会社エム・アイ・ファシリティズ」(代表者は同一人物、所在は近隣なれど別住所)と言うものがあり、医療機関の「商売」に纏わる様々な支援サービスを提供している。要するに医療機関を相手にした総合ブローカーグループらしい。

日本にも「MARS買取りビジネス」が存在することが分かったが、このようなファクタリングサービスを使って改善される資金繰りは如何程のものなのか、それが金額不明の「買取り手数料」に見合うものなのか、またそのような費用を払ってまで当座の現金が必要で、銀行融資などもっと安上がりな資金調達のできない医療機関とはどのようなものなのか、その様な医療機関の経営状態とそこで施される医療行為の質とに関連はあるのか、などと言う疑問は残る。

…と考えながらオプティファクターのサイトを探したら次のような記述が見つかった。
診療済みの診療報酬の早期現金化(資金の前倒し効果)

レセプトファクタリングは、「診療報酬債権の流動化」という仕組みを活用して毎月のレセプト請求日から5日後までに先にお支払いするサービスです。通常60日程度を要する診療報酬受取りまでの期間を大幅に短縮することによって資金繰りが改善され余裕が生まれます。これが資金の前倒し効果です。
はぁ、最長55日間の資金の前倒しですか…。クレジットカードの使用から支払いまでのグレースピリオドと同じ。短くはないが特段長くもない。しかし、医師や職員の給与を遅配するわけにはいかず、医薬品卸問屋もこれ以上支払いが滞れば納入を止めると言われている病院では選択の余地がないのだろう。

更に上記の「診療済みの診療報酬の早期現金化(資金の前倒し効果)」の直前にはこんなことも書かれている。
借り入れによらない資金調達

レセプトファクタリングは、当月または翌月以降に発生する診療報酬予定額を現金で医療機関に先渡しすることによって効果的な資金調達を可能にするサービスです。実際の診療報酬との差額は診療月以降に調整されます。「診療報酬債権の流動化」による資金調達は、会計処理上「借入金」とはなりません。従って返済金の手当ては必要ありません。だからキャッシュフローは悪化することなく、借入れと比べると資金の投資効率は格段に良くなります。加えて、バランスシートを傷めることなく資金の調達ができるので財務の健全化につながります。
要するに債権を割引譲渡してしまうので帳簿上「借金」にならず体裁がよく、更に銀行融資などで資金調達をしたいときに審査のネガティブ要因とならないと言うわけだ。

まぁ、アメリカには「ペイデイ(給料日)ローン」と言う街の消費者向け高利貸しが存在し次の給料日(アメリカでは2週間に一度或いは月2回の給与支払いが普通)の日付の小切手を切るとその金額から割り引いた現金を実質年利換算200%超えの高利で貸し付けるているし、いろいろ叩かれているにも拘わらず日本のサラ金も健在だから、世の中には常にこう言う財政の中で存続している個人や団体もあるのだろう。しかし、生死に関わる・関わらざるを問わず、こう言うファクタリングサービスを使っている病院にかかりたいとは思わないのが正直な感想。

2015年1月9日追記
オプティファクターのサイトを彷徨っていたら、「ワンポイントセミナー 資金の流動化を試みる!!」と言う記事の中に「買取り手数料」金額の具体例に触れている部分を見つけた(赤字青字は原文ママ)。
医療法人社団 ●●●●病院
常務理事 〇〇〇〇 殿

拝啓、貴会におかれましては、ますますのご隆盛のこととお慶び申し上げます。また、このたびは大変お忙しい中をご面談の時間を割いていただき本当に有難うございました。ご面談時にお話させていただきました「診療報酬債権の流動化システム」でございますが、私の浅学ゆえこのシステムを良く説明できたかどうかはなはだ不安でございましたが貴重な時間にもかかわらずお聞きいただき有難うございました。

特に失礼ながら最後に走り書きをした点について、若干の補足説明をさせていただきますと次のようなことでございます。

例えば、具体的に年末の資金調達(賞与資金?)として銀行から3000万円を借入するとします。条件は、金利2%、返済期間6か月(500万円宛6回払い)とします。

この場合の実際の月毎に出て行く現金は
500万円+(3000万円×2%÷12)=505万円 となります。
(金利分は元金の返済に比例して少なくなりますが大きくは変わりません)

一方、お話した流動化で対応した場合は以下のようになります。
条件は月の診療報酬請求額を5000万円として、買取手数料を3.5%とします。

この条件で3ヶ月分を流動化しますと、5000万円×3ヶ月×80%=12000万円が資金調達額となります。この流動化の月毎の買取手数料は5000万円×3.5%=175万となります。 流動化の導入によって月毎に出て行く現金は175万だけです。

従って、流動化の導入による資金の調達をした場合、銀行融資に比べ、以降2年分の賞与資金がストックでき、現実には更に月毎の現金収支が505万円-175万円=330万円が増加します。銀行融資は確かに金利は低いですが現実は返済金が必ず伴うので現金の収支を考えるとはるかに流動化のほうがいいと思います。更に銀行融資の返済が終わっても、それで以降の融資を受けなくていい程度の現金のストックもあればいいですがそうはいきません。月毎に500万円以上の現金流出がありますのでストックなどできるわけもなく、常に融資を受けなくてはなりません。従って、銀行融資を受けている以上、月毎の現金流出がなくなることはなく、抜本的な収支の改善には決してつながりません。

ご面談時に、「流動化と銀行融資ではキャッシュフローに大きな差があり、旧態依然の銀行融資では決して財務改善にはならない。」と申し上げたのは以上のような意味合いで申し上げました。つまり、銀行融資や診療報酬担保ローンという方法では借入金ですから、返済することが条件です。このやり方では現金収支が決して好転することはありません。表面的な金利だけを考えることなくもっと現実的な月毎の現金収支に重きをおいて考えると流動化のメリットがご理解していただけるのではと思います。

以上、ご先輩に対して失礼ながら言わずものながのことを長々と申し上げてしましいました。これもひとえに私どもの提案している「診療報酬の流動化」についてご理解をいただきたいからでございます。これまでに流動化導入を成された病院様のご担当も最初は常務理事様のようにローン(借入)に重きをおいて運営されておりましたが、流動化の正しいご理解を戴くことによって、流動化導入によるキャッシュフロー重視の財務体質に変えられ経営の改善に繋げておられます。

〇〇常務におかれましても、是非、現実の月毎の現金収支を再考なされまして「診療報酬の流動化」を資金調達の手段あるいは財務改善の手法としてお考えいただきますよう重ねて御願い申し上げます。また、ご質問や資料の提出等がございますればご遠慮なくお申し付けください。

敬具

株式会社 オプティファクター
http://www.opti-f.co.jp/


唖然とするばかりの子供だましのトリックロジック

ローンやファクタリングなどの金融が悪いなどと言うつもりはない。資本主義社会では須らく費用を払って将来の利便を現在手に入れるものであり、だから我々は元利合計総支払金額が融資額の2倍以上になる[註]ことを承知で30年の住宅ローンで家を買うのであり、小売店は3%前後のクレジットカード扱い費用を差し引いても目の前の顧客に商品を販売して数日以内に売り上げを現金で回収できた方が得策だと判断するのだ。

[註]2010年頃のアメリカの30年固定金利住宅ローンの代表的な金利である年利5.3%超の場合。

だが、ここで仮定されている(多分実際の貸出し金利とそれ程違わないと思われる)銀行融資金利年2%と、「買取り手数料」3.5%で額面の80%の取り立ての55日前倒しの実効金利が3.5%×(1/0.8)×(365/55)=年利29%相当(しかもローン金利が毎月後払いなのに対してこちらは先払い!)と言う、クレジットカードのキャッシング金利(年利12~18%)も遥かに超えるべらぼうな費用を比較する馬鹿馬鹿しさを、上記のモデルケースの数字に沿えば、銀行融資なら既に手元に融資金の3,000万円があることだとか、譲渡していない債権は(オプティファクターの主張によれば、またここで例にしている売掛モデルによれば)平均約60日後に満額が回収・現金化されるとだとか、初回の「買い取り手数料」は3ヶ月分だから175万円ではなく525万円だとか、一度ファクタリングによるキャッシュフローに依存してしまってから通常の売掛回収スケジュールに戻すと3ヶ月に渡って売り上げの80%の計1億2000万円が入ってこないので結局毎月175万円づつ払ってファクタリングを継続せざるを得ない状況になりそうだとか言う事実を棚に上げて(と言うより「意図的に言及してないように見え」と言うべきか)、「月毎の現金収支が505万円-175万円=330万円が増加します」「表面的な金利だけを考えることなくもっと現実的な月毎の現金収支に重きをおいて考える」などの詭弁を使うこの会社の姿勢には好印象を持てない。

「レセプトファクタリングに見る「騙される人達」」などと言うブログは書きたくないものだ。

しかし、上記の「ワンポイント何じゃらかんじゃら」をよく読みなおしてみると不思議と言うより意味のよく分からないことがあるのに気が付く。
条件は月の診療報酬請求額を5000万円として、買取手数料を3.5%とします。

この条件で3ヶ月分を流動化しますと、5000万円×3ヶ月×80%=12000万円が資金調達額となります。この流動化の月毎の買取手数料は5000万円×3.5%=175万となります。
3ヶ月分を流動化」とは一体どう言うことなのだろう?

まだ発生していない未来の診療報酬債権をファクタリング会社が「買い取る」ことはできないから、
  • 当月分の債権5,000万円を175万円払って譲渡して4,000万円、差し引き3,825万円受け取り、1ヶ月後にまた翌月分の3,825万円、更に2ヵ月後に翌々月分と言うことなのか?
  • それとも、(現在が月末として)先々月分、先月分、当月分の診療報酬のことで、この病院は(3ヵ月前から)この3ヵ月分の債権を溜めていて全く現金化していなかったと言うことなのだろうか?
もし前者だとすると1億2,000万円(-175万円×3=1億1,475万円が実額)全額の調達完了は2ヵ月後になり、それまでの2ヵ月間も普段通りの支出が続くから、結局ファクタリングをしなかった場合に比べた資金の前倒しは当月末の3,825万円だけだと思うのだが、「12000万円」と言う「資金調達額」なる金はいったいどこから出てくるのだろう?

もし後者だとすると、(オプティファクターの主張によれば)診療報酬債権は平均2ヶ月で回収できるはずだ。過去3ヵ月分の債権の平均在庫期間は1.5ヶ月だから、ファクタリングに譲渡してもどうせ5営業日(=1暦週)経たないと現金化できないので、院長など幹部職員の賞与だけでも支給を1週間遅らせて目出度く診療報酬債権の満額を回収すると言う選択はないのだろうか?それに、そもそも丸々3ヶ月も保険診療報酬を取り立てていないなどと言うことがあるのだろうか?

いずれにせよ、1億2,000万円(実際には「買取り手数料」525万円を差し引いた1億1,475万円)を一月当たり保険診療報酬5,000万円でこのファクタリングサービスから調達するためには3ヵ月分1億5,000万円の保険診療報酬債権の「在庫」が必要なのだが、当月分はよいとして、残りの2ヶ月分が出どころがよく分からない。まぁ、ありそうなシナリオは、この病院は(多分レセプト処理が杜撰或いは非効率的で)保険診療報酬の回収には常に3ヶ月以上かかっており、当月のキャッシュフローは4ヶ月前の保険診療報酬の支払いで充当されている、カッコよく言えば長さ4ヶ月のパイプライン経理、或いは常に4日前に炊いた冷や飯を食って生活している家庭と同じなのかも知れない。

このファクタリングサービスについては書きたくなることが壊れた下水管のようにあとからあとから出てくるが、きりがないのでこの辺で止めておく。

2015年1月14日追記
「きりがないのでこの辺で止めておく」とは言ったものの、上記の「3ヵ月分の流動化」が気になってオプティファクターのサイトを探してみたら、あった。「流動化のモデルケース」と称するページをよく見ると
診療済(請求済)の診療報酬のファクタリングが原則ですが、場合によっては診療前(請求前)の診療報酬についてもその金額を予測して事前に資金化することも可能です。
とある。

何のことはない、結局マチ金と同じ普通の高利の利息先払い融資のようだ。会計上はこのような「診療前の診療報酬」など実際には存在しないから「債権」ではなく、従って存在しないものを譲渡(ファクタリングの対象に)はできないから、「診療前の診療報酬」をコラテラルにして得られた金(借入金)はどんな詭弁を使おうと貸借対照表の左(資産の部の現金預金)と右(負債の部の借入金)の両方に記載しなければならないだろう(実際の診療報酬権の譲渡(ファクタリング)なら資産の部の中での売上債権(売掛)から現金預金への科目の付け替えだけ)。当然のことながら、借入金額が増えるから、財務体質が脆弱化するだけでなく、オプティファクターがファクタリングの利点として強調している貸借対照表の見栄えの良さは損なわれ、こう言うものを抱えたまま銀行融資を申し込めば審査ではネガティブに扱われることは間違いない。それとも、オプティファクターやエム・アイ・ファシリティズではこう言う融資を「ファクタリング」に付け替えるコンサルティングでもするのだろうか?
2015-01-06 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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鈴木一家に対する訴訟、実体審理へ ~国内第二次訴訟~

2014年12月24日に行われた鈴木順造、鈴木ポール武蔵、中町(鈴木)啓子らに対する民事訴訟の第三回口頭弁論で、東京地方裁判所は暫定的ながらも現段階では東京地方裁判所に裁判管轄権があり、またネバダ州での裁判との二重提訴にも当たらず、実体審理を開始する判断を下した。

以下はMRI被害弁護団の発表から。
【国内・対日本支社代表者ら訴訟】第3回期日報告と次回期日のお知らせ

2014.12.26

12月24日に鈴木順造らに対する損害賠償請求訴訟の第3回口頭弁論期日がありました。今回も依頼者の方々が80名弱傍聴してくださり,傍聴席はほぼ満席になりました。
 この裁判が東京地裁でできるのかどうか(管轄があるのか,ネバダの裁判との関係で二重に裁判になっているのか)について,当日までに弁護団と鈴木ら双方から法的主張の書面を提出しました。裁判所がその書面を事前に検討した上での開廷でした。
 開廷後,裁判長は,現段階での検討結果と断りつつ「民訴法142条の適用及び類推適用はできない。また,民訴法3条の9の『特別の事情』も認められない」との判断を示しました。民訴法142条というのは二重に裁判を起こすことはできないという規定,民訴法3条の9というのは「特別の事情」がある場合は日本で裁判を起こせないという規定ですので,裁判長が言ったのは「二重に裁判を起こしているとは言えない。管轄も日本にある。よってこの裁判を続けます」という意味です。
 その上で次回までに被告側に本案(MRI,フジナガ,鈴木らが詐欺を行っていたとの原告主張事実)について答弁するよう要求しました。
 ということで,次回からはいよいよ実体に関して本格審理が開始されることになりました。鈴木らの訴訟遅延作戦を裁判所が封じてくれたことになります。大きな前進となりました!

 その後,場所を日比谷図書文化館に移して弁護団による説明会と被害者団の意見交換会を開催いたしました。
 次回期日と弁護団説明会・被害者団意見交換会は,以下のとおり開かれます。ぜひ期日を傍聴してください。法廷を満席にしましょう。

■次回第4回期日
 日時:平成27年2月23日(月)午前11時~
 場所:東京地方裁判所第103号法廷(裁判所で一番大きな法廷です)
■弁護団説明会・被害者団意見交換会
 日時:上記期日の終了後
 場所:未定(当日裁判所でお伝えします)

参考
民事訴訟法第142条
裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。

民事訴訟法第3条の9
裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。
2014-12-27 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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産経ニュースの「おさらい記事」

このところ家中のITがらみの仕事で徹夜が続く(現在も続行中)などMRI関係の報道を検索する時間が取れなかった。

沙羅双樹のサイトから見つけた産経ニュースの記事下線[拙者註]は拙者。
2014.12.7 17:00更新

「日本での犯罪なのに日本で捜査できない」MRI資産消失被害者が直面する“理不尽”…「裁判はできる」の新判断も長期化は不可避

MRIインターナショナルによる巨額資産消失疑惑で、今年4月に被害者弁護団が東京都内で開いた説明会では、疑惑の風化を懸念する声が相次いだ

 資産運用会社「MRIインターナショナル」(本社・米ネバダ州)による顧客資産約1365億円の消失疑惑をめぐり、顧客が出資金返還を求めた訴訟で東京高裁が11月、「日本で裁判はできない」とした地裁判決を取り消し、東京地裁に審理を差し戻した。国境の壁により、刑事事件立件への動きが鈍い中での民事責任追及の扉を開ける判断で、出資金返還に向けて光明が差し始めた。しかし、これまでの裁判では違法性の有無など実質審理が行われておらず、結論には時間がかかるとみられ、被害者は不安を抱く。

■刑事責任追及を阻む日米の「国境の壁」 

 MRIをめぐる疑惑は昨年3月、証券取引等監視委員会の検査で発覚した。約8700人から約1365億円を集めていたとみられる巨額の疑惑は、当初から国境の壁に阻まれてきた。

 監視委の調べでは、少なくとも平成23年以降、顧客に投資対象だと説明していた診療報酬請求権(MARS)の売買を行わず、出資金を直接配当に回していたことが判明している。同社が米国にあるため、監視委は米証券取引委員会(SEC)とともに調査してきたが、SECの了解や資料のやりとりなどで手間取り、調査は難航してきた。監視委は昨年4月、金融商品取引法違反(誇大広告)容疑で関係先を強制調査したが、その監視委内部でさえも「米国内での捜査が望ましい」との声が上がっており、国内での責任追及には及び腰なのが現実だ。

 監視委の姿勢は、国内捜査に大きな影響を与えている。疑惑発覚から間もない昨年5月末、被害弁護団は詐欺罪などでMRI側の告訴・告発状を東京地検と警視庁に提出。しかし、1年半以上経った現在でも、国内捜査当局による受理はなく[拙者註1]、捜査関係者も「多くの資料を米当局が押さえている以上、日本での捜査は難しい」としている。

 被害者が日本にいながら、事実上、日本での刑事責任追及は暗礁に乗り上げている。現在は米司法省などの米当局が実態解明を進めているが、ある被害者は「日本で行われ、日本人が被害者である事件をなぜ日本の捜査当局が捜査しないのか」と憤る。

■東京高裁は1審判決を破棄、「日本での提訴は可能」と認定

 「なぜ門前払いなの? 私は日本人なのに」

 捜査のメドが立たない中、被害者の女性は民事裁判の行方に怒りを覚えていた。被害者がいちるの望みを託していた出資金返還訴訟も国境が壁になり、東京地裁に却下されたからだ。

 昨年6月に、顧客9人が7千万円余りの返還を求めて地裁に提訴した出資金返還訴訟で争点となったのが、裁判を日本で起こすことができるか否かという「裁判管轄権」。責任追及以前の問題だった。

 地裁は今年1月、勧誘に当たり不法行為があったのかといった疑惑に関する判断は行わずに「日本での裁判は適当ではない」として、訴えを却下した。却下の根拠となったのは、MRIが顧客と交わした契約書。「一切の紛争をネバダ州裁判所の管轄とする」という記載を有効とし、日本での訴訟を認めなかった。

 こうした地裁の考え方に、11月、東京高裁は全く逆の判断を示した。MRIと出資者が交わした契約書の内容を原則として有効としつつ、「はなはだしく不合理な場合は効力が否定される」として、例外として契約の効力がなくなる場合に触れた。高裁は「MRIは日本国内で勧誘や販売をしており、出資者の主張を判断するのに必要な証拠が米国に偏在しているとはいえない」と指摘。「日本での審理が、MRIにとって不合理で過大な負担を強いるとはいえない。裁判制度や日米の距離に照らすと、(被害者が)米国での審理に対応するのは大きな負担」として、今回の原告の状況がまさにこの例外にあたると判断。日本での提訴を可能とした。

■一筋の光明…だが弁護団は「スタートラインに立っただけ」

 民事訴訟が日本で可能とされた今、次の問題は、MRIに違法性があったかどうかだ。

 日本の訴訟ではこれまで、MRIの違法性について審理が行われていない。東京地裁に戻された今後の訴訟で、違法性が判断されることになるが、被害弁護団長の山口広弁護士は「ようやくスタートラインに立っただけだ」と気を引き締める。

 被害者弁護団によると、日本に比べて米国ではMRIに対する責任追及が進んでいる。SECが昨年来、進めてきた手続きで、今年10月、米ネバダ地区連邦地裁がMRIや経営陣の責任を認容した。今後、損害額の算定が進められるとともに、日本でいう破産管財人がMRIの資産を随時差し押さえていくとみられる。このため、日本の民事訴訟でMRIの違法性が認定されれば、被害者に出資金の一部が戻る可能性も出てきている[拙者註2]

 ただ、米国での手続きも障害が多い。被害弁護団によると、MRIの経営陣はいずれも「刑事訴追の恐れがある」と連邦地裁などに黙秘権を行使。司法手続きの引き延ばしを画策するとともに、個人資産の処分の動きもあったという。

 5千万円余りを出資したという男性(75)[拙者註3]は高裁の判断を「これからがスタート」と話すが、「時間がかかりすぎた。MRIにどの程度資産が残っているのか」と不安を隠せない。埼玉県在住の女性(65)は、老人ホームに入るため少しでも足しになるようにと約3千万円を出資した。「日本の裁判所で裁いてもらえないことにがっかりしていた。ようやく責任追及をスタートできると安堵(あんど)したが、どれだけ時間がかかるのか」と話している。

記事の内容は特に目新しいものはなく、今までの「おさらい」の色が濃いが、それでも注意深く読むといくつかの興味深い事項が見えてくる。

【1】MRI被害弁護団では2013年5月に「当弁護団では各捜査機関に告訴状、告発状を持参しました。」と誇らしげに発表したものの、その後刑事事件になったとの情報はなく告訴状、告発状が受理されたかどうかに疑問が生じていたが、その後、2014年4月のテレビ東京の一周年記念番組の中で弁護団の五十嵐事務局長が「日本の捜査機関はどこも受理しなかった」と暴露しており、その事実がここでも確認された。

【2】SECの裁判では既に管財人の選任・指名の段階に来ているが、それと日本での訴訟がどのように関連するのかとんと不明。

【3】「MRI被害者団」代表の安仲(やすなか)氏のことと思われる。

記事中の「被害者」達の言い分は、「日本人が被害にあったのに何故日本の捜査当局は動かないのか」と言う辺りらしい。鈴木一家が日本で色々の嘘を並べ立てて「投資家」達を騙したのは事実のようだが、最終的に「被害」が生じたのはアメリカにあるMRIインターナショナルのアメリカの銀行口座に金を送金した時点だし、またMRIそのものとその経理資料などのほとんどがアメリカに存在すると想像されることから、日本の捜査当局が実際の手出しをするのは現実的ではないだろう。理屈を捏ねれば、「詐欺」が成立するには単に「騙した」と言う事実だけではダメで、その結果「被害者」が行動し、或いは行動を差し控えたことによって実際に損害が生じたことが成立要件となるから、「損害」或いは「被害」が生じたのはどの時点かなどと屁理屈の余地もありそう。

逆に、ネバダ州で行われている民事訴訟とSECの裁判では、金と証券の交換が合衆国内で行われたのは明白であり取引が合衆国内で行われた事案だから、と言う理由で合衆国連邦裁判所で審理が行われている。「日本に管轄権あり」の主張は、合衆国内の事件であると言う連邦裁判所の見解を否定しなくもないように思える。

東京高等裁判所が日本国内の裁判管轄を認めて審理を東京地方裁判所に差し戻したが、それはこの訴訟がようやくスタート地点に戻ったに過ぎず、現にMRI側は高等裁判所の判断を不服として最高裁判所に上告しており、この訴訟の行く手はまだ見えない。

また、おそらくMRIには金はほとんど残っておらず、一連の訴訟が原告・被害者側有利に運んだとしても、返還・賠償の原資の主体はフジナガと鈴木一家の個人資産になると思われ、その額は1,365億円と言われる被害額のほんの一部に過ぎないだろうことは殆ど疑う余地がない。過度の期待をせず冷静に事態の推移を見守るしかないだろう。
2014-12-11 : Category: None : コメント : 2 : トラックバック : 0
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管財人の選任・指名手続きへ ~SECの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のホフマン下級判事は2014年12月2日、SEC(合衆国証券取引委員会)が原告となってMRIインターナショナル・インク、そのラスベガス本社社長エドウィン・ヨシヒロ・フジナガ、および日本支社幹部の鈴木順造とその息子鈴木ポール武蔵らを証券詐欺で訴えた裁判で、MRI側の不動産及び個人資産などを管理する管財人を選任・指名するために、原告被告双方が会合・協議の上、2014年12月16日までに選任方法などの共同提案を裁判所に提出するよう命令した。

以下に決定文の全訳を載せる。拙者の実力ではうまく翻訳しきれない難解な表現もあるが、大意は間違っていない筈。「命令提案」は「proposed order」の直訳。原文では「real property(不動産)」と対比して「personal property/properties」と言う表現を使っているが、これが「動産」なのか「個人資産」なのかは曖昧な箇所があり、ここでは「個人資産」で統一している。下線太字は原文の通り。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区
(事件番号、当事者らの記載省略)
前 書 き

当裁判所に提出されているのは、原告の2014年11月7日付公正管財人指名命令提案(文書 #174)、被告の2014年11月11日付回答、及び原告の2014年11月10日付返答である。当裁判所はまた管財人選出の提案を受理している。

背 景

2014年10月30日に行われた審問で、当裁判所は原告の管財人指名申し立てに関して裁定し、当該事件に関して不動産の保全の目的のために地方判事に対して限定管財者を指名することを推奨する判断を下した。文書#146及び#170を参照。審問に於いて、更に、当裁判所は当事者らに会合と協議をし、原告の提起した案件に言及する被告と裁判所の意見を含む規定命令の提案を提出し、2014年11月13日までに共同中間報告を提出するよう指示した。2014年11月12日、当事者らは共同中間報告を提出した。文書#177を参照。その後、原告は係争中の命令提案を提出した。原告はまた裁判所に管財人選出提案を提出した。

議 論

1. 管財人指名提案
原告は当該事件に関して、公正管財人の指名に関する未既定の命令提案を提出している。文書#174を参照。被告らは、これに反して、原告の命令提案は当裁判所の裁定より「著しく拡大的である」としてこれを認めず争う。文書#175の2。例えば、被告らは命令の提案は不正に被告らの「全ての個人資産」を含んでいると指摘する。文書#175の3。被告らは、コンピュータ、サーバ、及び技術的機材は保護されており、原告はこれらを処理する権限はないと説明する、何故なら、これらは機密情報を含んでおり、不動産の管理と販売には無関係であるから。被告らは更に、指定されている資産の一つであるハーモン・メディカル・センタは空き家でも無使用でもなくまた被告らだけに所有されている訳ではなく、それ故これらは裁判所の限定的管財の範疇に含まれるべきではないと指摘する。原告は当該事件で損害を確立しておらず、被告らは強情な管財人を信頼できるように保持するためのあらゆる権利を留保することを望む。

返答として、原告は、個人資産が命令の提案に含まれるべきであると反論する、何故なら、被告らが個人資産にアクセスし続けることを許すのは「破壊的」であり、特に一旦不動産が売却されてしまえば資産は残らないから。文書#176の2を参照。被告らの心配を斟酌するため、原告に従い、当裁判所は、管財人があらゆる個人資産に含まれる情報の機密性を保持し、そのような情報を被告らに相談の上適切に廃棄する条項を追加することができる。原告はまた、ハーモン・メディカル・センタは管財対象に含まれるべきであると反論する、何故なら、当該物件は医療事故保険の未払い故に数週間前に「閉鎖された」から。同様。当該物件の一部を使用する店子に関しては、原告によれば、命令は管財人が大家として振る舞い、全ての賃借料を徴収する文言を含む。原告によれば、ハーモン・メディカル・センタの所有者は既に存続可能な法的存在ではなく、これは当物件に管財人を指名する必要性を裏付ける。原告は更に、被告ら若しくは彼らの債権者による「不公正な利益を得るため」の「脅迫的な裁判」から管財人を保護するための免責事項を残すべきであると反論する。

仮事項として、当裁判所は提案された命令は、資産を適切に描写しておらず、資産が管財帳簿に含まれるべき理由(例えば破壊行為や浪費など)が述べられていないなど、問題で溢れているとみなす。提案された命令はまた、当裁判所が許可していない条項、すなわち(1)管財人が職務の補助のために他の人員を雇うことの条項と(2)管財人に「全ての」資産(即ち不動産と動産)を売却若しくは貸与目的で記載し売り込むことを許す条項であり、これは被告らが的確に指摘したものである。当裁判所は、原告の命令提案により励起された各問題について斟酌する。

a. 資産目録
当裁判所は、原告により提出された資産目録は不適切であると結論する。それ故、原告は、原告が管財人が支配し保全すべしと信じる「全て」の資産を含む目録を命令提案の付帯文書として付加して提出し、個々の資産に関する、より完璧な描写とそれらの資産が何故(例えば、浪費、破壊、所有者なしなど)目録に含まれるべきかの理由を提出するものとする。

b. ハーモン・メディカル・センタ物件
当裁判所は、本物件が目録に含まれるべきと結論する、何故なら、原告が的確に指摘するように、本物件は閉鎖されており存続可能な法的所有者が存在しないから。更に、当該物件の店子入居部分については、管財人は大家として物件を管理し賃料を徴収できる。

c. 個人資産
当裁判所は被告らに個人資産へのアクセスを続けることを許すことは破壊的であると言う原告の主張に同意する。当裁判所は提案命令が管財人に(1)個人資産を支配できる、(2)そのような個人資産に含まれる情報の機密性を維持する、そして(3)適切な方法と被告らへの相談の下にそのような情報を破棄することを許すと言う原告の主張に同意する。

c. 管財人の免責
当裁判所は、管財人がその職務を効果的に遂行することを許すためには免責条項が保たれるべきであると結論する。

e. 他の人員の雇用
当裁判所は、管財人に他の人員を雇用することを許す条項は是認できないと結論する。もし問題が生じたときには、管財人は申し立てにより要求を提起するものとする。

f. 状況報告
当裁判所は、民事地域規則66-4が要求するように、管財人に当裁判所への報告書の提出と、当裁判所に管財人の行動を知らしめる目的の90日ごとの状況報告書を要求する条項を命令提案に追加することに価値があると結論する。

従って、当裁判所は当事者らが会合し協議し、そして上記の当裁判所の議論に基づいた修正命令提案を提出するよう指示する。

2.管財人選任提案
当裁判所は選任提案を受理している。当裁判所は提案を検討し、担当地方判事に対する勧告を作成する。

結論と決定

以上述べたことに基づき、当事者らが会合し協議し、そして上記の当裁判所の議論に基づいた修正規定命令提案を提出するようここに命令する。当事者らは、命令提案を2014年12月16日以前に提出するものとする。

日付: 2014年12月2日

合衆国下級判事 C.W. ホフマン Jr.


SECの裁判は意外と速く進行しているようだ。今回の決定は、SECの裁判が被告MRI側の資産保全の具体策に踏み込む段階まで到達したものと考えられる。

MRI側は(訴えられる側としては当然のことながら)あらゆる点でいちゃもんをつけているが、裁判所がそれらのいちゃもんの一部を認めるものの、結果的には原告SECの申し立てをより詳細・厳密にすることで収拾されており、SECの申し立ての本質はなんら影響されていないように見える。まぁ、詳細・厳密は正義の実現のためには結構なことであるが、その分SECの仕事が増え、税金が費消されるなど間接的に合衆国とその国民の負担になると思うと、合衆国の納税者としてはあまり面白いことではない。

ま、それはさて置いて、拙者は素人なので今後の今後の裁判の予想展開はよく分からないが、素人なりにいくつかの疑問点を挙げてみる。
  • MRI側が控訴したらどうなるのだろう?
  • 今回の管財人選定は限定的な資産についてだけらしいが、これが「全資産」に拡大されるのか?
  • 並行している民事裁判の資産凍結との整合性は?
  • ではここでMRI側の資産が個人資産も含めて全て取り上げ・没収と言うことになったら、クラスアクションだどうのこうのと言う民事裁判を続行する意味はあるのだろうか?
等々。

もう一つ素人なりの考えを述べると、管財人は凍結財産を公正に保全するのが仕事だから、最終的に原告側勝訴となって被告側の資産の所有権が原告側に移転するにしても、その前に被告側と利益が相反する原告被害者側の弁護士などが管財人に選ばれることはないだろうと思うが、よく分からない。もしそうだとすると、コーエン先生を初めとする原告側弁護士の存在意義はどうなるのだろうか?確実なのは、管財人の報酬の分だけ、またMRI側の資産が減少すること。

誤解してはいけない。フジナガや鈴木親子の資産はまだ差し押さえられてはいない。MRI側の資産のうち散逸・消失が危惧される一部資産を保全するための管財人を選ぶのがどうのこうのと言う段階であり、彼らの資産が没収され(ることが現実になっても)「被害者」達に分配されるのはまだ先の話。
2014-12-06 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRI側上告  ~国内第一次訴訟~

東京高等裁判所の控訴審判決で原審破棄、審理を東京地方裁判所に差し戻された国内第一次訴訟について、被告のMRIインターナショナル、フジナガ、鈴木親子らは、当事件の裁判管轄権が日本にあるとした控訴審判決を不服として2014年12月4日、最高裁判所に上告した。
産経ニュース
2014.12.4 16:02更新

「日本の裁判所は管轄外だ」出資金返還訴訟、MRIが上告

 米資産運用会社「MRIインターナショナル」の顧客9人が計7千万円以上の出資金返還を求めた訴訟で、MRI側は4日、「日本の裁判所は管轄外だ」という主張を否定した2審東京高裁の差し戻し判決を不服として、最高裁に上告した。

 訴訟では「一切の紛争は米国ネバダ州裁判所の管轄」とする契約内容の有効性が争点となり、1審東京地裁はMRI側の主張通り原告の訴えを却下した。しかし東京高裁は、日本に十分な証拠があり、海外での裁判は原告の負担が重すぎるとして1審判決を取り消し、地裁で審理をするよう差し戻した。

本件に関して産経ニュース以外の報道は確認していない。控訴審差戻し判決の時のマスコミの久々の反応とはかなり違う印象だが、これは何を意味するのだろう?

2014年12月10日追記
MRI被害弁護団もMRI側の上告の事実を確認した。
国内・対MRI訴訟】MRI側による上告及び上告受理申立のお知らせ

2014.12.11

本件については,11月17日に東京高裁が日本の裁判所に管轄を認め,原審取消・地裁差し戻しの判決を出していますが、MRI側は,12月4日,この東京高裁判決を不服として,最高裁判所に上告及び上告受理申立てをしました。

弁護団としては,MRI側による上告や上告受理申立ては認められるべきではないと考えておりますので,速やかに東京高裁判決に従って東京地裁での審理が開始されるように全力を尽くします。
2014-12-06 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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被害者の会、メールマガジンの容量を倍増

MRIインターナショナル被害者の会ニュースページより。
2014年11月22日

【国内民事訴訟 出資金返還訴訟について】
1審では、原告の訴えに却下の判決だしましたが、控訴審の判決では、管轄が認められ地裁に戻し実態審理に入る事になります。

【鈴木順造はじめMRI社役員等の国内裁判について】
12月24日午前11時から第3回の口頭弁論が東京地裁103号法廷で行われます。
出資金返還訴訟と同じく多くの方で傍聴をしましょう。
期日後、日比谷文化図書館で弁護団説明会が開かれます。

【お知らせ】
・メールマガジンの容量を500人から1000人へ増やしました。
MRIの被害者の方であれば無料でご登録できます。お手元に最新の情報をお届けする事ができます。
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メールマガジンの容量を増加させたと言うことは増加させる必要があったと言うことで、購読者数が500人近くに達したと言うことか?

過去のメールマガジンの記事(の一部)はこちらのサイトで閲覧できる。
2014-11-29 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRI被害弁護団、裁判日程ウェブページを新設 ~国内訴訟~

MRI被害弁護団は、ウェブサイトに裁判日程ページ(国内訴訟のみ)を新設した。

現在のところ、以下の期日のみが記載されている。
  • 第一次訴訟(対MRI、フジナガ、鈴木父子ら): 差戻審期日未定
  • 第二次訴訟(対鈴木一家): 第3回口頭弁論 2014年12月24日 東京地方裁判所第103号法廷

第一次訴訟控訴審で原審破棄差し戻し判決を得て気をよくし、今後第三次以降の訴訟も提起すると言う予告だろうか?


