0ニューヨーク白熱教室 最先端物理学が語る驚異の未来(2)万物の理論の予言 2015.04.10


マンハッタンの北西に位置するアメリカで最も古い公立大学の一つ…この大学からはこれまで10人がノーベル賞を受賞しました。
中でも物理学での受賞者は4人に上り最先端の分野の研究に貢献してきました。
この大学のモットーは「過去を敬い今を見つめ未来へ向かえ」。
今回登場するのは世界で最も有名な理論物理学者の一人で未来学者としても知られる…日系3世のカク教授の専門分野は「超弦理論」と呼ばれる理論物理学の世界。
驚異の発展を続けている現代物理学はこれまでSFとしか思われてこなかった不思議な世界が私たちのごく身近に存在する事を解き明かしつつあります。
更にカク教授の興味は今「未来」へと向かっています。
現代科学がこのまま進歩したとすると一体私たちはどこへ行き着くのか。
4回にわたる特別講義では人類が今も追い求め続けるこの世の全てを説明できる「万物の理論」やその候補とされる超弦理論が描く異次元などの奇妙な世界。
科学の発展がもたらす未来社会の形。
更に心の未来がテーマとなっていきます。
それは最先端の研究に裏付けられたSFとは全く異なる驚異の未来論なのです。
第2回の講義では人類が万物の理論を手にした時それが何を予言するのかを考えよう。
タイムトラベルは可能なのか。
並行宇宙や異次元の世界未知の物質やエネルギーは存在するのか。
私たちは今そうした全ての疑問に答える万物の理論に非常に近い理論を手にしつつあるのだ。

(拍手)ありがとう。
前回の講義では我々物理学者が長年探究しているこの世界の全てを説明する万物の理論への道のりを紹介した。
今回はその万物の理論が解明された時それが私たちに何をもたらすかがテーマだ。
タイムトラベルや並行宇宙他の宇宙へとつながるワームホールなどの可能性についても話そう。
更にこうした途方もないテクノロジーを既にどこかの星の知的生命体が利用している可能性はあるのだろうか。
今回は私たちが万物の理論にたどりついた時何が起きるかを考えていこう。
ではその話の前提として宇宙の話をしておこう。
138億年前に起きたと考えられているビッグバンについてだ。
どの文明も宇宙の起源に関する説話を持っている。
例えばポリネシアでは太平洋に浮かんでいたやしの実から宇宙が生まれたと考えられていた。
それぞれの文明がそれぞれの物語を作ってきた。
しかし科学においてはある一つの謎が宇宙の起源を考えるきっかけとなった。
…という謎だ。
ばかげた疑問だと思うかもしれない。
でもなぜ夜空は白くないのだろうか?かつて宇宙については無限に広くそして無限の昔から存在していると考えるのが普通だった。
宇宙は不変で無限の空間であるという考えだ。
だがこれは一つの謎を生み出す。
もし宇宙が無限ならば太陽系の外のあらゆる宇宙空間に星が存在するはずだ。
どの方角を見ても星が見える。
だとすると夜空は黒ではなくまばゆいほど白いはずだ。
なのになぜ夜空は白ではなく黒なのか。
多くの天文学者たちがこの謎に長年取り組んできた。
偉大な天文学者ヨハネス・ケプラーは宇宙は何かドームのようなもので覆われているため空は黒いのだと考えた。
だがこの謎は何百年間も引き継がれ多くの天文学者を悩ませた。
作家エドガー・アラン・ポーが解明するまで。
ポーはアメリカの有名なミステリー作家だがアマチュアの天文学者でもあった。
彼のノートや著書に答えが書かれている。
「なぜ夜空は黒いのか」という天文学における最大の謎に彼はこう答えている。
「空が黒いのは宇宙は有限であり時間的にも無限に遡る事ができないからだ」。
つまり宇宙に始まりがあるという意味だ。
これは非常に深い意味を持つ。
こうして宇宙に始まりがあるという事が分かってきたのだ。
質問かな?マイクを回して。
ばかげた質問かもしれません。
「なぜ夜空が黒いのか」についてですが宇宙の星がまばらだからではありませんか?多くの人がそんなふうに考えるかもしれない。
