欧州最大の石油会社である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが、同業の英BGグループを470億ポンド(約8兆4000億円)で買収する。世界最大手の米エクソンモービルに迫るエネルギー企業が誕生する。
昨年後半からの原油安が収益を圧迫するなかで、規模を拡大し生き残りを探る決断だ。今回の買収が他社の再編を促し、メジャー(国際石油資本)が雪崩をうって再編に動いた2000年前後の再来となる可能性がある。競争力で劣る日本の石油産業も潮流から取り残されるわけにはいかない。
シェルはBGを傘下に収めると世界各地に持つ油田や天然ガス田の埋蔵量が25%増えるという。BGは原油急落で経営が苦境に陥った。買収はBGがオーストラリアやブラジルなどに持つ優良資産を手に入れる好機との判断だ。
メジャーにとって将来を見据えた新たな油田やガス田の獲得は不可欠だ。この数年、油田開発などの事業に経営資源を集中する一方、不採算事業の売却など事業の選択と集中を大胆に進めている。
こうしたメジャーの動きに比べ、日本の石油産業の対応は遅いと言わざるをえない。国内には石油開発や元売り企業が数多くあり、一つ一つの規模は小さい。原油や天然ガスの生産量はすべて合計してもシェル1社に及ばない。
国内では原油からガソリンや軽油をつくる精製能力が需要に対し2割ほど過剰だ。需要は今後も年率1~2%のペースで減っていく。アジアや中東で大型製油所が次々と稼働し、日本は精製コストでますます劣勢に立たされる。
国内市場に閉じこもり、過当競争を繰り返していては成長が見込めない。グローバル競争に立ち向かう体制を整えなければならないのは内需型の素材産業に共通する課題だ。石油も例外ではない。
今後も増大する新興国のエネルギー需要をどう取り込むのか。設備余剰を解消し、競争力を高めるために、他社との連携を含む経営者の決断が欠かせない。