2014-11-28 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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弁護団ウェブサイト更新 ~国内第二次訴訟口頭弁論報告と予告~

2014年11月21日、MRI被害弁護団はウェブサイトの記事を更新した。
【国内・対日本支社代表者ら訴訟】第2回期日報告と次回期日のお知らせ

2014.11.21

 10月27日に鈴木順造らに対する損害賠償請求訴訟の第2回口頭弁論期日がありました。今回も傍聴席は満席になりました。
 この期日に先立ち鈴木らはそれぞれ別々に主張書面を提出してきましたが,その内容があまりに事実に反していました。そこで当日の法廷で,山口弁護団長にてその不誠実さを訴えました。この意見陳述書は後日正式に裁判所に提出しています。
 次回も鈴木らの不誠実性,不法行為性を訴えていきます。
 その後,場所を日比谷図書文化館に移して弁護団による説明会と被害者団の意見交換会を開催いたしました。
 前回に引き続き被害者団は自主的に期日の前に関係各所への要請とビラまきをしています。
 次回期日と弁護団説明会・被害者団意見交換会は,以下のとおり開かれます。ぜひ期日を傍聴してください。法廷を満席にしましょう!

■次回第3回期日
 日時:平成26年12月24日(水)午前11時~
 場所:東京地方裁判所第103号法廷(裁判所で一番大きな法廷です)
■弁護団説明会・被害者団意見交換会
 日時:上記期日の終了後
 場所:日比谷図書文化館B1階日比谷コンベンションホール(大ホール)
   (千代田区日比谷公園1番4号、TEL03-3502-3340、http://hibiyal.jp/hibiya/access.html)

2014年10月27日の第二次訴訟の第二回口頭弁論期日の報告を何故3週間半も経ったこの時点で掲載したのか?以下は2014年になってからの弁護団ウェブサイトの記事の更新日付。

 ・2014年 1月14日 国内の民事訴訟で、管轄を認めない不当判決が出されました。
 ・2014年 3月24日 平成26年4月5日(土)午後2時から東京で被害者説明会を開催します!
 ・2014年 6月19日 本日,日本支社の代表者らに対する損害賠償請求訴訟を提起しました。
 ・2014年 7月14日 【国内・対日本支社代表者ら訴訟】第1回期日のお知らせ
 ・2014年 7月15日 【国内・対MRI訴訟】控訴審第2回期日報告&次回(第3回)期日のお知らせ
 ・2014年 8月25日 【国内・対日本支社代表者ら訴訟】第1回期日報告と次回期日のお知らせ
 ・2014年 9月24日 【国内・対MRI訴訟】控訴審結審&判決期日のお知らせ
 ・2014年11月17日 【国内・対MRI訴訟】控訴審判決(原審判決取消・差し戻し)のお知らせ
 ・2014年11月21日 【国内・対日本支社代表者ら訴訟】第2回期日報告と次回期日のお知らせ

2014年7月の連日2回の記事を除いて1~3ヶ月に1本、2013年の暮は4ヶ月近く記事の更新がなかったのに、今回は僅か4日の間隔で記事を更新している。多分2014年11月17日の国内第一次訴訟控訴審で東京高等裁判所が原審の「日本に裁判管轄権なし」の判決を取り消し審理を東京地方裁判所に差し戻した判決によほど気をよくした結果か、などと邪推したくなる。

タイミングがあまり適切でなさそうな2本目の(第二次訴訟関連)更新記事の、あまりうまいとは感じられない細切れの文の中に「被害団」のビラまきの記述をしたり、「ぜひ期日を傍聴してください。法廷を満席にしましょう!」に「期日を傍聴」などと言う弁護士特有の隠語と思われるあまり品のない表現や「!」を使うなど、スタート地点に戻っただけの第一次訴訟の控訴審判決に沸く弁護団のはしゃぎようが伝わってくる気がする。
2014-11-21 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRI被害者団、声明を発表 ~国内第一次訴訟控訴審差戻し判決~

2014年11月19日、MRI被害者団(安仲〈やすなか〉代表)は2014年11月17日の東京高等裁判所の判決を受けて声明を発表した(原文は縦書き、太字下線は原文ママ)。
一一月十七日に開かれた東京高裁での出資金返還訴訟の判決について

 二〇一四年一月一四日、東京地方裁判所は、MRI社の言い分を認めMRI事件を日本で審理しないという、被害者の訴えを却下する不当判決を言い渡しました。

 しかしながら、十七日午後一時三十分、東京高等裁判所の一〇一号法廷は満席になり、田村幸一裁判長から、原審を地裁に差し戻すという判決が言い渡されました。

 我々は、今回の判決から日本でMRI社の実態審理に入る事ができ、被害回復へのスタート地点に立つ事ができました。

 このように、スタート地点に立つ事ができたのは、本事件を粘り強く取材され被害者の声を世に発信をした報道各社、国会でMRI事件について追及され被害者に憂慮されている鈴木克昌衆議院議員、支援をしてくださった方々、そして我々に勇気を与え続けたくださったMRI被害弁護団・事務局の弛まぬ努力の結果です。本当に感謝いたします。

 今回の判決を大事にして、素直に喜び、今後も被害回復・刑事訴追を目標に運動を加速していく所存です。

平成二六年一一月一九日
MRI被害者団一同

横書きなら「1月14日」「11月17日」「11月19日」と書くところを「一月一四日」「一一月十七日」「一一月一九日」と書く表記上の不統一が目に付く。また細かいことを言えば、「原審」(の判決)とは取り消された第一審の裁判のことだから、既に取り消されたものを挙げて「地裁に差し戻す」は意味が通らないと思うが、まぁそれはどうでもよい(「勇気を与え続けくださった」は原文ママ)。あまりリテラシの高くない起草者によるお粗末な声明文の印象が否めない。

東京高等裁判所は、東京地方裁判所の「日本に裁判管轄権はない」とした判断を誤りとしてもう一度審理し直すように差し戻したが、だからと言って差し戻された東京地方裁判所がすぐ実審理を始めると言うものではなく、一応裁判管轄権について東京地方裁判所としての判断を示すものだと思うが、拙者にはよく分からない。

  • 「ジッタイシンリ」と言う言葉について
    この「被害者団」の声明文及び「MRIインターナショナル被害者の会」のイチキ氏の文章には一貫して「実審理」と言う表記が使われているが、「実態審理」でぐぐると「『実審理』のことだろ?」と「実体審理」についての記事をリストすると言う意味で「実態審理」は誤った表記と考えられる。
    2014年11月22日
    【国内民事訴訟 出資金返還訴訟について】
    1審では、原告の訴えに却下の判決だしましたが、控訴審の判決では、管轄が認められ地裁に戻し実態審理に入る事になります。

    MRIインターナショナル被害者の会 ニュースより。下線は拙者。「判決だしました」は原文ママ)

    「実体審理」とは訴えの内容そのもの(=実体)を審理することで、その前に訴えが訴訟要件を満たしていないことが証明されると(或いは訴訟要件を満たしていることが証明されないと、かも知れないが浅学の拙者にはよく分からない)、裁判所は実体審理に入ることなしに訴えを却下する。「訴訟要件」とは、訴えが原告の利害に関係するかどうか(だから自分とは利害的に無関係の事柄について訴えを起こしても裁判所は取り上げてくれない=却下)とか、そもそも訴えの起こされた裁判所にその訴えを審理する権限があるのかどうかと言うこと。国内の第一次。第二次の両方の訴訟で、被告MRI側は一貫して裁判管轄権と言う訴訟要件の欠如を基に訴えを却下するよう反論していた(反論している)。

    ただし、「図解 裁判・訴訟の法律がわかる事典」(三修社)によると、「実体審理」は刑事裁判の用語で、民事裁判では同様のことを「本案審理」と言うらしい。ま、どちらでもよいが「実態審理」でないことは確かそう。

鈴木克昌衆議院議員」は2012年12月の第46回衆議院選挙で愛知県第14区→比例東海ブロック復活当選(4回目)。所属は 自由民主党→無所属→民主党→国民の生活が第一→日本未来の党→生活の党と転党を繰り返し、いささか節操のない印象を受ける。鈴木克昌議員はMRI被害者団に以下のような書簡を送っている。
愛知14区衆議院議員の鈴木克昌です。

 MRI事件での被害にお見舞い申し上げます。

 また、本事件で女性がご家族を残し尊い命を落とされた事が報道されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
 本来であれば、皆様の前に参上しご挨拶と激励を送りたいのですが、諸般の事情により皆様の前に参上できず書面にてご挨拶をさせて頂きます。

 さて、日本では数年毎に、数千億規模の大規模詐欺事件が発生しています。この現状に対し真に遺憾の意を表します。

 私は、財務金融委員会に10年所属しAIJ事件・オレンジ共済などの投資事件を委員会で問題提起し追及をしてきました。
MRI事件が発覚してから、委員会で発言し現状の投資環境や法整備についての改善を含め問題視しています。政治家としてあらゆる面から調整をおこない第2のMRI事件が起こらないよう邁進していきます。
 皆様のこの集まりが、本件の早期の事件解決につながりますようお祈り申しあげます。

平成26年11月17日
衆議院議員
鈴木克昌

書簡中では将来の類似詐欺事件の防止のみに言及し、MRI事件そのものについては、イナカの議員にありがちな「オレが口をきいてやる」のような安請け合いをしていないことは賢明と言うより立法府の公務員として当然。

鈴木議員の公式ウェブサイトのホームページから直接アクセスできるページには「詐欺」と言う字句は見つからない。「お知らせ」のトップ記事は「ゴルフコンペ開催」(2014年11月20日閲覧)。鈴木議員のブログには、「2013年6月20日(木) アベノミクスの副作用について」と題する委員会での一連の質問の最後として麻生金融担当大臣に対する以下の質問部分があり、これを上記書簡中で取り上げていると思われる。もしこれが鈴木議員の国会でのMRI事件に関する唯一の発言だとすれば、被害者団声明文中の「国会でMRI事件について追及」は大袈裟で、本当は精々「国会でMRI事件について言及」ぐらいの話だろうと思うが、「MRIインターナショナル被害者の会」代表のイチキ氏の発言と言い、本件「被害者」達には物事を大袈裟に表現する共通的な体質があるのかも知れない。
鈴木議員 (途中まで省略) もう一点お伺いしたいんですが、ちょっと現実的な話で恐縮ですが、高齢者の投資トラブルということについてお伺いをしたいというふうに思います。
市場が過熱をしてきます。そうすると、いわゆる高齢者を中心に投資トラブルが急増してくるのではないかというふうに私は思っています。私は、先般の金商法の改正の質疑のときにも、AIJやMRIの事案を踏まえて、不正を行った業態にとどまらない抜本的な規制強化の必要性を申し上げてまいりました。
安倍政権の成長戦略では、新興企業などへの投資促進策として、インターネットを通じて一般の多数の投資家から資金を集めるクラウドファンディング、そういう仕組みの活用を検討されている、このように聞いておるものですから、さらにこれが投資トラブルの温床になっていくのではないのかなというふうに私は思っております。杞憂に終わればいいんですけれども。
金融ビッグバン以降、国の基本的な考え方は、まさに投資家の自由な判断に任せる、委ねる、こういうことだったというふうに思うんですが、多くの高齢者が、投資家の自由な判断に基づく投資だという判断をされるというよりも、現実には、銀行や証券会社の言われたとおりにしているというのが実態ではないかなというふうに私は思うんですね。
そこで、先日も、SMBC日興証券の社員が八十歳の認知症の女性の弟に成り済まし、他社の投資信託を解約させて、自社の外債を購入させたという報道があったわけです。投資家の自由な判断という名目のもとに、結果的に、このシニアマネーを狙い撃ちするようなやり方が成長戦略にふさわしいのかということだと思うんですね。私は間違っているというふうに思います。
ここのところを、現実の問題として、大臣がどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
麻生国務大臣 何か、シニアのリスクマネーを狙い撃ちするのが成長産業であるかのごときお話ですけれども、それはちょっといかがなものかと思いますが……(鈴木(克)委員「だから、そうであってはならないということです」と呼ぶ)何となく、言い方がそういうように聞こえるので。
やはり、気をつけて言ってもらわないと、議事録に残りますので。
先般閣議決定をいたしました、いわゆる日本再興戦略というものの中で、家計におけます金融資産、そういったものを初めとする、いわゆる国内の金融資産というものが一千五百兆を超えておりますので、そういった意味では、いわゆる新規とか成長企業へのリスクマネーというものを強化する施策というのをいろいろ盛り込ませていただいたことは確かですが、その中で、いわゆるシニアマネーを狙い撃ちするかのごとき話が書いてあるというわけではありません。まず最初にお断りをしておきます。
金融庁といたしましては、これはもう、金融商品取引法というきちんとしたものがありますので、これは、いわゆるまともな投資を行うようにしないと、何となく怪しげな話、もうかりますよという話で、大体、今ごろもうかりますよという話にひっかかる方がおかしい、今はもうかる話なんかないんだからと言った有名な投資家がおられたのが非常に私には印象的だったんですけれども。
ぜひ、そういった意味では、きちんとしたフォローアップをやっていかないと、その点、一回もうかっても、一挙にその会社の信用がなくなりますから、丁寧な対応をやっていただかないと、今後のおたくの会社の信用にかかわりますからということも大事なところだと思っております。
いずれにいたしましても、御指摘のありました、高齢者を特に言っておられるんだと思いますけれども、それの金融商品の販売に関しましては、これは投資者保護ということが一番大事だということを言っておられるんだと思いますが、今、NISA、日本版ISAのことですけれども、こういったようなものを新たに、少なくとも、たらたら現預金でじっと持っておられるんではなくて、確実な投資としてこういった形のものはいかがでしょうかといった、関心を持っていただかないとどうにもならぬと思っておりますので、日本版ISAを始めさせていただいたりしたというのがこれまでの経緯であります。
いずれにしても、昔と違って、一九三〇年代のデフレと違って、個人、企業が資金を持っているというのが七十年前と全く状況が違っているものなんだ、私どもにはそう見えます。
したがいまして、そういったものを含めて、その金がいかに動くようにするかというのを考えねばならぬというのがデフレ脱却に当たって一番大事なところだと思っております。
鈴木議員の質問はともかく、麻生大臣の答弁は、「大体、今ごろもうかりますよという話にひっかかる方がおかしい、今はもうかる話なんかないんだからと言った有名な投資家がおられたのが非常に私には印象的だった…」辺りからおかしくなり、後半部分は何を言っているのか拙者にはさっぱり理解できない。日本の大臣とは、かくも意味不明の言語を発する職業かと思う。

また、鈴木議員は投資詐欺問題を「高齢者が騙される」と言う観点でしか言及していない。一般的に高額の「投資」ができるのはそれなりの資産を有している(していた)シニア層以上が多いと言う推測は正しいと思う。MRI「被害者」の所得額、資産額、年齢分布などが分かれば興味深いのだが、残念ながらそう言う情報はない。

鈴木議員の質問も、詳細に読み返してみると何を言っているのかよく理解できない。最初に「インターネットを通じて…資金を集めるクラウドファンディング…が投資トラブルの温床になっていく」とネット時代の新しい金融・投資手段などに法や消費者教育がが追い付いていないと言うようなことを追及するのかと思ったら、「金融ビッグバン以降…投資家の自由な判断に任せる…が、多くの高齢者が…現実には、銀行や証券会社の言われたとおりにしている」と高齢者はそう言うことには関係ないとひっくり返し、「SMBC日興証券の社員が八十歳の認知症の女性の…投資信託を解約させて、自社の外債を購入させた」と、「投資家の自由な判断」とか何とかとは関係ない認知症の高齢女性の資産を狙った犯罪の話に転換している。

MRI事件の「被害者」達は、「MRIインターナショナル被害者の会」代表のイチキ氏の言によれば、「人一倍投資について研究している人が多かった」そうだが、そう言う(そう思い込んだ)人達が、銀行や証券会社に勧められたのはなく、ましてや銀行や証券会社が扱っていた訳でもない、一部のネットコミュニティでは「詐欺の疑い濃厚だから絶対手出し無用」とまで言われていた得体の知れない投資話に自分の判断で金を出して見事に騙されただけの話だ。認知症とまで行かなくても、MRI事件やオレオレ詐欺事件に見られるように、どうも世の中の一定人口は常に「騙される人達」であり、たまたまその騙しの手段が時代とともに変遷していくだけのように思えるが、鈴木議員はいったい何が言いたかったのだろう?
2014-11-20 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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東京高裁差戻し判決「日本で審理」 ~国内第一次訴訟~

2014年11月17日、支払期限が到来した出資金として合計約7,250万円(日本円:6,750万円+米ドル:5万ドル)の支払を求めた原告9人による訴訟の控訴審で、東京高等裁判所の田村幸一裁判長は裁判管轄権が日本にないことを理由に訴えを却下した東京地方裁判所の一審判決を取り消し、審理を東京地方裁判所に差し戻す判決を下した。

この件は大手メディア各社からも報道され、MRIの事件が久しぶりにマスコミに注目された。また被害弁護団も久々の勝ち鬨を挙げる事件だけに、弁護団のウェブサイトには誇らしげな記事がその日のうちに掲載されている。
MRI被害弁護団
【国内・対MRI訴訟】控訴審判決(原審判決取消・差し戻し)のお知らせ

2014.11.17

11月17日(月)午後1時30分より,本件裁判の判決期日が開かれ,東京高等裁判所第4民事部は,本件は日本の裁判所に管轄がないとした東京地方裁判所の却下判決を取り消し,本件は日本の裁判所に管轄があるとして,本件を東京地方裁判所に差し戻すとの画期的な判決を言い渡しました。
判決では,MRIが,出資金の運用が行き詰まっているのに商品の勧誘を続けた上,顧客はアメリカでしか裁判ができないという管轄合意条項を置いたことなどを挙げ,「控訴人ら8名に日本の裁判所での審理の途を絶つことは,はなはだしく不合理であり,公序法に違反するから許されないというべきである。」として,当弁護団の主張を認めました。

期日後には場所を全日通会館に移して弁護団による説明会を開催し,また司法記者クラブにて被害者の方とともに会見を行いました。

この判決は,本件裁判のみならず,関連する他の国内裁判にも影響を与える重大な判決です。MRI側が最高裁判所に上告をするか否かは不明ですが,いずれにせよ,日本国内での裁判を進める上で大きな進展であると考えられます。

以下に拙者のところに届いたマスメディアの本件記事を引用する。日本経済新聞を除いて、医療売掛専門の高利金融・貸金業者に過ぎないMRIインターナショナルをウィキペディアの不適切な紹介文の丸写しで「資産運用会社」としているが、このことについては既に触れた
讀賣新聞
MRI訴訟「審理は日本」…高裁が差し戻し判決
2014年11月17日 22時46分

 日本の投資家9人が米国の資産運用会社「MRIインターナショナル」(本社・米ネバダ州)に計7000万円以上の出資金の返還を求めた訴訟で、東京高裁は17日、裁判の管轄権がないことを理由に原告側の訴えを却下した1審・東京地裁判決を取り消し、審理を同地裁に差し戻す判決を言い渡した。

 田村幸一裁判長は「原告の住所は日本で、日本の裁判所に管轄権がある」と指摘した。

 投資家がMRIと結んだ契約書には、「すべての紛争は米ネバダ州の裁判所で扱う」との合意事項があり、日本で提訴できるかが争点となった。

 1審判決は合意を有効と判断。しかし、高裁判決は、〈1〉MRIは資産運用が行き詰まっていたのに勧誘を続けた〈2〉関東財務局の業務命令後も投資家に必要な説明を怠っている〈3〉米国での審理は原告らに大きな負担になる――ことなどを理由に、「日本での審理を絶つのは不合理で公序良俗に反して許されない」とした。

 MRIは米国の「診療報酬請求債権」を巡る事業への投資を呼びかけ、日本の投資家約8700人から約1300億円を集めたとされるが、大半を流用。弁護団によると、4723人が約971億円の被害を申し出ている。米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、ネバダ州の連邦地裁は10月、MRI社長による詐欺行為を認定している。
朝日新聞
MRI出資金訴訟「日本で裁判を」 高裁が差し戻し判決

2014年11月17日17時43分

 資産運用会社「MRIインターナショナル」(本社・米ネバダ州)が顧客の資産約1300億円を消失させたとされる問題で、出資者が同社に出資金の一部の返還を求めた訴訟の控訴審判決が17日、東京高裁であった。田村幸一裁判長は、「日本では裁判できない」として訴えを却下した一審・東京地裁判決を取り消し、審理を地裁に差し戻した。日本でも裁判ができると判断した。

 出資時の契約書には「紛争の管轄権はネバダ州の裁判所のみとする」との記載があり、訴訟ではこの条項が有効かが争点になっている。

 一審判決は「条項は有効」として原告の訴えを退けたが、二審判決は「米国での裁判は出資者には大きな負担。一方、MRIには日本での裁判は過大な負担ではない」と指摘。「日本で裁判ができないというのは甚だしく不合理だ」と判断し、「条項は無効」とした。
日本経済新聞
MRI資金消失訴訟「日本で審理を」 東京高裁が差し戻し

2014/11/17 22:18

 米金融業者MRIインターナショナルによる資金消失問題を巡り、投資家9人が出資金の返還を求めた訴訟の控訴審判決が17日、東京高裁であった。田村幸一裁判長は「裁判管轄を米国に限定したのは不合理」として、原告側の訴えを退けた一審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。

 MRIと投資家との契約には「裁判になった場合は米ネバダ州裁判所が管轄する」との合意事項が盛り込まれていた。今回の判決が確定すれば、同社に賠償責任があるかどうかを日本の裁判所が判断することになる。

 田村裁判長は判決理由で「管轄合意は原則有効だが、不合理で公序良俗に反する場合は無効になる」と指摘。今回のケースでは、MRI側が契約時に運用が行き詰まっていたにもかかわらず勧誘を続けた上、出資金の管理状況の説明も怠ったなどと問題点を指摘した。

 さらに「日本で審理するのがMRIには過大な負担にならない一方、原告にとっては米国での審理は大きな負担となる」とも述べ、日本国内で審理しないことは「公序良俗に違反し許されない」と結論づけた。

 一審・東京地裁は今年1月の判決で、「原告が米国で訴訟を起こすことは可能で、契約内容も理解が難しいわけではない」などとして、管轄合意を有効と判断し原告側の訴えを却下していた。

 原告弁護団は判決後に東京都内で記者会見し、「門前払いされた一審判決が取り消され、ようやく出発点に立つことができた」と評価。原告の女性(65)は「日本で裁かれるというスタートラインになった。ほっとしている」と話した。

 原告弁護団によると、米国ではMRIに対して米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、ネバダ州連邦地裁が10月に同社の詐欺行為を初めて認定。損害額の確定や、資産回収に向けた手続きが進んでいるという。弁護団は米本社の社長について、東京地検などに刑事告訴している。
産経ニュース
2014.11.17 16:30更新

MRI出資金返還訴訟、「日本で提訴可能」 東京高裁、地裁に審理差し戻し

 資産運用会社「MRIインターナショナル」(本社・米ネバダ州)が顧客の資産約1300億円を消失させたとされる問題で、顧客9人が出資金計7000万円超の返還を求めた訴訟の控訴審判決が17日、東京高裁であった。田村幸一裁判長は「日本で提訴できない」として原告の訴えを却下した1審判決を「はなはだしく不合理」として取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。

 日本で裁判を起こすことができるかが争点だった。1審はMRIが顧客と交わした契約書の「一切の紛争をネバダ州裁判所の管轄とする」という記載を有効と判断し、「審理に必要な証拠が日本国内にあるとは考えられない」と訴えを認めなかった。

 田村裁判長は、出資者のうち1人は裁判を米国の管轄とするとした合意がなかったと判断。ほかの出資者については、合意を原則として有効としつつ、「はなはだしく不合理な場合は効力が否定される」と指摘。「MRIは日本国内で勧誘や販売をしており、出資者の主張を判断するのに必要な証拠が米国に偏在しているとはいえない。日本での審理が、MRIにとって不合理で過大な負担を強いるとはいえない」として、日本での提訴を可能とした。

 判決後に会見した埼玉県在住の女性原告(65)は「日本の法律で裁かれないことに憤りを感じていた。ようやくスタートラインに立てると安堵(あんど)している」と話した。
毎日新聞
MRI:出資金返還訴訟 審理を東京地裁に差し戻し

毎日新聞 2014年11月17日 21時01分(最終更新 11月17日 21時54分)

 米資産運用会社「MRIインターナショナル」の顧客9人が計7000万円以上の出資金返還を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は17日、訴えを不適法とした1審東京地裁判決を「日本での審理の道を断つことは不合理だ」として取り消し、審理を同地裁に差し戻した。

 MRIが顧客側と交わした契約書には「一切の紛争は米国ネバダ州裁判所の管轄とする」と記載されており、1審はこの記載が有効と判断、原告の訴えを却下していた。

 高裁の田村幸一裁判長は「管轄の合意が甚だしく不合理な場合は効力が否定される」と指摘した。(共同)
時事ドットコム
MRI訴訟、審理差し戻し=「管轄は米国」認めず-東京高裁

 米資産運用会社「MRIインターナショナル」が顧客資産約1300億円を消失させたとされる問題で、顧客9人が同社に出資金の返還を求めた訴訟の控訴審判決が17日、東京高裁であった。田村幸一裁判長は「訴訟の管轄権は米国の裁判所にあるとした同社の契約は不合理」と述べ、契約を有効と認めて訴えを却下した一審判決を取り消して審理を東京地裁に差し戻した。(2014/11/17-16:48)
テレ朝news
MRI投資詐欺の裁判 東京高裁が審理差し戻し(11/17 19:02)

 アメリカの資産運用会社「MRI」の投資詐欺事件を巡り、投資家が出資金の返還を求めた訴訟で、東京高裁は、日本の裁判所で審理しないとした1審の判決を取り消しました。



 MRIインターナショナルによる投資詐欺事件では、日本人投資家8700人の資産1300億円余りが消失したとされ、一部の投資家が出資金の返還などを求める訴訟を起こしました。1審の東京地裁は1月、出資金が管理されていたアメリカのネバダ州で裁判するという合意があり、日本の裁判所では審理しないとして訴えを退けていました。しかし、東京高裁は17日の判決で、「原告がアメリカで審理に対応するのは大きな負担になる。日本の裁判所での審理の途を絶つことは、甚だしく不合理である」などとして1審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻しました。原告で投資家の男性(75)は「我々の主張が認められ、改めてスタートラインに立って裁判が始まる」と述べました。
横断幕は控訴審第一回口頭弁論時に「MRI被害者団」が掲げたものと同一で、「警察・金融当局,裁判所はMRIインターナショナル被害者を救済せよ! MRI被害者団」と読めるが、「インターナショナル」のパッチの下には「詐欺」と書かれていたはずだ。「MRIインターナショナル被害者の会」代表のイチキ氏によれば、「会」の方も当初は「MRI被害者の会」を名乗っていたが、先進医療技術の核磁気共鳴画像法(MRI)との混同を避けるために「インターナショナル」を追加したと言うので、こちらもイチキ氏の忠告に従ったのだろうか?
♪起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し
醒めよ我が同胞(はらから) 暁(あかつき)は来ぬ
暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて
海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あゝ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あゝ、インタナショナ~ル~、我~等が~もの~♪

佐々木孝丸/佐野碩訳詞・ドジェテール作曲

風にはためく「インターナショナル」の文字を見て、つい1960~1970年代の左翼学生運動を思い出してしまった(ただし当時の旗は赤色だったはず)。

47NEWS

MRI訴訟、地裁に差し戻し 東京高裁「日本で審理を」

 米資産運用会社「MRIインターナショナル」の顧客9人が計7千万円以上の出資金返還を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は17日、訴えを不適法とした一審東京地裁判決を「日本での審理の道を断つことは不合理だ」として取り消し、審理を同地裁に差し戻した。

 MRIが顧客側と交わした契約書には「一切の紛争は米国ネバダ州裁判所の管轄とする」と記載されており、一審はこの記載が有効と判断、原告の訴えを却下していた。

 高裁の田村幸一裁判長は「管轄の合意が甚だしく不合理な場合は効力が否定される」と指摘。
2014/11/17 16:08 【共同通信】
テレビ東京 WBSニュース
11月17日


高裁判決 MRI訴訟「日本で審理を」

アメリカの資産運用会社MRIインターナショナルの顧客が出資金の返還を求めている裁判で、東京高裁は「管轄でない」と訴えを退けた一審の判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻しました。判決では、管轄をアメリカの裁判所のみとしたのは「甚だしく不合理」と指摘しています。
右端の男性は第二次訴訟の第一回口頭弁論で横断幕を広げていた「MRI被害者団」のメンバーと同一人物で報道インタビューに応じた75歳「投資家」、「MRI被害者団」代表の安仲(やすなか)氏か?



この他にも、ぐぐると総計30件以上の「報道」がヒットしてMRI事件としては久しぶりの盛況となったが、上記大手メディアのほとんどの記事と同様に何れも共同通信または時事通信の配信記事の転載と思われるので省略。また、ANNとWBSの動画は裁判所前のビラ巻きや弁護団の記者会見部分のみが実録で、MRIのラスベガス本社などのカット、シーンは「資料映像」からと思われる。

このぐぐるのヒット件数についてちょっと考察すると、拙者には何となく本控訴審判決の「報道」件数の方が一審判決の報道件数より多いように思える。ただし残念ながら具体的な定量的データは持ち合わせていない。拙者の学んだ情報論・科学では、「生起確率の低いものほど情報量が多い」と言う一種の定理がある。「生起確率が低い」とはその事象が発生しにくいと言うことで、「情報量が多い」とは珍しいから取り上げる価値が大きいと言うほどの意味。よく引き合いに出される例は、犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛むとニュースになると言う話で、犬が人を噛むのは珍しくもなんともないからニュースに取り上げる価値はないが、その逆は珍しいからニュース価値がある。しかし、千頭の犬が一斉に人を噛んだらこれはニュース価値がある。もし千頭の犬が人を噛むのと一人の人間が犬を噛むのと同じニュース価値があるとすれは、人が犬を噛むことは犬が人を噛むことの千倍の情報量がある。

で、今回の控訴審判決が一審判決より報道件数が多いのが事実とすれば、「日本に裁判の管轄あり」とした控訴審判決は、「日本に裁判権はない」とした一審判決より生起確率が低い、すなわち世間の予期しなかったことと考えられなくもない。弁護団自身も「画期的判決」と言っているように、今回の判決はある意味驚きであったかも知れない。ただし生起確率と情報量が単純な反比例の関係になるのは各事象が互いに無関係に起こる独立事象の場合だけで、互いに相関或いは履歴を持つ従属事象の場合は、隣の事象との距離を以て情報量を定義できるから生起確率だけで情報量を決めるわけには行かず、そして現実の事象は多かれ少なかれ従属的であり、今回の控訴審判決も一審判決の連続或いは結果であるから、一審判決を逆転したと言う所に情報量の多さがあって世間の耳目を集めたとも解釈できる。

ま、こう言うことでも、錆びついた初等数学脳に僅かな動きを与える意味はある。



さて、「審理差戻し」とは、上訴を受けた上級裁判所が、原判決を下した下級裁判所が審理を尽くしていないと認めて、もう一度審理をやり直すように命令することらしい。裁判所法4条により上級審の裁判所判断はその事件について下級審裁判所を拘束するとなっているから、今後、東京地方裁判所は別の裁判官を割り当てて裁判管轄権が日本に(も)あるとの前提で実体審理に進むと思われる。

ただし、裁判所法4条の上級審の下級審拘束とこれを「各審級の裁判所の判断の不一致による事件の解決の無限の遷延を防ぐ立法趣旨」と認める最高裁判所の判断(平成7年3月27日第二小法廷)もあるが、日本国憲法76条第3項には「すべての裁判官は、その良心に従ひてその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」とあり、憲法は全ての法律・命令を超越する最高法規だから、東京地方裁判所が差戻し審理でまた「管轄権なし」と言う判断をすることも理論的にはあり得ると思うし、また原審とは違う理由、例えば二重提訴を理由として原告の訴えを却下する可能性だってあるだろう。

またMRI側は控訴審判決を不服として最高裁判所に上告して控訴審判決の破棄を求めることもできると思うが、浅学の拙者にはよく分からない。



判決理由は産経ニュースが詳しい。
  1. 出資者のうち1人は裁判を米国の管轄とするとした合意がなかった
  2. ほかの出資者については、合意を原則として有効としつつ、はなはだしく不合理な場合は効力が否定される
  3. MRIは日本国内で勧誘や販売をしており、出資者の主張を判断するのに必要な証拠が米国に偏在しているとはいえない
  4. 日本での審理が、MRIにとって不合理で過大な負担を強いるとはいえない
  5. 原告がアメリカで審理に対応するのは大きな負担になる
  6. 更に日本経済新聞の記事などでは、MRI側が契約時に運用が行き詰まっていたにもかかわらず勧誘を続けた上、出資金の管理状況の説明も怠った
などが挙げられている。これらの理由を批判的に検証する。

  1. の「出資者のうち1人は裁判を米国の管轄とするとした合意がなかった」とは、この「出資者」はMRIが契約書に専属的合意管轄裁判所を明記する前に契約したと言うことか?しかし、事前に合意管轄裁判所の明記がない場合は原則的に被告の住所を管轄する裁判所に訴訟を提訴しなければならない筈だ。
  2. は、東京地方裁判所の第一審の「何百万、何千万、何億円もの大金を投資するのだから、契約書に書かれてあった専属的合意管轄裁判所の件についても十分注意を払い納得して契約したと見るのは自然」という論理を無視して、「弱いカワイソウな人達だから」とルールを曲げる「後出しじゃんけん」の印象がある。
  3. は、実体審理が始まればもう日本には審理の材料となる証拠は実際にはほとんど残っていないと言うことが明らかになるかも知れない。
  4. 「不合理で過大」かどうかは知らないが、二重提訴はMRI側の負担を増すことは確かだ。
  5. は、実際にネバダ州でクラスアクションを求める裁判が進行しており、この理由の正当性には疑問が生じる。
  6. はMRI側の不誠実さ・欺罔性だが、これは「被害者」達の直接の情報源となっていた日本支社幹部が事業の行き詰まりを知りながら或いは資金管理の杜撰さに気付きながら勧誘していたのかどうかを含めて管轄裁判所が決まってから実体審理で明らかにすべきものであり、この段階で決めつけられるものなのだろうかと言う疑問を抱く。

上記報道の埼玉県在住65歳女性や75歳男性「投資家」氏らのコメントにあるように、この決定は2013年6月10日の本訴訟提訴の時点に戻っただけであり、訴えの中身はまだ何も審理されていない。まぁ、ネバダ州の裁判の経過から見て原告「被害者」側の訴えが認められる可能性は高いだろう。しかし、例えばSECの裁判は、「『MARS投資』の取引が合衆国内で行われたことは明白だから合衆国の裁判所で裁判を行うのは適当である」と言う判断の下に審理が行われており、これは逆に言えば「『MARS投資』の取引は日本国内で行われたのではないから日本で裁判するのは適当でない」と、日本での訴えの棄却を求める論拠にもなることなど、MRI側はあらゆるロジックを駆使して反論してくることが予想されるし、また日本にはもはや事務所や証拠物など審理の対象となる事物は残っていないと推測されるから、そう物事が早急に進展するものではなく、また現在まで提訴以来1年半近くも経って「入り口からやり直し」と言う裁判の進行状況から見て解決にはさらに長期間かかることが予想され、更には今後ネバダ州の裁判でクラスアクションが認められればMRI側の「原告・被告・訴因・請求が重複していて二重提訴」と言う論理は正当性を増してくるので、「勝った、勝った」などと訳も分からず喜ぶのは適当ではないだろう。

更に、この訴訟は9人の特定の原告が起こしたものだから、クラスアクション制度のない日本では、たとえ勝訴したとしてもその効果はこれらの9人の原告以外に及ばないのではないか?だから2014年6月19日に提訴した第二次訴訟のように今後次々と訴訟を提起する必要があるように思えるが、拙者の浅学ではよく分からない。