確かに星はそれほどひしめき合っていない。
だが考えてみてほしい。
無数の星が均一に散らばっていたら遠くの宇宙空間に行けば行くほどたくさんの星に出くわす事になる。
つまりあらゆる方向から無数の星々の光があなたを照らす事になる。
よって夜空のどこを見ても星が存在する事になる。
どの方角を見ても星が無数に存在する。
したがってあなたのもとへ届く光は無限に強いはずだ。
という事になってしまうのだ。
遠い星の光は手前の他の星に遮られてしまいませんか?例えば宇宙に漂うガス雲などに遮られればそのガス雲は吸収した光によって温められやがては自ら光りだす。
したがって何かが光を遮ったとしてもその遮った物体は宇宙の永遠の時間の中で温められ光を放つようになる。
この問題は実に多くの人々が議論を尽くしてきた。
宇宙が永遠で無限に大きい存在だとすると必ずそうなるのだ。
だから宇宙は永遠の存在ではないかあるいは無限に大きくないかのどちらかだ。
さてビッグバンについて話そう。
宇宙がビッグバンで始まった事については3つの科学的な証拠がある。
まずは…「赤方偏移」からそれが分かるのだ。
2つ目の証拠は…それはこの教室の中にも残っている。
ラジオがあればザーッというノイズが聞こえるがその電波の一部が「ビッグバンの残り火」なのだ。
この教室でもラジオがあればビッグバンの証拠を捉える事ができる。
「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれるものだ。
そして3つ目は…宇宙の75%は水素で25%がヘリウムだという事実だ。
まずは赤方偏移の話をしよう。
アインシュタインは1916年独自の宇宙論を発表したが当時は宇宙は永遠不変だと信じていた。
天文学者は皆宇宙は静的なものだと考えていたのだ。
アインシュタイン自身も宇宙に始まりがあったとは考えていなかった。
それだけではない。
1916年当時は我々が暮らす銀河系だけが宇宙に浮かんでいると考えられていた。
宇宙とは我々の銀河系の事でありその他には何もないと信じられていたのだ。
その後エドウィン・ハッブルが登場する。
この偉大な天文学者は最新の天文台を使って2つの大発見をした。
1つ目は宇宙には我々が暮らす銀河系以外にもたくさんの他の銀河が存在する事を発見した。
この事実は全世界を揺るがした。
宇宙は10万光年程度の大きさではなく何十億光年もの広がりがある事が明らかになった。
更にそれらの銀河は我々から遠ざかっている事をハッブルは証明したのだ。
彼が利用したのは「ドップラー効果」だ。
例えば自分に向かってくる物体から放たれる音の波長は圧縮され高い音に聞こえる。
逆に遠ざかってゆく物体の音の波長は伸びるため音は低くなる。
どのように聞こえるか皆さん毎日のように耳にしているはずだ。
(上がって下がる音の口まねで)イーイー。
…というような音だ。
聞いた事がなければ車が通り過ぎる時の音を聞いてみればいい。
これがドップラー効果だ。
物が向かってくる時波長は縮まり遠ざかる時は伸びるのだ。
同じように光でももし黄色い物体が向かってきたら波長は圧縮され青っぽく見える。
黄色い物体が遠ざかっていると波長は伸びるので赤っぽくなる。
ところで数年前面白い新聞記事を読んだ。
ニュージャージーの高校の物理の教師がスピード違反で切符を切られた時裁判官にこう訴えた。
「私の車は黄色の信号に向かって走っていた。
ドップラー効果によって黄色のものに向かって走れば波長は縮まり青く見える。
だから私は違反切符を切られるべきではない。
黄色は青に見えるんだ」と。
裁判官は何と返答すればいいのか分からず「ニュージャージーの法律よりも物理学の法則の方が高等のようだ」と考え刑を免除しようとしたそうだ。
しかし記事によると一人の生徒が「彼は僕の先生ですがそんな事が起こるのは光の速さに近い速さで走った場合だけだと話していました」と言ったそうだ。
記事はそこまでだったのでこの生徒がその後教師にいじわるされたかどうかは分からない。
