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5種類のうま味調味料を食べ比べてみました。
人間の味覚には「酸・甘・塩・苦」の4つに加えて「うま味」が存在すると提唱し、昆布に由来する「グルタミン酸」を発見したのが、池田菊苗(きくなえ)博士。
以来、料理に「うま味」を追加するための調味料が多数作られ、良くも悪くも世界中の店や家庭で広く使われることとなった。 今回はその良し悪しは置いておいて、純粋に味覚の面だけで、うま味調味料の味を試してみたいと思う。 うま味調味料の味を知るために 一昔前までは「化学調味料」という通称が一般的だったのだが、いつの間にか「うま味調味料」と路線変更をしたこの調味料を、忌み嫌う人は多い。
私も自分の作った料理に使うと、なんだか化学の力に負けたような気がしてしまうので、家の調味料棚には置いていない。たぶんグルメマンガの影響だ。 味の素、ハイミー、いの一番が、家庭用うま味調味料の御三家ですかね。
だがしかし、いくら家の使用を控えたところで、外食や買い食いをする以上は避けられない存在なのだから、まったく受け入れないというのは相当な覚悟を持たない限り非現実的だ。
ここはひとつ、安全性とか健康問題とか常習性とかは置いておいて、正面からうま味調味料とぶつかり合い、その味がどんなものなのか、どれくらい使うと外食のあの味になるのかを、自分の舌で理解してみたいと思う。 試食には味にうるさいであろう製麺仲間にお付き合いいただきました。
用意したうま味調味料は、一般的なものから業務用まで全5種類。
でもよく調べてみたら、それらはL-グルタミン酸ナトリウム(以下グルちゃん)と5'-リボヌクレオタイドナトリウム(以下リボちゃん)という、2種類のナトリウムの組み合わせで構成されていた。 まずはそのまま舐めてみよう。 エントリーNo.1 味の素うま味調味料の元祖ともいえる『味の素』。私が生まれた頃には、各家庭の食卓に迷いなく置かれていた気がする。
うちの母親はよく白菜やキュウリの漬物に、これをバサバサと掛けて食べていた。子供の頃によく舐めたという人も多いだろう。 味の素株式会社の『味の素』
■参考小売価格:1グラムあたり2.35円 細かく砕かれた水晶のようなヴィジュアル。
ぺろりと舐めてみると、舌にブワっとうま味が広がり、それが長く残った。ザ・化学調味料と言うべき、記憶にある例の味である。
構成比はグルちゃん97.5対リボちゃん2.5。
エントリーNo.2 ハイミー「ハイミ〜、パッパッパッ」というCMが懐かしいハイミーは、味の素社の高級バージョンともいうべきうま味調味料。
味の素に比べるとちょっと値段が高く、リボちゃんの割合が少し多くなっている。原材料からだけは、その割合以外の違いが読み取れない。 味の素株式会社の『ハイミー』
■参考小売価格:1グラムあたり5.68円 味の素に比べると、結晶に白い粉をまぶしたようになっている。
値段の差による先入観があるかもしれないが、その味は和風ダシに通じる高級感があるかも。後味が味の素よりは自然な気がした。
構成比はグルちゃん92対リボちゃん8。
エントリーNo.3 いの一番いの一番は、お蕎麦屋さんでバイトをしていた時に、つゆにドバドバと入れているのを見て驚いた思い出の調味料だ。
協和発酵工業の協和発酵フーズと、武田薬品工業のキリンフードテックが統合してキリン協和フーズが生まれ、そこにメルシャンの加工用酒類事業が統合し、さらに三菱商事グループの一員になって、MCフードスペシャリティーズに至るそうだ。 MCフードスペシャリティーズ株式会社の『いの一番』
■ 参考小売価格:1グラムあたり5.68円 グラニュー糖のような粒になっており、噛むとシャリっとする。
成分にあるグルタミン酸ソーダはL-グルタミン酸ナトリウムと同じものらしいので、ハイミーとは同じ原材料かつ同じ割合なのだが、こちらのほうが塩分を強く感じ、ちょっと違う味がする。