民事訴訟を起こすためには訴訟金額に応じた手数料を予め提訴時に裁判所に納付しなければならず、納付しないと裁判所はそもそも訴えを受け付けてくれない。手数料は訴額と一審か控訴審かとかの条件により決まり、もし弁護団に委任した「被害者」達全員分の訴訟を起こすとなると、2014年11月13日現在委任のあった合計「被害額」は972億円と言うことだから、これを一括提訴して訴訟費用を節約しても裁判所納付額は1億円近くになる。この裁判所納付金は最終的には敗訴側の負担になるとは言え、判決確定前までは申し立て(原告)側が立て替え払いをしなければならず(原告敗訴ならば当然自己負担)、被害弁護団が「被害者」達から集めた資金は1億円程度で、そのほとんどがアメリカの弁護団に払われていると言われる現状で、どこから訴訟費用を捻出するのだろう?過去には、対大企業の公害被害の賠償に関わる集団訴訟で、その巨額の請求額に応じた納付金を零細漁村民だかの原告側が調達できないので、その事件に限り、納付を提訴の条件とすることは著しく社会正義に反するとの判断を裁判所が下し、予納の一部だか全部だかを免除だか猶予だかしたことがあったように記憶するが、「被害者」一人当たり平均1,500万円以上を私利私欲で吝嗇のために「投資」して騙し取られたと見られる本件で原告が高々「被害」金額の1/1000程度の裁判所手数料を払えない道理がなく、手数料の納付を免除・猶予するような特別扱いはそれこそ社会正義に反することだから、そのような特別扱いは起こり得べくもない。

本訴訟で今までに日本で仮に差し押さえられた被告側の資産は、鈴木一家が日本に所有するマンションなど私財計3.5億円相当だけらしい。この控訴審判決でこれら9人の原告の提訴の件は日本の裁判所で実体審理が始まりそうだが、だからと言ってネバダ州の裁判とSECの裁判で仮差し止め・資産凍結された推定数億円程度と言われるMRIの残余財産、推定数十億円程度と言われる鈴木一家とフジナガの私財からなる出資金返還・賠償の推定原資が増えた訳でも増える訳でもない。

事件発生・弁護団結成・第一次訴訟提訴後1年半近く経った現在でも、日本国内弁護団の提起した訴訟は僅か2件、原告数計15人、合計請求額3億円少々に止まっている。これは、弁護団がMRI側にはもはやこれ以上返還に充てる原資・資産がないと見て「カラ撃ち」を防ぐために追加訴訟を抑制或いは諦めているのだろうか、それとも弁護団の当初の宣伝のように今後続々と新たな訴訟を提起するのだろうか?本件が「被害者」達にとって前途多難なことに変わりはない。
2014-11-18 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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アメリカの医療費・健康保険事情をみたび

合衆国の医療費と健康保険の事情と特性については何度も書いたが、更なる理解のために最近拙者の家族に起こった医療費の事例を取り上げる。

下に示すのは、拙者の家族メンバーが被ったある医療事故の結果、近隣の大学病院で緊急入院(5泊)・緊急手術をしたときの保険の支払い明細書(EOB = Explanation of Benefits、個別項目部分省略)。実は同じ入院・手術に関して、この他にも数十ドルから一万ドル少々の請求が合計十件ぐらいあるが、それらは省略。

eob-220k.png

請求金額を見て驚くことなかれ、22万ドル余り。日本円にして約2,500万円!!!!小さな家が買える値段であり、入院一泊につき約500万円(治療費込)は、どんな高級ホテルのスイートも敵わないだろう。細目(上の画像では省略)を見ると、レントゲン1回につき1万9,000ドル(約220万円)、1万6,000ドル(約180万円)などと言うものもあり、治療を受けた本人は「かなり特殊なレントゲン検査だった」と回想するが、べらぼうな金額であることに変わりはない。

更に驚かされるのは保険会社が病院に払った金額。5万3千ドル足らず、割合にして24%弱であり、残りの16万8千ドル近くは「契約による値引き」と言うことで自己負担はゼロとなったから、保険と言うものは誠にありがたいものだ。これが年間5,000ドル足らずの自己負担保険料と拙者の勤務先の拠出を合わせて年間2万ドル(約230万円)程度の保険料で済んでいるから、拙者の家族は誠に幸運である。保険からの支払いと拙者と拙者の勤務先の払う保険料の差は結果的に他の被保険者の負担になることは勿論だが、保険と言うものは本来そう言う性格のものだ。本人は決して好んで傷病になったのではないと言う論理は正しく、保険金も全額病院への支払いだけに使われており、同じく保険からの支払でも、東日本大震災の焼け太り保険金1,000万円をMRIに投資したなどと言う意図的な悪質さとは無縁。

ところが、合衆国には拙者の家族ほど幸運でない人がわんさかいる。個人で買う健康保険は勤務先経由より割高なのが普通(しかも普通は会社は従業員保険料の一部を負担)で、例えば4人家族で最低限の保障を得ようとすると月700ドル(約8万円)前後、「普通」の保障を得るにはその数倍はかかるから、所得の低い人は二の足を踏み、2013年の健康保険改革法、通称オバマケアの導入直前の推定で、合衆国に暮らす人の約15%は健康保険を持っていなかった。健康保険を買っていない人は毎年4月15日の所得税の確定申告(合衆国内で所得のあった個人と法人及び合衆国内外に滞在の合衆国市民と合衆国永住者全員の義務)で罰金に当たる割増税を課すことで国民皆保険を強制したオバマケアだが、そもそも税の申告をしていない人口は少なくなく、オバマケア発行後の現在もかなりの人口が未だに健康保険を持っていないと思われる。

健康保険がなければどうなるか?自腹で請求金額を払うしかない。まぁ、病院と交渉の余地はある。病院側も保険があれば請求全額が支払われないことは百も承知だから、そこを突いて「もし保険があったら保険会社が認めるであろう」金額に負けてもらう。それでも自己負担は辛いが仕方ない。拙者は嘗て1年間の失業中に、やはり家族のものが内科の急病で緊急入院・緊急手術をしたときに無保険だったので、病院と交渉して「定価」6万ドルの請求を4千ドルに負けてもらったことがある。

しかしながら、この合衆国の高額な医療費は、金の無い人々をして医療サービスから足を遠ざけさせるのに十分だ。

「無保険者」は旅行者も同じこと。例えば、日本からアメリカに観光旅行に来て自分の過失で事故に遭い2週間入院したら、多分自宅を手放さなければならない位の治療費を請求されるだろう。日本の国民健康保険や健康保険組合の保険が日本国外の緊急医療費も払ってくれるとは言え、それは日本の医療費ベースでの話。例えば合衆国の病院から5,000万円分の請求が来ても、当該医療サービスが日本の保険基準で50万円分にしか相当しなければ、2割自己負担として日本の保険から40万円支給だけだ。また、日本の保険の支給がいくらであろうと、それが降りる前に合衆国の病院からの請求は自分で払わなければならない。

「アメリカで救急車を呼ぶと先ずクレジットカードを見せるように言われる」と言うのは冗談にしても、救急車も無料ではなく一回数百ドルかかることは事実で、保険がなければ自己負担するしかない。よい知らせは、医療機関は医学的緊急性のあるサービスは患者の費用負担能力に関わりなく施さなければならないことが法律で義務付けられていること。だから、生き死にに関わることで、金がないことを理由に治療を拒否されたり病院を追い出される心配はない。

今でこそ日本の医療技術は世界のトップクラスだが、つい30年ぐらい前までは、毎年、或いは数年に一度程度、どこかの日本人の難病の子がアメリカで先進治療・手術を受けるために訪米するための寄付金を募る新聞記事を見たものだ。寄付金まで募る必要があったのは、合衆国の医療が技術的に先進的だった分費用も高額だったからと想像するのは易い。

合衆国の健康保険を持っていれば、結果的に普通に払える程度の自己負担或いは自己負担なしでそのような高度な医療サービスを受けられる可能性はある。では合衆国の健康保険は別に合衆国国民でなくても買える(ただし社会保障番号などを申告しなければならないから、合衆国に居住しない人が購入するのはそう簡単ではないと思う)から、日本人の難病の子もそのような高額医療サービスを受ける前に合衆国の健康保険を買ってからにすればよいではないかと言うとそうでもなく、当然のことながら、1,000ドルの保険料を払うだけで10万ドルの保険支払をしてもらえるような仕組みは存在しない。既往症は保険を買うとき、或いは適用を審査するときにチェックされ、保険購入前の一定時期(1~数年)からの既往症は保険の適用外あるいは支払い条件が厳しくなる(出産についても同様で、一般に出産費用をカバーする保険でも保険購入前からの妊娠は既往症扱いで適用外のことが多い)。ただし、新規保険購入前の過去に、他会社のプランであっても継続して健康保険を買っていればそれらのプランも含めて「何時から保険を持っているか」が考慮されるから、転職が頻繁な合衆国で新しい会社に就職するたびにその会社の提供する保険プランに乗り換えなければならないことによる既往症その他の制限に関する不利益はない。

この、保険の新規購入と既往症の保険適用及びその他の同様の制限はオバマケアでかなり緩和されたが、オバマケアは合衆国の医療サービスを合衆国に在住する人々の負担で格安で外国人に提供することが目的ではないから、その効果は旅行者などには及ばない。まぁ、合衆国に観光や仕事などで来る時には、医療費をカバーする「海外旅行保険」を買ったほうがよいかも知れない。

拙者はこの国に住むようになってから30年になるが、家族の中にしばしば大病を患ったり、何かと医者通いをしなければならない者がいて、先日も医者から1,300ドルの請求があったが、保険会社が「契約外の医者だ」と200ドルしか払わず残りの1,100ドルは自己負担だと言うところを「他に選択肢がなかった」と言う理由で保険から500ドル余り払わせ、更に医者と「保険会社は500ドルしか認めないから500ドルに負けろ」と交渉をするなど、医療費の問題には常日頃関わっている。

合衆国の医療費は世界一高額で、2011年の統計では、その規模は国民総生産(GDP、約15兆ドル)の実に18%、一人当たり年間8,680ドル(約100万円)だから、当時の合衆国の総人口を約3億1,000万人として国家規模では2.7兆ドル、現在の換算レートで約300兆円になる。ネットで「アメリカ生活」を検索してみたまえ。高額な医療費の話題に事欠かない。

これに対して、日本の2010年の統計は一人当たり2,750ドル(約30万円)、GDP(約480兆円)の8%、約40兆円だから、合衆国の医療費がいかに巨大であるかが分かる。まぁ、医療費が大きいと言うことはその国の国民が不健康であるとも言えなくもなく、例えば合衆国の男性の30%以上は肥満だが日本は5%以下であるとかで、膨大な医療費は決して自慢できることではないのも事実。

で、本ブログの主題であるMRIインターナショナルの話に戻れば、合衆国のGDPの1/5近くを占める超巨大産業である医療だから、そこには割合は微小でニッチであっても結構な儲け口がある訳で、MRIのような医療売掛をコラテラルつまり担保にした、或いは売掛そのものを買い取る、医療分野に特化したファクタリング業も、「medical factoring」でぐぐればわわわっとヒットする。しかし、MARSだ、ファクタリングだ、と尤もらしい名前を付けても、この商売が数週間から数ヶ月分の資金ショートに悩む経営の怪しい医療機関に銀行金利より高利で融資する高利貸し業(貸出年利12~24%、2014年11月現在の銀行のプライムレート=優良顧客貸し出しレートは3.25%)であることに変わりはない。個人で言えば、毎回次の給料日までサラ金で金を借りてやりくりする経済的低能力人間と似たり寄ったりだろう。

上に示したように、信頼できるソースによれば、2010年頃の合衆国のGDPは約15兆ドルで、そのうち医療費の占める割合は約18%の2.7兆ドル。ところが、MRIは、同年度のMARS「市場流出量」は1.7兆ドルだったと宣伝し、政府が運営するメディケア(高齢者医療保険)やメディケイド(低所得者医療保険)など、何もかも含めた合衆国の全医療産業2.7兆ドルの実に62%が売掛債権をコラテラルにして高利貸しから借金をすると「投資家」達に信じ込ませようとし、そして事実このようなちょっと調べればその信憑性に大いなる疑問が生じる宣伝を「投資家」達は信じ込み、せっせと大金をフジナガと鈴木一家の贅沢のために送金したことになる。

実(げ)にものを知らない、或いはものを考えない習慣と言うものは高くつくものだと言うことを感じる。

ところで、「MARS回収」と言うビジネスは儲かるのだろうか?正直言って拙者にはよく分からない。しかしぐぐるに数十件のファクタリング会社がヒットすると言うことは、それだけで事業としての存在感がある。

さて、これも何度か強調してきたことだが、例えば上の拙者の家族の医療費では保険会社は病院の請求額の24%しか認めず、残りの76%は「契約による値引き」として処理されている。MRIはこれを逆手にとって、「医療機関が直接請求すると支払い率は平均30%」などと宣伝していた。そう聞くと、何となくMRIのような債権回収会社はこの76%を懐に入れられ大儲けしそうな気がする。合衆国の保険事情など全く知らないのに、これを受け売りしたようなメディア記事もあった。

これは大きな間違い。債権回収会社が間に入ったところで保険会社は余計には払わない。上記の拙者の家族の例では、病院は22万ドルの請求だが、もしこの医療売掛をMRIのようなファクタリング会社に売ると、ファクタリング会社は今までの経験などから保険会社からの支払いは5万ドルと予想して、例えばその80%の4万ドルで買い取る。これを保険会社に持って行くと数週間後に5万3,000ドル弱が払われるから、それと買い取り価格の差の1万3,000ドル弱がファクタリング会社の儲けになる。決して「値引き」の16万8,000ドルに手を付けられるわけではない。MRIは、この値引き分が取れると明言はしていなかったが、「回収率30%」を強調することで、あたかも残りの70%(またはその一部)が取り分になるような宣伝をしていたように見られる。

以前書いたことの繰り返しをもう一つ。MRIが数ある医療ファクタリング会社の中でどのような存在だったかと言うと、実はかなりヤバい会社だったようだ。1,300億円(或いは800億円)集めたと言われる金のかなりの部分は旧来の「投資家」への利払いや償還に充てるポンジースキームだったことはほぼ明らかになったが、それでも集めた金の数%、20億円足らずは実際にMARS購入すなわち医療ファクタリングビジネスに使っていたらしい。しかしながら、拙者が調べたいくつかの医療ファクタリング会社は、発生後150日までのMARSを買うと明言していた。これは、181日以上経過した医療費は保険会社が支払いを拒否するからだ。ところが、MRIは、今はなくなってしまったラスベガスの本社ウェブサイトで、151日以上のMARSも買うとしていた。これは取りも直さず、MRIは他社が手を出さない不良債権に近い期限切れ間近のMARSを安値で買い叩いて急いで保険会社に請求すると言う、かなり危ない商売をやっていた証左に思える。
2014-11-13 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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また減るMRIの資産 ~Gilmore and Gilmore会計事務所への支払い~

2014年11月5日、合衆国ネバダ地方裁判所のジェイムス C. マハン判事は、SECから請求の出ていた、ギルモア・アンド・ギルモア会計事務所の、裁判所が指名したマッグラリー会計事務所のMRIの会社資産とフジナガの個人資産の仕分け作業への協力報酬に関する2014年5月31日付の5,000ドルの請求書を承認し、法廷書記にギルモア・アンド・ギルモア会計事務所に5,000ドルを裁判所への預託基金から小切手で支払うよう命令した。

この「ギルモア・アンド・ギルモア会計事務所」とはMRIのラスベガス本社が使っていた会計事務所らしい。2013年に1,300億円消失事件が明るみに出た2か月後に、MRIはギルモア・アンド・ギルモアの会計報告書を基に「2011年以降MARSの回収業務を全く行っていないと言うのは真実ではない」と言う趣旨の釈明の書簡を金融庁に送っている。
2013年6月25日

〒100-8967 東京都千代田区霞ヶ関3−2−1
中央合同庁舎第7号館
金融庁
件名:MRIインターナショナル
金融庁 および ご担当者様

2013年4月26日に第二種金融商品取引業の登録取消処分等を受け、業務改善命令に従い返済に関する方針の策定、同時に顧客の契約状況把握に努めて参りました。さらに、弊社は現在これらの問題を日本で補助できる代表人を積極的に探しております。

これらの問題に対し、この書簡において現在弊社は2011年以降診療報酬請求債権(MARS)を購入していないという誤った報告書を修正したいと望んでおります。その修正に伴い、公認会計士事務所ギルモア&ギルモアによって作成された書類を以下の通り同封いたしますので、ご確認いただきたくお願い申し上げます。

2011年MRIインターナショナル社の納税申告書と公認会計士事務所ギルモア&ギルモアによって作成された納税申告書作成時に参考とした会計精算票のコピー

これらの書類は2011年に弊社が診療報酬請求債権(MARS)を購入していた事実を指し示しており、さらに2012年、2013年と継続いたしております。 弊社は2012年の納税申告書を数週間のうちにご用意できるよう準備を進めております。また、これら納税関係の書類に反映されている通り、弊社が$22,764,335.12の診療報酬請求債権(MARS)を購入していることを確認していただけます。この購入額は2012年には増加しており、2013年にはさらに増加いたします。

弊社といたしましては、診療報酬請求債権(MARS)の購入を過去も現在も継続して行っておりますこと、そして2013年4月26日に下された金融庁の命令に従い、当社投資家の財産を守るために可能な限り尽力する所存でおりますことを、ここに申し上げる次第でございます。

                            敬具
                            MRI International, Inc.
                            社長 エドウィン フジナガ
しかしながら、上記の書簡中の「実際にMARSを購入していた」と言う申し開きも、その金額は2011年に僅か2,300万ドル足らず、日本円にして23億円程度だから、同年にMRIが「投資家」達から集めたとされる「お預かり残高」約1,300億円とはかなりの開きがあることは確か、と言うより、集めたと主張する金額の僅か1.7%しか運用していないと言う数字をよくもまぁ臆面もなく当局に報告したものだと感心する。こんな書簡で申し開きができると、日本の金融当局を舐めきっていたのだろうか? なお、SECの裁判で裁判所が認定した実際のMARS購入額は1,610万ドル(約18億円)と更に少ない。

また、裁判所がギルモア・アンド・ギルモアに対する報酬の支払いを認めたと言うことは、この会計事務所は特に疚しいことはないのだろう。錯乱状態にある一部「被害者」達が「不正を見逃していたギルモア・アンド・ギルモアも同罪だ!」などと叫ぶかもしれないが、それはお門違い。会計事務所は報酬を受け取って顧客の会計事務を行うのが仕事で、顧客の収入の出どころや使い道を詮索するものではないと言うことだ。
2014-11-07 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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更に減るMRIの資産 ~会計事務所第5次支払い~

2014年11月3日、SEC(合衆国証券取引委員会)の裁判で、合衆国ネバダ地方裁判所のジェイムズ・マハン判事は、2014年9月29日にSECから支払いを請求されていた、被告MRIインターナショナル・インクの会社資産と社長エドウィン・ヨシヒロ・フジナガの個人資産の仕分けなどを行っているマッグラドリーLLP会計事務所からの2014年7月1日から2014年9月15日までの作業分としての2014年9月23日付の36,312.50ドルの請求書を承認し、裁判所に預託されている基金から法廷書記が小切手で支払うよう命令した。

これは、前回の第4次請求書支払いに続くものである。

この36,312.50ドルは112.3時間分の作業と言うことで、時給換算で1時間当たり323.35ドル(約3万7千円)になる。

現在までのマッグラドリーLLP会計事務所への支払いは以下の通り。





回数決定日稼働時間・金額実 費合計金額支払い元
第1回2014年4月14日41.2/$14,317.50$250.00$14,567.50CSA銀行口座
第2回2014年5月 5日102.1/$29,588.71$24.21$29,606.71CSA銀行口座
第3回2014年5月28日55.2/$16,848.90$16,848.90CSA銀行口座
第4回2014年8月15日104.2/$29,575.00$217.62$29,792.62裁判所預託基金
第5回2014年11月3日112.3/$36,312.50$36,312.50裁判所預託基金
累 計$127,128.23

この決定文には、SECが支払いを要求する請求文と、会計事務所からの請求書も添付されているので興味深い。

また、上記のSECが支払いを要求する請求文によれば、2014年7月3日の裁判所命令により、原告(SEC)、被告(MRI、フジナガら)双方から、2014年7月14日に299,989.89ドル、2014年7月21日に1,081,977.16ドル、合計約138万ドル(約1億5千万円)が裁判所預託基金に払い込まれている。上記金額のどちらが原告(SEC)側でどちらが被告側からのものなのかは定かではない。しかしながら、第3次請求書と第4次請求書の支払いの間に裁判所が上記の相当な金額を被告側からも預託するように命令したと言うことは、第1次~第3次の会計事務所への支払元だったCSA(Claims Servicing of America、交替被告として訴えられている、実質的にフジナガが所有・経営で実際にMRIの「MARS回収事業」を行っていたと思われる金融会社)からの資金流出が続いていて、裁判所が訴訟に関わる将来の費用の被告側の負担能力に懸念・危惧を抱いて一定額を預託させて保全した可能性も考えられる。

前回と同じく、今回の第5次請求書が最終請求書であるとは言っていないから、仕分け作業とその費用負担が今後も続く可能性はある。
2014-11-06 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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近藤哲也弁護士のブログ

MRI事件に関わっていると言う現役の自称国際弁護士のブログの2014年9月2日付の記事を見つけた。

この「近藤哲也」と言う人物は、こちらの情報によれば以下のような経歴を持つ。
 ・京都大学法学部(法学士)
 ・ジョージタウン大学(ロースクール)(法学修士、証券と金融規制)
 ・司法修習第55期(2001~2002年)
 ・第一東京弁護士会所属 (2002年登録)
 ・弁護士、ニューヨーク州弁護士
2013年7月から東京・赤坂で開業しており、弁護士登録以降それまでの約11年間は、ニューヨーク州の弁護士事務所を含むいくつかの弁護士事務所でイソ弁(居候弁護士)をしていた、弁護士としては「若造」の部類と思われる。

以下に、近藤先生のブログ記事を引用する(2014年11月2日閲覧、下線[拙者註]は拙者)。
ポンジー・スキームの特徴(MRIインターナショナル事件を参考に)

今回は私も関わっているMRIインターナショナル事件に関して気づいたことを書いてみたいと思います。

といっても、現在もまだ進行中の案件でもあり、また、職務上の守秘義務もありますので、差し障りのない話題を選びたいと思います。

MRIインターナショナルの販売していた投資商品は、投資に対するリターンが固定金利になっていて(ただし運用成績が悪ければリターンは下がる)[拙者註10]その金利設定がやや高めであることから、その利率につられて多くの個人投資家(といっても年金生活者の方が多いのですが)が出資したようですが、私は、固定金利という作り込みの商品であるのを最初に知った時に、 Financial Advisor Due Diligence: Seeing Through the Smoke and Mirrors という本(個人投資家向きに書かれた、投資する場合には素人考えで安易に投資先を選ばないで信頼できるアドバイザーを使うことを啓蒙する本です。日本語訳が出ているかは存じません。)の一節を思い出しました。

該当部分を引用します。

「ポンジー・スキームの特徴
(略)
・市場金利より高率の、保証されたリターン又は約束されたリターン
もし貴方が一定の利率を保証されたなら、それは、いかなるときでも、貴方が投資している資金が誰かにローンとして貸出されていることを示している[拙者註1](譲渡性の)預金証券(Certificate of Deposit)[拙者註2]が利率の保証を約束できるのは、銀行は当該資金を借り手に融資しているからである。銀行が投資家(預金者のこと)に支払う利息は、自らが貸出先に要求するよりも低い利息額である。したがって、市場金利よりも高い金利は、次の二つの可能性を示唆しており、これら二つはいずれも望ましくない。すなわち、11借主が不払いとなるリスクが高いために高利となっているか、 約束されたリターンというのは、控えめに言えば疑問の余地のあるものであり、最悪の場合、完全ないかさまである[拙者註3]。(以下略)

(Ponzi Scheme Characteristics
(略)
・Guaranteed returns or promised returns higher than market interest rates. Any time you are guaranteed a rate of return, it is an indication that the money you are investing is being loaned to someone. Certificates of deposit promise a guaranteed rate of return because the bank is loaning the money to a borrower. The bank pays investors less interest than it charges the borrower. Therefore, a higher than market rate of interest suggests one of two things, and each is bad: 1) the borrower is a high risk borrower, thus the higher interest rate for the loan, or 2) the promised return is, at a minimum questionable, and, at the maximum, completely bogus.(略))」

MRIインターナショナルの説明によると、投資家から集めた資金は診療報酬債権に投資されることになっていたので、その説明が真実であると仮定すれば、上記説明は文言どおりには当てはまりません。

しかしながら、診療報酬債権のサービシング業というのは、要するに、一種の不良債権(医療保険制度が関わってくるという特殊性はありますが)を額面未満価格で購入して額面又はそれに近い価額で回収することにより差額を利鞘とするビジネス[拙者註4]なので、どの程度のリターンが見込まれるかはどの程度のディスカウント価格で債権を買うかということと密接に関連するはずです。

そうだとすると、病院等の医療機関から数年にわたって毎回同じディスカウント価格で診療報酬債権を買えるとは限らないため、投資家のリターンを固定金利、しかもやや高めの設定とするには相応のリスクがある(従ってまともな商品として投資家に販売するのであれば固定金利とするのは望ましくない)[拙者註5]という発想につながる気がします。

それが固定金利の商品として売られていたこと自体、レッド・フラッグとまでは言えないまでもイエロー・フラッグぐらいにみるべきだったのではないかと思います。

もちろん、上記に対しては、素人の後付けの考えに過ぎないとの批判が予想されるところではあります。

しかしながら、日本でも、診療報酬債権のサービシング業に関して[拙者註6]、XXがXXXXしてから業界全体のリターンが大きく下がったと私も仄聞しており、日本の業界動向をご存じの方であれば上記リスクは当然予想されたことと思います(念のため、情報源との関係であえて伏せ字にしています。そこまで配慮する必要はないかもしれませんが。)。

MRIの件はひとまず措くとしても、高い固定金利の投資商品は、①その高い固定金利よりも更に高い金利で貸し出された、リスクの高い貸出先へのローンを原資産としているか(つまりデフォルトの危険も大きい)、②全くのバッタ物かのいずれかだ、という上記書物の忠告には無視できない重みがある[拙者註7]と思います。

話は変わりますが、私は、弁護団業務の一環としてMRIインターナショナルが商品販売のために作ったパンフレットをみていて、ストラクチャー図にどうしても理解できない部分がありました。

一般用パンフレットなので誰にでも理解できるようにするためにあえて簡略化したのかと最初は考えていましたが、事案の内容が徐々に分かってくるにつれて、私が理解できなかったのにはやはり相応の理由があることが分かりました(その分からない部分というのが、証券取引等監視委員会が検査の結果確認した、分別管理しないでファンド間の資金の移動を可能にする部分に関係していました)[拙者註8]

これを読んでいる皆さんは、(何となく怪しいという理由で)投資すべきか判断に迷っている投資商品があれば、ファンド弁護士(証券弁護士)にストラクチャー図を見せてください[拙者註9]。ファンド組成の知識のある弁護士が見て理解できないストラクチャーというのは、端的に申し上げて危険です。

もちろん、ストラクチャーに全く問題はなくても完全な詐欺商品というものも巷にはいくらでもありますので、ストラクチャーが大丈夫だから詐欺ではないということにはならないのですが…..。

まとまりのない文章になってしまいましたが、今回はこの辺で。
近藤先生ご本人もおっしゃるようにまとまりに欠ける文章で意味を追うのは辛いが、いくつか気が付いたことを挙げる。

先ず、近藤先生は「私も関わっているMRIインターナショナル事件」と明言され、ブログのプロファイルページでも「所属団体 MRI被害弁護団」を挙げていらっしゃり、確かにMRI被害弁護団の「弁護団の構成」のページにリストされていらっしゃるから、MRIインターナショナル事件の真相と背景にはご精通なさっていると期待される。

この記事の主旨は、近藤先生ご愛読の書の一節を引用して、「高利回りの固定金利を謳うものは詐欺だ」と言うお説の証明をなさろうとしているようだが、果たしてそれは正しいだろうか?先ず、引用なさった先生のご愛読書の以下の箇所。

【1】もし貴方が一定の利率を保証されたなら、それは、いかなるときでも、貴方が投資している資金が誰かにローンとして貸出されていることを示している
世の中には固定金利を保証する金融商品は銀行預金以外にもいくらでもある。例えば社債、公債(地方債)、国債など、これらの債券の発行体は貸金業を営んでいる訳ではない。借りた金を又貸しする商売は金融業、典型的には銀行などに限られると思うが、何を以て「いかなるときでも、、貴方が投資している資金が誰かにローンとして貸出されている」と言うのだろうか?

【2】(譲渡性の)預金証券(Certificate of Deposit)
合衆国で「CD(= Certificate of Deposit)」と言えば、普通は日本で言うところの「定期預金」を意味する。日本の定期預金と同じく、銀行・預金種類によって数百ドル程度の最低残高の規定はあるかも知れないが、3ヶ月、6か月、12か月、…、最長5年程度などの長期の資金据え置きの見返りとして普通預金より高めの固定利息の支払いを約束するもので、庶民が買え、特に投資知識が乏しくリスクを嫌う高齢者には未だに人気がある。

昔は文字通り預金の証として紙の預金証書(Certificate of Deposit)をくれたらしいが、少なくとも拙者が記憶している30年ぐらい前にはもうオンライン化が進んでおりそんなものはなく、単に銀行に電子的に記録されるだけになった。ちなみに、合衆国の銀行には「通帳」と言うものがないのが普通。その代り、毎月の締日の数日後に1ヶ月分の「利用明細書」が届く。その利用明細書も、十年以上前から、ネットで見て必要ならばPDFファイルをダウンロードするようになった(今でも希望すれば紙の利用明細書を郵送してくれるが、銀行は経費節減のために電子閲覧を奨励している)。

CDと似たものに譲渡性定期預金または「Negotiable Certificate of Deposit(NCD)」と言うものがあり、こちらは最低預金額が10万ドルだから、個人ではなく主に企業が安全な資金の投資先として購入するものだ。ここでは固定金利の保証云々の例として「CD」を持ち出しているのだから、一般の定期預金だと解釈するのが妥当ではないのか?

【3】市場金利よりも高い金利は、次の二つの可能性を示唆しており、これら二つはいずれも望ましくない。すなわち、11借主が不払いとなるリスクが高いために高利となっているか、 約束されたリターンというのは、控えめに言えば疑問の余地のあるものであり、最悪の場合、完全ないかさまである
(「11借主」は原文ママ)リスクとリターンが連動するのは投資の常識。例えば株式と債券を比べれば前者の方がリスクが高いから期待されるリターンも高いのであって、債券でも、一頃流行ったブラジル・レアル債とかアルゼンチン債はデフォルト(債務不履行)になるリスクが高かったからその分利率が高かったし、そして現にデフォルトになったものもある。これは資本主義経済の仕組みであり、それを基に現実の金融は動いているのであって、それを「望ましくない」と言うのは如何なる料簡であろう?「自分には許容できないリスクだ」と考えるならそのような投資商品は買わなければよいのであって、「それでも買う」と財産を摩るリスクを冒しても首尾よく成功した者にはその分の報酬が支払われることのどこが問題なのだろう?

この近藤先生のご愛読書はページ数94の比較的薄っぺらなペーパーバック。著者のダナ・バーフィールド(Dana Barfield)は「ダナ(若しくはデイナ)」と言う名前にも拘らず男性らしい。バーフィールド氏は1962年テキサス生まれで金融計画論で科学修士の称号を持ち、Certified Financial Planning Professional (CFP)とChartered Financial Consultant (ChFC)を持つと言うが、拙者はこれらの資格(?)がどのようなものかは知らない。バーフィールド氏は大学教授とかではないようで、多国籍保険会社、投資銀行、国際仲買会社、地域年金機構などの金融業界数社を転々とした後、1990年から自身の投資助言ビジネスを経営している。大学院修了・修士号取得が24歳とすると、1986年から1990年の4年間にほぼ毎年一社の割合で転職していることになる(勿論、会社勤めをしながら大学・大学院に通ったとも考えられる)。この他に金融関係の2冊の著書があると言うが、確認できたのは夫を失った女性の経済的立ち直りなどを題材にしたこちらの一冊のみ。なお、定期的にコラムを執筆していると言うサイト(RetirementWhys.com)は現在閉鎖されているようだ。




ここからは近藤先生ご自身のお言葉を検証する。

【4】診療報酬債権のサービシング業というのは、要するに、一種の不良債権(医療保険制度が関わってくるという特殊性はありますが)を額面未満価格で購入して額面又はそれに近い価額で回収することにより差額を利鞘とするビジネス
MRIのような貸金・金融商売は一般に「ファクタリング」若しくは「ファクタリング・サービス」と呼ばれる。近藤先生は「診療報酬債権のサービシング業」と言う表現を[拙者註6]でも使っておられ、「ファクタリング」と言う用語もご存じないように見えることに驚く(貸金業務一般を示す「loan servicing」と言う言葉は存在するが、「債権のサービシング業=obligation servicing business」と言う言葉は聞いたことがない)。また、当ブログで何度か解説したように、合衆国の健康保険は一般に保険会社が診療報酬額の事実上の決定権を持っており、その額は医療機関の請求額(「額面」)の平均30%程度である。「額面未満価格で購入して」はよいとして、「額面又はそれに近い価額で回収すること」は実際にはほとんどあり得ない。近藤先生は合衆国に滞在経験をお持ちのようだが、合衆国の金融や健康保険のことについては大した知識をお持ちではないようだ。

【5】病院等の医療機関から数年にわたって毎回同じディスカウント価格で診療報酬債権を買えるとは限らないため、投資家のリターンを固定金利、しかもやや高めの設定とするには相応のリスクがある(従ってまともな商品として投資家に販売するのであれば固定金利とするのは望ましくない)
要するに、近藤先生は、投資資金を集めた側がその資金を運用するときにその運用リターンが絶対的に固定していなければ、資金を提供した投資家への分配を固定利率にするのは問題だ、詐欺の可能性がある、とおっしゃっているらしい。それでは定期預金に固定利息を払うことを約束する銀行の運用(貸出)リターンが常に固定しているとでもおっしゃるのだろうか?銀行の貸出金利は市中金利に連動して変化するもので、拙者が住宅ローンを借りた経験から言えば銀行のローンプログラム表は毎週更新されていた。また融資には貸し倒れが付き物でありその件数は変動することは明らかだ。つまり、世の中に絶対的に固定利率が保証された貸出運用リターンなど存在しない。住宅ローン貸し出しにも変動利率ローンがあることは誰でも知っている。その運用リターンの変動とリスクを吸収して、投資家から固定金利で集めた資金を支払利息より高い平均受取利息で貸し出すからこそ金融業は利益を得られるものだと言うことを近藤先生はご存じないのだろうか?

勿論、MMFなどのように初めから変動利息の支払いを約束する商品もあるが、如何なる時でも約束した支払利息と運用リターンとの差と運用リスクは約束した者の責任。例えば「3ヶ月に一度金利を改定する」と言うルールの下で市中金利に連動して支払い利率を上げた直後に焦げ付きが大量発生したからと言って、ルールを破って即座に利率を下げることはできない。そうでなければ、最初から約束などなしに全て出資者の自己責任になる投資信託のようなものにならざるを得ないが、MRIの「MARS投資」は投資信託ではなかった。

更に言えば、「望ましくない(引用原文では「bad」)」とか「望ましい」とかに拘わらず、資本主義経済は需要と供給で動くものだ。例えばMRIが「配当額はMARSの回収実績で決まります。運用してみるまで分かりません。元本割れがあるかも知れません」などと言う「投資」商品を販売して、購入するお目出度い「投資家」は存在しただろうか?リスクを嫌い「元本確保」に異様に固執する日本の素人「投資家」達を引き付けて金を出させるためには、その内部運用リターンの安定性に拘わらず固定金利が必要だったことは明白だ。

また、そもそも変動金利が許容されるのは、その変動が権威・信用と市場の需要と供給によって裏付けされているからであり、例えば市中金利(プライムレート)に連動したMMFの金利とか、公設市場で取引される債券の実質金利などだ。MRIのような吹けば飛ぶような(そして実際に吹き飛んだ)零細債権回収・高利貸業者が変動金利の譲渡不能な社債を発行してもその金利の根拠は誰にも判らず、精々最低保証金利を設定しなければ誰も引き受けないだろう(MRIは「MARS投資」の性格について「MRIに投資する訳ではない」「一緒に儲けましょうと言う関係」だとか曖昧なことを言っていたが、実質は無担保の社債と言える。貸借対照表にも借入金として計上されていたようだ)。

MRIの「投資商品」としての問題は固定金利であったとか変動金利であったとかではない。問題は、会社の財務表も「MARS」の回収実績も示さず、MRIが「投資家」達から幾ら集めたと言うグラフと合衆国の全医療費を「MARS流出(流通)量」と偽ったグラフだけを投資資料として見せただけで収益性やリスクなどの情報が皆無の状態で金を集めた「闇鍋投資」とも言うべき奇怪な商品と、それに然したる疑問も持たずに応じて大金を注ぎ込んだ「投資家」達にあるのだ。

【6】日本でも、診療報酬債権のサービシング業に関して
日本にも「診療報酬債権」ビジネスが存在するとは初耳だ。点数制で自由診療を除いて報酬価格が固定されており、また国民皆保険が確立していて国民健康保険または健康保険組合からは取っぱぐれがないから日本には「MARS」はない、と聞かされていたが、日本にも「MARS」ようなものがあるなら、是非その内容が知りたい。

2015年1月4日追記 その後の調査で、日本にも医療機関相手のファクタリングサービスが存在することが分かった。

【7】高い固定金利の投資商品は、①その高い固定金利よりも更に高い金利で貸し出された、リスクの高い貸出先へのローンを原資産としているか(つまりデフォルトの危険も大きい)、②全くのバッタ物かのいずれかだ、という上記書物の忠告には無視できない重みがある
「原資産」と言う言葉は浅学な拙者には初耳だったが、金融業なら金利を払って集める資金はその調達金利を上回る「更に高い金利で貸し出され」る運用に回すのは当たり前のことであり、リターンとリスクに強い正の相関があると言う投資の常識から言って、高いリターンを約束する或いは仄めかす投資はその「投資」がいかさまであることを含めてリスクが高いことは、近藤先生のご愛読書に忠告していただくまでもなく投資に関わる者には周知のことだと思ったが、近藤先生にとってはそうではなかったのだろうか?