とにかく宇宙の銀河には赤方偏移があり常に遠ざかっているという驚くべき事実が発見されたのだ。
質問です。
赤方偏移の割合はどの星でも同じなのでしょうか?科学者たちはその赤方偏移の割合を既に調べているんでしょうか?その事は「ハッブルの法則」と呼ばれるもので表されている。
それによると…なぜそうなるのかは宇宙を風船に例えると分かる。
風船に2つの点を描き膨らませるとその2つの点は距離が離れていけばいくほど速いスピードで遠ざかっていく。
宇宙の銀河についても2つの銀河の距離と遠ざかるスピードは比例しているのだ。
これがハッブルの法則だ。
さてビッグバンの2つ目の証拠は宇宙マイクロ波背景放射だ。
ここでこのシティーカレッジが登場する。
ここの卒業生であるアーノ・ペンジアスはベル研究所で職を得てニュージャージーで電波望遠鏡の責任者となった。
星空を観測する最先端のアンテナだった。
しかしその高感度アンテナの設置中に不具合が見つかった。
ノイズが見つかったのだ。
ペンジアスと同僚のウィルソンは初めこのノイズは鳥のフンのせいだと考えた。
確かにニューヨークではどこへ行っても鳥のフンだらけだ。
銅像の上セントラルパークあらゆる場所に落ちている。
だから鳥のフンのせいにちがいない。
彼らはアンテナについたフンを拭き取った。
そして再び観測を始めたらノイズが以前よりも更に大きくなっていた。
彼らには何が起きているのか分からなかった。
だがペンジアスがプリンストンで講演をした時「観測中にノイズを捉えた」と話したところロバート・ディッケという科学者が「そのノイズは温度でいうと何℃でした?」と尋ねた。
「大体3℃だった」と答えるとディッケは「それは鳥のフンかもしくはビッグバンの証拠だ」と言ったそうだ。
結局ビッグバンの証拠である事が判明し宇宙が誕生した時の残り火を捉えた事が分かったのだ。
今日では人工衛星がこのノイズを調べていて数多くのデータが集まっている。
宇宙背景放射探査衛星のCOBEとWMAPで観測しているのだ。
これらの衛星がビッグバンの残り火である宇宙マイクロ波背景放射を観測している。
望遠鏡で夜空をのぞくと暗闇が見えるが実際にはそこには暗闇ではなくマイクロ波という電波の模様があるのだ。
マイクロ波を捉える目を持っていれば夜空はどのように見えるか。
こう見える。
これが宇宙を誕生させた大爆発ビッグバンの残り火だ。
ビッグバンを信じない人もいるがそれはそれで結構だ。
でも残り火が捉えられている。
宇宙マイクロ波背景放射だ。
それがここにまだら模様として見える。
こちらはWMAPが捉えた宇宙マイクロ波背景放射の更に詳細な姿だ。
実はこれはビッグバンから30万年ほど後の宇宙の姿なのだ。
いわば幼い頃の写真だ。
ここに模様のように見えるムラがその後銀河団の種になったと私たちは考えている。
これがビッグバンの2つ目の証拠だ。
1つ目の証拠は「赤方偏移」で全ての銀河は我々から遠ざかっているという事。
2つ目の証拠が「宇宙マイクロ波背景放射」だ。
第3の証拠は「宇宙の元素の割合」だ。
宇宙を構成する物質の割合とも言える。
宇宙の物質は大体75%が水素で25%がヘリウムだ。
太陽や他の恒星も同じだ。
75%の水素と25%のヘリウムで作られている。
これはビッグバンの理論による計算とぴったり合うのだ。
ビッグバンが水素の一部をヘリウムに変えた。
こうして宇宙の元素の割合が決まったのだ。
さて宇宙について語る時物理学が直面する大きな問題がある。
それはアインシュタインの「相対性理論」がビッグバンが起きた理由を説明できない事だ。
だからよりしっかりとした枠組みが必要となる。
その最も有力な候補が超弦理論だ。
そしてなんと超弦理論はビッグバンが1回ではなく何度も何度もあった事を示唆するのだ。
最新の理論はこんな事を予言する。
宇宙は1つではなく並行宇宙と呼ばれるいくつもの宇宙が超空間の中に泡のように浮かんでいるというのだ。
その超空間は11次元だ。
いくつもの宇宙が浮いているので他の並行宇宙とぶつかる事がある。