構成比はグルちゃん92対リボちゃん8。
うま味調味料の材料について ここでちょっと理屈を挟むが、グルちゃんは昆布に含まれるうま味であり、リボちゃんは鰹節に含まれるイノシン酸ナトリウムと、椎茸に含まれるグアニル酸ナトリウムを主成分とした混合物。
ハイミーやいの一番には、「鰹節、昆布、椎茸の3つのうま味」と書かれているが、それらが原材料に使われているのではなく、あくまで同じうま味の成分が入っているという話のようだ。 実は鰹節も椎茸も昆布も入っていない。無果汁のオレンジジュースみたいなもんですかね。
実際の原材料はサトウキビの糖蜜やトウモロコシの澱粉などで、そこから微生物の力やらなんやかんやらによってうま味成分を製造するらしい。
ただ昆布や鰹節の味がグルタミン酸やイノシン酸だけかというと、もちろんそんなことはない。サツマイモから作った本格焼酎と、サトウキビから作った無色透明の甲類焼酎が、同じアルコール度数でも別の味がするように、ちゃんととったダシとうま味調味料を水で溶いたものは、同じ味にはならない。でもやはり似てはいる。 エントリーNo.4 グルエースここからは業務用の化学調味料を試してみたいと思う。まずはMCフードスペシャリティーズに商号変更する前のキリン協和フーズ時代の在庫品、グルエース。
家庭用のうま味調味料がグルちゃんとリボちゃんのコンビなのに対し、これはグルちゃんオンリー。うま味はグルちゃんとリボちゃんが掛けあわされることで相乗効果を発揮するというが、果たしてその味は如何に! キリン協和フーズ(現在はMCフードスペシャリティーズに商号変更)株式会社の『グルエース』
■参考小売価格:1キロあたり864円 さすがはグルちゃんオンリーだけあって、混ざりもののない純粋な結晶という感じ。これはやばい。
業務用だけにうま味が濃いかとも思ったら、これが薄味に感じられてしまうのだ。他の方からも、味がぼんやりしてるとか、シンプルすぎるとか、そんな評価が集まった。コンビを解散したピン芸人か。
うま味はやっぱり単体だと弱いらしい。某ラーメン屋がこの調味料を使っているという噂だが、そこはスープに豚肉のイノシン酸がたっぷりなので、グルタミン酸だけを補えばいいという判断なのかもしれない。あるいは単純に安いから。 100%グルちゃん。1キロでラーメン何杯分だろうか。
エントリーNo.4 リボタイドこちらのリボタイドは、グルエースとは真逆でリボちゃん100%の調味料。
その価格はグルエースの4倍近くもする高級品であり、リボちゃんの割合が多いハイミーやいの一番が、味の素よりも高い理由がわかった気がする。 MCフードスペシャリティーズ株式会社の『リボタイド』
■参考小売価格:1キロあたり3048円 サラサラと粉状。ハイミーの拡大画像をみると、グルちゃんとリボちゃんの組み合わせだとよくわかる。
リボちゃんは鰹節と椎茸に含まれているうま味成分らしいが、なるほど干し椎茸っぽい味がする。鰹節らしさはわからないけれど、なんとなく動物性のダシっぽさは感じるかな。
グルちゃんにくらべるとどことなく満足感や高級感がある味なのだが、そのまま舐めると舌にまとわりつく感じがなかなか強烈だ。 100%リボちゃん。1キロの袋を開けちゃったけど、一生かけても使いきれないぞ。
これらの調味料以外にも、グルタミン酸ナトリウムに核酸をコーティングした『キーパー』や、野菜のうま味成分のアスパラギン酸ナトリウムと貝のうま味成分のコハク酸ナトリウムを配合した『ミック』、IG-Na2を8%配合した『ミタス』など、世の中にはたくさんのうま味調味料が存在するらしい。
うま味調味料そのものの味は、舌にまとわりつく感じがやっぱり苦手なのだが、これらの味を試してみたくなってきたのも事実。でも小売りが1キロ単位なのでもう買わない。
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