【8】私が理解できなかったのにはやはり相応の理由があることが分かりました(その分からない部分というのが、証券取引等監視委員会が検査の結果確認した、分別管理しないでファンド間の資金の移動を可能にする部分に関係していました)
近藤先生が何をご理解になれなかったのか明瞭ではないが、後半の「証券取引等監視委員会が検査の結果確認した、分別管理しないでファンド間の資金の移動を可能にする部分」と言う件(くだり)から、金融庁が問題とし第二種金融商品取引業者の認可取消の理由の一つとした、ファンドA(オプションA、単利の毎年払い)とファンドB(オプションB、複利の満期一括払い)の間の資金の混交のことのように思える。もしそうなら、これは既に指摘したように、拙者にはそもそも何故「分別管理」をする必要があるのか解らない。「ファンドA」と「ファンドB」は出資した「投資家」達への利払い・配当金分配方法が単利を毎年か複利を満期一括かの違いだけで、その運用方法や運用リスクは全く変わらない筈だ。MRIの「セレクトA MARS投資」は毎年2回ほど募集していたらしい(のちにポンジースキームの資金繰りが行き詰ってからは通年になったらしい)ので、利払い・配当金分配・償還は継続的に発生していた筈であり、これらのための手持ち資金の確保と言う一般的な資金繰りの問題も何ら違いがあるとも思えない。

のちに明らかになったように、MRIの資金管理問題はファンドAとファンドB間の分別管理がどうのこうのと言うレベルではなく、「投資家」達からの預かり資金とMRIの自己資金の混用どころか、経営者の私的費用と混交していたのに止まらず、「投資家」達から集めた資金のほとんどを実際には運用せずに以前の「投資」へ利息・配当の払いと償還に充てると言うポンジースキームと、経営者らが私的に費消していたことは周知の事実。もし近藤先生がこの「ファンドAとファンドBの分別管理」の問題を(今更)ここでお取り上げになっているのなら、そのご意図はいったい何だろう?

【9】これを読んでいる皆さんは、(何となく怪しいという理由で)投資すべきか判断に迷っている投資商品があれば、ファンド弁護士(証券弁護士)にストラクチャー図を見せてください
近藤先生はどの程度本気でこれをおっしゃっているのだろう?理屈の上ではおっしゃる通りで、億円単位の投資をしているごく一部の恵まれた超富裕層や年金組合のような機関投資家なら顧問弁護士や専属FPなどに費用を払ってもリスクを低減してリターンに見合うかもしれないが、庶民が何かの投資商品を買うときにわざわざ金を払って「ファンド弁護士」とやらに相談する人口がどれだけあるだろうか?拙者も株式や債券、投資信託などにそこそこの額の投資をしており庶民としてはかなりの額の金融商品を所有しているが、証券会社の無料相談以外は使ったことがない。

そんなことより、もっと簡単で、もっと安上がりで、もっと確実な方法がある。怪しいと思う投資商品、仕組みの理解できない投資商品には手を出さなければよいのだ、と言うより、手を出すべきではないのだ。この原則を忘れ、或いは自分は理解できていると思い込んだツケは自分で払わなければならない。

まあ、潤沢な資金持つ恵まれた境遇で少々怪しい投資先を検討していて「専門家」の助言が必要なら、「エスクロー」とか「ロックボックス」とかのカタカナ言葉や「州政府の保証」などの嘘に騙される前にファンド弁護士だか証券弁護士だかに金を払ってみるのもよいかも知れないが、その場合でも個人的には近藤哲也弁護士に依頼することは勧めない。

なお、「ファンド弁護士」と「証券弁護士」と言う言葉は拙者には初耳である。ぐぐってみたが、少なくとも最初の100件の検索結果の見出しに「ファンド弁護士」「証券弁護士」と言う語句は見つけられなかった。よっぽど特殊な分野の弁護士なのだろう(もしそのような分野の弁護士の名称が実在すれば、の話だが…)。

【10】投資に対するリターンが固定金利になっていて(ただし運用成績が悪ければリターンは下がる)
最後に、順序が前後するが、冒頭の第三パラグラフ。MRIのウェブの説明でも似たようなことを言っていたが、「固定金利、ただし運用成績が悪ければリターンが下がる」とは何を意味するのか拙者には全く理解できない。これではMRIの出鱈目宣伝文句を受け売りする提灯記事にしか思えない。近藤先生はご自分が何をお書きになっているかご理解していたのだろうか?




正直言って、近藤先生のブログには失望した。有益な情報が何もないどころか、珍妙な理論を繰り広げる書の与太文を受け売りして意味の通らないことを書き連ねている。「MRI被害弁護団」の構成員に名を連ねている近藤哲也弁護士が合衆国の健康保険事情、初歩的な資本主義経済一般、投資などについてこの程度の知識と思考力しか持ち合わせていないように見えることには驚かされると言うより呆れる。逆に言えば、「MRI被害弁護団」のレベルはその程度なのか、という印象を強くする。
2014-11-03 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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勝ち逃げ・逃げ得は許されるか? (3)

SECの裁判の被告はエドウィン・ヨシヒロ・フジナガと彼の会社MRIインターナショナル・インクだが、これに加えて交替被告としてCSAサービスセンターLLPとジューン・フジナガ及びユンジュ信託財産が挙げられている。CSA(Claims Servicing of America)はフジナガが実質的に経営していたと思われる医療機関向け貸金業者で、MRIのMARS(保険会社に対する医療売掛)の買い取り業務は実際にはCSAの社員が行っていたようだ。ジューン・フジナガはフジナガの離婚した元妻であり、ユンジュ(Yunju)は彼女の旧姓。

ここで「交替被告(relief defendant)」と言う耳慣れない言葉が登場する。Wikipediaによれば、relief defendantとは、英米法の民事裁判に於いて不法行為を理由に直接訴えられている訳ではないが、大元の被告から財産などの利益供与があったとされる者で、悪意(大元の被告の不法行為の事情を知っていた)かどうかは問わないのが普通と言うことだ。

「英米法」とは何か?英米法は「コモン・ロー(common law)」とも呼ばれ、ブリテン島に住むアングロサクソン人の慣習法として発達してきた法体系だ。これに対して、ローマ法と、北ヨーロッパから移動してきたゲルマン人のゲルマン法が地域(国)により合体したりそれぞれを承継したきた法体系は総合して「大陸法」と呼ばれる。英米法の際立つ特徴は、それが慣習法の集合体であり、裁判は判例を基にすることだ。英国には成文憲法は存在しないことは有名で、成文法を基本とする大陸法とはこの点で大きく異なる。

日本は明治維新以降の近代化と国家整備の過程で大陸法を手本とした。例えば憲法はドイツから、民法はフランスから(戦後の新民法はドイツ民法を手本)と言う具合に取り入れ、日本の慣習に合わせて作り上げたと言われる。

アメリカ合衆国はイングランドの植民地から独立することで発展してきたから、当然イングランドのコモン・ローをその法体系の基礎に置いている。拙者が今までに翻訳を提供したMRIの裁判の決定文を読むと、判断の根拠として法条文もいくらかは登場するものの、上記英米法の特徴に基づき多数の判例を根拠として引用していることに気付く。ただしイングランドの影響が顕著なのは東部の州の傾向で、南部および西部の諸州は元はメキシコの領土だったからメキシコの旧宗主国のスペイン法の影響が強まり、例えば夫婦共有財産が制度として存在するかなどは、合衆国の地図を右から左に眺めていくと存在する州の割合がだんだん濃くなる。

で、交替被告に話を戻すと、これに直接相当するものは日本の法体系にはないと思う。精々民法に言う「善意取得」「悪意取得」の議論がこれに関連するが、果たしてMRI事件のような民事裁判で被告欄に一緒に連名される者かどうかは疑問がある。法律に疎い人のために一言添えれば、「善意」「悪意」とは道徳的な善悪のことではなく、ウラの事情を知っていたかどうか(例えば盗品とは知らずに買ったかそれとも故買だったか)と言うことである。

交替被告としてCSAとユンジュが挙げられているのは、もしフジナガとMRIが詐欺行為を行っていたと認定され「被害者」達に出資金返還の責任があるとなれば、CSAとユンジュもフジナガとMRIからの返還の不足分についてあるいは全額を連帯して返還する責任があると言うことで支払い命令を期待しているのだろう。

CSAは実質的にMRIと同じ財布を使っていたらしいから、もう金は残っていないだろう。そうすると焦点はユンジュで、彼女は離婚後、不動産などの財産分与に加えて、フジナガから毎月数十万ドル(数千万円)の扶助料を受け取っていたと言われるから、彼女はフジナガ経由で得た相当額の資産を持っていると思われる。

SECの裁判で、合衆国ネバダ地方裁判所は2014年10月3日の即決判決を出し、交替被告ユンジュの申し立てた、やれ時効だの、やれ訴えが不明瞭だのと言ういちゃもんをすべて却下し、ユンジュがMGMタワーにコンドミニアムを複数軒所有していることを明らかにしたが、この即決判決はユンジュの資産を凍結するだの取り上げるだのとは述べていないことはもちろんのこと、ユンジュがMRIの詐欺に加担したとか、事情を知っていたとかさえ結論付けてはいない。

合衆国ネバダ地方裁判所は、SECの裁判で、2013年10月7日に被告フジナガとMRI及び交替被告CSAに対して、「承認された差し止め並びに資産凍結命令の明細」を言い渡している。これはフジナガとMRI及びCSAの資産の処分・移転・秘匿などを幅広く禁止したもので、2013年9月12日に言い渡たされた「緊急差し止め命令(TRO = temporary restraining order)」の内容を具体的に述べたものと思われるが、この時点ではユンジュは交替被告ですらなかった。しかしながら、上記2013年10月7日の命令には資産凍結の例外としてフジナガとユンジュに1,000ドルづつ、合計2,000ドルを毎月の「給料」として払うことは認めているから、この時には既にユンジュは裁判所に目を付けられていたことは確かだ。

ただし、この「承認された差し止め並びに資産凍結命令の明細」で具体的に禁止されているのは「被告(フジナガとMRI)及び交替被告(CSA)そしてそれらの役員、代理人、召使、従業員、家族、弁護士、および彼ら(被告と交替被告)と能動的な協調或いは参加関係にあるものが、被告及び交替被告の所有する或いは権利を有する財産(一部語句を省略)を費消したり移転したり秘匿したりなど」だから、離婚して少なくとも名目上他人になったユンジュはこの時点では交替被告ではなかったので、彼女がMRIまたはCSAに雇われてたり積極的な取引があるのではない限り、彼女の名義或いは所有する資産を自由に処分できる(或いは少なくともできた)ように思える。

さて、ここでの関心事は、フジナガが今までのMRIの詐欺商売で「投資家」達からくすねて得た資産の中で、既にユンジュに渡った分が今後の裁判の展開の中でどう扱われるか、だ。「被害者」達にしてみればユンジュも「同罪」として、彼女の名義或いは所有の財産も返還の原資にして欲しいところだろうが、これは裁判所がどのように判断するかで、今の時点では何とも言えない、としか言いようがない。ユンジュにフジナガが詐欺で得た資産からの分け前を吐き出せ、と言う判決になる可能性も、ユンジュは詐欺のことを知らなかった財産隠しなどの悪事もしていないからお咎めなし、となる可能性も両方あると思う。

「交替被告」について調査していたら、MRI事件とよく似た事件例を見つけた。この事件は、元夫(被告か?)が大規模ポンジースキームで資産を形成し、その一部を離婚で手に入れた元妻(交替被告)の資産をSEC(合衆国証券取引委員会)とCFTC(合衆国先物取引委員会)が「吐き出せ」と訴えた裁判で、地方裁判所はSECとCFTCの訴えを認めたが、控訴裁判所は元妻が「相当の注意を払っていた」なら不法利得ではない(日本の「善意無過失の即時取得」に相当か?)からもう一度審理し直すように、と下級裁判所に差し戻したもの。拙者の不勉強から以下の翻訳には理解しにくい点もあるかも知れないが、詐欺師の元夫から得た財産は吐き出せと訴えられるかも知れないが、それが故自動的に「詐欺師の元夫から得た資産=吐き出さなければならない」とは必ずしもならない例があると言うことで、MRIの件の参考になるかもしれない。
交替被告は人たらしから資産を守れるかも

第二巡回控訴裁判所は、SECとCFTCに確保された、大規模ポンジースキームを行った元夫から離婚和解として受け取った資産凍結に対する仮差し止めを撤回した。当裁判所は、これらの委員会は、交替被告が「適法な権利を欠く」範囲でのみ不当利得の吐き出しを得られるとした。「CFTC対ウォルシュ」事件番号09-3742と09-3787(第二巡回裁判所判断 2011年9月15日)

交替被告ジャネット・シャバーグ(訴訟中ではジャネット・ウォルシュ)はステファン・ウォルシュと20年間結婚していた。2004年の彼らの別居[拙者註:離婚を前提とした法的別居]までにウォルシュ氏は多大な財産を築いた。2006年の離婚和解の最終条件として、ウォルシュ氏は彼の元配偶者に1,250万ドルを2020年までの半年ごとに分割払いすることになった。彼女はまた、婚姻中にいくつかの当座口座に500万ドル近い現金とニューヨーク州ポートワシントンの彼らの家とその他の不動産を確保した。

2009年にSECとCFTCはウォルシュ氏をポンジースキームのかどで起訴した。彼と彼のパートナーは投資家らから5億5,400万ドルを巻き上げたと思われる。株式指標の鞘取引の証券に投資されるはずであった投資家の資金は実際にはウォルシュ氏の私的費用に使われた。両委員会は強制執行を申し立て、シャバーグ夫人に保有される分を含めた資産凍結の仮差し止めを要求した。

本件の解決で重要なのはシャバーグ夫人が当該資産について適法な権利を有するかどうかである。この問題の解決のために、第二巡回裁判所はニューヨーク控訴院に二つの質問を出し、これが連邦法の一つであると言うそれぞれの委員会の主張を退けた。第一の質問は「夫婦間の財産は詐欺からの利得を含められるか」に焦点を置き、二つ目は、ニューヨークの裁判所が言い換えたが、もし夫婦間の財産の全て若しくは一部分が詐欺の結果得られたものなら配偶者は相当の考慮を払ったと言えるかどうかと言うものである。最初の質問への答えはイエスであるが、二つ目はノーである。ただし二つ目への回答は条件付きである。裁判所[拙者註: ニューヨークの裁判所と思われる]は、夫婦間の財産がほとんど或いは全てが詐欺から得られたものならば、配偶者は詐欺により得られた資産の、より大きな持ち分の所有権を放棄することではその資産に対して相当な評価を与えた見ることはできないと述べた。資産に対する適法な所有権を与える相当な考慮とは、維持管理、相続、監護権などの権利を放棄することにより与えられる。

本案件では、仮差し止めは、当該資産のほとんど、もし全てでなければの話だが、がポンジースキームで得られたものであるからシャバーグ夫人は適法な所有権を有していないと言う考えの下に断言された。しかしながら、ニューヨークの法律では「離婚判決は善意の配偶者が誠実に行動し且相当な考慮を払う限り(ポンジースキームのような)汚点を拂拭できる」と言うことは控訴院の裁定により明らかである。

当該仮差し止めは撤回されねばならぬと言う結論に達する中、裁判所は、裁定は有効な考慮が払われなかったと言う事実を基にして確認されたかもしれないと言うSECとCFTCの反論を退けた。先ず、控訴院は、ニューヨーク州法の下で相当な考慮が払われたかもしれないと認定した。次に、少なくともポートワシントンの住宅に費やされた資金の一部は不浄ではない原資から拠出されたように見える。三つ目として、シャバーグ夫人は当時さしたる価値のなかった維持管理と相続の権利を放棄したが、何時かの時点では価値を有するかもしれない。最後に、少なくとも資産のある部分には相当な評価が与えられたかもしれない可能性がある。従って、本件は更なる審理のために地方裁判所に指戻されなければならない。

交替被告に関するもう一つの関心事は、これが前回考察した、MRIの「投資」を既に償還済或いは利息配当が元金を上回っているような「儲けた(元)投資家」に適用される可能性があるかと言うこと。拙者は、その可能性は日本国内で実際に返還命令が発せられるより更に低いと思う

先ず、SECは合衆国の政府機関(またはそれに準ずるもの)だから、その権力は合衆国の領土、領海、領空及びそれに準ずる所にしか及ばない。MRI「投資家」はほとんど(もし全てでなければ)が日本在住だから、そのような「儲けた(元)投資家」を日本で調査するには日本政府の許諾を受けなければ事件の調査をすることすらできない。そして日本を含むほとんどの国家はたとえ相手が友好国であっても自国内で外国が公権力を行使することを好まないから、「何か問題があれば私どもで調査して結果を教えましょう」となると思う。SECが日本のMRI事件の弁護団を含む民間機関に委託も考えられなくはないが、民間機関は強制力を持たず(一部弁護士特権あり)、また間接的とは言え外国の公権力行使に変わりないから、弁護団が「自主的」に発動して情報を提供するのでなければ公然とはできないだろう。日本の捜査当局に情報を提供して調査協力を依頼する道もあるが、刑事事件でもない「儲けた(元)投資家」の調査など日本の当局がする訳もない。

現在のSECの裁判は、MRIの投資取引が実質的に合衆国内(ネバダ州)で行われたと言う大義名分のために、日本のMRI弁護団及び日本の金融庁と証券取引等監視委員会からの情報提供を得て合衆国の正義を証明したが、被告はアメリカ人であるフジナガ、アメリカ人かどうかは知らないが少なくともハワイイなど合衆国内に資産をもつ鈴木親子などである。合衆国国民及び居住者に「被害者」がいなければ税金を使って外国(日本)まで行ってそれを超えてやるとも思えない、と言うよりできないだろう。

一つの可能性はハワイイに銀行口座を持つと言う「投資家」達だが、そのような「国際的富裕層」の「投資家」はせいぜい数人から十数人台の少人数と想像され、しかもその内「勝ち逃げ」できたのは何人いることやら。「投資家」達の95%は現金で償還せずに「再投資」していたと伝えられるから、ハワイイに銀行口座を持ち運よく勝ち逃げできた「投資家」は精々一人いるかどうかと言うことになる。

現実には、SECの裁判は、フジナガにとても近く、得た金額がとても多く、しかもMRIの詐欺事情を知っていた可能性がある元妻のユンジュとその信託財産ををようやく交替被告に含めただけだ。今後、外国に住む、儲けた金額が比較的小さく、MRIとは顧客の関係でしかない「儲けた(元)投資家」を交替被告に含める可能性はとても低いと思う。

では、民事裁判(クラスアクション)の方はどうだろう?これは被害者・原告が「儲けた(元)投資家」を交替被告に含めたければいくらでもできるし、日本での調査も日本の弁護団が弁護士の立場で可能だが、これも可能性がほとんどない。これはSECの裁判でも同様だが、万が一ネバダ州の民事裁判で日本の「儲けた(元)投資家」が交替被告となって訴えられ(「儲けた(元)投資家」は法律上の理由があって儲けを得たすなわち儲けを得ることに不法行為はなかったと強く推察できるから「本」被告として訴えるのは無理)ても出頭しなければよい。民事裁判の呼び出しに出頭しないからと言って合衆国に入国できなかったり入国したら逮捕されるとかいうものでもないだろう。

更に万が一判決で交替被告に支払い命令が出されるようなことがあっても、合衆国の裁判の効力は日本国内にある「儲けた(元)投資家」の資産には及ばないから、その効力を日本国内で実現するには合衆国の裁判の確定判決を基に日本国内で裁判を起こして執行判決を得なければならない。執行判決は書面審理だけで下されるとは言え、外国の判決を自動的に追認するのではなく、日本の法基準と公序良俗との整合性が審理されるから、例えば日本の法体系にはない(と思われる)「交替被告」と言う立場の善意無過失の儲けた「儲けた(元)投資家」に対する判決が認められるかどうかは怪しい限りだ。まぁ、そんなことは誰もしないだろう。

教訓:逃げるが勝ち


MRIの「MARS投資」で「儲けた(元)投資家」は才覚と運に恵まれていたのであり、その儲けは誰からも誹りを受けることのない真っ当な金で、その儲けは「儲けた(元)投資家」本人に属する。まさかとは思うが、雰囲気に呑まれてせっかくの儲けを自分から差し出すような真似は努々しない方がよいと思う。
2014-10-31 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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勝ち逃げ・逃げ得は許されるか? (2)

前回示した最高裁判所の無限連鎖講の利益の返還を命令する判決について噛み砕いてみる。なお拙者は法学を系統的に学んだことはないので誤解があるかも知れない。建設的な指摘・コメントを歓迎する。

こちらにも本件についてまとめた記事があるので参照するとよい。

先ず事実関係。
  • 会社Aは無限連鎖講で一儲けを企んだ。
  • 被上告人(訴えられた人)はこの無限連鎖講に早期に加入して2,000万円以上の利益を上げた。
  • 無限連鎖講のセオリー通り、会員がある程度増えたところで飽和して破綻した。
  • これもまたセオリー通り、儲けたのは一握りの上級会員だけで、多くの末端会員は金を取られただけで配当には与れなかった
  • 会社Aは破産し、破産管財人は被上告人にこの無限連鎖講から得た利益を返還するように求めた。
いくつかの聞きかじった知識を披露する。

自然人でも法人でも破産するとその一切の財産は破産財団に移行する。言い方を変えれば、破産財団は破産者の所有する唯一の財産となる。ただし破産者は自分の財産であるが破産財団の財産を勝手に処分することはできない。破産財団の財産は破産管財人に専属的に管理される。

で、一審と二審の裁判所(地方裁判所と高等裁判所)は、被上告人が儲けた無限連鎖講からの利益は不法原因給付に当たるから、破産財団の管財人はこれを返せとは言えないとして、訴えた管財人の請求を棄却したと。

「不法原因給付」とは民法第708条に規定される。
民法第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
例えば私的なサイコロ賭博は不法だから、賭場が摘発されても負けて払った賭金を返してくれとは言えないと言うもの。

一審と二審はこの条文を文字通り解釈して、本件の無限連鎖講は昭和53年11月11日法律第101号「無限連鎖講の防止に関する法律」で明示的に禁止された不法行為であるから、それを原因として給付された被上告人の利益の返還を請求することはできないとし、原告・控訴人の訴えを棄却したが、最高裁判所は「それは違う」と言った。

どう違うのかと言うと(以下は判決の拙者流の解釈)、
  • 破産財団は名目的には破産者の財産であるが、その目的は破産者に残った財産(第三者に対する債権も含む)を保全し、債権者にできるだけ多く公平に配当することであり、破産者の利益のためではない
  • 破産者は債権者に返済する財産がないからこそ破産したのであり、実際の配当が債権額を満たさないことはあっても(と言うよりそれが普通)、余剰金が破産者の手元に残ることは稀と言うよりあり得ない
  • 然るに被上告人は無限連鎖講への参加と言う不法行為で件の利益を得たのであり(無限連鎖講は主催するだけでなく参加するだけでも違法)、それを無視して破産管財人からの請求を認めず不法行為により他の会員から巻き上げた金による利益の保持を認めることは片手落ちであり著しく社会正義に反する
と言うことだろう。ここで基礎となっているのは「クリーンハンズの原則」つまり、法の保護を受けようとする者はその件に関して疚しいところがあってはならない、と言うことを給付をして「返せ」と言っている方だけでなく給付を受けて「返せ」と言われる方にも拡張したのだと思う。

まぁ、金を摩った方も、無限連鎖講が不法であることを理解していたかどうかに拘わらず(「知らなかった」は通用しない。ビールを飲みながら運転して「酒を飲んで車を運転することが違法だとは知らなかった」と言う主張を試してみるとわかる)無限連鎖講という不法スキームで金儲けを企んだ罰が当たったことは確かだが、だからと言って同じ不法スキームで儲けたやつを放っておくのはおかしい、正義に反する。と言うことだ。

では、無限連鎖講で儲けた金は返さなくてはならないことになったが、MRIで実際に設けた金もやはり返さなくてはならないのだろうか?

拙者はそうは考えない。

無限連鎖講は明白な違法ビジネスだが、「MARS投資」は少なくとも外形的には違法性はない。拙者はこの最高裁判所の判決の対象となった無限連鎖講の詳細は知らないが、「会員」に示された「投資」の内容のどこかに他人を紹介して会員になると(或いはその紹介者がまた紹介者を連れてくると)配当が得られる仕組みであることを記していたに違いない。この手の詐欺ビジネスは年々手口が「向上して」その違法性が巧妙に隠されているかも知れないが、本質を突き詰めればその「儲け方法」のどこかに無限連鎖講を示す「他人を紹介すると配当」という原理があったはずだ。

ではMRIの「MARS投資に」他の出資者を紹介すると(またはその出資者が更に新たな出資者を見つけると)それが必ず元の出資者の利益に結び付く、それが出資者への配当の主体だと言うスキームが存在したか?

否。

結果的にMRIは新たな出資者の資金を以前の出資者の配当・償還に充てると言うポンジースキームを行っていたが、それはあくまでもフジナガや鈴木親子が「投資家」達に嘘をついて、集めた資金を「MARS投資」で運用せずに金をちょろまかして贅沢な消費生活や私腹を肥やしていただけであり、「MARS投資」にはスキームとして無限連鎖講となる要素はなかった。

実際には新たな大口「投資家」を紹介するとラスベガス招待などのタダ飯の特典があったようだが、それはあくまでも景品・臨時のご褒美のレベルで、現実のMRI内の金の動きは別として、元の「投資家」の配当が新たな投資家の出資で賄われると言うスキームではなかったからこそ、善良な「投資家」達は「出資金で医療売掛を割引購入して保険会社から得る保険金との差額で儲ける」と宣伝された「MARS投資」を信じて大金を送金したのだ。また、実際に宣伝され集めた金額より大幅に少ない量ではあったが「MARS投資」で運用していたので、そこから出資額に応じて配当を受けると言う立派な法律上の原因があり、民法第703条に規定する「不当利得」の要件を欠く。だから、「MARS投資」で得られた利益は合法・適法なもので、何ら咎められるものではない、と言うのが法に関して素人の拙者がもし返還をせがまれる立場になったら主張するであろう抗弁。
民法第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
「被害者」達は「悪いのは騙された方ではなく騙した方だ」と言い続ける。騙した方が悪いのは確かだ。では「騙されなかった方」或いは「騙しから逃げることに成功した方」が悪いのか?と言う議論の結論は明らかだ。

現実問題として、勝ち逃げした元MRI「投資家」が過去に「MARS投資」から得た利益を返還するように訴えられたと言う話は聞いていない。奇特な元「投資家」が自主的に返納するのは構わないが、国家権力を以て返還を強制するためには個別の「勝ち逃げ組」元「投資家」とその利得金額を特定して訴訟を起こして「被害者」に有利な確定判決を得なければならない。そうすると、上記の議論に加えて、利得資産は現在日本にあってもその利得が生じたのはアメリカでのことだからと言うことでまた裁判管轄の議論になるかも知れないし、MRIの内情に通じていない一般の「投資家」ならポンジースキームと言う実情を知っているはずがなく善意無過失を主張されるだろうし、と言うことで勝算があるとは思えない。

簡単に言い直すと、元「投資家」達が利益を得た「MARS投資」は無限連鎖講ではない。運よく儲けた元「投資家」達に実定法上の不法行為はない。悪徳(と結果的に判明した)ビジネスから利益を得られたと言うだけで味噌も糞も一緒くたにして、「だから儲けた奴から吐き出させて俺に払え」とはならないだろう。
ネズミ講で逃げ得した者が、以前に受けた配当の返還を日本の最高裁により命ぜられた。(10/28報道)。日本もアメリカに近づいた。MRIの場合も、管財人もしくはレシーバーにより、過去に受けた配当金の返還(実質的に利益を得た者に対し)を求められる可能性は十分ある。「逃げ得は許さない」ということ か。(債権者平等主義)

2014年10月28日 2:03 PM

この、前回も引用した、拙者以上に生半可な法知識を振り回す例の掲示板の書き込みは重大な誤りを含んでいる。「債権者平等主義」などと分かったようなことを書いているが、勝ち逃げした元「投資家」は「債権者」ではない。それまでの勝ちを持ったまま合法的に途中でゲームを降りた者と、ババを持ったままゲーム終了を告げられた者を一緒にしてはならない。

今回は最高裁判所の無限連鎖講の利得返還命令の判決とMRIの「勝ち逃げ組」の関係を考察した。実は「勝ち逃げ」に関わる問題はもう一つある。それはネバダ州で行われているSECの裁判に登場している「交替被告(relief defendant)」だ。次回はこれについて考察する。
2014-10-30 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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勝ち逃げ・逃げ得は許されるか? (1)

「被害者」達の間で話題になっている件に、MRIが破綻して「投資家」達に利息はおろか出資金の返済ができなくなる以前に出資の償還を受け、あるいは過去の(「見做しではなく)実際の受取利息で出資元金の元をとって尚且つ余りある「上手くやった」者達と、受取利息を含めて再「投資」して最後にババを掴まされた者達との不公平感がある。

この問題は、2013年末に日本の弁護団が「被害者」達に「実損計算書」なるものの提出を要求し、返金の対象はMRIに対する(満期時の)名目上の債権額ではなく、「出資金」から過去の現金受取利息を差し引いた金額に限定することを仄めかしてから顕在化した。例えば1,000万円を出資して既に累計800万円の利息を受け取っているなら「実損」は200万円だから、裁判終了後の配当率が2%なら返金されるのは20万円ではなく4万円と言うもの。更に、累計1,000万円以上の利息配当はを実際に受け取っていれば「実損」はゼロと言うことになり「被害者」達のお仲間にも入れてもらえない。「それなら同じ条件で2012年(破綻前)に全額償還して元金と利息配当を丸々受け取った者から少なくとも利息分を取り戻して被害者達への返金の原資に組み入れられないか」と言う話になる(なお、SECの裁判では「被害額」は破綻時点での名目債権額ではなく出資から実際の配当を差し引いた「実損」のようだから、「実損計算」はSECが震源のようだ)。

例の掲示板には、破綻寸前に全額償還に成功したことを繰り返し自慢する書き込みとそれに関連する書き込みがいくつかある。
2014年5月4日 12:49 AMの投稿に大賛成です。
実損計算書を提出させるのはおかしいと思うのだが・・・
ならば事件発覚以前に満期・全額償還した人は完全な逃げ得です。
実損計算するのなら事件発覚以前に満期・全額償還した人からも返金求めるべきなのでは・・・
現実的には、そんな事は出来ないし新たな不公平感を生むのでは・・・
実際に償還されていない事案のみを追求するのが実際的だと思います。

2014年5月5日 12:19 PM

安愚楽の場合は、いろんなマネー雑誌で扱われ(安愚楽の和牛に関するCMもあった・・・youtubeで検索されたし)、楽天などのネットアフィリエイトを活用したこともあり、100万、200万といった小金を持っていた主婦が投資しているケースが多かったそうだ。
 
一 方で、MRIの場合は、メディア露出が毎日新聞と日経CNBCぐらいだった。2010年ぐらいからネット上でバナー広告出してたかな。アフィリエイトによ るものもあったが、それは胡散臭いなあという感じを受けるものが多かったが。口コミ中心で広がっていったのもあるね。そのため、いまだに投資事情に詳しい 人間でも、MRIのことを知らない人も多い。
そんな中、俺たち情報通しかMRIは知らない、エスクローなどの難しいシステムを理解してw直接海外送金しているんだという優越感があったな。それもあって、富裕層が大金を投じたのがMRI。
 
俺は、運よく2012年秋にMRIを全額償還して、ちょうど日本株に投資することができたが、いまだに同じ詐欺事案でも、安愚楽などの投資家は雑魚、MRIの投資家は玄人と妄想している。

2014年5月13日 4:48 PM

部外者だろ、部外者だろと言われ続けている俺ですが、「THE VIEW 2012」という白い冊子が見つかった。
50歳代で1600万円台、60歳代で1700万円台がMRIへの平均投資額である。60歳代だと退職金が入ってくるから理解できるが、50歳代は親の遺産などが入ってきたというのも大きいのだろう。
さすがに、MRIに全ての資金を集中させている人なんていないだろうから、だいたい3分の1をMRIに投資したとすると、平均層で5000万円の金融資産はあるということである。まさに、MRI投資家は本当に富裕層とふゆ層の集まりである。
 
なお、俺は2012年に全額償還したので、2013年向け資料に関しては目を通していない。全額償還されるとクラスAの資格を喪失するので、償還してしばらくは後悔の念に駆られたもんだったw

2014年5月16日 10:21 PM

ま、何にせよ、去年MRIがこける寸前に全額償還・引き上げに成功したやつが逃げ得ってことだ。
「日本とアメリカは違う」と知ったかぶりしてるやつがいるが、本当に違いを知っているなら、要点だけでいいから具体的に違いを列挙してみろよ。それができないなら、わかったような口をたたくな。

2014年7月11日 5:02 PM


更にここに来て、2014年10月28日に日本の最高裁判所がネズミ講(無限連鎖講)で上級会員(初期の参加者で「親」に近く、従って多くの「子孫」からの献上金を集められる者)の得た利益を返還するように命令する判決が出たものだから、これになぞらえて、以前からの「SECの裁判が決着したら逃げ得をした者は返金を求められるかも知れない」に加え、MRIの件でも勝ち逃げした運の良い「投資家」達からの利得の返還を「被害者」達への返金の原資への加算を期待してか、下のような書き込みが登場した。
ネズミ講で逃げ得した者が、以前に受けた配当の返還を日本の最高裁により命ぜられた。(10/28報道)。日本もアメリカに近づいた。MRIの場合も、管財人もしくはレシーバーにより、過去に受けた配当金の返還(実質的に利益を得た者に対し)を求められる可能性は十分ある。「逃げ得は許さない」ということ か。(債権者平等主義)

2014年10月28日 2:03 PM


そのような可能性はあるのか?