ぶつかるとそこからまた小さな宇宙が誕生する。
こうした宇宙の誕生が繰り返されているというのだ。
そうなると次の疑問は他の宇宙はどうなっているのかという事だ。
実は宇宙が誕生する度に…我々になじみのある物理法則は他の並行宇宙では通用しない可能性がある。
だが宇宙それぞれに異なる物理法則があったとしても超弦理論はその全ての宇宙で通用する。
超弦理論は並行宇宙の存在を予言するのだ。
「そんな話まるでSFじゃないか」と思うかもしれないが我々は物理学者だ。
理論の予言がどれほど奇妙なものであってもそれを実証したいと考える人種なのだ。
実際に我々は並行宇宙の存在の証拠を探そうとしている。
その1つが宇宙重力波検出器「LISA」だ。
NASAが近い将来打ち上げようとしている。
人類はこれまで主にガリレオなどによって導入された光学望遠鏡を使ってきた。
そして次に発明されたのが電波望遠鏡だ。
それが我々を新しい発見へと導いた。
そして3つ目が重力波を観測する望遠鏡LISAだ。
ブラックホールなどから発生する重力波を捉える事ができる。
これがLISAだ。
500万km離れた3つの宇宙船をレーザー光でつなげたものだ。
重力に何らかの揺らぎがあればこの三角形が僅かにひずむ。
そのひずみをレーザー光で検出するのだ。
宇宙が生まれた瞬間のビッグバンからの重力波をキャッチできると考えられている。
それは生まれたての宇宙から発せられた情報だ。
生まれたばかりの宇宙だ。
その生まれたばかりの宇宙は親である並行宇宙とつながるいわばへその緒のようなものを持っていると考えられる。
へその緒のようなものだ。
これは我々の想像力をかき立てる。
我々の宇宙の誕生の瞬間の様子が分かるかもしれないからだ。
並行宇宙が存在する証拠を見つける方法は他にはないだろうか?宇宙は何から出来ているのかという最初の問いに戻ろう。
講義の初めに宇宙は原子で出来ていると言ったね。
あれはうそだ。
すまない。
あらゆる高校の教科書も間違っている。
宇宙は原子で出来ているのではない。
では何で出来ているのだろうか?これは最新の研究から導かれた宇宙の組成だ。
宇宙のおよそ73%は「暗黒エネルギー」というもので出来ている。
真空が持つエネルギーだ。
宇宙の何もない真空の世界にもエネルギーは存在しそのエネルギーが銀河同士を遠ざけている。
その事で宇宙は今も膨張し続けているのだ。
そして宇宙の23%は「暗黒物質」というもので出来ている。
暗黒物質は手に持ったとしても見る事はできない。
普通の物質とは相互作用しないため手のひらから床へとすり抜け更に地球などないかのように全てをすり抜け中国まで行ってしまう。
そして中国で向きを変えてニューヨークの方へと戻ってくる。
地球の存在などないかのように運動する。
暗黒物質は目に見えないが重さがある。
重さがあるから地球の重力によって地球の裏側まで行きまた戻ってくる。
このように暗黒物質はとても不思議な存在だ。
さて宇宙の残り4%が水素とヘリウムだ。
では我々はこの図のどこにいるのだろう?驚く事に我々のような重たい原子で出来たものは宇宙全体の0.01%しか占めていない。
私たちはマイナーな存在なのだ。
宇宙のほとんどのものは目に見えないもので作られている。
我々を作っている普通の物質が占める割合は僅か0.01%なのだ。
さて暗黒物質とは何か。
暗黒物質の正体が何か分かればノーベル賞を受賞できるだろう。
暗黒物質と暗黒エネルギーの正体はいまだに解明されていないのだ。
でも我々はなぜ暗黒物質が存在すると分かっているのだろうか?実は暗黒物質がなければ我々の銀河系は一つにまとまる事ができないのだ。
暗黒物質が銀河系を包み込んでいる。
もしそれがなければ銀河系はバラバラになってしまう。
暗黒物質の重力が銀河系を一つにまとめているのだ。
暗黒物質はSFではない。
暗黒物質はその重力で光を屈折させるため暗黒物質がどこにあるのかを観測する事ができる。