結論から言えば、MRIの事件では既に償還を終えた或いは利息配当が元金を上回った「投資家」達に利得の返還を求める可能性はごく薄いだろう、少なくとも件の無限連鎖講の件がそのままMRIの事件に適用されることはない、と言うのが拙者の考え。

今回はこの問題を考える。

それでは先ず、問題の最高裁判所判決(段落、下線原テキストのまま。読み易さのために段落の間に空白行を入れた)。日本の判決文は最初に結論たる主文があるので理解し易い。
平成24年(受)第2007号 不当利得返還等請求事件
平成26年10月28日 第三小法廷判決

主   文

  1. 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
  2. 被上告人は,上告人に対し,2133万2835円及びこれに対する平成23年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理   由

 上告人及び上告代理人古川和典ほかの上告受理申立て理由について

 1 本件は,破産者株式会社A(以下「破産会社」という。)の破産管財人である上告人が,被上告人と破産会社との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,当該契約により破産会社から金銭の給付を受けた被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記の給付額の一部及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

 (1) 破産会社は,平成22年2月頃から,金銭の出資及び配当に係る事業(以下「本件事業」という。)を開始した。本件事業は,専ら新規の会員から集めた出資金を先に会員となった者への配当金の支払に充てることを内容とする金銭の配当組織であり,無限連鎖講の防止に関する法律2条に規定する無限連鎖講に該当するものであった。

 (2) 被上告人は,平成22年3月,破産会社と本件事業の会員になる旨の契約を締結した。被上告人は,同年12月までの間に,上記契約に基づき,破産会社に対して818万4200円を出資金として支払い,破産会社から2951万7035円の配当金の給付を受けた(以下,上記配当金額から上記出資金額を控除した残額2133万2835円に係る配当金を「本件配当金」という。)。

 (3) 破産会社は,本件事業において,少なくとも,4035名の会員を集め,会員から総額25億6127万7750円の出資金の支払を受けたが,平成23年2月21日,破産手続開始の決定を受け,上告人が破産管財人に選任された。上記破産手続においては,本件事業によって損失を受けた者が破産債権者の多数を占めている。

 3 原審は,上記事実関係の下において,本件配当金の給付が不法原因給付に当たり,上告人は民法708条の規定によりその返還を請求することができないと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 本件配当金は,関与することが禁止された無限連鎖講に該当する本件事業によって被上告人に給付されたものであって,その仕組み上,他の会員が出えんした金銭を原資とするものである。そして,本件事業の会員の相当部分の者は,出えんした金銭の額に相当する金銭を受領することができないまま破産会社の破綻により損失を受け,被害の救済を受けることもできずに破産債権者の多数を占めるに至っているというのである。このような事実関係の下で,破産会社の破産管財人である上告人が,被上告人に対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,被上告人が破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下に被上告人が不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。

 したがって,上記の事情の下においては,被上告人が,上告人に対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。


 5 以上によれば,上記のような点を考慮することなく,上告人の請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記事実関係及び上記4に説示したところによれば,本件配当金に相当する2133万2835円及びこれに対する返還の催告後である平成23年6月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の請求には理由があるから,これを棄却した第1審判決を取り消し,同請求を認容すべきである。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官木内道祥の補足意見がある。

 裁判官木内道祥の補足意見は,次のとおりである。

 私は,本件の事実関係の下で,不法原因給付としての返還拒否が信義則上許されないとの法廷意見に賛同するものであるが,返還請求する者が破産管財人であることと信義則の関係について,私の考えるところを述べることとする。

 無限連鎖講のように,実現不可能な高利率の配当を約束して出えんを募り,その配当の実施を誘因としてより多くの出えんを得ようとする事業では,出えん者の大多数は出えんの填補を得られないことが必至である。この事業における利得者は出えんを超える配当を受けた少数者であり,その利得の元となった他の出えん者は損失を受けており,事業実施者に対する債権者となっている。

 その事業実施者が破産した場合,破産管財人が行う給付(利得)の返還請求は,破産者に代わって行うものということはできない。破産制度の目的は「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」ことであり(個人破産については「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」ことが加わる。),その目的のために「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整」(破産法1条)するという破産管財人の任務の遂行としてこれを行うのである。

 破産管財人の任務遂行によって得られた資産は,破産財団に属し,手続費用を含む財団債権及び破産債権の全てを支払って余剰が生ずるというような稀有な事例を除けば,破産者に交付されることはない。破産手続の廃止は,破産財団が破産手続の費用に不足する場合になされることはもちろんであるが,破産管財人は換価し得るものは換価し尽くして手続費用を含む財団債権に充て,なお不足する場合に廃止の申立てを行うのが実務の通例であり,破産管財人が第三者から回復した財産が破産廃止により破産者に戻されるようなことは,実際上,考えられない。

 会員を含む破産債権者への配当が実施されれば,その配当額については破産者の債務が減額されることにはなるが,破産者にとっての破産債務の消滅ないし自然債務化は,破産配当の有無を問わず,法人であれば破産終結に伴う法人格の消滅により,個人であれば免責許可によってなされるのが破産制度の基本的な仕組みであり,破産管財人に対する給付の返還が直ちに破産者の債務の消滅に結び付くものではない。破産管財人の不当利得返還請求を認めることをもって,反倫理的な事業を行った破産者に法律上の保護を与えることになるということはできない。

 以上の観点からすれば,本件において,破産管財人の返還請求を認めないとすれば,他の会員の損失の下に本件事業により相当額の利得を得た者がその利得を保持し続けることを許容することになるのは法廷意見の述べるとおりであり,他方,本件における破産管財人の返還請求はそのような結果を回避して,損失を受けた会員を含む破産債権者など利害関係人の権利関係を適切に調整するためのものであるから,不法原因給付に当たることを理由として給付の返還を拒むことは,信義則上許されないと解すべきである。

(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 山崎敏充)

[拙者註]「出えん」=「出捐」 金品を提供すること。「損」ではなく「捐」

長くなるので、考察は次回以降に。
2014-10-30 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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MRIに金は残っていない ~SECの裁判の判決~

2014年10月3日のSECの裁判の即決判決は、MRIに騙されて金を失った「被害者」達の言い分の通りのSECの主張をほぼそのまま認め、MRI側の主張を全て却下する判決だった。

判決の内容を繰り返しても仕方ないので、ここでは一点だけ触れる。

以下は判決文中の「背景」の第4パラグラフ(下線は拙者)。
原告は、現実には被告らは投資資金を以前の投資家への償還に使ったと訴える。2013年4月の日本の金融庁への報告書で、フジナガは「3、4、5年前、投資家達からの投資資金を他の投資家達への元本と利息の支払いに充当し始めた」と認めた(文書#113)。原告は更に、フジナガは投資家達の金を不動産や豪華な車の購入などを含む彼の私的支出に使ったと断言する。2013年5月までに、投資家達の資金は完全に消失した
下記は判決原文の該当箇所。

entirely.png


裁判所は「投資家達の資金は完全に消失した」と認定している。

この判決は同時に、MRIが実際には1,610万ドル(約18億円)分のMARS(医療売掛)しか購入していなかったと述べている。この18億円はいったいどのような金額だろう?まさかMRIが1998年の創業以来の累積合計と言うわけでもないだろうから、年間購入額とすると、保険会社は発生後180日以上経過した医療費は払わないし、そもそも医療機関にしてみればこういう金融業者を頼るのは切羽詰まった状況だと考えられるから、例えば90日分の「在庫」とすれば裁判所がSECの請求に応じて2013年9月にMARSの回収業務を例外としてMRIに資産凍結差し止め命令を出した時点での残高は5億円程度、あるいは最も楽観的に見て資産凍結差し止め命令時点での保有MARS残高としても18億円分、これに30億円程度と言われるMRIの銀行残高を加えても百億円にも満たず、1,365億円と言われる額面総被害額あるいは900億円以上と言われる「実損」額の10%にもならない。

更に、事件発覚直後の2013年5月の日本に目を向ければ、MRIの日本支社はごく一部の「被害者」達に少額の返金ををして事件のもみ消しを図ろうとしたようで、この返金の正確な対象者人数と金額は明らかになってはいないものの、数人から多くとも十人程度に一人当たり十数万円から数十万円程度と言われており、合計で百万円台あるいは数字の低い方の数百万円と推測されるから、年間百億円程度と推計される償還と利払いの0.01%台である。

MRIの手持ち資金が枯渇したためフジナガが日本の鈴木親子に新規「投資」勧誘の強化を即した件と言い、どうやらMRIには現金はほとんど残ってなさそうであり、「投資家」達への返済の原資は実質的にはフジナガ(及び彼の経営する他の会社と離婚した元妻)と鈴木一家の個人資産だけのようだ。
2014-10-28 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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口頭弁論開かる ~日本国内第二次訴訟~

2014年10月27日、MRIの日本事務所のトップであった鈴木一家(鈴木順造、鈴木ポール武蔵、中町啓子)を相手取って2億3,200万円の返還を求める訴訟の第二回口頭弁論が東京地方裁判所で行われた。被害者約90人が傍聴し、半時間程度とは言え、代理人同士による論戦が行われなかなか盛況だったようだ。

被告鈴木一家は、一審で原告側敗訴現在控訴中の第一次訴訟と同じく、本件の「MARS投資」取引は合衆国ネバダ州で行われたのであるから日本の裁判所に管轄権はなく、また原告らはネバダ州の合衆国地方裁判所で既に鈴木順造と鈴木ポール武蔵を含めたMRI側の被告を相手取って裁判を起こしているから二重提訴に当たり不当だとの論理を展開したものと思われる。拙者はこの日本国内の第二次訴訟が提起されたときに、以下の理由から鈴木一家側の主張はそう簡単に通らないかも知れないと予測した。
  • ネバダ州の裁判の被告は鈴木父子とフジナガ、MRIインターナショナル・インクだったが、この第二次訴訟の被告は鈴木父母子
  • 訴えの内容が鈴木父母子の日本での勧誘行為に絞られている
しかしここに来て少々考えが変わった。2014年9月18日の合衆国ネバダ地方裁判所のマッキベン判事の出した資産凍結仮差し止め命令は、鈴木父子が「投資家」達を募り金を巻き上げるためについた色々な嘘と言う被害者・原告側の申し立てを、以下の決定文の抜粋のように認めた。
鈴木親子は、原告の投資がどのように扱われるかについて不実の説明をした。原告らは、それぞれの鈴木の嘘の説明に関して、以下の項目を含むいくつかの特定的な申し立てをしている: (1)投資家の資金はMARSの購入にのみ使われる(両者); (2)合衆国法が投資家の資金を保護する[2]; (3)投資家の資金はエスクローの分離した「ロックボックス」に保全され、この口座は特別な銀行口座で売掛金を回収するために使われ、売掛の額面価格はそれを購入した金額を上回ることを要求する(両者); (4)厳しい審査に通った会社だけがロックボックスを開設する資格がある(両者); (5)エスクロー会社がMRIが投資家の資金に触れることを不可能にする(両者); (6)エスクローシステムは資金の分離を保障しているので、万が一MRIが破綻しても資金は債権者から保護される(鈴木ポール武蔵)。彼らは、これらの説明が不実であったことを知っており、彼らは原告らを投資に仕向けるためにこれらの説明を使い、原告らは当然にこれらの説明を信じてMRIと契約する判断をし、原告らは彼らが投資した金のほとんど(もし全てでなければ)を失う損害を負うだろう。当裁判所は従って、原告らは鈴木親子に対する詐欺の訴訟に勝つだろう、あるいは少なくともそのような訴訟に至る深刻な疑問が生じると結論する。
これらの「嘘」は日本で発せられたものであり、結局今回の第二次訴訟で6人の原告が訴えていることとほとんど違わないだろう。そうするとこれらの嘘についての審理は既に合衆国内の裁判で行われた、或いは行われていることであり、「二重提訴」の主張には理があるように思える。

原告の構成については、日本の第二次訴訟の原告の氏名の情報は入手していないが、2014年10月現在のネバダ州の裁判の原告の氏名は以下の通り(漢字及びカナは拙者の想像)。
滝口シゲ  野中フミ  滝田ミツアキ  小泉薫子  坂井タツロウ  石森シズコ
秦野ヨウコ   中村ユウコ  三浦ヒデヒト  田崎ヨシコ
守谷マサアキ  秦野ハツネ  守谷サトル  田中ヒデナオ
栗栖シゲル  小野サカ  松本カズヒロ  畑中カヤ
山尻ヒロカ  山本キヨハル  山本ジュンコ
井上コウイチ  成瀬アキコ  野村トシマサ  百合草リツ
しかしながら、ネバダ州の裁判で被害者・原告側はクラスアクションを求めており、訴状に原告名として上記の25人の後に「個々に、また同様の立場にある全ての者を代表して」と書かれている。以下は訴状などの原告名の原文。
SHIGE TAKIGUCHI, FUMI NONAKA,
MITSUAKI TAKITA, KAORUKO KOIZUMI,TATSURO SAKAI, SHIZUKO ISHIMORI,
YOKO HATANO, YUKO NAKAMURA,HIDEHITO MIURA, YOSHIKO TAZAKI,
MASAAKI MORIYA, HATSUNE HATANO,SATORU MORIYA, HIDENAO TAKAMA,
SHIGERU KURISU, SAKA ONO, KAZUHIROMATSUMOTO, KAYA HATANAKA,
HIROKA YAMAJIRI, KIYOHARUYAMAMOTO, JUNKO YAMAMOTO,
KOICHI INOUE, AKIKO NARUSE,TOSHIMASA NOMURA, and RITSU YURIKUSA,
Individually and on Behalf of All Others Similarity Situated,
これらの25人はクラスアクションの「代表原告(Representative Plaintiffs)」であるから、クラスアクションが認められると(まだ「認める」と言う決定を裁判所はしていない)、その特性として日本の第二次訴訟の6人の原告らはネバダ州の裁判の訴状に実名が記されているかどうかに拘わらず「クラスアクション原告」の一部であることは容易に解釈できるので、同一原告による同一被告に対する同一の訴えと解釈してもおかしくないだろう。「クラスアクション」と言う日本の法制にはない制度を東京地方裁判所がどれだけ理解してどのように解釈するかだ。

あとは、ネバダ州の裁判の被告には含まれていない中町(鈴木)啓子(鈴木順造の妻)が第二次訴訟の被告に含まれていることだが、これがどれほどの意味を持つのかは拙者にはよく分からない。結局、ネバダ州の裁判との外形的違いを強調して二重提訴でないことを主張しようにも、その根拠は決して盤石とは言えないように思える。

なお、「MRIインターナショナル被害者の会代表」のイチキ氏は、「会」のウェブページで前回第一回の口頭弁論について以下のように報告している。
2014年10月22日
(途中略)
前回の裁判では、MRI側は当事者・代理人共に出廷しない不誠実な対応をしました。
裁判所は訴訟の進行に対して積極的です。
(以下略)
被告側、特に弁護士・代理人にとって訴訟はビジネスであり、無用な出廷を避けたことが「不誠実」かどうかは主観の問題だが、「裁判所は訴訟の進行に対して積極的」なのは裁判所と言う機関として当たり前のことで、「裁判の進行に消極的な裁判所」などあるべくもない。気勢を上げるのは結構だが、法螺話・与太話を真に受けて過大な期待を抱かない方がよろしいと思う。

また、被告側弁護士の報酬計算がどのような方法によるものかは知らないが、もしこれまで見てきたようなアメリカの弁護士の報酬のように実働時間を基にしているなら、山口広原告弁護団長の演説を拝聴するために被告側弁護士が出廷すればその分だけ弁護費用がかさみ、結果的に鈴木一家から回収できる金がその分減少する可能性があることをイチキ氏はご存じなのだろうか?未だに「ハワイイの銀行から回収と賠償を得られることは確実」などと荒唐無稽の妄想を唱え続ける一部の「被害者」達も含めて、論理的に物事を考える習慣を身に付けることを勧める。
2014-10-28 : 日本の裁判 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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MRI側控訴へ ~アメリカの裁判~

2014年10月20日、ネバダ州の連邦地方裁判所で行われている、MRI事件の「被害者」25人からなる代表原告がMRIインターナショナル社と社長のエドウィン・ヨシヒロ・フジナガらを訴えている裁判で、被告MRI側は控訴状(Notice of Appeal、文書番号#193)を提出した。2014年9月18日の決定に対抗するものと思われる。
2014-10-23 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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「MARS投資」残高の推計

またしても数字の遊び。


MRIが「投資」勧誘用に作成した資料の中に、「日本でのMRIシリーズ商品販売に伴うお預かり資金総額」と言うグラフがある。この右のグラフの「MARS市場流出量」が実は合衆国の医療費全体若しくはそれに近いものを現していると言う出鱈目さは既に説明したが、左側グラフに記入されている各年度の「お預かり」金額が一応現実に即したものとして、非公式ながら公表されていた現金での償還は5%(金額ベースか契約数ベースか不明だが金額ベースと仮定)と言う数字を基に、MRIが実際にどのくらいの金額を集め、どのくらい払い戻していたのかを推計する。

計算を簡単にするために以下の仮定をする。
  • 全て3年契約
  • 利率は一律年利8%
  • 毎年単利払い(オプションA)と満期時複利一括払い(オプションB)の比は50%:50%
  • 円建て計算のみとして為替変動なし

下の表で「単利(opt.A)率」はオプションA(毎年単利払い)の割合(残りはオプションB=満期時複利一括払い)。「償還率」は現金償還の割合(残りは再投資)」。

  • 「残高」は件のグラフからで、累積再投資元利合計を含むと仮定
  • 「増加」は前年度の残高との差、名目増加分
  • 「利息」は前年度の残高から発生する投資利息
  • 「単利払い」は実際にオプションAで支払われる利息(前年度残高×利率×単利払い率)
  • 「償還」は3年前の残高から計算される満期で払い戻される元金(オプションA=3年前の残高×償還率×単利払い率)と元利(オプションB=3年前の残高×償還率×複利払い率+3年分の複利利息分)の合計
  • 「払戻計」は単利払いと償還の合計
  • 「新規」は名目増加と払い戻し合計を賄うために必要な入金(新規投資と運用益)
  • 「純増」は新規と払い戻しの差
計算の簡略化のために、MRIの実際の事業費用支出(オフィスのレントや従業員の人件費など、従業員30人として年3億円程度か?)は無視している。

MRI-balance.png


2014年9月18日のネバダにおける民事裁判の決定と2014年10月3日のSECの裁判の即決判決によれば、MRI・フジナガが新規の「投資」資金で以前の「投資」の利払いと償還をするポンジースキームを行っていたことはほぼ確実らしい。何時頃からどのくらいの金額をポンジースキームで回していたのかは不明だが、SECの裁判の即決判決では、総被害額1,365億円、「実損」額900億円近くと言われる中、実際にMARS回収のため運用されていた金額は約18億円と、「投資家」達から集めた金の1~2%に過ぎず、更にMARS回収事業で得られる運用益は運用金額の精々15%程度と考えらるから、「MARS運用益」は無視しても構わないだろう。

注目すべきは最右のカラムの「純増」。この金額が正なら出ていく金より入ってくる金が多いので自転車は倒れずに走り続けられるが、赤字になると倒れてしまう。最左のカラムの「残高」が増えていても、これはMRIの言うところの「お預かり金額」であり、最終的には「投資家」達に返済しなければならない負債金額に他ならない。ポンジースキームを続けていくためには、新たなカモから巻き上げる金額が以前のカモへの支払いより常に多くなくてはならない。

さて、「純増」金額は2003年の一時的落ち込みを除いてかなりの黒字で順調に金を集めていたと窺えるが、2008年からそれまでの年間100億円以上の新規カモからの調達は急激に落ち込み、その後数年間純収支は赤字に転落する。2008年はリーマンショックの年であり、この後2~3年世界中の金繰りが滞った。MRIの金繰りは2011年にかろうじて黒字と言うよりトントンに転換するものの、多分ここに至る前の3年間の赤字で貯えを使い果たしてしまったのだろう。

2012年以降の数字がないが、2013年4月26日の事件発覚時の総被害額=名目残高は1,365億円と言われるから、2012年の残高に比べて5%しか増えていない。年利8%で1年半経っており、名目累積利息分だけで残高を11%ほど押し上げているはずだから、結果的に正味資産は6%ほどの減少であり、ついに自転車は倒れたのだろう。

更に、ここではあえて無視したが、2009~2011年は、それまで110~120円/$程度だった為替レートが$1=80円台と言う極端な円高になった時期で、この数年前に流入した円建て「MARS投資」の償還はそれだけ20%ほどの為替差損が生じたはずだ(全体の約80%が円建てだったと伝えられる)。下って2012年には為替レートは$1=100円台に戻ったから円建ての償還はMRI側に有利になったとは言え、円高時にドル建てで金を注ぎ込んだ「投資家」側は為替差益狙いで現金償還が増えた可能性もあり、いよいよもってMRIの銀行口座は空っぽになったと考えられる。日本の当局が「遅くとも2011年以降は『MARS回収ビジネス』の運用実績がほとんど見えない」と言い、アメリカの裁判で「(フジナガが)2012年4月からの一連のファックスで償還・利払い資金を作るために新規『投資』をより積極的に勧誘する指示」などと認定された時期とも符合する。

非常に荒っぽい仮定の下での推計だが、SECの裁判で公表された、2013年までに「投資家」達から巻き上げた金額約900億円及びそこからポンジースキームで利払いと償還に使った金額の660億円と、ここでの計算はそれ程違わないと言ってもよいと思う。

結論は何か?
MRIにはもう金は残っていない。

これに尽きるだろう。

しかしながら、見れば見るほどお粗末な事件の印象が深まる。周到に計画された詐欺事件なら、金集めがピークを過ぎたころに首謀者は目ぼしい財産を拐帯して地球の裏側に行方不明になっているのが古典的と思えるが、本件ではちょろまかした金を不動産のような流動性が低くまた当局など第三者の管理・追跡しやすい物件に変えて、現金を遣い果たすまで右往左往している。騙される方もお粗末なら、騙す方もお粗末だったとしか言いようがない。それとも、不動産に変えたのはごく一部で、大半は噂されるように合衆国や日本の司直の手の届かない外国に隠したのか?

まぁ、インターネット社会の現代では情報流通は昔とは比較にならないほど簡単かつ大量、迅速だから「地球の裏側」はもう存在しないのかも知れないが、それでも合衆国と犯罪人引き渡し協定がなく、また合衆国に敵対とまでは行かずとも対抗的で、札束を見せれば役人がへいこらする国はない訳ではない。例えば、「スノーデン」と言う名前はまだ世間の記憶に残っており、アメリカで裁判が行われれば国家反逆罪で死刑の可能性もあるが、のうのうと暮らしている。

本当に日本人「投資家」達から金を集めて債権回収資金にする「MARS」ビジネスを継続しようとしていたかも知れない(実際に宣伝よりは遥かに小規模ながら実施はしていた模様)が、それにしては円高時に為替ヘッジをするなどの「プロ」としての手腕に欠けていた。下の、例の掲示板への書き込みが案外真相かも知れない。
MRI運用失敗事件が計画された詐欺事件なら、クラスAからセレクトAに切り替えるときに、1年以上資金集めを停止するようなことはしない。このときは運用先がなくて資金集めを停止したわけだが、金さえ集めてドロンするなら、常に資金集めを行い、これ以上の資金が集まらなくなったと思った時点でドロンする。
 
フジナガらは、資金がおもしろいように集まるから、少々のお金を自分の財布の中に入れてもいいやと思ったのかもしれないが、最初から計画して詐欺をしようとしていたとは思わない。フジナガが問われるのは詐欺罪ではなく業務上横領罪だ。

2014年8月31日 6:15 PM

普通の詐欺事案ていうのは、目一杯集めるだけ集めて、新規資金の伸びが減ってしまったなら、ドロンを企てるもんだ。MRIのフジナガは、2009年ぐらいから新規資金の伸びも鈍化して、言うほど新規資金は集まらなかったんだから、2010年ぐらいにドロンしても良かったのにと思う。既存の顧客から追加資金といっても、高齢者投資家が多かったんだから、言うほど追加資金は入ってこないだろし、新規の顧客開拓をするにしても、年2回しか投資期間を設けないというのもどうかと思うよ。

2014年10月20日 4:24 PM

2014-10-21 : Category: None : コメント : 1 : トラックバック : 0
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鈴木順造、ハワイイにオフィスと銀行口座を持つことが明らかに ~アメリカの裁判~

ネバダ州の連邦地裁で行われているMRI事件被害者25人を代表原告としフジナガ、MRIインターナショナル、鈴木親子、スターリング・エスクローなどを被告とする民事裁判の決定文(文書番号 #192)中で、フジナガが求めていた凍結資産の一部凍結解除請求で、鈴木順造がハワイイ州ホノルルの一等地にオフィス不動産と銀行口座を今でも持つことが明らかになった。

以下は2014年10月17日に下された決定文。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区
(原告らの表示省略)

(被告らの表示省略)

事件番号:2:13-CV-01183-JAD-VCF
以下を認める決定
[建議された]地域規則7-5に基づく銀行口座の凍結解除に対する仮禁止命令の明確化に関する被告鈴木順造の反対無き緊急決定を与える件


本件は、当裁判所に建議された地域規則7-5に基づく銀行口座の凍結解除に対する仮禁止命令の明確化に関する被告鈴木順造の反対無き緊急請求(以下「請求」)である。請求と地域規則7-5に基づく銀行口座の凍結解除に対する仮禁止命令の明確化に関する被告鈴木順造の反対無き緊急請求を支持するニコル・タダノの陳述を考慮し、以下のように決定する

地域規則7-5に基づく銀行口座の凍結解除に対する仮禁止命令の明確化に関する被告鈴木順造の反対無き緊急請求は、これを認める。

スズキ・エンタープライズ・インクのファースト・ハワイアン・バンク、ワイキキ支店、口座番号XX-XXX746の業務用当座口座の凍結は、スズキ・エンタープライズ・インクに、当社に所有されるハワイイ州 96815 ホノルル、カラカウア通り1888に所在するユニットOC102とOC103の二つのオフィス物件の月次不動産費用を払うための資金引き出しに限定された目的のために即座に解除されるものとする。これらの費用は毎月凡そ1,407.63ドルである。加えて、原告弁護団への適切な忠告として、当口座は、固定資産税など当オフィスを維持するためのその他の費用を支払う限定目的のために凍結を解除される。請求する側の弁護団は原告弁護団に月次口座報告書を提供するものとする。

どちらの弁護団も、適切な忠言の下に、本決定の修正を当裁判所に請願できる。

日付:2014年10月17日

合衆国地方判事 ハワード D. マッキベン


かねてから、鈴木順造はハワイイ州のホノルルで旅行代理店を営んでいたとか、MRIの社長エドウィン・ヨシヒロ・フジナガとは銀行の同僚であったとかの噂はあったが、この決定でホノルルに未だに基盤を持っていることが明らかになった。

また、ホノルルのオフィスは「固定資産税の支払い」とあるところから、賃貸ではなく所有のようだ。この1888 Kalakaua Ave., Honolulu, HI 96815 所在の物件は、ホノルル空港とダイアモンドヘッドの中間より少々ダイアモンドヘッド寄りの、ワイキキビーチからちょっと内陸に入った川沿いの、1992年建設の38階建て、総ユニット数196軒のコンドミニアム・ビルディングらしい。



このビルディングの中には、10,485平方フィート(約295坪)、9寝室、9浴室(+便所)、2便所で1,250万ドル(約13億円)と言う「超」の付くユニット(下の写真)もあるが、

鈴木順造が所有するのは、OC102とOC103の2ユニットで1,400ドル余りと言う月次維持費用(多分HOA=Home Owner's Association Fee=共益費と光熱費がほとんどと思われる)からして、こちらのような、精々900平方フィート(約25坪)、資産価値(市場価格)40万~50万ドル(約4~5千万円)程度の1浴室(+便所)、総合部屋1室の「スチューディオ」のようなものと推測される。ユニット番号「OC102」の「O」はもしかしたら浴室なしの「オフィス専用」の意味かも知れないし、番号が「102」と「103」だから、1階のオフィス専用ユニットに思える。

これらの不動産価格の推測が正しいとすれば、固定資産税の負担は1件当たり年間2千ドル程度、総価値はせいぜい100万ドル(約1億円)。1,365億円とされる総被害額の0.1%にも満たない。

この請求・決定は当然のことながら、2014年9月18日の鈴木親子に対する資産凍結・仮差し止め決定を受けてであろう。ホノルルのオフィスの維持費が、資産凍結から除外されている「通常の生活費」には当たらないことから、「緊急請求(Emergency Motion)」として請願し、認められたものと思われる。「緊急」だけあって、この決定は、被告側からの請求、決定の建議、これを支持する証人の陳述、決定の言い渡しが全て同日(2014年10月17日)に行われると言う素早いものだった。被害者・原告側が決定に反対しなかった(unopposed)のは、これらの費用が滞納となればHOAや光熱事業者は遅かれ早かれスズキ・エンタープライズ・インクに対して訴訟を起こして事態がややこしくなることを懸念したからか?

いずれにせよ、鈴木順造の資産が毎月1,400ドルづつ減ることになる。
2014-10-19 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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SEC、即決判決の正式声明発表 ~SECの裁判~

2014年10月10日、合衆国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、SEC)は、2014年10月3日に合衆国地方判事ジェイムズ C. マハン判事が下した即決判決についての声明を発表した。
合衆国証券取引委員会

訴訟報告第23111号 2014年10月10日

証券取引委員会対エドウィン・ヨシヒロ・フジナガとMRIインターナショナルその他、2:13-CV-1658 JCM (CWH)(ネバダ地区)

SEC、ポンジースキームの債務に関して即決判決で勝訴


2014年10月3日、合衆国地方判事ジェイムズ C. マハン判事閣下は、被告らエドウィン・フジナガとMRIインターナショナル・インクに対する債務に関しての連邦証券法の詐欺防止条項違反を含む全ての告発について、証券取引委員会の即決判決の請求を認めた。

2013年9月11日に提訴された本件では、SECはフジナガと彼の会社MRIが投資家の金を巻き上げるための巧妙なポンジースキームを犯したと申し立てた。SECは、被告らはMRIが投資資金を医療売掛を医療機関から割り引いて買い保険会社から満額を回収するために使うと言う仕組みの下で、数千人の主に日本在住の投資家達から8億ドル以上の資金を集めたと申し立てた。SECは、被告らは投資資金を以前の投資家への償還に使い、フジナガは投資資金を不動産や豪華な車を買うことを含む彼自身の目的のために使ったと申し立てた。SECに有利な即決判決を下す中、裁判所は「フジナガは投資資金を単独で支配し、それらを彼自身の個人利益のために使い」また「集めた資金が枯渇する中、フジナガは新しい投資を集めるポンジースキームを画策した」と認定した。

裁判所の即決判決意見は、フジナガは1933年の証券法7条(a)(1)、(2)、及び(3)項と、1934年の証券法10条(b)項と規則10b-5などに違反すると認定する。裁判所はまだ被告らに対する処分の適切な決定しておらず、本訴訟は救済目的に関して現在進行中である。SECの本件は、投資資金を受領して費消したとSECが申し立てる複数の交替被告についても継続している。

更なる情報は、訴訟報告第22832号(2013年10月3日)「SEC日本の投資家をカモにしたポンジースキームで資産凍結及び他の緊急措置を得る」を参照されたい。

SECは、本件に関して日本の金融庁と日本の証券取引等監視委員会の支援を評価する。
2014-10-16 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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詐欺被害情報ポータル閉鎖か?

誰でも書き込みのできる(ただし一部検閲あり)MRIインターナショナル事件の唯一の掲示板の「詐欺被害情報ポータル」が、日本時間2014年10月13日午後2時頃からERROR 403(アクセス禁止)またはERROR 404(ファイルが見つからない)を返してアクセス不能になっている(日本国内及びアメリカから確認)。

これが一時的な障害なのか、永久的な閉鎖なのかは不明。

もう一つの類似サイト「詐欺被害速報」は、サーバそのものがダウンしている。

以下は、拙者の記録に残っている日本時間2014年10月11日午前現在の詐欺被害ポータルのコメント一覧。サーバのファイルアップロードの都合上、複数ページに分割してある。また、日付のリンクは元のポータルを指しているのでリンク切れの可能性が高い。

 ■詐欺被害情報ポータル コメント一覧 [1/3] 2013年 4月26日...2013年12月10日
 ■詐欺被害情報ポータル コメント一覧 [2/3] 2013年12月10日...2014年10月11日
 ■詐欺被害情報ポータル コメント一覧 [3/3] 2014年10月11日...