ちょうど光が屈折するからそこにガラスがあると分かるのと同じだ。
目に見えないガラスの存在を私たちはなぜ気付くのか?ガラスを通り抜ける光が曲がるからだ。
同じように星の光の屈折を調べれば暗黒物質がどのくらいあるのかを計算できどこにあるかも分かるのだ。
だが暗黒物質の正体はまだ解明されていない。
さてその暗黒物質の存在を提唱した人物はヴェラ・ルービンという女性だ。
いずれ彼女はノーベル賞を受賞するかもしれないが1960年代は笑い者にされていた。
女性の大学院生の発言はほとんど無視されていたからだ。
当時の女性科学者についての逸話を紹介しよう。
1960年代天文学を学ぶある女性の大学院生がいた。
彼女は望遠鏡である星が点滅しているという証拠をつかんだ。
普通の星は点滅しない。
大気の乱れにより瞬く事はあるが点滅はしない。
なのに点滅している星を発見した。
寒い夜に彼女はその「パルサー」と名付けられた星の性質を調べ全て記録したのだ。
ところがその時ある意味人生最大の間違いを犯す。
教授に相談したのだ。
論文を書く時最初に記されるのは誰の名前だろう?教授の名前だ。
ではその論文について講演するのは?やはり教授だ。
ではパルサーの発見でノーベル賞を受賞したのは?その教授だった。
この事の教訓は何か?大きな発見をしたらまず私に教えに来てほしい。
私は寛大なので電車代ぐらいあげる事にしよう。
ともあれ暗黒物質は通常の物質の何倍も存在する。
その正体はまだ分かっていないが今我々は大型ハドロン衝突型加速器でそれを発見しようとしている。
数年前ヒッグス粒子を発見した装置で暗黒物質を発見しようとしているのだ。
暗黒物質の最も有力な候補は実は超弦理論によって予言されている重たい素粒子だ。
超弦理論によると我々を作っている普通の素粒子は一番低い周波数で振動する弦だと考えられているが暗黒物質は高い周波数で振動する弦だとされている。
もし加速器で暗黒物質が発見されたら超弦理論は一気に発展するだろう。
さて暗黒物質は目には見えないが重力がある。
それが並行宇宙の存在を実証する鍵になるかもしれない。
私たちの隣の並行宇宙にも生物がいるとしよう。
しかし光は並行宇宙の間を飛び移れないから私たちはその生物を見る事はできない。
だが重力は11次元の空間を行き来できる。
つまり私たちの隣の並行宇宙の物質が私たちの宇宙にも重力を及ぼす事になる。
そこで並行宇宙の中の物質が発する重力が見えない暗黒物質の正体だとする説も考えられているのだ。
質問かな?太陽系の中では暗黒物質による重力が働いているようには見えません。
もし宇宙に普通の物質が4%しかないのならなぜ太陽系全体が暗黒物質であふれていたり暗黒物質の固まりがあったりしないのでしょうか?面白い質問だ。
まず第1に暗黒物質はほとんどの場合銀河系の外で見つかっている。
地球上でも見つけようとしているが実は地球周辺では暗黒物質は普通の物質に比べほんの少ししかないのだ。
ほとんどの暗黒物質は銀河系の外の宇宙空間にある。
さて君の質問は暗黒物質が太陽系の中にあればその証拠がつかめるのではないかというものだった。
だが太陽系の中ではニュートンの重力の法則がほぼ寸分の狂いもなくうまくいっている。
それを使って探査機を正確に宇宙へ送り土星の輪を通り抜けさせる事だってできる。
もし太陽系にかなりの量の暗黒物質があるのならニュートンの法則からのズレが見つかっているはずだがそれは発見されていない。
したがって暗黒物質のほとんどは銀河系の外側にあり地球周辺にはほとんどないと考えられているのだ。
つまり太陽系は暗黒物質で満たされているわけではない。
もし満たされているなら探査機はコントロールを失ってしまうだろう。
探査機の打ち上げは暗黒物質がほとんどないからうまくいっているのだ。
さて超弦理論は暗黒物質を説明できる唯一の理論だがそれだけではない。
超弦理論は異次元の空間の存在を予言する。
その空間は11次元だ。
更にワームホールやタイムトラベルの可能性を予言しているのだ。
一つずつ見ていこう。
ここでブラックホールについて考えてみよう。
アインシュタインの理論など重力の理論はブラックホールの存在を予言する。
ブラックホールは光すら逃げ出す事ができないほどの巨大な重力を持つ質量の固まりだ。
私たちの銀河系の中心には太陽の数百万倍もの大きさのブラックホールがあると考えられている。
あまりにも重力が強いため光も逃げられない。
全てのものあらゆるものが吸い込まれ出てくる事はない。
さて今夜そのブラックホールを見たければ射手座の方角を見るといい。
それが我々の銀河の中心にあるブラックホールの方角だ。
ブラックホールの存在を確かめるにはどうしたらよいか。
一般的にブラックホールの特徴の1つは「ジェット」と呼ばれるものだ。
ブラックホールの中心部からはX線が螺旋状に回転しながら放射されていると考えられている。
物質がブラックホールに吸い込まれる時急激に回転して渦を巻き強力な電磁波を放射するのだ。
これはSFではない。
実際にX線のジェットが銀河系の中心から噴き出しているのを観測する事ができる。
だから我々の銀河系の中心にもブラックホールがあると考えられている。
私たちは銀河系を外から眺める事はできないがここにNASAが描いた銀河系の姿がある。
私たちの銀河系を真上から見た様子が非常に正確に描かれているのだが「棒渦巻銀河」と呼ばれる形をしている。
この中心に太陽の数百万倍の重さのブラックホールがあるのだ。
ではブラックホールの内部には何があるのだろうか?ブラックホールの中心には特異点があるとほとんどの教科書に書かれている。
しかしこの表現はイケてない。
「特異点」というのは単に分からないと言っているようなものだからだ。
分からなくてお手上げだからそんな変な名前を付けたのだ。
だが相対性理論と量子論を統一できたらいろいろな事が分かるはずだ。
そうした理論によると例えば高速で回転しているブラックホールの場合それは一点に潰れるのではなくリング状の形に潰れる。
そのリングに手を入れたとするとあなたは吸い込まれ並行宇宙へと移動する事ができるのだ。
まだ実証されているわけではないが…このワームホールの中を通れば光よりも速い速度で移動する事ができる。
それは時空の中のいわば近道を通っているようなものだ。
空間に近道があるなら時間にも同じく近道があるはずだ。
今超弦理論がタイムトラベルは可能であると予言しているためタイムパラドックスと呼ばれるものが真剣に議論されている。
もしタイムマシンに乗ってあなたが生まれる以前の時代に行きあなたの親を殺してしまったら果たしてあなたは生まれる事はできるのか。
あるいはあなたが生まれる前にあなたの母親に出会ってあなたと恋に落ちてしまったら果たしてあなたは生まれる事ができるのか。
タイムトラベルについて語る時こうした事が常にパラドックスとなる。
このパラドックスを物理学はどうやって解決するのか。
相対性理論に量子論を融合させればいいのだ。
それによると時間を遡るとあなたのタイムラインは2つに分裂する。
2つの時間軸が出来るのだ。
例えば過去に戻ってリンカーンの暗殺を防いだとするとそのリンカーンはあなたの知っているリンカーンではなくなるのだ。
あなたのリンカーンは暗殺されたはずだ。
つまり時間を遡って自分の両親と関わったり歴史を乱したりしたら時間軸は2つに分裂すると考えられているのだ。
次はタイムマシンを作る方法についてだ。
映画のようにデロリアンを手に入れて走らせればいいわけではない。
2つのものが必要だ。
どちらもすぐには手に入らない。
1つは「エネルギー」。
ブラックホールに匹敵するほどの膨大な量のエネルギーだ。
そしてマシンを安定させるため「マイナスのエネルギー」が必要だ。
この2つでタイムマシンは作れるはずだと考えられている。
では誰がこのような高度な科学を発展させられるのだろうか?現在の我々には無理だ。
時空のゲートウエーを開くのに必要なブラックホール並みのエネルギーも我々は持っていない。