2014年10月13日(ラスベガス時間)追記
詐欺被害情報ポータルの障害は一時的なものだったようで、日本時間2014年10月14日午前11時頃までに復活している。

2014年10月28日(ラスベガス時間)追記
日本時間2014年10月29日午前12時現在、またしてもサイト全体がアクセス不能になっている。2014年10月11日以降の記録に残っている保存分もアップロードしておいた。

2014年10月31日(ラスベガス時間)追記
日本時間2014年10月31日深夜までには回復している。

詐欺被害速報」の方も復活しているが、2014年1月18日以降、新しい書き込みはない。

2014年11月12日(ラスベガス時間)追記
日本時間2014年11月5日から2014年11月12日昼ごろまでまたダウンしていた。どうもダウンの間隔が短くなり、ダウンの期間が長くなるなどサイトの不安定さが増してきた感じがする。

2014年11月19日(ラスベガス時間)追記
日本時間2014年11月19日16時30分頃からダウン。

2015年1月2日(ラスベガス時間)追記
2014年中に「詐欺被害ポータル」が復活することはなかった。このサイトの運営元とみられる「as相談センター」は探偵業を営んでいるらしいが、2013年に東京都公安委員会から業務停止35日間の行政処分を受けており、2chでの評判も芳しくはない。
2014-10-13 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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フジナガとMRIのポンジースキームを認める【マスコミ報道】 ~SECの裁判~

先ずは日経新聞の記事
MRIの詐欺行為認定 米連邦地裁、フジナガ社長側上訴へ

2014/10/9 11:50 (2014/10/9 13:43更新)

 【ロサンゼルス=共同】日本の投資家から集めた巨額の資産を消失させた疑惑が持たれている米資産運用会社「MRIインターナショナル」に対して米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、米ネバダ州の連邦地裁は8日までに、MRIの社長が投資家の資産を私的に流用したなどとして、同社による詐欺行為を認定した。

 2013年4月に疑惑が発覚して以来、法廷でMRIの違法性が明確に認められたのは初めて。同地裁は、MRIのビジネスは違法性が高いとしてSECが提出した証拠について、認めるのに足ると判断した。

 同地裁は3日、同社のエドウィン・ヨシヒロ・フジナガ社長(67)が、投資家に対し、資産は第三者に預託されており安全だと説明していたが、実際は私的に流用しており、資産が枯渇すると新たな投資家から資金を集める詐欺商法だったと認定した。ロイター通信によると、フジナガ社長の弁護士は上訴するとしている。

 MRIを巡っては、日本人投資家も損害賠償を求めた集団訴訟を起こしており、同地裁は9月、MRI日本事務所の元統括責任者らが詐欺行為に関与した可能性を指摘、資産の凍結を命じた。
共同通信の配信記事を基にしており、独自取材ではなさそう。「上訴へ」とタイトルで強調しているが、根拠としているロイターズの記事は「控訴を考えている(they planned to appeal)」と述べているだけで、具体的な控訴の動きはまだ見えていないようだ。


次は同じく共同通信の配信記事を使った47新聞の記事。福井新聞にも全く同じ記事がある。
MRIの詐欺認める、米連邦地裁 邦人投資家被害回復に道

 【ロサンゼルス共同】日本の投資家から集めた巨額の資産を消失させた疑惑が持たれている米資産運用会社「MRIインターナショナル」に対して米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、米ネバダ州の連邦地裁は8日までに、MRIの社長が投資家の資産を私的に流用したなどとして、同社の詐欺行為を認定した。

 2013年4月に疑惑が発覚して以来、法廷でMRIの違法性が明確に認められたのは初めて。多数の日本人投資家の被害回復に道を開く可能性がある。

 MRIのビジネスは違法性が高いとしてSECが提出した証拠について、認めるのに足ると判断した。

2014/10/09 12:14 【共同通信】

「多数の日本人投資家の被害回復に道を開く可能性がある」と何やら一部「投資家」達の喜びそうな文句が書かれているが、フジナガ・MRI側の不法行為の認定は時間の問題だったから、問題は「被害回復」の原資があるのかどうかであり、軽々しく「道を開く」などと書くのは如何なものか。


TBSの記事は動画付だが、これは多分今回の撮影されたものではなく、以前の集録の「記録映像」だろう(多分、2013年11月頃の集録と思われる)。
米連邦地裁、MRI側の「詐欺行為」認める判決



 アメリカの投資会社「MRIインターナショナル」が巨額な運用資金を消失させたとされる問題で、アメリカ・ネバダ州の連邦地裁が10日までに会社と社長の詐欺行為を認定する判決を下しました。

 この問題はアメリカ・ネバダ州の投資会社「MRIインターナショナル」が、診療報酬回収ビジネスへの投資名目で集めたおよそ1300億円もの資金の大半を消失させたとされるものです。

 SEC=アメリカ証券取引委員会は、MRIの詐欺行為の認定を求める訴訟をネバダ州の連邦地裁に起こしていて、連邦地裁が10日までにエドウィン・ヨシヒロ・フジナガ社長と会社の詐欺行為を認定する判決を出しました。調達した1300億円の資金のうち、およそ170億円[拙者註]しか運用しておらず、フジナガ社長が資金を私的に流用していたこと、資金が枯渇すると新たな顧客から資金を集めて配当金に充てていたなどとするSEC側の主張を認める内容です。ロイター通信によりますと、MRI側は上訴する方針だということです。

 この問題を巡っては去年9月、SECからの申し立てを認め、連邦地裁が会社と社長の資産を凍結したほか、日本人投資家が損害賠償を求める訴訟を起こしています。

 また、日本では被害者対策弁護団が刑事責任の追及と被害金の回復を目指していて、団長の山口広弁護士は「MRIが違法行為をしていたとの前提条件に立てるため、今後のステップアップになる」などとコメントしています。(10日12:31)
[拙者註]判決文では1,610万ドル、すなわち約18億円しか運用していないと述べられている。

MRIが実際に運用していた金額を一桁間違えるなど、かなりの与太記事。そう言えば、TBSは「MRI、ハワイイに勧誘部隊」という煽情的だが信憑性に疑問のある記事を2014年5月2日に掲載した毎日新聞と関係が深い。下は今回の決定・判決文の当該金額を述べている部分。

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不動産取引とは違うエスクローがある」などと嘯いて何事にも「負け」を認めたがらない一部「被害者」達の中には、「MRIの計算には別の『million』がある」などと言い出してTBSの「170億円」を正当化したがる輩もいるかも知れないが、合衆国の裁判で使われる英語で「million」は「百万」、ゼロが6個のこと。従って「$16.1 million」は「1千6百1十万ドル」のことであり、現時点での為替レートで約17億7千万円。驚くべきことに、MRIが集めたとされる総計1,365億円(被害発覚時点での「投資金」残高)の1.3%足らずしか実際の「MARS投資」には使われていなかったことになる。

2014年10月11日追記
東京新聞にも、同じく共同通信配信記事の掲載がある。
MRIの詐欺行為認定 米連邦地裁 邦人被害回復に道

2014年10月9日 夕刊

 【ロサンゼルス=共同】日本の投資家から集めた巨額の資産を消失させた疑惑が持たれている米資産運用会社「MRIインターナショナル」に対して米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、米ネバダ州の連邦地裁は、MRIの社長が投資家の資産を私的に流用したなどとして、同社の詐欺行為を認定した。

 二〇一三年四月に疑惑が発覚して以来、法廷でMRIの違法性が明確に認められたのは初めて。米国の証券取引規制は、詐欺行為などで得た利益は被害者に分配できると規定。MRIと社長の資産は今後、合計約千三百億円を出資した約八千七百人の日本の投資家に分配されるとみられ、被害回復に向けた大きな一歩となる。

 MRIのビジネスは違法性が高いとしてSECが提出した証拠について、認めるのに足ると判断した。

 同地裁は三日、同社のエドウィン・ヨシヒロ・フジナガ社長(67)が、投資家に対し資産は第三者に預託されており安全だと説明していたが、実際は私的に流用しており、資産が枯渇すると新たな投資家から資金を集める詐欺商法だったと認定した。ロイター通信によると、フジナガ社長の弁護士は上訴するとしている。

 MRIをめぐっては日本人投資家も損害賠償を求めた集団訴訟を起こしており、同地裁は九月、MRI日本事務所の元統括責任者らが詐欺行為に関与した可能性を指摘、資産の凍結を命じた。

 SECは投資家保護や不正取引の監視を担う「資本市場の番人」。日本の監視委より規模が大きく、違法行為による損害を被害者に弁済させるなどの強い権限を持つ。
SECは、例えばNYSEやNASDAQのような公設市場に上場する証券の許認可権限を持ち、上場会社は四半期ごとにSECに事業報告が義務付けられているなどの強い権限を待つ。今回の訴訟では、公益を代表する立場で、被害者に代わって加害者の不当利得を吐き出させる命令(disgorgement)を裁判所に請求するなどの役割を担っている。ただし刑事に関する権限は持たない。刑事訴追は検察の仕事。



金額について
今回の決定・判決文で述べられている具体的な金額は、以下の三件のみ。
  • MRIが実際に購入したとされるMARSの価値 1,610万ドル(約18億円)
  • MRIが「投資家」達から集めたとされる資金 13億ドル(約1,400億円)
  • MRIがFC(Factoring Center、フジナガの所有する別会社)に払ったとされる「マーケティング料」 数百万ドル(数億円)

ロイターズの記事には、これら以外に以下の数字が登場する。
  • MRIが「投資家」達から集めたとされる2012年現在の総資金 8億1,300万ドル(約900億円)
  • MRIがポンジースキームで以前の「投資家」達に払い戻したとされる金 6億1,000万ドル(約650億円)
多分、SECの訴状などからの金額だろう。しかしながら、日本で言われている総被害金額の1,365億円約13億ドル、判決文中の金額と一致)と上記の8億1,300万ドルはかなり隔たりがあるが、理由は不明。一つの可能性は、13億ドル(1,365億円)は累積利息を含めた「簿価」で、8億余ドルは「投資家」達が貢いだ元金だけの「実損」と言うことか?MRIからの非公式な情報によれば、「投資家」達のうち現金で償還するのは5%程度で、残りは「再投資」していたと言う。これが金額ベースか人数ベースかは不明だが、金額ベースとするとMRIの破綻直前にうまく償還を得て「勝ち逃げ」した幸運な「投資家」達は約70億円の金をMRIから引き出しており、もし上記の「簿価と実損」の関係が真とすると、その内30億円近くはババを持ったまま逃げ損ねた他の「投資家」達が貢いだ金から得た利益と言うことになる。

これらの8億ドルと6億ドルの数字を採用すると、実に入金額の75%を払い戻しに充てており、明白なポンジースキームと言えよう。別の見方をすれば、これらの差額の約2億ドル(約220億円)はフジナガや鈴木一家の私腹を肥やすことを含む、本来の「MARS投資」以外の使途に費やされたとも言えるだろう。

現地(ネバダ州)時間で2014年10月10日現在、これら以外のマスコミ報道は確認していない。
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フジナガとMRIのポンジースキームを認める(2) ~SECの裁判~

前回からの続き。個々の争点について議論。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
II. 法基準
A. 12(b)(1) 事物管轄権の欠如
(判例文省略)
(判例文省略)

B. 12(b)(6) 訴えの不明瞭さ
(判例文省略)
……
(判例文省略)

C. 即決裁判
(判例文省略)
……
(判例文省略)

D. 詐欺防止条項
(判例文省略)
……
(判例文省略)

III. 議 論
A. 12(b)(1) 事物管轄権の欠如
交替被告らジューン・フジナガとユンジュ・トラスト(以下「交替被告ら」)は、申し立てられている議論は(法令)の示す5年間の時効に外れるので、彼らに対する原告の訴えには当裁判所は事物管轄権が欠如していると訴える(文書#140-1)。交替被告らは、これらの訴えに関して、利得吐き出しの求めは結果的に時効により妨げられると述べる(文書#140-1)。

原告は、修正訴状は2013年まで犯された進行中の詐欺行為について申し立てると反論する(文書#144)。原告は更に、問題の行為が訴状が提出される5年以上前に起きていたとしても、これらは公正な救済の訴えなので合衆国法典28章2462条は吐き出しの決定には該当しないと反論する(文書#144)。

当裁判所は、原告の2462条の5年の時効が該当しない主張に同意する。利益の吐き出しの決定は本質的に公正である。(判例)

交替被告らは(判例)を引用し、2462条は即時事件に適用されるとして、彼らの主張の根拠とする。しかしながら(判例)は処罰を求める民事執行であり、吐き出しではない。

更に、(判例)は究極的には「何時から訴えが生じ始めたか」の意味を扱い、2462条の適用性についてではない。(判例)

とりわけ、他の管轄区では、吐き出しを含むSECが求める救済の全ての形に於いて2462条が適用されてきている。(判例)。しかしながら、(判例)は当管轄区では支配的であり、2462条が吐き出しの訴えには不適切であることを示す。

いずれにせよ、本件審理のこの段階では、原告の訴状は時効期間内の行為を十分に申し立てる。よって、2462条が適用されたとしても、これらの根拠を却下するのは妥当ではないであろう。(判例)

これらの理由により、交替被告の事物管轄権欠如に基づく却下の請求は棄却する。

B. 12(b)(6) 訴えの不明瞭さ
被告らMRIとフジナガ及び交替被告CSAとFCは、当該取引は国内でなかったから即時決定は却下されるべきだと議論する(文書#134)。被告らは(判例)から「取引要件」を引用する。

原告は(判例文)を引用して反論する。

被告は、(判例)(判例)の適用性を変えなかったと反論する。特に、被告らは上記の部分が「手続き上のことで本質ではない」とし、裁判所の管轄権にのみ言及していると反論する(文書#147)。更に、被告らは(判例)(判例)を覆せなかっただろうし、その判断についての明示的な参照のない要件を拡大できなかっただろうと訴える(文書#147)。

他の管轄区は、(判例)の効果に関する明瞭さの欠如を記している。

これらの管轄区が結論するように、当裁判所は被告らの却下の請求がより狭義の(判例)要件の下で棄却されるなら、(判例)の適用性を斟酌する必要はない(文書#118)。

(判例)は、証券法の詐欺防止条項は国内取引所に上場されているかまたは「国内におけるその他の証券取引」に限り適用されるとしている。(判例)

(判例)以来、第二巡回裁判所はこの要件を「取消不能な債務または名義が合衆国内で移転する…当事者らが取引の発行に拘束される」とき、この要件が満たされるとしてきた。(判例)

各裁判所は、この管轄権について第二巡回裁判所の要件を類似の事件に適用してきた。(判例)

同様に、第九巡回裁判所は、(判例)を引用し、([拙者註]そちらの事件の)被告らがネバダ州で株式購入契約と支払いを受け取ったときに取引が国内であったと位置付けている。(判例)

原告は特に、被告らがラスベガスの事務所と銀行口座で申込書、金、そして投資証書の授受をしたと申し立てる。これらの事実は、真実とすれば、被告らが当該証券の名義を合衆国内で移転したことを示す。これは(判例)の「名義の受け渡し」要件を満たす。

代わりに、原告の訴状はまた、取消不能な債務が合衆国内で発生したことの結論を支持する十分な申し立てを含む。原告ら[拙者註3]は、投資家達がラスベガスの被告らに金を送金し、被告らが投資証書を合衆国内で発行したと申し立てる。

これらの取引は民事即時決定に関わるものであり、被告らが負う如何なる債務もこれらの取引に由来する。結果として、原告の訴状はまた上記「取消不能な債務」に該当する。従って、当裁判所は、当該取引は問題なく国内証券法に抵触すると認定する。

以上により、原告の訴状に対する、規定12(b)(6)を根拠とする却下は適切ではない。当裁判所は被告らの請求を棄却する。

C. 12(b)(6) 特定性のない弁論
交替被告らジューン・フジナガとユンジュ・トラスト(「交替被告ら」)はまた、原告の第一次修正訴状を、十分な特定性をもって事実を弁論していないとして却下するように請求した(文書#141)。交替被告らは、原告が「誰が、何を、どこで、いつ、どのようにして申し立てられる不正取得された資金の移転がなされたのか申し立てていない」と申し立てる(文書#141)。

当裁判所は別件に於いて、相似の申し立ては却下の請求を凌駕するに十分であると認定して交替原告による類似の反論を退けた。(判例)。本件でも同一結果が相当である。

原告の訴状は、ジューン・フジナガは不適切に取得された投資資金を被告らから受領し、それらの資金を不動産の購入を含む私的目的に使ったと申し立てる(文書#118)。原告は特に、フジナガ夫人が資金を「MGMグランド住居タワーのコンドミニアム物件(複数)の購入に」使い、のちに所有権をユンジュ・トラストに移転したと訴える(文書#118)。

原告の、交替被告らに対する申し立ては、規定12(b)(6)の下で棄却を排除するのに十分特定的である。原告の訴状は、犯された件の詐欺に関して適切な詳細を提供し、吐き出しの訴えを支持するための交替被告らの申し立てられる当該詐欺との関係を描写する。

これにより、当裁判所は交替被告の、規定12(b)(6)の下での特定性の弁論の欠如を理由とした却下の請求を棄却する。

D. 被告らの時効に関する部分的即決裁判請求
被告らフジナガとMRI及び交替被告CSAは、当裁判所にSECが求める訴えと救済が部分的に適用時効を過ぎているとを根拠として部分的即決裁判を請求する(文書#122)。この請求で、被告らは上記で議論した却下の請求での反論を再び述べる(文書#140)。

特に、被告らは(法令)の定める5年の時効が原告の訴えを妨げると主張する。しかしながら、原告は、被告らが連続的に2013年まで詐欺的行為を犯したと申し立てる。この申し立てを支持するため、原告は、被告らの請求に反対する立場での詳細な証拠を示す(文書#137)。

とりわけ、2462条は被告らに対する原告の訴えに部分的にしか適用されない。(法条項)。しかしながら、当裁判所はこれらの区別に言及することは不要と認定する。最低でも、被告らは、申し立てられる詐欺行為が時効期間内に起こったかどうかに関する本質的事実の真正な係争の欠如を示していない。争いのある事実関係は、被告らの請求に関して原告に有利に解釈されるべきであるから、これらの理由に基づく即決裁判の請求は棄却される。

E. 原告の債務に関する即決裁判請求
原告は当裁判所に、フジナガとMRIに対抗する債務に関する即決裁判を求める。原告の請求を支持するための文書は、被告らに対抗する請求を支持する証拠に於いて詳細である(文書#113-1)。原告は、被告らの不実の説明と詐欺スキームに関する事実に本質的な問題はなく、よって即決裁判は適切であると主張する。

原告はまた、被告フジナガの合衆国憲法修正5条の行使から見て、不利益な推論をするように求める(文書#113-1)。当管轄区の各裁判所は、民事執行手続き中にSECの証拠を論駁するより合衆国憲法修正5条の行使を強調する[拙者註4]被告についてSECに有利な即決裁判を許諾してきた。(判例)

被告の反論は、「国内取引が存在したかどうかについて重要な事実問題が存在する」と、上記で拒絶された(判例)の議論を蒸し返すに過ぎない(文書#135)。被告らはまた、原告は請求の支持の中で認めがたい証拠を引用すると述べる(文書#135)。

更に、被告らは、当裁判所は被告フジナガの合衆国憲法修正5条の行使から見て不利益的な推論をするべきでないと反論する(文書#135)。被告らは、彼らの結論中で、示された証拠は重要事実について真正な問題を造り出すに足り、即決裁判は不適切だと反論する(文書#135)。

上記の法基準に照らし、争われている事実問題は被告に有利に推論されるべきである。(判例)。原告は審理に於ける証明の負担を負うから、即決裁判は、原告が支持され評決を保証するに足る証拠を提出したときのみ適切である。(判例)。よって、原告は如何なる点についても重要事実の真正な問題がないことを確証しなければならない。(判例)

原告は、申し立てられている違反の全ての要素について十分に見合う証拠を示している。証拠は、被告らがクラスAとセレクトA投資の性質について重大な虚偽を述べたことを示す。被告らは、当該投資を「保証された」「確実な」ものでありエスクローで保護されると宣伝した。

現実には、被告フジナガは投資資金をただ一人で支配し、資金を自分自身の私的利益のために使った。集められた投資のプールが枯渇する中、フジナガは新規投資で賄われるポンジースキームを画策した。

記されたように、投資の安全性についての虚偽は重大である。(判例)。道理をわきまえた投資家は当該証券を購入するかどうかの決断でこの情報を重要視する。

更に、フジナガのこのスキームの支配は、彼の合衆国憲法修正5条の強調と併せて、法令に基づいて要求される故意性を示すのに十分である。(判例)

被告らは証券を日本の投資家達に販売したことは争わない。原告の議論を反駁するため、被告らは単純に彼らの取引が国内でなかったから証券法には抵触しないと訴える。上記の議論に基づき、この反論は功を為さない。

従って、被告らは重要事項についての真正な係争があることを示す不十分な証拠を示す。それにより、当裁判所は原告の、債務に関する即決裁判の請求を許諾する。

IV. 結 論
従って、
被告らの、訴えの却下の請求とこれに同じくするもの(文書#134)は、これを棄却することとし、ここに決定宣告そして判決する

更に、被告らの、裁判権の欠如を理由とする却下請求とこれに同じくするもの(文書#140)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、被告らの、特定性に基づく弁論ができていないことを理由とする却下請求とこれに同じくするもの(文書#141)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、被告らの、部分的即決裁判の請求とこれに同じくするもの(文書#122)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、原告の、即決裁判の請求とこれに同じくするもの(文書#113)は、これを許諾することとし、ここに決定する

日付 2014年10月3日

合衆国地方判事 ジェイムズ C. マハン



[拙者註3]「原告」の誤りと思われる。
[拙者註4]「だんまりを決め込む」意味か?

2014年9月18日のマッキベン判事の出した25人の代表原告による民事訴訟での差し止め命令に続いて、原告側のほぼ完全勝訴のようだ。

この決定の評価は後日に。
2014-10-11 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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フジナガとMRIのポンジースキームを認める(1) ~SECの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のマハン判事は、2014年10月3日、合衆国証券取引委員会が訴えていたMRIのMARS投資詐欺に関して、フジナガとMRI及びフジナガの離婚した妻らの責任を認定する即決裁判判決を下した。

本決定は原文15ページと長文なので、2回に分割して掲載する。

まず例によって結論(本決定の最後の)部分。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。

拙者は日米どちらの法学にも精通しておらず、適切でない用語や言い回しがあるかも知れない。指摘があれば歓迎し、随時修正する。
IV. 結 論
従って、
被告らの、訴えの却下の請求とこれに同じくするもの(文書#134)は、これを棄却することとし、ここに決定宣告そして判決する

更に、被告らの、裁判権の欠如を理由とする却下請求とこれに同じくするもの(文書#140)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、被告らの、特定性に基づく弁論がされていないことを理由とする却下請求とこれに同じくするもの(文書#141)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、被告らの、部分的即決裁判の請求とこれに同じくするもの(文書#122)は、これを棄却することとし、ここに決定する

更に、原告の、即決裁判の請求とこれに同じくするもの(文書#113)は、これを許諾することとし、ここに決定する

日付 2014年10月3日

合衆国地方判事 ジェイムズ C. マハン


それでは、判決の最初から逐文的に翻訳してみる。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区

原告: 証券取引委員会

被告: エドウィン・ヨシヒロ・フジナガとMRIインターナショナル・インクら

事件番号: 2:13-CV-1658 JCM (CWH)
決 定

当裁判所には被告らMRIインターナショナル・インク(「MRI」)、エドウィン・フジナガ(「フジナガ」)(集合的に「被告ら」)と交替被告CSAサービスセンターLLC(「CSA」)及びファクタリングカンパニー(「FC」)から連邦民事訴訟規定12(b)(6)に従った却下の請求(文書#134)が提出されている。原告証券取引委員会(以後「原告」)は回答(文書#138)を、そして被告らは返答(文書#147)を提出した。原告はまた、補助的権原の通知(文書#149)を提出した。

更に交替被告らジューン・フジナガとユンジュ・トラストから連邦民事訴訟規定12(b)(1)及び12(b)(6)に従った2件の却下の請求(文書#140、141)が提出されている。原告は請求に対する回答(文書#144)を、そして被告らは返答(文書#150)を提出した。

更に被告らは部分的即決裁判の請求(文書#122)を提出した。原告は回答(文書#137)を、そして被告らは返答(文書#146)を提出した。

更に原告は即決裁判の請求(文書#113)を提出した。被告らは回答(文書#136)を、そして原告は返答(文書#139)を提出した。

I. 背 景
2013年9月11日、証券取引委員会(「SEC」)は被告らに対して民事執行訴訟を起こした(文書#3)。2013年9月12日、当裁判所はフジナガとMRIに対して仮差し止め命令を出すべきではないと主張する理由を示すよう命令した(文書#11)。2013年10月7日、当事者らは仮差し止め命令の開始を規定された(文書#20)。

2013年12月11日、被告らフジナガとMRIとCSAは訴状に対する回答を提出した(文書#27)。当事者らは証拠開示を2014年7月8日までに完了した(文書#138)。2014年7月16日、原告は即決裁判の請求を提出した(文書#113)。2014年7月24日、当裁判所の許可を得たあと、原告らは修正訴状を提出した(文書#118)。

原告は、フジナガが、彼の会社MRIを通して、生涯の貯蓄をかけた投資家達から金を巻き上げる巧妙なポンジースキームをしでかしたと申し立てる。原告は、被告らは投資家達に、MRIは彼らの投資で医療機関から医療売掛(「MARS」)を割り引いて購入し、保険会社から満額を回収すると言ったと申し立てる。

原告は、現実には被告らは投資資金を以前の投資家への償還に使ったと訴える。2013年4月の日本の金融庁への報告書で、フジナガは「3、4、5年前、投資家達からの投資資金を他の投資家達への元本と利息の支払いに充当し始めた」と認めた(文書#113)。原告は更に、フジナガは投資家達の金を不動産や豪華な車の購入などを含む彼の私的支出に使ったと断言する。2013年5月までに、投資家達の資金は完全に消失した。

原告は、1998年から2013年の間被告らは東京に販売オフィスを持ちラスベガスから営業したと申し立てる。原告によれば、投資家達は被告らのラスベガスにあるウェルズファーゴ銀行の口座に電信送金または小切手を送った。

交替被告らは、言われるところによれば、投資家達の資金を受け取り、不動産購入のために使った。ジューン・フジナガは被告エドウィン・フジナガの妻である。彼女は、申し立てられるところによれば、投資家達の資金をMGMグランド住居タワーのユニット(複数)の購入に使い、のちにこれらの不動産の所有権を「ユンジュ・トラスト」に移転した(文書#118)。

交替被告CSAは、言われるところによれば、フジナガの分身である(文書#113)。FCはフジナガに完全に所有されている。MRIは、申し立てられるところによれば、数百万ドルの「マーケティング料」をFCに払った。

原告によれば、被告らはクラスAとセレクトAの証券を購入するように日本の投資家達に持ちかけた(文書#113)。原告は、被告らの勧誘パンフレットは以下のような説明でこれらの投資を宣伝したと主張する。
  • MRIへの投資は比類なき収益性と、卓越した、確固たる安定性をもたらす
  • 資金は医療売掛[ママ]の購入にのみ使われる
  • 州政府の役割は……積立システムを通じて保証を与える
  • 投資家達の金は…エスクローが管理する…特別なロックボックス口座に…保全され…万が一銀行が破綻して彼らが資金に触れられないように州法が保護する
被告らはまた、申し立てられるところによれば、「投資家達からの資金はエスクローエージェントが管理する分離された資金として信託口座に入金される」と述べる日本語の開示文書を被告ら[拙者註1]に送った(文書#113)。最後に、被告らは、MRIは実際には1,610万ドルの価値しか購入していないのに、「2009年に、MRIは合計約13億ドルのMARSを購入した」と彼らの投資家向け雑誌で説明したと思われる。

被告らの、言われるところのエスクローサービス、スターリング・エスクローの社長兼オーナーは、彼はフジナガに言われるままに金を移動し、被告らに対してエスクロー業務を果たさなかったと陳述した(文書#113)。フジナガはのちに、利息が払えないのは「スターリング・エスクローに監査が入ったからだ」と非難した(文書#113)。

フジナガは、彼の投資家達への説明、投資資金の保全、MRIが投資家達に負う金、CSAがMRIから受領した金、フジナガのFCの所有実態、FCのMRIのマーケティングサービスの効果などへの疑問に対する回答で合衆国憲法修正第5条[拙者註2]の特権を行使している(文書#113)。

前述の事実に基づき、原告は、フジナガとMRIに対する差し止め命令と民事罰金、全ての被告らと交替被告らからの不正な資金の吐き出し、及びその他の適切な公正な救済を求める(文書#118)。

被告らは、当事者らの証拠開示と原告の修正訴状却下への返答として、即時棄却請求と即決裁判請求を提出した。

次回に続く)

[拙者註1]「投資家達」の誤りと思われる。
[拙者註2]黙秘権などを定めた「権利の章典」
2014-10-11 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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【速報】 8億ドルのポンジースキームの債務を認める ~SECの裁判の判決~

SEC(合衆国証券取引委員会)がフジナガとMRIインターナショナル、鈴木順造・ポール武蔵らを相手取って起こしていた、ポンジースキーム詐欺の責任を追及する裁判の判決が2014年10月3日に出たようだ。

詳細は未だ不明だが、「即決判決(Summary Judgement)」と言う、一方の主張が明白に正しいと判事が判断するときに一定のルールに従って時間と費用の節約のために正式審理を行わずに判決を下す形になったらしい。被告、MRI側は勿論控訴の権利がある。

まずLaw360の速報
MRIインターナショナル8億ドルの債務ありと判決
Law360 ロスアンジェルス発 2014年10月6日午後5時46分 東部時間
報告:ジェフ・シストランク

ネバダ州の連邦判事は、ラスベガスに本拠を置くMRIインターナショナル・インクとそのオーナーがポンジースキームで主として日本在住の投資家たちから8億ドルを集めたとし、合衆国証券取引委員会(SEC)は訴えの十分な証拠を示したと認めた。

ジェイムズ C. マハン合衆国地方判事はSECの即決裁判の請求を認め、被告らの裁判権の主張を退け、MRI、そのオーナーのエドウィン・フジナガ、及び数人の交替被告の却下の請求を棄却した。

ロイターズにも同様の記事がある。
2014年10月7日午後1時47分 東部夏時間
ラスベガスの重役SECの事件でポンジースキームの債務を認められる

(ロイターズ) 合衆国の判事が、ラスベガスの重役と彼の会社が、主として日本の投資家たちから8億ドルを集めたポンジースキーム詐欺の債務があると認めた。

ジェイムズ・マハン合衆国地方判事は、金曜日に、合衆国証券取引委員会がエドウィン・フジナガと彼の会社MRIインターナショナル,Ltd.[拙者註]に対する民事訴訟の訴えを証明する十分な証拠を提示したと判断した。

フジナガは「保証され」「固定金利」の投資を宣伝したが、実際には「投資資金を一人で支配し、資金を彼の個人用途に使った」とマハン判事は述べた。

「集めた資金が減り続けるのを、フジナガは新しい投資のポンジースキームで対処した」と、マハン判事は正式裁判を不要とする判決文で述べた。

本件は今後損害賠償の段階に移行するだろう。SECは、差止め、民事賠償、不当に得られた資金の吐き出しなどを要求してきたと判決は述べる。

SECの広報担当のジョン・ネスタ―氏は、火曜日に、委員会は「判断に喜んでいる」と述べた。フジナガとMRIの弁護士のダニエル・ヒズク氏は、控訴を考えていると述べた。

この訴訟でSECは、フジナガとMRIインターナショナルは合衆国の医療機関から売掛を割り引いて買い、満額を保険会社から回収して投資家に6~10.3%払うと約束したと述べた。

しかしながら、SECは、フジナガは「古典的なポンジースキーム」で1998年から以前の投資家に、新規および再投資の金から6億100万ドルを償還したと述べた。

SECは、フジナガはまた、投資家の資金で豪華な車やクレジットカード、離婚扶養費、養育費などを払ったと述べた。彼は、ラスベガス、カリフォルニア州ベバリーヒルズ、およびハワイイに家を所有していると訴訟で述べられた。

8,000人以上の人が、米ドルまたは日本円でMRIインターナショナルに投資したとSECは述べた。MRIの総投資額は2012年で8億1,300万ドルに達した。

判決でマハン判事は、フジナガのSECは5年間の時効を過ぎているので訴えられないとの主張を退けた。

判事はまた、取引が国内で行われたのではないとの主張に基づく訴えの却下の要求を棄却した。

本件は SEC対フジナガら、合衆国地方裁判所ネバダ地区、番号13-01658。

(報告はニューヨークのネイト・レイモンド、編集はジェフェリー・ベンコー、バーナード・オー)

[拙者註]正しくは「Inc.」

この判決については、現地(ラスベガス)時間2014年10月8日午前9時現在、CNBCなどがロイターズの配信をそのまま転載するなどの数件を除いて、日本の新聞サイトも含め報道は確認していない。
2014-10-08 : マスコミ報道 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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鈴木親子は本当に騙したのか? ~アメリカの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のマッキベン判事は、2014年9月18日の、鈴木親子に対する仮差し止めを認める決定の中で、詐欺の構成要件について次の必要事項を判例を挙げて説明している。
  1. 被告による不実の説明
  2. 被告が説明が不実であることを知っていたまたは信じていた(あるいはその説明が不確かなことに基づいている)
  3. 被告が、原告が虚偽の説明に依存することにより行為を行うまたは行為を控えるように仕向ける意図
  4. 原告が実際にその虚偽の説明に依存した事実
  5. その依存により原告に損害が生じた
つまり、騙す意図を持って嘘と知りつつ真実でないことを告げ、その結果実際に騙されて損害を負った、と言う事実が詐欺の定義となる。ここで注目すべきことは、騙された方が騙されても仕方なかったかどうかと言うことは問わないこと。つまり、一般常人の感覚・知識から言って「そんなことはありえない、嘘だろ」と言われるようなことでも、例えば
「NASAが火星(MARS)の文明生物との通信に成功し、来年から貿易を始めるので投資しないか」
とか
「一錠飲むと寿命が確実に3ヶ月延びる薬が開発された。20錠パック限定で50万円で買わないか」
と言われて応じて金を摩っても、やはり詐欺には違いない、と言うことだろう。

以下に挙げる「被害者」達が「嘘だった」と主張する事柄には、何百万円、何千万円もの金を出す前にちょっと調べればわかるはず、健全な「投資」あるいは社会・経済常識を備えていればそんなことを信じるはずがないと思うようなこともなくはないが、そういう事情は詐欺かどうかの判断に際しては不問と言うことらしい。

マッキベン判事は続ける。
原告らの申し立てと示された証拠から、原告らが、鈴木親子がMRI証券を売るために繰り返し原告らに虚偽の説明をしたことを証明する可能性は高い。証拠は、鈴木親子が、彼らが説明をしたとき及びMRIからコミッションを受け取ったときに当該詐欺について知っていたあるいは知り得たはずだと言うことに関して説得力がある。原告らは、鈴木親子が、投資は厳格な保護の下にあると約束したので、多額の金銭を投資した。鈴木親子は、原告の投資がどのように扱われるかについて不実の説明をした。
では、原告らが、鈴木親子が具体的にどのようなことについて嘘を言っていたと申し立てているか言うと、
  1. 投資家の資金はMARSの購入にのみ使われる。
  2. 合衆国法が投資家の資金を保護する。
  3. 投資家の資金はエスクローの分離した「ロックボックス」に保全され、この口座は特別な銀行口座で売掛金を回収するために使われ、売掛の額面価格はそれを購入した金額を上回ることを要求する。
  4. 厳しい審査に通った会社だけがロックボックスを開設する資格がある。
  5. エスクロー会社がMRIが投資家の資金に触れることを不可能にする。
  6. エスクローシステムは資金の分離を保障しているので、万が一MRIが破綻しても資金は債権者から保護される。

マッキベン判事は以下のように結論する。
彼らは、これらの説明が不実であったことを知っており、彼らは原告らを投資に仕向けるためにこれらの説明を使い、原告らは当然にこれらの説明を信じてMRIと契約する判断をし、原告らは彼らが投資した金のほとんど(もし全てでなければ)を失う損害を負うだろう。
と、原告側の主張を全部認め、鈴木親子は知りながら嘘をついていたと認めている。しかしながら、残念ながらマッキベン判事はそれぞれの申し立てられている事項に関して、具体的にどのように嘘だったのか、本当はどうだったのかについては何も記していない。最終判決では詳細が延べられるのかも知れないが、現時点ではいささか乱暴で粗雑な決定のように感じられる。

と言うことで、これらの申し立てられている「嘘」について拙者の知識と常識を用いて検証してみる。なお、「嘘」の「原文」はこちらの魚拓に残されている(本稿末に転載済)ので、そちらも参照するとよい。

■投資家の資金はMARS購入のためにのみ使われる■
これは結果的に嘘だったようだ。フジナガは「投資家」達から集めた金を以前の投資家への支払いに充てるポンジースキーム・蛸足配当を繰り返したのみならず、フジナガのクレジットカードの支払いや住宅、自動車の購入や離婚相手の扶養料などの私的費用に流用していたらしい。

ただし、鈴木親子が、少なくとも2009年からの4~5年間に受け取っていたとされる2,200万ドル(約24億円)に及ぶコミッションをこの「目的外使途」と呼ぶのは相当でないだろう。鈴木親子が、ホテルでの豪華食事やラスベガス招待旅行などの「タダ飯」を含むあらゆる勧誘手段を駆使してカモから金を集めたのは、「投資家」達に儲けさせることが究極目的ではなく、最終的に自分達の懐を肥やすのが目的であったことは自明だが、実際には「投資家」達はラスベガスのMRIの指定するエスクロー会社の銀行口座に全額を直接送金しており、鈴木親子が「抜いた」事実はない。コミッションがカモの送金から直ちにキックバックされたのか、それとも実際にMARSを購入・回収してその差益からかどうかはコミッションを受け取る方にとって見ればさしたる問題ではないだろう。ただし、このような金融商品の販売コミッションはその商品の運用実績に拘わらず販売価格のパセンテージが一般的だから、鈴木親子が一定割合のコミッションを受け取ったこと自体は非難に値するとは思えない。

そうすると、問題は鈴木親子がフジナガの「投資資金」流用の事実を知っていたか、もし知っていたとすれば何時からか、と言うことになる。マッキベン判事は、2012年にフジナガから鈴木親子に送られた、資金ショートを知らせその対策のための新規勧誘・資金導入を促すファックスとの後に開かれたフジナガと鈴木親子による対策会議の事実を証拠として鈴木親子が少なくとも2012年からはポンジースキームを認識していたと認定しているが、これはさもありなむとしても、それでは2012年以前はどうだったのか?「2012年からは知っていたのだからそれ以前も知っていたのだろう」と推量するのはいささか乱暴に思える。原告らは2012年以前のポンジースキームの存在とそれに関する鈴木親子の知識について具体的な証拠を示したのだろうか?そうでなければ、この件は2012年以降に新規「投資」あるいは再投資された分に関してだけ適用すべきように思える。

残りの5件の「嘘」は、MRI・フジナガの「投資」資金の扱いやMRIの営業実体と言うより、この「投資」話に関する仕組みや法規制など一般的知識・事柄で、「投資家」達から1,000億円を超える金を集める方は「プロ」であることが期待されるから、「知らなかった」「そう言うものだと言われていた・思っていた」は通用せず、正確な知識・説明が要求されるから、真実と違うことは「知りながらついた嘘」と言われても仕方ないだろう。

■合衆国法が投資家の資金を保護する■
合衆国に限らず、国家は経済取引の円滑さの保障と社会秩序の維持のために金融取引には様々な規制を課しているが、国債などの国家そのものが負う経済責任でなければ、民間同士の取引の最終責任は当事者同士であることは言うまでもない。国家はせいぜい争う当事者らの言い分を聞き、どちらに理があるかの判断をするだけで、損失を国家が補償する謂われはない。日本の山一證券破綻やリーマンショックような各方面に多大の影響のある経済事件でさえ、国家は直接税金から何かを補償したのではなく、その権力を使って民間に解決させたことは前に述べた。鈴木親子がどのように説明したのかは判らないが、このような社会常識をわざと無視して「国の保障」というありもしないものに期待を抱かせ、カモはそれを信じたのだろうか?