しかし宇宙には高度に発達した文明が既に存在しているかもしれない。
我々物理学者はこれらの文明を利用するエネルギー源によって3つに分類した。
宇宙の文明は「タイプ1」「タイプ2」「タイプ3」に分けられる。
気候も火山や地震も制御できる。
彼らは少なくとも我々の100年先を進んでいる。
あるいは1,000年先を進んでいるかもしれない。
彼らは近くの惑星を植民地にしている。
これがタイプ1の文明だ。
「スター・トレック」に登場するような文明がこのタイプ2だ。
この文明は我々の知っている科学では滅ぼす事はできない。
氷河期の到来をコントロールし隕石の軌道もそらす事ができる。
まさにカーク船長やミスター・スポックが登場する「スター・トレック」のような文明がタイプ2だ。
宇宙空間を旅する事ができる強大な力を持っている。
ではタイプ1タイプ2タイプ3のような惑星はこの宇宙に存在するのだろうか?これは「ケプラー」という探査機だ。
多くの恒星を観測し1,000以上の太陽系外の惑星を発見した。
地球のような惑星がたくさん見つかったのだ。
地球に似た惑星は恒星から程よい距離の軌道を回っている。
恒星に近すぎれば水は沸騰し遠すぎれば凍ってしまう。
地球に似た惑星は一体どのくらい存在するのか?観測結果によると銀河系の恒星の半分が惑星を持ち20個に1個が地球のような惑星を持つ。
つまり我々の銀河系には10億ほどの地球に似た惑星がありうるのだ。
ところで我々の文明はどのタイプだろう?気候を変えられるタイプ1?恒星を支配できるタイプ2?宇宙を旅できるタイプ3?我々は「タイプ0」だ。
化石燃料をただ浪費している。
しかしタイプ1のレベルへと進化する兆候が見られる。
恐らく100年以内にたどりつけるだろう。
例えば我々の使う言語を見るとタイプ1の兆候が見られる。
インターネットでは英語が主たる言語でその次は北京語だ。
惑星全体である程度共通の言語が使われ始めているという事だ。
EUやNAFTAはタイプ1の経済だ。
オリンピックやサッカーはどうだろう?タイプ1のスポーツだ。
若者の文化も同様だ。
地球全体で共通の文化の始まりが見える。
世界中のあらゆるところでロックンロールやラップミュージックに傾倒する若者を見る事ができるからだ。
さて超弦理論の帰結を利用できる文明はどのタイプの文明なのだろうか?残念ながら今の我々にはタイムマシンは作れない。
現在の我々には超弦理論の間接的な証拠は見つけられるかもしれないが直接的な証拠はタイプ1かタイプ2の文明でしか見つける事ができないだろう。
ところでなぜエイリアンは地球を訪れないのだろうか?探査機ケプラーが捉えたように銀河系に数十億の地球に似た惑星があるのならタイプ1やタイプ2タイプ3の文明が存在する可能性があるはずだ。
なぜ彼らは来ないのだろう?そこであなたが田舎道で蟻塚を見つけたと考えてくれ。
その時あなたは蟻に向かって「ガラス玉やビーズ原子力をあげるから女王蟻に会わせてよ」なんて言うだろうか?もしエイリアンがタイプ1やタイプ2であれば高度な文明を持っているので我々から得られるものなど何もないのだ。
エイリアンが存在しているとしても我々には興味がないのだ。
ではエイリアンはどのような見た目をしているだろうか?人間の知能を発達させた要素は3つある。
1つは親指が他の指と向かい合わせになった事だ。
物をつかむ能力を得たのだ。
600万年ほど前のアフリカでヒトの進化が始まった。
これはちょうど600万年前にアフリカにあった木の枝のサイズと言われている。
人間の知能を進化させた2つ目は立体視だ。
なぜ顔の横に目がある動物と顔の前に目がある動物がいるのだろうか?なぜ目が顔の横についている動物が存在するのか?襲ってくる捕食動物から逃げるためです。
そのとおりだ。
ウサギは敵を避けるために360度の視野が必要になる。
逆に捕食動物は顔の前に目がついていて立体視ができる。
ではキツネとウサギならどちらの知能が発達しているだろうか。
キツネだ。
キツネは忍び寄ったり待ち伏せしたりずるいから賢いのはキツネだ。