■投資家の資金はエスクローの分離した「ロックボックス」に保全され、この口座は特別な銀行口座で売掛金を回収するために使われ、売掛の額面価格はそれを購入した金額を上回ることを必要とする■
「ロックボックス」とは、(多くの場合当座)銀行口座に付帯できる売掛回収業務援助サービスで、日本の消費者の銀行口座で言えば「口座自動振替」のように銀行が取引先との金の遣り取りを代行する便宜のための付加的サービスに過ぎないことは前に説明した。また「ロックボックス・アカウント」と言うタイプの銀行口座は存在せず、従ってロックボックス・サービスを付けたからと言って特別他の口座より資金管理が厳重であるとか安全であるとか言うことはないことも既に説明した。

また、ロックボックス・サービスが売掛回収業務の援助をするからと言って、銀行が特別能動的に取引先と交渉したりその回収金額について仕入れ価格と比べて云々すると言うことは絶対にない。銀行はロックボックス・サービスのある口座に送金されてきた小切手を黙々と口座に入金して、その記録を口座所持者に手際よく正確に通知するだけだ。

「ロックボックス」と言う言葉それ自身は一般には馴染みが薄い知れないが、「投資家」達は何百万、何千万円と言う金を詐欺師に送金する前に鈴木親子が「ロックボックス」について言っていることが本当かどうか確かめる機会はあったはずだ。ましてや銀行が「売掛の額面価格はそれを購入した金額を上回ることを必要とする」ことに関わるなどありえないことは、凡そどこの先進国の銀行でも通用する一般常識を持って判断できたはずだ。

■厳しい審査に通った会社だけがロックボックスを開設する資格がある■
「審査」が何を意味するかは不明だが、銀行のロックボックス・サービスを利用するのはそう簡単ではなさそうなことは事実だ。拙者は数件の銀行のウェブサイトを閲覧してロックボックス・サービスの申し込み方法などを調べたが、いずれも例外なく「詳細はご相談ください」だ。利用者(口座所持者)が追加費用を負担するのか、あるいはもしそうならばどれほどの金額の負担かは判らないが、このサービスが実質的に顧客(口座所持者)の売掛回収経理業務の一部分を肩代わりすることを考えると、銀行側もそれなりのマスメリットを期待し、また業務効率化のために支払いスリップの光学読み取りなどの省力化対応を要求してくる可能性もある(小切手そのものは宛先、金額、日付などの手書き部分を除いて磁気インクと光学読み取りにより機械読み取り可能)。

従って、拙者の知る限りロックボックス・サービスを使っているのは電気・ガス・水道などのいわゆる公共料金や、クレジットカードや住宅ローンなどの金融会社などそれなりに信用があり多数の顧客から定期的に支払いを受ける会社に事実上限られていることは確かに思える。しかしながら、これも既に述べたが、ロックボックス・サービスは紙の小切手の入金処理の合理化のためであり、MRI「投資家」達は日本から直接電信送金などで投資資金を当該口座に送金していたと言うことなので、何故ロックボックス・サービスがここで登場するのか、とんと理解できない。上記のように「ロックボックス」の本質を正しく理解していればカモにはならなかったかも知れない。

2013年10月13日追記
2013年10月3日のSECの裁判の即決判決でマハン判事は「電信送金や小切手で」と述べているから、実際に小切手での送金もあったかもしれない。しかし、米ドル建ての小切手を振り出せる銀行口座を所有して小切手を郵送したり、またわざわざ米ドル建ての銀行振り出しの預金手形小切手(「預手」、Cashier's Check)を郵便で送るのは電信送金に比べて手間もリスクも高いから、実際には小切手送金は皆無若しくは極少だったと想像でき、わざわざ「ロックボックス・サービス」を使う必要性はない。
追記終わり

■エスクロー会社がMRIが投資家の資金に触れることを不可能にする■
これもまた「エスクロー」と言う日本でなじみのない言葉・制度を持ち出して過大な期待を抱かせた感じがする。例えばネットオークションでオークション会社あるいは独立したエスクロー会社が売買資金の受け渡しを仲介するなら、売り手と買い手はエスクローに対してほぼ互角の関係だから、エスクロー自身の不正の可能性は別として手続き上の公正さが期待できるが、本件ではスターリングエスクローはMRIの子飼に等しい関係で、いわばMRIの「パシリ」状態だったようだから、フジナガが「金を出せ」と言えば使途などは全くの不問で即座に引き出して渡したのだろう。

また、これも以前に述べたように、本件にエスクローを介在させる意義が全く理解できない。アメリカでエスクローが使われる一般的な事例は庶民も含めて不動産取引が多く、他にも特許などの取引にも使われるが、本件のように売掛回収資金でエスクローを使うだとかは聞いたことがない。「被害者」達の中には、事件発覚後暫くたっても「不動産取引とは違うエスクローがある」などとその根拠も全く示さずに自分に都合の良い「偽エスクロー」を作り出して、MRI・鈴木親子の嘘の説明を信じ続けたがる人口がそこそこあったようだから、鈴木親子としては騙しやすかっただろう。

■エスクローシステムは資金の分離を保障しているので、万が一MRIが破綻しても資金は債権者から保護される■
これはエスクローが本来の役割を果たしていればそうかもしれないが、本件ではそもそもエスクローを介在させる理由が全くない。だから鈴木親子がエスクローについて十分理解していれば、エスクローについて意図的に騙す目的で嘘を言ったと言われても仕方ないだろうし、カモの方もエスクローについてちょいと調べればこう簡単には騙されなかったとはあとの祭りか。



興味深いことに、この決定は「嘘」の認定を鈴木親子が「投資家」から集めた金の扱いに関する事柄に限定しており、拙者がこのブログの初期に示した「MARS投資」そのものに対する種々の疑問と言うより嘘、例えばMARSの市場「流出量(流通量のことか?)」が1.8兆ドルだの保険会社が3,000社もあるだの保険の回収率は30%だのについては何も触れていない。原告側弁護士らは「MARS投資」そのものの虚構性を議論する自信がないので敢えて踏み込まなかったのだろうか?

結局この決定では、MRIが実際に医療債権を購入していたかどうかを含め、「MARS投資」なるものが存在したのかどうかは一切議論されなかったことになる。

MRIがウェブサイト上のFAQで説明していた「リスクや保全の仕組み」と対比させると興味深い。

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2014-10-01 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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控訴審第3回口頭弁論 ~国内第一次民事訴訟~

2014年1月に東京地裁により管轄違いを理由に却下された日本国内の9人の原告によるMRI、フジナガ、鈴木親子らに対する損害賠償請求裁判の控訴審第3回口頭弁論が、2014年9月22日に東京高裁で行われた。弁護団の報告によれば書類提出だけでただちに結審したと言う。前回第2回口頭弁論もやはり実質的な「弁論」なしの開廷即別室協議だけだったようだから、傍聴に集まったと言われる数十人の「被害者」達はまた肩透かしを喰らったようだ。判決は次回期日2014年11月17日に言い渡される予定。もしこれに敗訴すると後は上告しかない。
弁護団サイトより
【国内・対MRI訴訟】控訴審結審&判決期日のお知らせ

2014.09.24

9月22日(月)午後1時30分より,本件裁判の第3回弁論期日が開かれ,法廷で双方が提出した書面を確認した上で,直ちに結審しました。
判決は,11月17日午後1時30分に,東京高等裁判所101号法廷で言い渡されることになりました。

(以下略)

この件で確認できた報道らしきものは以下の「さくらフィナンシャルニュース」1件のみ。「口頭弁論が開催」と言う表現に違和感を感じる。
MRIインターナショナルを提訴した訴訟の控訴審第3回口頭弁論が東京高裁で開催

【9月24日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

9月21日(月)13時30分より、東京地裁高裁簡裁合同庁舎の101号法廷で、投資家らが出資金返還請求を求めた事件の控訴審の第3回口頭弁論が開催された。

控訴審は、第1回口頭弁論が5月8日に、第2回口頭弁論が7月14日に開催されている。

事件番号は、平成26年(ネ)第623号事件。

東京高裁民事第4部の田村幸一裁判長(第30期)、高橋光雄裁判官(第39期)、西森政一裁判官(第44期)が担当している。

原審(平成25年(ワ)第15015号 出資金返還請求事件)は、宮坂昌利裁判長(第40期)によって、管轄が米国にあるため、東京地方裁判所に対する訴え提起を却下するとの判決が1月14日に言い渡されていた。

元投資家らを原告として、MRIインターナショナル日本支社の代表者鈴木順造氏、同顧客サービスセンター代表の鈴木啓子(中町啓子)氏、同ジェネラルマネージャーの鈴木ポール武蔵氏の3名を被告として、詐欺に基づく不法行為責任に基づいて、合計2億3232万円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起しており、第1回口頭弁論が8月25日に開催されている。

両訴訟の原告側代理人を務めるMRI被害弁護団は、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の被害救済訴訟などに長年携わっている山口広弁護士(第30期)を団長にしている。【了】
2014-09-25 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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9月18日の決定の意味するもの ~アメリカの裁判~

2014年9月18日の連邦地裁ネバダ地方裁判所のマッキベン判事の下した詐欺事実の認定仮差し止め命令の二通の決定は、まだ最終判決ではないものの、MRI事件被害者・原告らの言い分をほぼすべて認めて、フジナガと鈴木親子の詐欺を認定し、「原告側勝訴の可能性が高い」ことなどを理由に鈴木親子の資産凍結の仮差し止め命令を出すなど、被害者・原告側に圧倒的に有利な内容である。

今後、MRI、フジナガ、鈴木親子が新たな証拠と論法を持ち出さない限り、このまま被害者・原告側勝訴の最終判決に進んでいくだろうことはほとんど疑う余地がないように思える。

しかしながら、拙者は裁判所の出した決定とは言え何もかも無批判で受け入れると言う習慣はないので、法律家ではないド素人として、今回の決定を読んだ感想から来る疑問を並べてみる。ざっと以下のような事柄。
  • スターリングエスクローは詐欺認定から除外
  • 事実認定の方法
  • 鈴木親子の受け取ったコミッション
  • アメリカの裁判の日本への適用
  • 陪審裁判、クラスアクション
まず、訴えられていたMRI、フジナガ、鈴木親子、スターリングエスクローの内、スターリングエスクローだけは疎明不十分で詐欺関与の申し立てを否定されている。これは拙者が本件を研究し始めたときに抱いた、フジナガと鈴木一家の詐欺は認められる可能性は高いが、スターリングエスクローはかなり濃い灰色でも立証は難しいだろうと言う予想と一致する。スターリングエスクローはMRIのインチキ投資事業に薄々気付いていたかも知れないが、自らは何ら能動的な欺瞞行為、例えばセミナーで嘘を並べて投資を勧誘するだとかVIMOでMARS投資の安全性と確実性を繰り返し宣伝してたとかをしたわけではない。

スターリングエスクローなる会社の実態はよく判らないが、母体はLVT(Las Vegas Transportation & Scooter Moves)と言うラスベガス近郊で空港への送り迎えなどをするリムジン会社らしい。スターリングエスクローは、老舗のエスクロー会社と言うわけでもなさそうなので、フジナガか鈴木順造かがこのリムジン会社に持ちかけてMRI用にでっち上げたトンネル会社のような気がする。鈴木順造はハワイイで旅行代理店をやっていたと言う情報もあるので、その線からの付き合いかと言う勘繰りもあるが、本当のことはよく分らない。

しかしながら、スターリングエスクローが詐欺認定の対象から外されたと言う事実は、「灰色」程度では裁判で責任を問うのは難しいと言う興味深い教訓を残す。「被害者」の中には、スターリングエスクローがロックボックス銀行口座を持っていたと言うだけで「金が取れるのはウェルズファーゴ」と息巻く分子が居り、更には毎日新聞の「MRIがハワイイ州に銀行でMARS投資を売る販売部隊を持っていた」と言うあまり当てにならない与太記事に反応して、ハワイイに銀行口座を持ったりそこでMRIの勧誘・販売に応じたことはおろかハワイイに行ったこともなさそうなのに「鍵はハワイイの銀行」と無暗に興奮する一部少人数もいるようだが、彼らはこのスターリングエスクローの件をどう見るのだろう?

これらの決定が鈴木親子の詐欺をほぼ認定しているのは心情的に十分過ぎるほど理解できると言うより、極々常識に沿ったものと言えるが、個々の事実認定に目を向けると、その認定のプロセスは大雑把と言うか、いささか乱暴な印象がある。

例えば、鈴木親子が受け取ったとされる多額のコミッションが彼らの銀行口座に残っていないのは鈴木親子が裁判での負けを予想してどこかに隠したと被害者・原告側は申し立て、これに対する鈴木親子側の「隠したと言う証拠はどこにある?」と言う反論を、マッキベン判事は「では、通常の生活に使ったと言う証拠はどこにある?」と一蹴し、原告側の言い分を認める判断をしているが、拙者の常識ではこれは「隠した」と申し立てた方に立証責任があり、鈴木親子側は原告側が示す証明についてそれを否定するための反論をすればよいのであって、原告側が申し立てるにも拘らず証明できていないことの対偶を被告側が証明する必要があるのか?と言う疑問が湧く。

別の例では、「書面による契約は不当利得について訴えられない」との被告鈴木親子の反論に「原告らは鈴木親子と書面契約したわけではない」とマッキベン判事は一見鮮やかにのたまうが、では「原告らは鈴木親子と個人として関わったではなくMRIの日本代表として関わったのだから鈴木親子すなわちMRIであり原告らはMRIと書面による契約をしている」と言う被告の反論はなかったのだろうか?

まぁ、被告らの、原告らの申し立てに対する反論も、ほとんどが「原告らは十分な疎明をしていない」と言うもので、特に決め手を持って反論している訳ではなく、「では何を以て十分とするのか?」と聞かれれば判事の心証以外にはないから、こんなものかもしれないが、それだけにやや主観的・粗雑な印象を受ける。

「この投資の中には生涯の貯蓄を捧げたものもいた」とマッキベン判事は言う。今回の資産凍結仮差し止め決定は、もし最終的に原告側の申し立てる詐欺が認められ賠償支払い命令が発せられても、鈴木親子がそれまでに資産を費消または隠してしまっていては実効的な弁済がされず、「生涯の貯蓄を捧げた」原告のダメージは計り知れないから、正義の実現のためには鈴木親子が資産を隠してしまう危険を防ぐため仮処分を急いで、金を摩った原告らをいくらかでも救済すると言う目的のためには合理的で支持に値する。ただし、それはもちろん、被告側に不法行為があったかどうかの認定とは別ものだ。このブログでも何遍か繰り返しているように、「被害者」達が大金を磨ってしまったのは残念なことではあるが、「退職金を全部突っ込んだ」「老後資金がなくなった」を含めて、得体の知れない投資話に自ら金を注ぎ込んだのは「投資家」達本人であり、その「投資」そのものは結果的に詐欺だったことの代償を含めて自己責任だ。今回の決定の、被告らの詐欺の認定の理由が「カワイソウだから金の取れるところから取ってやる」と言うことではないものと信じる。

鈴木親子は2009年~2013年の4~5年間で2,200万ドル(当時の為替レートで20億円弱)のコミッションをMRIから受け取ったと言う。20億円と言う金額は、それだけを聞くと庶民の家計とは桁違いで、多くの人にとっては生涯所得の10倍近い金額であり(ただし、MRIに「投資」した「被害者」らの金を摩った平均金額は1500万円余りで1億円超えも100人程度いるらしいから少し事情は違うかもしれない)、決定文でも「多大な金額(substantial amount)」と繰り返している。しかし20億円は本当にべらぼうな金額だったのか?

20億円を4年間で受け取っていたとすると、年間5億円。これは1,365億円と言われる被害合計金額の0.4%に過ぎない。MRIの「MARS投資」は年利6.0%~10.32%の利回りを約束していたから、これらに比べると非常に小さい。日本の銀行などで投資信託を購入すれば、買ったその場で3%以上の購入手数料が徴収され(フロントロード)、年間1%程度の信託報酬が知らないうちに引かれ、解約すればまた1~2%の売却手数料(バックロード)を払わなければならないのが普通だから、これに比べても年利換算0.4%のコミッションは多いとは言えない。マッキベン判事は決定文の中で「コミッションは投資家の資金から直接来た」と2回述べているが、コミッションが顧客の支払いから直接来るのは当たり前の話で、それがコミッションと言うものの性質だと言うことをマッキベン判事はご存じないのだろうか?この表現は必要以上に扇情的な印象を与える。

MRIの日本支社とは、本当に「支社」であってその経費は本社の会計で賄われ、鈴木一家もMRI本社から給料を受け取りなおかつコミッションを受け取っていたのか、それとも「支社」とは名ばかりで実は鈴木一家の個人企業或いは鈴木一家がオーナのラスベガスの会社とは独立した会社でその経費は鈴木一家が受け取ったコミッションから払われていたのかは定かでないが、いずれの場合でも「支社」の必要経費を試算してみると、従業員20人として、フラダンス付の豪華な「懇親会」だとかラスベガスのタダ飯招待だとかを入れても精々年間3億円程度だったと推察されるが、それと比べて年間5億円のコミッションはべらぼうに多いとは言えない。特に、もしMRI日本支社がラスベガスの本社と独立していてラスベガスから払われるコミッションで成り立っていたとすれば、年間5億円は妥当の範囲内だと思う。

20億円は不当利得であり損害賠償として被害者達に返還されるべきである、と結論されても、20億円は全体で1,365億円と言われる被害金額のわずか1.5%に過ぎない。幸いにも合衆国には「懲罰的損害賠償」と言う制度があり、「悪いことをした奴」には懲らしめのために実際の損害額(「被害者」らが摩った金額ではなく、鈴井親子に不当に騙し取られた金額=コミッションか?)に懲罰分上乗せした賠償を命じられるかもしれないが、いくら上積みしたところで、鈴木親子側に賠償の原資がなければ払えない。鈴木親子は、コミッションとして懐に入れた20億円(過去に遡ればその数倍になるかも知れないが、今回の決定で認定されたのは2010年前後の4~5年間の約2,200万ドルだけ)を増やしたのだろうか?

アメリカでは、一般に居住用不動産すなわち中古住宅は景気さえ順調なら物価上昇率をははるかに上回る率で価値が上昇するものと認識されており(拙者の住宅も非公式市場評価額は15年前の購入価格の2倍以上になった)、中産階級では投資用として購入する人も多い。鈴木親子もハワイイに不動産を持っている(いた)ようなので、資産は増えた可能性があるが、それでも毎年倍々に増えると言うものではないから限度がある。日本にも「マンション」を何軒か所有しているらしいが、これは合計数億円の価値らしい。あとはアストンマーティンを乗り回したり、いくつも会社を作っては潰していると言われるから、鈴木親子にはMRIの詐欺以外に際立った商才は無いように見え、20億円から増えているどころか減っている可能性の方が大きそうに思える。そうすると、予想資産残高から考えて鈴木親子からの損害賠償の配当率は1%程度しか期待できなさそうだ。

そうそう、税金も忘れてはならない。過去15年間の日本の最高額所得税率は37~40%だから、コミッションが全て鈴木親子の懐に入り、彼らが真面目に申告をしていれば、地方税などと合わせて毎年2億円ぐらいは5億円のコミッションの中から納税に当てられていた可能性がある。税の時効は5年だそうだから、もしきちんと納税していて不当利得を変換することになっても、判決が確定した時より5年以上前の税金については「返せ」とは言えないだろうし、国側も「カワイソウな人達だから」と返還に応じるはずがないのも自明だ。

合衆国の司法権が及ぶのは合衆国の領土、領海、領空、及びそれに準ずる所(例えば飛行中の合衆国旅客機)だけだから、合衆国の裁判所が幾ら「手を付けるな、付けさせるな」と命令したところで、日本にある銀行などがこれに従う義務はないだろうと言う疑問が湧く。多分、合衆国の裁判の判決を基に、改めて日本の裁判所で「執行判決」を得て日本国内でその効力を執行すると言うことになるのだろう。この件に関して教育的な情報を見つけた。しかし、執行判決が実体審理なしの形式的審査で与えられるとは言え、原判決は確定していなければならない。今回の決定は「仮」差し止め命令であり、最終判決ではないし、最終判決が出た後に被告側が控訴する可能性もあるので「確定」には程遠い。確定判決の執行判決を得るまでの間は、鈴木親子は日本で差し押さえに遭っていない日本国内の彼らの資産を自由に処分・隠蔽できることになりはしないか?

原告・被告双方とも陪審裁判を要求している。拙者は陪審員として民事裁判の評決に臨んだことはあるが、法律家でないのでこの辺はことは今後どう言う手続きで陪審裁判に進むのか(或いは進まないのか)よく判らない。判事が「クロ」との確固たる心証を持っても、最終判断は陪審評決にゆだねると言うことなのか?そうなると争点の整理を初めとして陪審に向けた裁判進行の筋書きの練り直しから始めなければならないのだろうか?

最終的に被害者・原告側の言い分が全て認められ合衆国で鈴木親子に賠償を命ずる判決が下された場合でも、例えば、MRI・フジナガ・鈴木親子側が控訴すればその判決は確定していないので日本の裁判所は執行判決を出さない。合衆国の判決が確定しても、何もかもが無条件で原判決そのものの通りと言う訳ではく、日本の法制度と公序に沿う範囲でしか認められない。例えば、懲罰的損害賠償が合衆国の判決で認められても、日本にはそのような制度がないから上乗せは認められないとかの問題が発生するかも知れない(実例あり。ただし日本では「慰謝料」と言う形で金銭的―換金的―損害以上の額を被告に払わせることもあるようだが、それは「損害賠償」とは異なるように思える)。しかし、それもこれも鈴木親子に十分な(隠しきれていない)資産があっての話だ。

それに、鈴木親子に支払いをを命ずる判決が出たからと言って、それだけで口をぽかんと開けて待っていれば鈴木親子の銀行が金を届けて来てくれると言うものでもない。拙者の経験によれば、強制力をもって銀行から債務者の支払いを引き出すには、少なくとも債務者が口座を持っている銀行の支店名ぐらいまでは調べ上げて「某銀行某支店の債務者某の名義の口座のうち流動性の低いもの(例えば3年、1年の定期預金と普通預金があれば3年の定期預金)から、同種の預金がある場合は口座番号の若いものから債権金額に満るまで」と特定した支払い命令を裁判所に発行してもらい、第三債務者である銀行に支払わせるなどの手続きが要る。銀行は一般に揉め事を嫌い、「どうせ他人からの預り金だから」と裁判所からの正式な命令書を提示されれば遅滞なく命令に応じるはずだが、例えば指定債権が定期預金だと銀行はその満期まで支払いを拒むなどことができるの事態も想定される。

加えて、被害者・原告側はクラスアクションを請求しているが、これが原告勝訴の場合の日本国内の鈴木親子財産についてどう扱われるのかもよく判らない。そもそも「クラスアクション」という言葉自体も日本では馴染みが薄く、日本にはそのような法制度もないと思われるので、これを受けた執行判決がどのようになるのかも定かではない。下手をすると、8,700人の1,365億円のクラスアクション損害賠償が連邦裁判所では認められても、それを受けて日本の裁判所が鈴木親子らの日本の財産に対して発する執行判決の支払い命令では代表原告25人の十億円程度(推定)だけしか認めないと言う事態にはならないのか?

考えれば考えるほど、もっと多くの疑問が出てきそうだ。今後の裁判の動向に注目する。

今回の決定についてマスコミ報道で確認できたのは以下の3件のみ。FNNはFBIの関与を報じているが、具体的に何をどこまでどのように何のために捜査しているのかは明らかにしていない。
FNN
出資金消失事件 MRI日本法人代表らに資産凍結命令
09/20 00:38
アメリカの資産運用会社「MRIインターナショナル」による出資金消失事件で、ネバダ州の裁判所は18日、「日本法人代表らも資産隠しをしている」として、資産凍結命令を出した。
資産凍結命令が出されたのは、MRI日本法人の鈴木順造代表と、息子のポール武蔵ゼネラルマネジャーら。
日本の被害弁護団はこれまで、エドウィン・フジナガ社長のみならず、鈴木代表親子も、1,365億円にものぼる出資金の大半の消失に深く関与したとしているほか、2013年4月に日本の証券取引等監視委員会が強制調査に乗り出したあとに、ハワイに所有する豪邸などをめぐり、明らかに資産隠しの動きがあったことを指摘していた。
ネバダ州の裁判所は18日、「鈴木親子が詐欺的行為に関与したと証明されたといえ、さらに資産隠しを進めるおそれがある」として、被害弁護団側の主張を全面的に認め、資産凍結を命じた。
この事件をめぐっては、FBI(アメリカ連邦捜査局)も関係者の聴取を進めるなど、内偵捜査を続けていて、MRIをめぐる包囲網はさらに狭まってきている。
時事ドットコム
米地裁、日本支店の関与認定=代表の資産差し押さえ-MRI問題

 【ロサンゼルス時事】米資産運用会社「MRIインターナショナル」(ネバダ州ラスベガス)が顧客資産約1300億円を消失させた問題で、日本人の出資者が同社などを相手取り、損害賠償を求めた集団訴訟をめぐり、ラスベガスの連邦地裁が19日までに、MRI日本支店の鈴木順造代表らが詐欺行為に関与したことを事実上認定し、鈴木代表らの資産を差し押さえたことが分かった。
 米証券取引委員会(SEC)などは顧客資産を流用した「ねずみ講」事件とみているが、出資金の運用は米本社が行っていたとされ、鈴木代表らは日本支店の関与を否定していた。
 これに対し、地裁は鈴木代表ら日本支店の関係者2人の関与を事実上認定。最終判決までに2人の資産が消失すると、原告の不利益となる恐れがあるとして差し押さえた。原告側は、損害賠償をめぐる審理に向け、鈴木代表らの資産状況を把握する手続きを進める方針。(2014/09/20-11:42)>
讀賣新聞
米連邦地裁、MRI日本支店代表らの資産凍結
2014年09月21日 12時50分

 【ロサンゼルス=加藤賢治】米国の資産運用会社「MRIインターナショナル」(本社・米ネバダ州)による多額の投資資金消失問題で、米ネバダ州の連邦地裁は18日、同社日本支店の鈴木順造代表らが詐欺行為に加担したと認めたうえで、資産の凍結を命じた。

 資産隠しの動きを阻止するための措置とみられる。

 連邦地裁は、同社のフジナガ社長とともに、鈴木代表と息子が詐欺計画の主犯で、多額の収入を得ていたと指摘。同地裁は昨年9月、米証券取引委員会の申し立てを認め、同社や社長らの資産凍結を命じている。

 被害に遭った日本の投資家が起こした集団訴訟で、原告側は鈴木代表らがハワイにある資産を隠そうとしているなどと指摘していた。
2014-09-25 : Category: None : コメント : 0 : トラックバック : 0
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鈴木親子の資産凍結の仮差し止め命令(3) ~アメリカの裁判~

前回からの続き。仮差し止め命令の決定文の最後の部分。差し止めが必要で且つ合理的であることを示している。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
名前を明らかにした、あるいは明らかにしていない数人の原告らは、本訴訟に於いて陳述あるいは意見を述べ、彼らが如何にして多額の金銭をMRIに投資したかを詳細に明らかにしている。当裁判所の以前の決定で議論されたように、原告らのMRIとスターリングエスクローからの被害回復は少額であることは明らかである。原告らが、鈴木親子がMRIの詐欺が発覚して以来彼ら自身を彼らの資産から遠ざけるように画策してきたことを示す証拠を示したことから、当裁判所は、もし抑制されなければ、鈴木親子が最終判決が言い渡されるまでそのようにし続ける危険があると結論する。鈴木親子が稼いだ多額のコミッションに鑑み、彼らの資産の殆どが彼らに支払われたコミッション―疑う余地なく原告ら投資家から直接もたらされたコミッション―から成り立つ可能性が高い。これらの資産が費消されると、本件の数千人の投資家に如何なる効果的な救済ももたらすことができなくなる。原告らは、もし鈴木親子の資産が凍結されなければ、彼らの投資を回収することが不可能になる目前の回復不能な損害に直面している。

3. 公正さのバランス
既に議論された通り、原告らは多大の額の金銭をMRIに投資してきており、それは場合によっては生涯の貯蓄を含んでおり、彼らは、もし鈴木親子が彼らの資産をこれ以上費消したり隠蔽したりすることを妨げられなければ、如何なる回復も確保することが不可能である可能性が高い。資産凍結は、鈴木親子に通常の生活費と訴訟費用を支払うことを許すが、裁判所の特定の許可なく資産を隠蔽したり費消したりすることを防止する。それ故、これらの公正さのバランスは極めて原告側有利に傾く。

4. 公衆の利益
「公衆の利益の問いは、一義的には当事者でなく非当事者への影響を考慮する」<判例>。ここで、差し止め命令が発せられたとしても公衆の利益には何の損害ももたらさない。当裁判所は、公衆の利益は差し止め命令の発行に有利であると結論する。

原告らは鈴木親子の資産凍結を求める。当裁判所は資産凍結を付与する固有の公正な権力を有する<判例>。当裁判所は、原告らの求める金銭上の被害の救済が合法的であると言うだけでは資産を凍結する権威を持っていない<法令>が、資産凍結は、原告が彼らが凍結を希望する資産に公正な利権を有すると示した場合、適切に付与される<判例>。議論されたように、原告らは現在鈴木親子が所持する資産に公正な利権を有する可能性が高いことを示してきた。従って、鈴木親子がMRIから受け取ったコミッションに由来する鈴木親子の資産を凍結して差し押さえ命令の救済を与えることは適切である。

原告らはまた、鈴木親子の資産の迅速かつ詳細な開示を求めるが、当裁判所は、別の決定で、原告らの証券訴訟を却下する請求を棄却している。従って、当裁判所は鈴木親子の資産調査の独立した決定はせず、本件の通常の開示に沿ってそのような調査を許可する。

それ故当裁判所は次のように結論する。
  1. 鈴木順造と鈴木ポール武蔵が詐欺行為に関わっていたと信じる妥当な理由があり、原告らは彼らの州法と証券詐欺の訴えに加えて彼らの法定信託に関する訴えについてメリットの見込みがある。
  2. 本訴訟が最終判決に至る前に鈴木親子が彼らの資産を費消または隠蔽して即時かつ修復不能な損害が生じると信じる妥当な理由がある。
  3. 公正さを重視し、原告らの勝訴の可能性を考えると、公正な救済は公衆の利益に適う。

それ故、通常の生活費と訴訟費用を除いて、被告鈴木順造と鈴木ポール武蔵、彼らの代理人、表見人、及び彼らのいずれかの支配下または共同関係にある個人及び企業は以下のことから抑制及び禁止される。
  1. 直接的もしくは間接的に如何なる資産をも、移転、変換、販売、隠蔽、支払い、消費、引き出し、弁済、抵当に当てる、質入れ、譲渡、その他資産を処分すること。それらの資産はどこに存在しようとも、
    1. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵または彼らの関連者もしくは彼らのどちらかの支配下にある個人または企業に所有または支配され、または
    2. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵または彼らの関連者もしくは彼らのどちらかの支配下にある個人または企業に実質的若しくは擬制的に所持され、または
    3. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵に直接的または間接的に所有、管理、または支配されるか共同支配の下にある如何なる会社、共同事業、もしくは他の企業に所有、支配、または事実上若しくは擬制的な所持の下にあること
  2. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵もしくは彼らの会社、関連会社、子会社の名義若しくはその利益のための如何なる貸金庫をも開くかまたは開くようにせしめるか、または上記の何人たりともがそれにアクセスせしめること
  3. 直接的または間接的に、鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかが関わっているかまたは彼らの支配下にある事業または企業の事業、資産、及び財務に関する、疎明できる、または関係する文書を破棄、隠匿、破損、移転、その他改変もしくは破棄すること。

更に以下のように決定する。鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかに所有または支配される如何なる人物若しくは企業の名義または代理の如何なる資産をも所持、管理、支配する如何なる金融機関、ブローカー、ディーラー、またはエスクロー代理人は、
  1. 今後の当裁判所の決定で認可される場合を除き、当該資産を保全して且つ、移転、抵当、質入れ、担保、譲渡、排除、引出し、費消、販売、その他廃棄することを禁止しなければならない
  2. 如何なる人物も、鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかに所有または支配される如何なる人若しくは企業の名義若しくはその利益のための如何なる貸金庫にアクセスすること若しくは彼らのいずれかにアクセスせしめることを禁止しなければならない。

被告らは、合理的な理由の下に、特定の資産を移転、変換、販売、支払い、費消、引出し、弁済、抵当、質入れ、担保若しくは他の処分を許すよう決定を変更することを当裁判所に請願できる。本決定が関与する資産に第三者の利権がある場合は、当裁判所は第三者による本決定の適切な変更の請願を排除しない。

原告らが既に本件に於いて供託した1万ドルの保証金は、当裁判所が決定した差し止め命令救済の保証として使われる。

以上のとおり決定する。
日付: 2014年9月18日
合衆国地方判事

Howard D. McKibben


今回の合計51ページの翻訳はさすがにこたえた。金曜の午後から始まって週末を全部使ってしまった。私的には「一仕事やった」と感じる。報酬は何か?(普段は全く使わない)法律英単語を30ばかり覚えた。例えば「leave」が判事が当事者に与える陳述などの許可だとは今回まで全く知らなかった。法律(法廷)用語は、普段使われない言葉、あるいは普段使われない意味で言葉を使う。それは日常使わない言葉は意味を限定でき曖昧さのない厳密な文書を作れるからだ。また、法廷文書には決まったパターンがある。何かの言い出しっぺは必ず「申し立て(allege)」、それに対して「反論(argue)」を重ねるが、争いのある事柄は裁判所がするまで「申し立てられている(alleged)」に過ぎない。関係詞と関係句で連結された十行以上に渡る一文の論理を解くのは簡単でないこともあった。で、こんなことが役立つか?そう思う。私生活で何かあったら、以前より少しうまく立ち回れるだろう。

拙者の能力不足から、うまく翻訳しきれていない部分も多々ある。建設的な指摘を歓迎し、随時修正に応じる。本ブログの常連読者の一人から誤字、脱字、重複字などの修正に多大の助けをいただいたことに感謝する。

マッキベン判事もこれらの決定文の作成には相当の労力を費やしたと思う。今回の決定文(二通)中に見つけた明らかな誤りは、綴り間違い、単数と複数の文法間違い、原告と被告の取り違え各一件づつ。

これらの二通の決定文の評価は後日行う。
2014-09-22 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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鈴木親子の資産凍結の仮差し止め命令(2) ~アメリカの裁判~

前回からの続き。鈴木親子の資産隠しが具体的に述べられている。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。

当裁判所に提示された事実によれば、日本の裁判所は既に鈴木親子の日本の資産を差し押さえた。更に、S.E.C.により他の当事者とともにフジナガとMRIに対して起こされた関連する訴訟で、フジナガとMRIは仮差し止めと資産凍結を言い渡された。最後に、当裁判所は、原告らが彼らのMRIとMRIの役員としてのフジナガに対する詐欺、契約違反、証券違反の訴えが認められる可能性が高いとして、MRIとMRIの役員としてのフジナガに対して仮差し止め命令を発した。

鈴木親子は、彼らが彼ら自身の資金をMRIに送金し、彼らの親族にMRIに投資するよう奨励した事実が、彼らがMRIの詐欺について何ら知っていなかったことを示すと反論する。しかしながら、鈴木親子が親族にMRIへの投資を奨励したことは記録上のどの証拠にも示されていない。更に、彼らがフジナガに特定の投資家に支払うよう要求したファックス(#134 妙中 陳述 付帯文書U)と組み合わせると、鈴木親子が彼ら自身の資金の一部を2012年にMRIに送金した事実は、彼らがMRIの大規模詐欺の当局への発覚を避けるために為したという推量を支持する。

詐欺を証明するには、原告らは以下を示さなければならない。
  1. 被告による不実の説明
  2. 被告が説明が不実であることを知っていたまたは信じていた(あるいはその説明が不確かなことに基づく)
  3. 被告が、原告が虚偽の説明に依存することにより行為を行うまたは行為を控えるように仕向ける意図
  4. 原告が実際にその虚偽の説明に依存した事実
  5. その依存により原告に損害が生じた
<判例>

原告らの申し立てと示された証拠から、原告らが、鈴木親子がMRI証券を売るために繰り返し原告らに虚偽の説明をしたことを証明する可能性は高い。証拠は、鈴木親子が彼らが説明をしたとき及びMRIからコミッションを受け取ったときに当該詐欺について知っていたあるいは知り得たはずだと言うことに関して説得力がある。原告らは、鈴木親子が、投資は厳格な保護の下にあると約束したので、多額の金銭を投資した。鈴木親子は、原告の投資がどのように扱われるかについて不実の説明をした。原告らは、それぞれの鈴木の嘘の説明に関して、以下の項目を含むいくつかの特定的な申し立てをしている: (1)投資家の資金はMARSの購入にのみ使われる(両者); (2)合衆国法が投資家の資金を保護する[2]; (3)投資家の資金はエスクローの分離した「ロックボックス」に保全され、この口座は特別な銀行口座で売掛金を回収するために使われ、売掛の額面価格はそれを購入した金額を上回ることを要求する(両者); (4)厳しい審査に通った会社だけがロックボックスを開設する資格がある(両者); (5)エスクロー会社がMRIが投資家の資金に触れることを不可能にする(両者); (6)エスクローシステムは資金の分離を保障しているので、万が一MRIが破綻しても資金は債権者から保護される(鈴木ポール武蔵)。彼らは、これらの説明が不実であったことを知っており、彼らは原告らを投資に仕向けるためにこれらの説明を使い、原告らは当然にこれらの説明を信じてMRIと契約する判断をし、原告らは彼らが投資した金のほとんど(もし全てでなければ)を失う損害を負うだろう。当裁判所は従って、原告らは鈴木親子に対する詐欺の訴訟に勝つだろう、あるいは少なくともそのような訴訟に至る深刻な疑問が生じると結論する。

同じ理由により、原告らは法定信託の訴えにも勝つ可能性が高い。「法定信託とは、資産の法的名義の所有者が、善良なる道義心をもってそれに対する資格を与えられた他人の利益のために受託者となるための救済手段であると定義される。法定受託者が資産の(単なる所持だけでなく)名義を所有すると言う要求事項は法定信託の付与に重要である<判例文>

鈴木親子は、腐敗した資産を誠実に購入したものは、法定信託には該当しないことがあり、また原告らが、鈴木親子がその腐敗したコミッションを受け取ったときには彼らが詐欺の実質的なあるいは擬制的な知らせを受けていたことを示せないと反論する<判例>。既に当裁判所が結論したように、鈴木親子が詐欺を知っていたことを原告らが証明する可能性は非常に高い。鈴木親子は、原告らに繰り返し彼らの説明するものは安全で確実だと勧め、それに応じて原告らは彼らの資産を投資し、いくつかのケースでは彼らの生涯の貯蓄をMRIに投資した。原告らは、鈴木親子の役割のそのような行為が秘密の関係を築いたかどうかについて、少なくとも重要な疑問を抱かせることを明らかにした。鈴木親子は、フジナガと共謀して、MRIの詐欺スキームの張本人であり、また彼らは原告らの投資資金に直接由来する多額のコミッションを得た。従って当裁判所は、原告らは、その全てあるいは一部分がMRIから受け取ったコミッションからなるものと目される鈴木親子の資産について、原告らの法定信託の訴えが認められる可能性は高いと認定する。原告らは、少なくとも彼らの法定信託の訴えを根拠として重大な疑問を示す。

2. 回復不能な損害
一般に金銭上の損害で補償される損害は、差し止め命令の救済に対する権利を構成するには不十分であるが、回復不能な損害は、訴えられている資産の費消または他の金銭損害が、もし救済が与えられなければ、回収が不可能であることを示すことで提示できる<判例>

原告らは、鈴木親子が彼らの資産を費消若しくは隠蔽する危険があると指摘する。特に、彼らは2013年5月の早急な一連の取引を示すが、これは証券取引等監視委員会がその操作内容を発表した直後であり、その中で「鈴木順造トラスト」に属していたハワイイの住宅が究極的にプーイケナ・インベストメンツLLPと呼ばれる会社に一連の取引が始まった日に移転しているが、この会社は鈴木ポール武蔵とキャサリーン・スズキ(鈴木順造の子供)により設立されたものである(#134 妙中 陳述 3~4頁 付帯文書B)。プーイケナ・インベストメンツは鈴木順造トラストに対するほど簡単には鈴木親子には関連付けられない。似たような取引は他のハワイイの不動産にも発生した(妙中 陳述 5頁)。加えて、鈴木親子の支配下の会社―ソネット[3]―が日本の裁判所が差し押さえる前に鈴木啓子の生命保険を解約し、その解約金を東京銀行の口座に預け入れた; 生命保険の解約は23万ドルの払い戻しがあったのにも拘らず、また記録によれば2009年と2013年の間にソネットに800万ドル以上のMRIのコミッションが送金されたにも拘らず、2013年11月現在口座にはたった4,630ドルしか残っていなかった(#133-3 山口弘 陳述 パラグラフ4、#134 妙中 陳述 7~12頁)。

鈴木親子は、原告らが不適切に費消されてとし申し立てる資産はMRIから受け取ったコミッションとは何ら関係ない、何故ならそれらは1987年、2002年、2004年に購入されたもので、鈴木親子が如何なる詐欺についても知ったより遥か以前であり、クラス期間の遥か以前のことだったからと。しかしながら、これらの特定の資産が法定信託に関わるかどうかに拘わらず、原告らは、鈴木親子が迅速な行動を初め、MRIの詐欺が発覚するや否や彼らの資産のある部分を投げ出したことを示す。鈴木親子が、少なくとも部分的にMRIから受け取ったコミッションで得た資産を費消または隠蔽しそうだと言う合理的な推量が描ける。更に、鈴木親子と彼らの会社が4年間または5年間に2,200万ドル以上を受け取ったことを考えると、これらの資産のいくつか若しくは全てが、少なくとも部分的にコミッションから払われた可能性がある。

鈴木親子はまた、資産は費消されたり隠蔽されたりしたのではなく、相続計画の一環として移転されたのであり、これは10年前に始まり、すべての移転は公共記録に含まれていると反論する。しかしながら、移転のタイミングは資産隠しの試みを強く示唆する。

鈴木親子は、生命保険は鈴木啓子の生命のもので、払い戻し金はソネットの銀行口座に入金されており、鈴木啓子もソネットも本訴訟に含まれていないと反論する。しかしながら、保険の名義人と被保険者が被告らでないと言う事実は意味をなさない。両者は鈴木親子と深い関係にある―ソネットの場合は鈴木親子に支配されている。鈴木親子は、ソネットの銀行口座残高の低さは費消の証拠ではない、なぜなら原告らはその金が通常の目的のために費消されたのではなかったことを示していない、と反論する。しかしながら、鈴木親子もまたその銀行口座の資金が通常の目的のために費消されたことを示していない。最後に、鈴木親子は、生命保険は2002年に購入されたものでMRIのコミッションとは関係なく、またソネットの銀行口座は既に日本の裁判所により凍結されているので回復不能な損害の恐れはないと反論する。しかしながら、鈴木親子がMRIの詐欺が発覚したと同時にあるいは同じ時期に生命保険を解約した事実は、ソネットの銀行口座が現在は凍結されていることに拘わらず、また当該生命保険がMRIのコミッションで購入されたかに拘わらず、彼らの資産が本件の如何なる判決にも拘束されないように隠蔽及び・若しくは費消する意図を示唆する。

最後に、鈴木親子は資産の移転は原告らが請求を提出する5か月以上前に行われたのであり、原告らは鈴木親子に対する要求を2回撤回し、申し立てられているような回復不能な損害の緊急性若しくは損害の恐れをもたらすような進行中の資産の費消の証拠はないと反論する。鈴木親子に対する差し止め救済の如何なる遅れも本件に於ける回復不能な損害の認定を妨げるものではない。

[2]第三次修正訴状はこの一般的な説明に関連する鈴木ポール武蔵によるVIMOの中のいくつかの説明の詳細を示している。
[3]仮差し止め命令の請求 山口隆 陳述 パラグラフ5。

次回に続く)
2014-09-22 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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鈴木親子の資産凍結の仮差し止め命令(1) ~アメリカの裁判~

合衆国ネバダ地方裁判所のマッキベン判事は、2014年9月18日、MRI「投資家」ら25人が訴えていたMRIのMARS投資詐欺に関して、MRIの日本支社の代表格人物でMRIの詐欺内容を全て知っていたとされる鈴木順造・鈴木ポール武蔵親子の全資産を凍結させる仮差し止め命令を下した。

本決定は原文19ページと長文なので、複数回に分割して掲載する。

まず何としても結論を知りたいから、最初に掲載するのは結論(本決定の最後の)部分。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。

拙者は日米どちらの法学にも精通しておらず、適切でない用語や言い回しがあるかも知れない。指摘があれば歓迎し、随時修正する。
それ故当裁判所は次のように結論する。
  1. 鈴木順造と鈴木ポール武蔵が詐欺行為に関わっていたと信じる妥当な理由があり、原告らは彼らの州法と証券詐欺の訴えに加えて彼らの法定信託に関する訴えについてメリットの見込みがある。
  2. 本訴訟が最終判決に至る前に鈴木親子が彼らの資産の費消または隠蔽して、即時かつ修復不能な損害が生じると信じる妥当な理由がある。
  3. 公正さを重視し、原告らの勝訴の可能性を考えると、公正な救済は公衆の利益に適う。

それ故、通常の生活費と訴訟費用を除いて、被告鈴木順造と鈴木ポール武蔵、彼らの代理人、表見人、及び彼らのいずれかの支配下または共同関係にある個人及び企業は以下のことを抑制及び禁止される。
  1. 直接的もしくは間接的に如何なる資産を、移転、変換、販売、隠蔽、支払い、消費、引き出し、弁済、抵当に当てる、質入れ、譲渡、その他資産を処分すること。それらの資産はどこに存在しようとも、
    1. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵または彼らの関連者若しくは彼らのどちらかの支配下にある個人または企業に所有または支配され、または
    2. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵または彼らの関連者若しくは彼らのどちらかの支配下にある個人または企業に実質的若しくは擬制的に所持され、または
    3. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵に直接的または間接的に所有、管理、または支配されるか共同支配の下にある如何なる会社、共同事業、若しくは他の企業に所有、支配、または事実上若しくは擬制的な所持の下にあること
  2. 鈴木順造または鈴木ポール武蔵もしくは彼らの会社、関連会社、子会社の名義もしくはその利益のための如何なる貸金庫をも開くかまたは開くようにせしめるか、または上記の何人たりともがそれにアクセスせしめること
  3. 直接的または間接的に、鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかが関わっているかまたは彼らの支配下にある事業または企業の事業、資産、及び財務に関する、疎明できる、または関係する文書を破棄、隠匿、破損、移転、その他改変もしくは破棄すること。

更に以下のように決定する。鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかに所有または支配される如何なる人物若しくは企業の名義または代理の如何なる資産をも所持、管理、支配する如何なる金融機関、ブローカー、ディーラー、またはエスクロー代理人は、
  1. 今後の当裁判所の決定で認可される場合を除き、当該資産を保全し且つ、移転、抵当、質入れ、担保、譲渡、排除、引出し、費消、販売、その他廃棄することを禁止しなければならない
  2. 如何なる人物も、鈴木順造または鈴木ポール武蔵若しくは彼らのどちらかに所有または支配される如何なる人若しくは企業の名義若しくはその利益のための如何なる貸金庫にアクセスすること若しくは彼らのいずれかにアクセスせしめることを禁止しなければならない。

被告らは、合理的な理由の下に、特定の資産を移転、変換、販売、支払い、費消、引出し、弁済、抵当、質入れ、担保若しくは他の処分を許すよう決定を変更することを当裁判所に請願できる。本決定が関与する資産に第三者の利権がある場合は、当裁判所は第三者による本決定の適切な変更の請願を排除しない。

原告らが既に本件に於いて供託した1万ドルの保証金は、当裁判所が決定した差し止め命令救済の保証として使われる。

以上のとおり決定する。
日付: 2014年9月18日
合衆国地方判事

Howard D. McKibben

差し止め命令が鈴木親子のすべての資産に対して発せられており、鈴木親子は通常の生活費と訴訟費用(弁護士報酬など)以外は彼らの資産に手を付けられなくなった。



では決定文の最初に戻って逐文的に翻訳してみる。
合衆国地方裁判所
ネバダ地区

2:13-cv-01183-JAD-VCF
仮差押え命令の請求に関する決定


(原告・被告の表示省略)

原告らは、申し立てられているポンジースキームの運営に関連して被告らに対するこの想定上のクラスアクションを提起する。被告MRIは、ネバダ州ラスベガスに本社を置き、日本の東京に支社を持ち、社長でありCEOであるエドウィン・フジナガにより運営されるネバダ州の会社である。MRIの東京の運営は鈴木順造に支配されていた。彼の息子の鈴木ポール武蔵とともに、鈴木順造は日本でMRIの証券を販売し勧誘していた。鈴木親子は東京都ハワイイに在住である。

提案されているクラスを代表して、原告らは「鈴木順造と鈴木ポール武蔵、および彼らの代理人と表見人が通常の生活費以外の目的で彼らの資産を移転、転換、売却、隠蔽することを抑止し強制する」仮差し止め命令を請求した(文書#133)。原告らはまた、鈴木親子にすべての資産についてその種類と存在場所を直ちに明らかにするよう命令されるように求めた。鈴木親子はこれに反対し(#135)、原告らはこれに答えた(#139)。

MRIは「医療売掛(MARS=Medical Accounts Receivable)」を買い付けこれを回収する取引を行うと称する。1990年代後期から、MRIは10億ドル以上を払う8,000人以上の日本の投資家らを集め、彼らの投資に対して確実で安全な利率を約束した。宣伝資料では、この会社は投資家の資金は(1)独立したエスクロー会社により管理される別個の「ロックボックス」に保全され、(2)MARsの取引にのみ使われ、(3)州法で保証されると約束した。原告らはこれらのいずれもが真実ではなかったと反論し、実際はMRIは投資家の資金を以前の投資家に償還するために、事業を継続するために、そしてその経営者の豪華な生活様式を賄うために使い、結果的に投資家に償還不能に陥ったと反論する。

2012年に、顧客らは日本の当局にMRIが満期の投資の支払いをしないと苦情を述べ始めた。日本の金融庁は捜査を始めた。2013年4月26日、金融庁関東財務局はMRIの認可を取り消した。金融庁は日本の証券取引等監視委員会の勧告を受け入れたが、これはMRIが投資家の資金の分別管理を怠り遅くとも2011年からそれらの資産とMRI自身の資産とを混合し、MRIが調査の間金融庁に嘘の報告をし、2013年にMRIが新たな投資家らを募り続けることを画策していたと言うものだったが、そののちにも既にあった分も支払い不能であることが明らかになった(#133-4 五十嵐 陳述パラグラフ2、付帯文書A-B)。

MRIは満期契約の支払い停止により既に330万ドルの負債を抱え、この数字は増え続けている(#134 妙中 陳述 パラグラフ18)。

第三次修正訴状の申し立てと原告らの提示は、鈴木親子はMRIの投資家らに対する詐欺の達成の主役であり、彼らはMRIの投資家への勧誘と対話のほぼ全てに責任があり、申し立てらる偽りの多くを繰り返したと言うものである。特に、原告らは、鈴木親子はセミナーとその他の懇親会で、次のように表現した: (1)投資家の資金はMARS購入にのみ使われる; (2)合衆国法が投資家の資金を保護する; (3)投資家の資金はエスクローの独立した「ロックボックス」に保全され、これは売掛を回収するための特別の銀行口座で、購入された売掛の額面価格が実際に購入に支払われた金額を超えることが要求される; (4)厳しい審査に合格した会社だけがロックボックス口座を開ける資格がある; (5)エスクロー会社がMRIが投資家の資金に触れられないようにする; (6)万が一MRIが破綻しても債権者から資金を保護する(第三次修正訴状パラグラフ46、47、51、52、53、57、58、59、63、64; #133-5も参照(飛田 陳述 パラグラフ4)。これらの説明の全て若しくはほとんどは真実でないことは十分な証拠で支持される(#134を参照(妙中 陳述 付帯文書 V, W, X Y)。

鈴木親子の資産のさまざまなものは日本の裁判所に暫定的に差し押さえられている(山口 陳述 パラグラフ2)。しかしながらMRIの詐欺は摘発されていないので、原告らは、鈴木親子が彼らの資産のいくつかの中の彼らの利権を隠蔽することに踏み出していると申し立て、原告らは、鈴木親子がこの訴訟で判決に至る前にこれらと他の資産を費消し、隠蔽し、またはこれらから距離を置くことを続けると申し立てる。

「差し止め命令とは公正な裁量の事柄であり、原告らがそのような救済の資格を与えられたことを示したときにのみ与えられる特殊な救済である」<判例>

仮差し止め命令を得るためには、原告は以下を示さなければならない: (1)彼らが多分メリットに於いて勝る; (2)もし救済が棄却されると修復不可能な損害を被る; (3)公正さのバランスが彼らに有利なように傾く; (4)差し止め命令が公衆の利益になる <判例>

あるいは、もしメリットついて深刻な疑問があり困難さのバランスが極端に原告らに有利に傾くならば、原告らが修復不能な損害の可能性を示し続けまた差し止め命令が公衆の利益に適う限り、「移動基準」の下で差し止め命令が出されるかもしれない。<判例文>

1. メリットの成功の可能性
原告らは、鈴木親子は事実上日本に於けるMRIの唯一の顔であったと申し立て、鈴木親子はこれに反論しない。MRIの証券を販売し、原告らを投資に勧誘し、セミナー、懇親会、旅行で繰り返しMRIへの投資は安全で確実―原告らが既に示した明らかに不実の約束―と説いたのは鈴木親子に他ならない。鈴木ポール武蔵は同じような説明をVIMOでも繰り返した。

鈴木親子は、MRIの日本支社を支配していた。鈴木順造はMRIの国外登録代表人で、会社を代表して行動する地位を得、MRIの東京事業所を支配していた(仮差押え命令請求 山口 陳述 2~3頁)。鈴木ポール武蔵は東京支店を管理していた(第三次修正訴状パラグラフ90)。

鈴木親子は、彼らは日本の当局が調査を開始するまでMRIが投資家らを騙していたとは知らなかったと反論するが、記録によれば鈴木親子はMRIの営業に深く関わっており、MRIが詐欺をしでかしていたことを知っていたかあるいは無謀に無視していた。鈴木親子は、彼らの職務はマーケティングと勧誘に限られ、MRIの財務処理には関わりやアクセスがなかったと反論するが、彼らは、彼らがMRIの事業を支配し調整する最高人物であったフジナガと一緒であったことに異議を唱えない。彼らのMRIに於ける重要な地位は、鈴木親子両人がMRIの関連会社と年次事業報告の内容を含むMRIの事業にとって根本的な事項が話し合われる会議に出席した事実により確証される(第三次守勢訴状パラグラフ76(鈴木順造の東京の自宅から押収された音声録音を記すSECのフジナガとMRIに対する事件から引用))。

原告らはまた、鈴木親子は日本の当局に提出する、MRI投資家らに送られた資料と本質的に矛盾する年次報告書の作成に関わったと申し立てる。鈴木親子が年次報告の作成に関わったと言うことは鈴木順造が報告書を彼の印鑑を押して提出したことにより証明され(#140 五十嵐 陳述 4~9頁 付帯文書A~H)、これは少なくとも鈴木親子がこの食い違い、すなわちMRIの詐欺の実際の若しくは擬制的な知らせを受けていたのではないかと言う疑問を惹起する。

加えて、鈴木らと彼らの近親者らは2009年と2013年の間に2,200万ドルを超えるコミッションを受け取っていた。これらの多大なコミッションは、MRIの全ての支配が実質的にフジナガと鈴木親子に行われていた事実を考えると、鈴木親子は詐欺について知っていた―あるいは知り得たはずだという推量を支持する(妙中 陳述 7~12頁)。

最後に、2012年4月から始まるフジナガから鈴木親子に送られたファックスは、本質的に鈴木親子にMRIがポンジースキームを行っていたことを知らせるものだった(妙中 陳述 パラグラフ13 付帯文書U)。そして、当該ファックスが鈴木親子にとってエスクローの監査のためにMRIの資金が投資家に分配されていたことを暴露するとだけと解釈されるものだったとしても、鈴木親子がMRIが満期の投資家に償還できないでいることを知りつつ、あるいは知り得たにも関わらず、鈴木親子が投資家らを勧誘し続けMRIが安全な投資であると説明し続けたことに異議は申し立てられていない。重要なことに、鈴木順造は、彼がフジナガに、当局に苦情を申し立てそうな投資家に支払いをするように指示することにより、行為について重要な支配を行使した(#134 妙中 陳述 パラグラフ13 付帯文書U)。このような行為は鈴木親子がMRIの詐欺の隠蔽を図ったと強く推量せしめる。

[1]鈴木親子は日本の証券等取引監視委員会による文書が彼らが詐欺に関して何も知っていなかったことを証明すると信じている。しかしながら当裁判所はそのような文書を見ていない。

次回に続く)
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被害者側の言い分をほぼすべて認める(4) ~アメリカの裁判の決定~

前回からの続き。MRI側の各種不法行為の認定の核心部分と結論。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性について拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
II. 州法違反
A. 詐欺
被告らは、詐欺の申し立ては十分な特定性をもって申し立てられていないと反論する。当裁判所は、原告らは鈴木親子、フジナガ、そしてMRIの<法令>違反を十分に疎明したと考えるので、原告らの申し立てるこれらの被告らに関する意図的な詐欺も十分に疎明された[9]。当裁判所は更に、原告らはこの違反を目的とした被告らの心境を十分に疎明したことを明記する。<判例>

しかしながらスターリングエスクローに関しては詐欺の申し立ては十分に疎明されてはいない。それ故スターリングエスクローに対する詐欺の申し立ては却下する。この却下は、原告らをその説明に依存させる目的で、また事実原告らがそれに従って損害を負った、スターリングエスクローが不実と知りつつ原告らに為した不実の説明の証拠を証拠開示で見出した場合の訴状の修正の許可の権利に影響しない[9]

B. 不当利得
不当利得とは、「法律上のあるいは公正な義務を生じさせる状況に於いて財産もしくは利益の返還をしないことによる結果もしくは効果」のことである。<判例>
その要件は
  1. 原告から被告に授与された利益
  2. 被告によるその利益の有用性評価
  3. その価値に対する支払なしにその利益を保持することが不公正であるとの状況下で被告がその利益を授受し保持すること
<判例>

不当利得は原告が明示的な書面契約に準じた訴えを提示するときは成立しない。<判例>

被告らは、原告らの不当利得の訴えは、この訴えがMRIの投資契約に基づいているので無効だと反論する。原告らは鈴木親子とフジナガのどちらとも契約を結んでいない。従って、彼らの不当利得の訴えはこの段階では妨げられない。<参照>

鈴木親子はまた、原告らは鈴木親子に不当利得をもたらした独立した暗黙の了解を示す事実を何ら申し立てていないと反論するが、「暗黙の了解」は不当利得の訴えの要件ではない。鈴木親子はまた、彼らに対する不当利得の訴えの礎がないと主張する、何故なら、原告らは鈴木親子に何ら利益を授与しておらずMRIに利益を授与したからだと。しかしながら、訴状は、MRIに支払われた原告らの資金の内の多大な額が鈴木親子に配分されたことを合理的に推量せしむし、鈴木親子は、指摘されている数多くの虚偽の説明をすることにより能動的に原告らからの投資を勧誘することによりこれらの資金を受領できた。これは不当利得の訴えをするのに十分である。

C. 信託義務違反
「信託義務違反の訴えは、善良なる信託関係にある他方に、責任ある者によって起こされた不法行為により惹起した損害の賠償である」<判例>。「信託関係は、その関係の範囲内の事柄に於いて一方が他方の利益のために行動をするかまたは情報を伝える義務を負った二人の間に存在する」<判例>

スターリングエスクローは、原告らがスターリングエスクローと原告らの間に信託関係があったことを示す特定の事実を申し立てていないので、この訴えを却下するように求めている。しかしながら、原告らは、スターリングエスクローがそれ自身を原告らの投資資金の受託者であると位置づけたと申し立てる。更に、訴状は、スターリングエスクローがそれ自身とその名称をMRIの事業の合法性を印象付けるために使われることを許したことの推量を支持し、スターリングエスクローはフジナガが投資家らの資金を彼の私的目的に使うことを許し、それ故投資家らの資金の保護の確保を怠った。従って、原告らはスターリングエスクローと原告らの間の信託関係と信託義務違反について十分に申し立てた。

MRI、フジナガ、そして鈴木親子は、原告らは証拠不十分な提示以外に、彼らと原告らの間の信託関係について十分に申し立てていないと反論する。彼らは更に、いくつかの事件を引用して、資産の買い手と売り手の間、資産の製造者とその消費者、または共同事業とその利益のために指名された第三者の間にはそもそも信託関係が存在せず、従って本件でも信託関係は存在しないと反論する。原告らは、被告らが引用した事件は本件とは区別されるもので、本件に於ける関係は通常の投資アドバイザーと投資家の間以上のもの、これに関してはネバダ州が信託関係が存在すると結論したが<判例>、であると反論する。

原告らは、被告らが信頼と確信に値する存在であるように見せかけ、実際、原告らは原告らの金を懸命に投資し、その投資について誠実な説明をしたとの信頼と確信を彼らに寄せたと申し立てる。彼ら([拙者註]原告ら)は更に、MRI、フジナガ、そして鈴木親子が原告に対して彼らの金をMRIに投資することを勧誘するためにいくつかの約束をしたと申し立てる。これらの約束には、投資は安全な条件で行われるという指摘を含んでいた。従って、当裁判所は、原告らは、被告らが原告らに負っていた信託義務に違反したとの訴えを裏付ける十分な事実を申し立てたと結論する。

D. 事実報告[拙者註]Accounting)
<判例><判例><判例>

MRI、フジナガ、そして鈴木親子は、原告らは如何なる特別な信託関係も申し立てていないのでこの訴えは却下されなければならないと反論する。しかしながら、既に議論したように、原告らは全ての被告らが信託に値する存在であるように見せかけた―彼らを確信させるために申し立てられている虚偽の説明を繰り返すことにより―そして原告らは被告らが彼らの投資を適切に扱うと実際に信用した。

鈴木親子はまた、原告らは鈴木親子が口座にアクセスしたり支配して事実報告を行えたと言うことについて十分な申し立てをしていないと反論する、なぜなら、原告らは彼らの金をスターリングエスクローに送金し、原告ら自身が申し立てるように、鈴木親子はスターリングエスクローの資金を支配やアクセスする術がなかったから。しかしながら、鈴木親子はスターリングエスクローの口座を支配する術がなかったにせよ、彼らは彼ら自身の口座を支配することはできたはずであり、これこそが訴状が示唆するMRI投資家らから不正に送金された金である。

E. 法定信託[拙者註]Constructive Trust)
法定信託とは、資産の法的名義の所持者が、善良なる道義心をもってそれに対する資格を与えられた他人の利益のために受託者となるための救済手段であると定義される。法定受託者が資産の(単なる所持だけでなく)名義を所有していると言う要求事項は法定信託の成立に重要である<判例>

<判例>

鈴木親子は、金がスターリングエスクローに直接送金されたのであり、原告らの金の法的名義を所持していることを原告らは申し立てていないと反論している。鈴木親子はまた、秘密関係も申し立てられていないと反論する。既に議論された同じ理由により、これらの反論は根拠がない。却下の請求は、証拠開示の終わりに於いて更新の権利に影響を与えることなく棄却する。

F. 詐欺的譲渡
当裁判所は2014年5月6日に、原告らに第二次修正訴状の欠陥を修正する許可を与えた。この許可は訴状に追加の訴えを加えることを許可したものではなかった。原告らは、訴状に裁判所の許可なしで追加できると誤った。<法令>は原告に、追記された訴状を却下の請求ののち21日以内ならば裁判所から許可を得ずに提出することを許したはずであった<判例引用>。原告らは第三次修正訴状を却下の請求から21日以内に提出しなかった。従って原告らの詐欺的譲渡に関する訴えは他の権利に影響を及ぼすことなくこれを却下する

G. 分身[拙者註]Alter Ego)
ある個人を分身理論の下で責任を追及するためには、原告らは(1)その会社が分身であると指摘される人物により影響され支配されている;(2)片方が他方と利益と所有に関して不分離である結合性; (3)独立した存在と言う会社の擬制への忠誠がそのような状況下で詐欺を容認するかまたは不正を助長すると言う事実が必要である。<判例>

フジナガは、原告らは本件では分身責任を証明する何らの事実も申し立てていないと反論する。しかしながら、フジナガはMRIの―然るに原告らの―資金を排他的に支配し、MRIの資金を彼の私的な経費に使っていたと申し立てられている。原告らはまた、MRIは現存の投資家に償還する十分な資金を有していなかったと申し立てる。従って、原告らは資金の承認されていない分割と社有資産をフジナガの個人資産として扱っていたことを疎明した。これは分身責任を訴えるのに十分である。

H. 契約違反
MRIは、満期を迎えていない契約についてはこれは却下されるべきであると反論する。原告らは、先制違反の理論を基にして、満期未到来の契約に関しても契約違反を十分に提示をしたと反論する。

原告らは、MRIが投資家らに償還できないことを次の理由で明確に申し立てた: 2013年4月に投資家への償還を停止した; 日本で営業する認可を取り消された; SECの資産凍結次第である; そしてフジナガとMRIがポンジースキームを行っていた。従って、原告らは先制違反に基づいて契約違反の主張を適切に提示したことになる。<判例>

結論
前述の被告鈴木親子による却下の申し立ては、詐欺的譲渡の訴えに関してこれを 認め、そのような訴えは他の権利に影響を及ぼすことなくこれを却下する。スターリングエスクローによる詐欺と<条文>の訴えに反対してこれを却下する申し立てはこれを認め、そのような訴えは他の権利に影響を及ぼすことなくこれを却下する。その他すべての件に関しての却下の申し立て(#161、#170、#171)はこ れを却下する。

以上のとおり決定する。
日付: 2014年9月18日
合衆国地方判事

Howard D. McKibben


[8]詐欺の主張の要件は: (1)被告による不実の説明;(2)説明が不実であることを被告が知っていたあるいは信じていた;(3)不実の説明を信じて原告が行動を起こすあるいは行動を止めるように仕向ける被告の意思;(4)原告が不実の説明に依存して判断した;(5)そのような依存の結果原告に損害が生じた。<判例>
[9]スターリングエスクローは、原告らが対抗して提示した詐欺を助長して教唆したと言う主張を却下するように請求していない。当裁判所は、その主張は当裁判所にに於いて十分かつ適切に疎明されたことを記す。

以上が2014年9月18日付の決定文の全文(法令法令条文判例判例文は省略)。拙者は日米どちらの法学にも精通しておらず、適切でない用語や言い回しがあるかも知れないがそれはご勘弁いただきたい。指摘があれば随時修正する。なお、誤字、脱字、重複字などの修正についてこのブログの常連読者の方に大変お世話になり、多大なる感謝の気持ちを表す。

この決定は、内容的にはスターリングエスクローの件を除いて原告側の言い分をすべて認める全面勝利と言って差し支えないだろう。ただし、結論部分とそれに先立つ「F. 詐欺的譲渡」に記されているように、第三次修正訴状の遅れにより詐欺的譲渡に関しては原告の申し立てを却下している。

拙者は、第三次修正訴状も、それの基になった以前の訴状も見ていないので正確には判らないが、この決定から推測するに、この詐欺的譲渡の申し立ては決定文に書かれているように今までの訴状になかった項目を裁判所の許可を得ることなく追加すると言うルール違反故却下されたようだが、その他の部分でMRI、フジナガ、鈴木親子らの本件での行為が非常に欺瞞的でかつ能動的であり詐欺そのものであると言う原告側の言い分がほぼすべて認められていることからすると、裁判全体に対するこの却下の影響はほとんどないだろうし、今後裁判の進行上改めて裁判所の許可を受けて詐欺的譲渡の訴えを訴状に追加する可能性もあると思う。
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被害者側の言い分をほぼすべて認める(3) ~アメリカの裁判の決定~

前回からの続き。スターリングエスクローに関する部分と、鈴木親子とフジナガのMRIへの関わりなど。

免責宣言: この翻訳は公表されたテキストを拙者の能力の範囲内で最大限の努力をもって作成したものであり、その正確性と信憑性については拙者は明示的、黙示的な如何なる保証もしない。この翻訳を使ったあるいは信じた結果起こる直接的あるいは間接的な如何なる損害または事件について拙者は責任を負わない。
iii スターリングエスクロー
スターリングエスクローは、訴状は同社を助成と教唆の理論を拠り所にして訴えており、このような理論では証券法違反の責任は負えないと主張する。原告らはスターリングエスクローは助成と教唆の理論では責任はないかもしれないことを認めつつ、<法令>の第一次的な違反を犯したと申し立てる。スターリングエスクローは、同社が原告らには何の義務も負っておらず、原告はスターリングエスクローが欺瞞や操作をしたとの申し立てをしていないので、証券法の下では責任を負えないと反論する。

疎明は<法令>の下でスターリングエスクローに対して主張を述べるには不十分であり、申し立てられている主張は却下する。却下は、万が一本件に関する証拠開示がスターリングエスクローが<法令>の第一次的な違反の証拠を明らかにした場合は、訴状を修正する許可を得る権利関係に影響を及ぼすことはない。

<法令>違反
<法令>は未登録の証券の販売の申し入れに関する責任について規定している。<法令><法令>は、「本質的要件の不実の説明を含む、またはそれが作成された状況の下で説明を誤解なきようにするために必要な本質的要件を省略する」目論見書または口頭会話による証券の販売の申し入れに関する責任を規定する。<法令>

<法令>に基づく主張は違反後1年以内に提起されねばならず、且つ「公衆への真正な申し入れ」の場合は如何なる事情でも3年を超えることができない。<法令>。第二巡回裁判所は、「圧倒的多数の裁判所」と同じく、時効の起算は最後の真正な申し入れではなく、最初の真正な申し入れからとしている。

鈴木親子は、原告らの<法令>の主張は、原告らの以前の訴状の主張によれば最初のMRIの証券の公衆に対する真正の申し入れは14年前のことであり既に時効完成であると反論する。原告らは、MRIは毎年新しいシリーズの証券を申し入れており、各年の系列は新しい別の証券であると反論する。したがって、時効はMRIが最初に証券を申し入れた時からではなく、各年の系列が申し入れられた時から起算されるべきだと。鈴木親子は、原告らは各年の証券間に、最初に14年前に申し入れられたオリジナルの証券との間にはっきりした相違を示せるような違いを見出していないと反論する。原告らは、投資家らは毎回新しいシリーズの証券を購入しており、MRIはそのたびに新しい投資証書を発行しているのでシリーズは明確に別物だと反論する。

原告らは少なくともある部分、と言うより多分すべての<法令>違反の主張が時効にはなっていないことを推量せしめる適切な疎明をしている[7]。毎年MRIは新しいシリーズの証券を申し入れており、そのたびに購入した人に新しい投資証書を発行した。

鈴木親子は、原告らは鈴木ポール武蔵が彼自身の経済的利益のために証券の購入の勧誘をしたと申し立てておらず、従って鈴木ポール武蔵が「販売者」であることを適切に申し立てていないと反論する。<法令>。特に、彼ら([拙者註]鈴木親子)は、原告弁度団自身の宣言は訴状に申し立てられている20,000万ドルの販売コミッションの如何なる部分も鈴木ポール武蔵に帰属するとは言っておらず、従って鈴木ポール武蔵がコミッションを得たと言う主張に関する事実の基礎がないと反論する。原告らは、鈴木ポール武蔵がMRIの証券を申し入れ多大のコミッションを見返りとして受け取っていたことを明確に申し立てており、従って鈴木ポール武蔵は販売者である。

D. <法令>
<法令>は、支配人物の第一次的な証券法違反、この場合は<法令>、に関する責任を規定している。支配とは、投票権の所有、契約、またはその他の方法で、経営の方向性と人物の処遇を支持または決定する直接または間接の権力を所持することである。<判例文>

被告らは、原告らは彼らが根拠とする第一義的な違反について十分に申し立てておらず支配責任違反の主張は却下されるべきと反論する。既に述べた理由により、この反論には根拠がない。

被告ら鈴木親子は、訴状には鈴木親子がMRIに対して支配する権力を所持していて、実際に支配を実行したと言う結果的主張しか書かれていないと反論する。いくつかの事実の申し立てに鑑み、原告らは、鈴木親子がMRIの証券の販売のマーケティングと勧誘を支配する権力を持っており、それが本件の証券違反の核心であると申し立てる。彼ら([拙者註]原告ら)は、鈴木ポール武蔵は日本での営業を管理し、MRIの日本における経営決定権を持ち、MRIの従業員の日常業務の監督責任があったと申し立てる。鈴木ポール武蔵はVIMOの編集長で、そこで記事と編集記を執筆してMRI投資家に対して三つの核心的な申し立てられている虚偽説明をしたと申し立てる。鈴木順造はフジナガの監督をほとんど受けずに東京支店を統率しており、フジナガに特定の重要な投資家に償還を指示あるいは請願する立場にあり、フジナガはそれに従った。被告らの反論とは異なり、フジナガと鈴木親子の両方が支配していたと主張される事実は、本質的に矛盾ではない。申し立てが明らかにするのは鈴木親子が投資家に対するMRIの説明を支配していたことであり、鈴木順造が指定された投資家らが契約が破綻していることを当局に告発されることを防ぐために彼らに支払いをすることをフジナガに要求できる十分な地位にあったと言うことである。

フジナガは、原告らが彼がMRIを支配していたことを十分に疎明していないと反論する。この反論は根拠がない。フジナガは、申し立ての通り、MRIの社長でありラスベガスの本社の日常業務を含むMRIのアメリカの業務の唯一人の責任者であったし、契約上MRIを拘束できる一人オーナであったし、マーケティング資料内の表現を規制できることを含むMRIの経営判断と証券のマーケティングに影響を与え支配する権力を持っていたし、MRIの財務状況を知っておりまたそれを制御できた。これらの事実は、フジナガのMRIの支配に関してもっともらしい推量以上のものをもたらす。

[7]当裁判所は、原告らの<法令>違反の主張は2010年7月5日以前の如何なる違反も提示していないことを明記する。

次回に続く)
2014-09-21 : 裁判所決定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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