ウサギはただ走ればいい。
つまり知能が高い動物は立体視ができるのだ。
3つ目は言語だ。
世代を超えて知識を伝達する能力だ。
さて親指を他の指と向かい合わせにでき立体視ができて言葉を話す動物は地球上にどれくらいいる?我々しかいない。
人間はこの能力から知性を得たのだ。
よって地球外生命体にも同じような3つの特徴がありそうだ。
お店で売っているエイリアンの人形のような姿でなくてもいいのだ。
では結論をまとめよう。
「万物の理論」の候補である超弦理論は驚くべき帰結をもたらす。
タイムトラベルワームホール並行宇宙高次元などのあらゆる疑問に答える事ができるようになるのだ。
超弦理論にはそれが可能だ。
それでは最後に質問はあるかな?宇宙の未来について物理学者はどのくらい分かっているんでしょうか?宇宙マイクロ波背景放射など宇宙の残した遺物があるから過去の事は結構分かっている。
過去10億年くらいの情報は入手できるので過去の事は分かっているのだが未来についてはあまり分からない。
現在分かっている事は宇宙の膨張が加速しているという事だ。
今後数十億年は加速し続けるだろうがそれ以降については明らかではない。
宇宙の未来については不明な点も多い。
物理学によると地球の未来には死が待っている。
太陽が膨張し赤色巨星になる50億年後地球は最後の日を迎える。
山は溶け海は煮立ち空は燃え尽きる。
太陽が空を覆い尽くす。
地球は太陽から生まれ太陽へと戻るのだ。
「聖書」には「塵から塵へ灰から灰へ」と書かれているが物理学者たちの見解では我々は星くずから生まれ星くずへと戻るのだ。
では太陽の未来はどのようになるのか。
太陽は核燃料を使い尽くし「わい星」と呼ばれる星になる。
いわば核廃棄物の固まりになるのだ。
では最後に宇宙の未来はどうなるのか。
宇宙は永遠に膨張し続け数兆年後には冷えきっている可能性がある。
私の考えでは数兆年後宇宙が絶対零度に向かって冷えきってしまうまでに私たちはこの宇宙を離れるべきだ。
そのころまでにはタイプ3に進化し時空のゲートウエーを開ける事ができるだろう。
時空を超える救命ボートを建造し死にかけた宇宙から逃げるのだ。
これで第2回の講義を終わろう。
次回は未来社会について話す。
ロボットはどう進化するのか?我々の仕事はどうなっているのか?老化を止める事はできるのか?そして第4回では心の未来についての講義をしよう。
「テレパシー」や念じる事で物を動かす「テレキネシス」などを実現する事は可能か?将来念じるだけで電気をつけたりネットサーフィンをしたり手紙を書いたり車を運転したりできるようになる。
今とは大きく変貌していく未来の姿について話をする。
どうもありがとう。
ではまた次回。
(拍手)2015/04/10(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
ニューヨーク白熱教室 最先端物理学が語る驚異の未来(2)万物の理論の予言[二][字]

“万物の理論”の最有力候補である超弦理論はSF以上の極めて不思議な世界を予言する。「多元宇宙」「時間旅行」「恒星間旅行」…。超弦理論が指し示す驚くべき世界!

詳細情報
番組内容
“万物の理論”の最有力候補である超弦理論はSF以上の極めて不思議な世界を予言する。まずは「多元宇宙」。ビッグバンから生まれた私たちの宇宙は実は唯一ではなく、無数に多くの“別の宇宙”が存在しうるという。また、未来や過去への時間旅行も可能だと考えられる。そしてブラックホールの中に入り込めば、別の宇宙への一足飛びの旅行も可能だという。超弦理論が指し示す、驚くべき世界を堪能する。
出演者
【出演】ニューヨーク市立大学教授…ミチオ・カク

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:8271(0x204F)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: