(鶴丸あや)ああ…いい映画だったわね。
(鶴丸りん)ホントおもしろかった。
見てよかった。
インドってさきっと本物もこうなんだよね。
人がワーッといてそれでものすごいごちゃまぜのパワーにあふれててさすっごい熱気!
(りん)うん。
爆発的な人口だっていうし経済発展もすごくしてるっていうし。
ねえ実際にこの目で見てみたいよね。
行ってみたいなぁインド。
無理よ仕事があるじゃない。
そう仕事があるのよ。
でもさインドってさものすごいIT大国でこれからの世界をリードするっていうじゃない?あっりん!あんた思い切って行ってみたら?はっ?留学してみたら?インドへ。
またそんな…。
若い今の時期をよ時代の流れのど真ん中で過ごすってこれものすごく有意義なことだとお母さん思うの。
でも…。
お母さんね学生時代留学したかったのよ。
でもいろいろあってできなかったの。
今後悔してるわ。
だからりんあんたには挑戦してもらいたいのよ!ねっ?今行かないと絶対後悔するから。
これ母の勘!どう?留学!
(桜井麗子)インドが日本を超えるの?そうなのよ。
これからはねそういう時代が来るような気がするの。
もうアメリカでもヨーロッパでもないものがあそこにはきっとあるのよ!
(漆原さやか)インド人ってさ何語しゃべるの?インド語?
(吉川香織)えっ?インド語なんかあるの?ヒンディー語が公用語なんだけど英語も通じるし言葉がいろいろあったって一番コミュニケーションで大事なのはハートでしょ?
(柿野たまこ)一番大切なのは食です!インドといったら?
(一同)カレー!はい。
カレーには新陳代謝を促すスパイスがたくさん入っているのでダイエットにも効果的。
うわ〜りん最近ね体重気にし始めてたのよ。
まあ私もだけど。
ははは…。
絶対いいわ!インドいいわ!
(成増清剛)何でそうなるかな?えっ?だって若い時にしかできないことってあるじゃない!年頃の娘を持つ母親の意見とはとっても思えない。
第一な危ないだろ!治安の悪い場所だって…。
そういう場所は避ける!でね財布は腹巻きに入れるのよ!腹巻きって…いつの時代のこと言ってんだよ!これじゃねもうりんちゃんが苦労するんだよ。
お腹をあっためるっていうのは…。
あありんちゃんがかわいそう。
(浦沢豊秋)失礼ですがあの…刑事さんですか?何だ?あんたは?僕浦沢豊秋といいます。
浦島太郎の浦にさんずいの沢豊かな秋と書きまして豊秋といいます。
実は僕昨夜人を殺しました。
えっ?はい?はいはい入って。
知り合いの飯島武という男とバーで飲んでてちょっともめましてね。
どういう理由で?彼野球のファンなんですよ。
でも野球って投げたり打ったり滑ったり…品がないでしょ?で僕はポロが好きだと…。
ポロ?あっポロ知りません?馬に乗ってマレットというスティックでボールを運んでゴールに入れる競技です。
僕イギリスの留学時代にこれにはまりましてね…。
講釈は結構です。
でどうしたんですか?しつこい男でね。
バーを出てからも僕がキザだって執拗に追いかけてきてね…。
それでついカッとなって…。
(浦沢)酒癖が悪いぞお前!
(飯島武)この野郎!
(浦沢)お前はジェントルマンじゃないよ!ここは日本だ!酒癖を直せお前が!
(飯島)ああー!気づいたら死んでました。
(浦沢)この先です。
そこで僕が飯島を殺したんです。
あれ?えっ?どうかしました?いや死体がないんです。
確かに僕はここで飯島を殺したのに。
あれ?おかしいな…。
どこにもないじゃない死体なんて!いやそんなことないんですよ!ここでだって僕殺したんだもん。
あるはずなんですよ!おい!何だこれ?あっ!それ飯島の靴ですよ!やっぱり死体はここにあったんですよ!だって僕がここで殺したんだもん。
(浦沢)ねっ?僕嘘言ってないでしょ?
(本木恵介)死体なき殺人ですか?そう。
ちょっとしたミステリーだと思わない?気になりますね。
ねえ!
(太田勇一)そんなものはただのいたずらですよ!そのポロがどうしたっていう鼻持ちならない野郎がでたらめを言って警察をからかったんですよ。
ねえねえでもね殺されたっていうその男あっ画家らしいんだけど…。
成増さんによると一昨日から自宅に帰ってないんですって。
ちょっと引っかかるわよね…。
検事!そんないんちきミステリーに気を取られている場合じゃございません。
ご覧ください!本日片付けなければならない案件がご覧のとおりです。
もう1個食べようか。
これ業界用語で山積みって…。
どれがいい?タマネギこら!
(内線電話)はい鶴丸検事の執務室です。
あっ副部長。
ええ。
ただいまおやつを召し上がってらっしゃいます。
(高原純之介)浦沢さんから連絡があってねぜひ君と食事をしたいと…。
浦沢って昨日のあの男…。
副部長彼をご存じなんですか?うーん随分前になるなぁ。
上司に滝本検事正という絵画好きがいてねその方のお供でこの浦沢画伯の誕生パーティーに行ったことがあった。
その席でジュニアに紹介されたんだよ。
浦沢画伯って…浦沢友康!?えっ?京都画壇の重鎮で日本画の大家の?彼は浦沢友康の息子なんですか?ああ。
まあ残念ながらジュニアには10年前に亡くなった画伯ほどの才能はまったくなかったけどね。
死体なき殺人の後は食事への招待…。
行きましょうぜひ!ねっ行きましょうね!どこですか?えっ?何ですか?何食べるんですか?どこですか?行きましょうね!
(高原)ほう…今は浦沢友康記念館の管理をされてるんですか。
(浦沢)管理といっても週に一度顔を出すだけであとはまあ趣味のオペラを見たり能を見たりの毎日です。
遺産で食べていけるなんて優雅ですこと。
で私に用って?僕の言ったことを信じていただきたくて来ていただきました。
僕ホントに飯島殺しちゃったんです。
彼は今行方不明です。
確かにあなたが彼に対して何らかの行為を働いた可能性はあります。
身元もはっきりしたあなたがいたずらに警察をからかうわけはないですものね。
しかし…ねえ?死体は出ていない。
生き返って歩き出したとしか思えない。
おいしいですか?僕ここのビーフストロガノフ大好きなんですよ。
ねえ浦沢さん。
私ね今までにたくさんの殺人犯見てきたんですよ。
でねどんな殺人犯もどんな凶悪犯であったとしてもよ人を殺めた後っていうのは心が乱れます。
で居丈高になったり逆におびえて挙動不審になったり。
でもあなた全然違う。
…というと?うん?まったくの平常心。
まったく罪の意識がない。
私ねここに来るまでは半信半疑だったんですよ。
でも今結論出ました。
あなたは人を殺してなんかいない。
これ主婦の勘!鶴丸さんっておもしろい方だ。
主婦の勘か…。
じゃあ僕が殺したかどうか賭けます?ふふ…私こう見えても忙しい体なんですの。
あなたと意味のないゲームをしてる暇はないんです。
それにあの飯島って人あの人きっとどこかからひょっこり姿現すと思いますよ。
うーんおいしかった。
じゃあ。
ええと…。
ああいいよあやちゃん。
いえいえそういうわけには…。
どうも。
それじゃお先に失礼します。
あの人食べるの速いですね。
うん…太るはずだよね。
ははは…。
ああなるほど。
それでだ。
おはようございます。
こっちです。
ああ嫌なんだよこれ。
(池内弘二)成増さん。
ああ?あれ?何変死体だって?
(池内)こっちです。
(池内)職員が見つけたそうです。
死後30時間以上経過してるとか。
死因はまだ不明です。
死因は不明?身元は?飯島武住まいは市内ですね。
飯島?えっ…?ひょっとして…。
夏だけの短期留学っていうのもあるのよ!どうよ?何でもかんでも一人決めしないでよ。
こんなものそろえられたってインドへなんか行かないから。
若い時は一度しかないのよ。
今ジャンプしないでいつするのよ!臆病なのは損!私はお母さんみたいな度胸ないの。
平凡なの!チャンスの神様はね前髪をつかめっていうでしょ?今がそのチャンスなのよ!ぐいぐい押してこられても迷惑!もうやめて!かわいい子には旅をさせろって昔からいうじゃない。
だから…。
(携帯電話)成増さん?はい鶴丸。
何?えっ?遺体が見つかった?ガイシャはあんたが言ったように後頭部を強打したせいで死に至ってる。
けどどうして高架下で殺した死体が2キロも離れた美術館にあったんだよ?うーんどうなんでしょう?僕にもさっぱり。
(ため息)お前どこの何だ?絵描きのボンボンだかよくわからないけどよおとぼけは利かないんだよ?なっ?全部正直に話せ。
だから死体が生き返ってその美術館まで歩いていったとしか思えないな。
生き返っただ?この野郎!警察なめてんのかこの野郎!
(浦沢)君!ジェントルマンじゃないね君。
何がジェントルマンだ!この野郎てめえは!座れよ!
(刑事)やめてくださいよ!わかってるよこの野郎!死体が歩いた?まだそんなこと言ってるの?そうなんだよ。
脅してもななだめてもなそうとしか答えないんだよあれ。
ああまた例のお騒がせポロ野郎の一件ですか?そう。
浦沢画伯ジュニアの件。
浦沢画伯?誰ですかそれ?えっ?知らないの?うわっ!うわー!あの日本画の大家知らないの?無知。
無教養。
恥ずかしい…。
僕にだって一般常識ぐらいありますよ。
俺も知らなかったから。
知らないんじゃないですか!仕事に戻りますよ!ともかくその話は変よ。
頭部を強打した人が数日後に死んだって話は聞いたことあるけどそれだってごくまれなことよ。
もしかしたらあの男に共犯者がいてそいつが遺体を運んだかもしくはあいつ自身が移動させたかだな。
で身柄は?いったん帰した。
物証がそろったら任意で呼んでまた取り調べる。
ねえ2人がバーで口論してたっていうのは本当だったの?うん裏を取った。
飯島は浦沢記念館の特別展を手伝ったことがあってその時に浦沢と知り合った。
で事件のあった夜になじみのバーで言い争ってたと。
(飯島)大体何でもっと粘らないんですか?えっ?後からぐだぐだぐだぐだ言うぐらいだったらもっと行動に移さなきゃダメですよあんた!
(浦沢)そうは言うけどね…。
(飯島)そうは言うけどねってねそういう弱気だからあんたダメなんだよ!ちょっと待って。
2人がもめたのはポロか野球かでもめたって言ってたじゃない。
行動うんぬんっていうのは浦沢の供述と食い違うでしょ?まあそのへんもよこれから詰めるから。
なっ?ちょっと待って!浦沢は罪の意識をまったく感じてないのよ。
私絶対彼は犯人じゃないと思う。
検事副部長がお呼びです。
はっ?副部長がお呼びです。
「画壇の重鎮あの浦沢友康の息子が語る衝撃的真実!?」明日発売の週刊誌に掲載される記事だそうだ。
出版社の人間がファクスで送ってきた。
あやちゃん君の名前も出てるよ。
えっ?「地検の鶴丸検事は僕の自白をまったく信用してくれなかった」…ってこれどういうことですか?真意はわからんが彼が自らこのネタを週刊誌に持ち込んだのは確かなようだ。
ああ…私を名指しで書いてある。
これじゃまるで私が殺人犯を放置してるみたいに受け取られるわ。
ああ…。
うちの上もこれを読んだら君の対応に不備があったのではと聞いてくるだろう。
上がどう思おうと構いません。
でも飯島という男を浦沢が殺したという確実な根拠はまだないんですよ。
うーん。
おかしいわ。
何のためにこんな告白を…。
早く逮捕してほしいという願望の表れとも取れるが。
もしかしたら…。
うん?あの道楽息子自分が殺したかどうか賭けましょうって私に言った。
これは警察並びに地検に対する挑戦状のつもりかも。
地検に対する挑戦状?ええ。
私達に動いた死体の謎を解けるものなら解いてみろと言ってる。
美女と推理ゲームか。
ちょっとワクワクしますね。
そんな見え見えのお世辞に乗せられるほど若くはありませんの。
本心ですよ。
ついでながら告白の動機の半分は自己顕示欲かな。
自己顕示欲?父のことご存じですよね?ええ。
作品を展覧会で何度か。
画壇の大家。
京都文化人の代表。
傑出した才能。
人はいろんな言い方をします。
豪放磊落でみんなが慕ってた。
(ため息)でも僕はダメでした。
大嫌いだった。
うんざりしてた。
僕が小学生だった頃父の取材旅行で小笠原に行ったことがありました。
島の奥の電気もガスも通ってない掘っ立て小屋に泊まり込んで毎日写生ですよ。
いい加減うんざりしていたところにいきなりこうです。
お前も男なら1人で自然の醍醐味を味わってみろって。
7歳の僕を小屋に残して自分はとっとと京都に帰ってしまったんですよ?7歳の子供を置き去りに?そりゃあ大胆ですね。
私もとてもそこまでは…。
そんな父をめぐるエピソードはいくらでもある。
非凡な人間でした。
でも僕は平凡そのもの。
絵を描く才能はまったくないし一時推理小説を書いたりもしましたがまるでダメでしたね。
僕にとって父は巨大な漬物石だったんです。
僕の頭の上にドンと居座って僕にプレッシャーを与え続けた。
結果父が死んだ今でも僕はしおれた菜っ葉だ。
だからです。
刑務所に入る前に無能な浦沢ジュニアの開き直りで週刊誌に告白したんです。
「人を殺した」と。
人生一度はスポットライトを浴びてみたかった。
それが父を貶める結果になるとしてもです。
ただいま…。
「しばらくの間友子の家に泊まります」…。
もうホントに…。
(ため息)
(携帯電話の呼び出し音)あっりん…。
(アナウンス)「ただいま留守にしております」
(ため息)りん…。
友子ちゃん…。
(携帯電話の呼び出し音)あっ友子ちゃん?りんそこにいるでしょ?まったくどういうことなの?携帯かけても出ないし。
急に友子ちゃんの家に泊まるなんて。
(成増友子)何だか私にもよくわからないんです。
インドなんてうんざりって言った後ずっと黙ってるんです。
「うんざりって何なの?」「友子ちゃんいいからりんにかわって!」りん。
出ないって言ってます。
「何やってるの?」「私に文句があるなら直接言えばいいでしょ!」「勝手に外泊なんて!」ぐいぐい押されるのもう嫌なの!
(電話を切る音)何なのよ…。
今頃反抗期?僕にとって父は巨大な漬物石だったんです。
もしかして私も…?
(ノック)
(池内)ごめんください。
はい。
あら池内さん!
(池内)夜分にどうも…。
さあどうぞどうぞ…。
助かります。
一日中歩き回ってたのでのどがカラカラで…。
ああそう。
どうぞどうぞ…。
どうもいただきます。
でどう?何かつかんだ?ええ。
例の…失礼します。
浦沢記念館の件なんですが何か大変なことになってるようで。
ええっ?入場者数の激減で今年中にも閉館を余儀なくされてるんですって。
あそこに展示されてる浦沢画伯の代表作っていわれてる襖絵も行き場がなくなりそうなんですって。
襖絵ってこれでしょ?これの表紙になってる。
ああそうこれこれ…。
ああそうです。
(ため息)この不景気ですし維持費もかかるんでしょうね。
それに若い人は誰も知らないんじゃないですか?この浦沢友康を。
画壇の重鎮といわれた人がもう過去の人に…。
その浦沢ジュニアと殺された飯島は一緒にあちこちの美術館にその襖絵を引き取ってくれないかって頼み込んでたそうなんですよ。
ジュニアと飯島さんが?うん。
あっそういえばバーでの会話もそのことについてだったわね。
ということは飯島殺しの動機はポロうんぬんじゃない。
とすれば…じゃあ動機は何?
(ため息)とりあえずのご報告ということで。
検事のお耳に入れておかないと後で怖いって成増さんが…。
人をモンスター扱いして…。
(ため息)私ってうざい?ねえ。
押し付けがましい?えっ…。
邪魔な漬物石?ねえ私といるとうんざりする?えっ…いや確かに極めて個性的な方であることは確かですけれども何で急にまたそんなことを…?はあ?事件の究明が先よ!うん!
(ため息)どうぞ。
サンキュー。
あっあの…あなたがインタビューしたんですよね?「僕が殺人犯です」って言ってきた浦沢豊秋。
(高野)ええ。
驚きましたね。
あのその時の様子を話してもらえませんかね?そうですねぇ…。
内容が内容だけにこちらも身構えましたが本人は淡々としてましたよ。
あの告白してきた理由は何か言ってませんでした?いえ何も言いませんでしたが…交換条件を出してきました。
交換条件?ええ。
これを僕に差し出して…。
『ある画聖の半生』?
(携帯電話)あっ…。
ちょっとすいません。
(携帯電話)
(携帯電話)はい鶴丸。
えっ?浦沢豊秋を逮捕した?どういうこと?私は納得できないわ。
だからねっ?現場を捜索したところ飯島と浦沢のゲソ痕ほらこのとおり出てるんだよなっ?殺害現場は高架下その後死体を美術館に運んだ。
全て明白なんだよ。
でも浦沢が飯島さんを殺す動機が不明!いい?この2人はね一緒に襖絵の引き取り先を探してたのよ。
争う理由がないじゃない!そりゃあもう酒が入ってりゃあぶつかり合うことだってあるだろ?それにしても変よ!万が一よ。
万が一浦沢が犯人だったとしてよ。
何で消えた死体なんて仰々しい嘘の供述をしたの?何でこれ見よがしに週刊誌に犯行告白なんかするの?ねっ?これ全部腑に落ちないでしょ。
わざとらしくて。
絶対おかしいわ。
これ主婦の勘!わかったわかった。
けどなこいつはクロだぞ。
…というかそんなこと言ってる前によ親ならりんちゃんの心配したらどうなんだよ?えっ?家出してるんだぞ。
家出なんかしてません。
ちょっとお宅に遊びに行ってるだけ…。
ごまかすのはよくないなぁ。
親のわがままにまいっている娘が家を飛び出したんだ。
なあ鶴丸あやはちゃんと話し合ってりんちゃんに謝るべきだぞ。
謝る?私は娘のためを思ってしてるんです!私間違ってません!それがいけねえんだよなぁ。
先週の鶴丸あやはよかったよなぁ。
えっ?「親子なら話し合えばわかる」ってあの時の心は美しかった。
これ坊主の勘だよ。
(ドアの開閉音)
(救急車のサイレン)
(物音)りん?
(猫の鳴き声)
(ため息)3連泊はまずいよ。
うん…。
言いたいことがあるんなら自分の口ではっきり言ったほうがいい。
うーん…。
(携帯電話の振動音)
(携帯電話の振動音)もしかしておばさん?
(携帯電話の振動音)おばさんはいろいろ言うかもしれないけどそれってりんがかわいいからだよ。
逃げてるみたいなのってよくない。
(携帯電話の振動音)来たよ。
うん…。
お説教するつもりだろうけど私今日は言い返すから。
反撃するセリフいっぱい用意してきたから。
まず絵を見なさい。
絵はいい。
私はお人形さんになりたくないの。
あれやれこれやれで動かされたくないの。
自分の意思だってまだ固まってはないけどちゃんとあるし…とにかくいいなりは嫌!これ浦沢友康って画伯が描いた襖絵なのよ。
いい絵だわ。
見てると自然に素直な気持ちになる。
何?言ってよ。
うん…。
お母さんも素直に言う。
ちょっと感動してる。
りん大人になった…。
小さい頃から引っ込み思案でいつも人の陰に隠れてた子が大きな口たたいてる…。
一人暮らししてもいいのよ。
中途半端に家出するくらいだったら自立しなさい。
いつかは親離れしなきゃ…。
お嫁に行く前にその時期が来たのかもね。
まあこれも成長。
お母さんうれしい。
強がりじゃないわよ。
別にお母さんが嫌いとかそういうんじゃなくて。
親よいしょしなくていい。
りん…。
頑張れ!検事おかわり淹れてきますね。
うんありがとう。
その事件死体が消えたなんて騒いでましたけど結局は単純な傷害致死だったんですね。
まだ断定したわけじゃないわ。
被疑者が自首をしてきた場所に居合わせたり週刊誌のインタビューで名指しで批判されたりで複雑な心境なのはよくわかりますけれども彼が犯人なのは明々白々ですよ。
太田さん。
はい?あなたにそのセクシーコロン似合わない。
ええっ?そんなのつけてるんですか?男の身だしなみだよ!タマネギ!お前何で俺の湯のみをパソコンの右に置くんだよ!これじゃあマウスにぶち当たって大惨事だろうが!いや僕絶対動かしてないですよ!ちゃんと置いてあったまんまにしました。
じゃあ何だよ俺がこうやって動かしたっていうのか?わからないです。
置いてあったまんま?そうか…それなら不自然じゃなくなる。
(太田)あのおっしゃってる意味がよくわからないんですけど…。
だんだんわかってきたわ。
ちょっといってきます!
(太田)いってらっしゃい。
…じゃなくて検事!どこ行かれるんですか?本日の案件はまだこんなに…。
検事!
(ドアの閉まる音)行っちゃいましたね。
ではこちらにも浦沢豊秋さんが襖絵の収蔵を依頼に来てたんですね?
(加藤)ええ。
飯島さんと一緒にいらっしゃいました。
(浦沢)ではどうしても父の襖絵の所蔵は無理だと?
(里見敬一郎)まあ優れた作品だとは思いますが検討した結果うちで引き取るのは見合わそうという結論に達しました。
いやちょっと待ってくださいよ!じゃああなたはあの襖絵が野ざらしになってもいいって言われるんですか?引き取りを拒否された?はい。
そうでしたか。
ありがとうございました。
私はやはり犯人はあなたではないと考えます。
またそれかよ…。
例の主婦の勘ですか?ええ。
その勘を裏付ける証拠がこれです。
あなたはこの高架下で飯島さんを殺害したと供述している。
まあ確かにここには2人が争ったような靴跡があります。
でも1点不審な点があります。
見てください。
赤で示されたあなたの靴跡は左右そろってます。
でも青で示された飯島さんの靴跡はよく見ると右足だけしか残ってないんですよ。
変ですよね。
飯島さんは片足で飛び跳ねながらあなたと争ったんですか?いやそれは…。
実は飯島さんが本当に殺されたのは死体が発見されたこの場所だったんじゃないですか?美術館で殺した?あなたは死体を運んだりなんかしていない。
高架下で殺したように見せかけていただけです。
そうやってあなたは死体なき殺人を演出した。
違いますか?わからないなぁ。
なぜ僕がそんな面倒なことをしなきゃならなかったんです?私達に殺人現場がここだと知られたくなかったからです。
美術館の学芸員から聞きました。
事件当日あなたと飯島さんは美術館を訪れた。
浦沢友康氏の襖絵の所蔵を断られそして里見館長を美術館の裏に呼び出し話をした。
まあその時何が起こったか…。
あなたには飯島さんを殺す必然性はありません。
飯島?飯島!…とすれば飯島さんを殺したのは里見館長と見るのが自然です。
違いますか?
(浦沢)ふふふふ…。
ふふふふ…。
それおかしくないですか?鶴丸さんの推理だと僕は美術館の里見さんをかばって飯島を殺したと言い張ってることになる。
でも彼は襖絵の所蔵を拒否したんですよ。
僕とは利害が反してる。
そんな彼をかばって殺人の罪をかぶるなんてそんなバカな話ありえないですよ。
確かにそうですよね…。
これがあなたの我々に対する挑戦だとしたら私の負け。
犯人はあなたです。
やっと認めたか…。
あなたの勝ちです。
検事では早速起訴の手続きを。
その前にちょっと出かけましょうか。
腰縄ほどいてください。
(刑務官)えっ…?責任は私が取ります。
あっいやでも…。
(太田)検事!何をおっしゃってるんですか!?被疑者を連れ出すなんて考えられませんよ!そんなことを許したら僕のクビも飛びます。
飛べば?さあ早くほどいて。
いやでも検事…。
行かせない行かせない…。
何?どきなさい!そこをどきなさい!
(太田)絶対ダメどきませんよ!先日娘と2人でここへ来て襖絵拝見しました。
そうですか。
ええ。
大胆でのびのびとしてなかなかのものでしたわ。
でも7歳のあなたを島へ置き去りにするっていうのは感心しないなぁ。
いくら自分が島の自然が好きでもそれを子供に押し付けるっていうのは間違ってます。
わがままで身勝手で自己中…親としては失格ですね。
子供がかわいそう。
ここ客足が少なくてもうすぐ閉館なんですってね。
襖絵の引き取り先もないって聞いたけど…。
まあ浦沢友康過去の人ですもんね。
若い子なんて誰も知らない。
まあ襖絵が1枚世の中からなくなっても誰も困りませんけどね。
あなたはわかってない!あの襖絵は残すだけの価値がある。
歴史に残る作品だ!親父の代表作を侮辱するのは僕が許さない!やっと本音が出ましたね。
これ読みました。
この本によるとあなたが私達を招待してくれたレストランのビーフストロガノフ…お父さんの大好物だったそうですね。
シェフから聞きました。
あなた10年前亡くなった浦沢画伯の初七日の日にあのレストランに行ってお父さんがいつも座っていたあの席に座り泣きながらビーフストロガノフを食べていたって…。
(すすり泣き)それ以来毎週一度は必ずあの店に行き注文してるって。
大嫌いな父親の好物をわざわざ食べに行くなんてありえない。
あなた浦沢画伯が好きだったんですよね。
嫌いだとかうんざりしてるっていうのは嘘。
僕は嘘なんかついてない。
じゃあなぜ週刊誌に殺人を犯したなんて告白をしたりしたんですか?言ったでしょう僕も目立ちたかったって。
それも嘘!私編集者から聞きましたよ。
あなたインタビューを受ける交換条件として浦沢友康氏の襖絵『秋上がり』の所蔵先の引き取り先がなくて困ってるという記事を載せてほしいと言ったって。
あなたが告白したのは忘れられようとする浦沢友康の名前をもう一度世間に思い出してもらうため。
この襖絵を守るため。
この襖絵を美術館に展示してもらう代わりに館長の里見氏をかばった。
殺人の罪をかぶった。
そうでしょう?すごいなあなた。
さすがプロだよく調べてる。
でもね殺したのは僕です。
親父なんかホントに嫌いだった。
なのに死なれて急に周りがガランとなって…。
あの大らかな笑い声が聞けないと思うとやるせなくて…。
その父が世間から忘れられていくのがもっと寂しかった。
この襖絵だけは残したい。
10年20年…いや100年後200年後の人にも見てもらいたい。
僕の今後の人生なんてどうでもいいんだ。
この襖絵のためなら刑務所に入るのも苦じゃない。
だから犯人は僕じゃなきゃダメなんだ。
それは違う!あなたお父さんの気持ちがまるでわかってないわ!どんな立派な作品を描いた画家でも親が子供に望むのはたった一つ。
その子自身の幸せです。
息子が自分の絵のために犯罪者になる道を選んだとしたらどんなに悲しいか…。
私が親ならきっと言います。
「こんな絵燃やしてくれ!」って。
まるで親父に説教されてるみたいだ。
(ため息)僕はつくづく凡人です。
もうこれ以上は踏ん張れない。
いい加減にしてください。
何なんですか?お願いしますよあの襖絵の所蔵をもう一度検討してみてください!あなた達ちょっとしつこいよ!いやいや失礼は承知の上です。
でもあれはね親父の代表作で残す価値は十分にあると思うんです!わかってないな。
浦沢友康はもう終わった画家なんだよ。
何だって!?終わった画家だと?離せ!
(飯島)おい待てよ!お前言っていいことと悪いことがあるんだよ!ええ?この野郎!うわーっ!
(階段から落ちる音)里見さんあんた何てことを…。
知らん…知らんぞ…私のせいじゃない!どうしたらいいんだ…。
こんな…私は破滅じゃないか…!助けてくれ!何でもする…何でもする…。
何でもする?「だったら親父の絵を守ってくれ」って言いました。
あなたの推理どおりです。
お父様もそれを聞いてほっとしてらっしゃるでしょう。
聞いてたかな?親父…。
お父様あなたのすぐそばにいてくださいますよ。
いつもあなたを見守ってくれてる。
こんな息子でよかったのかな…?お父様がこの襖絵に付けた題名は『秋上がり』。
あなたもわかってるはずです。
「豊秋」というあなたの名前から取ったこの作品に込めたお父様の思いを。
お父様はこんなに大きくあなたを愛してらしたんですよ。
ヒュー!ああ蛍狩りなんて何年ぶりかしらねぇ。
あっお待たせー!あっごめんごめん!ああああ…!うんああああ!何言ってるか全然わからない。
わからないよ。
ねえ。
ごめんごめんりんがどうしてもこれやろうって言うから。
大丈夫大丈夫蛍は逃げないから。
ねえ。
でも何だよ?もう仲直りしたの?もう心配して損しちゃった。
だって今の家出て自活なんてしたら部屋代に光熱費にいろいろかかって大変だもん。
今時の子って現金よね〜。
ただ彼氏呼べないよね実家だと。
かかか…彼氏!?あれ?知らなかった?私友子ちゃんの彼氏の写メ持ってるよ。
嘘!?ちょっと…見せなさい!ほらほらほらほら…。
あらやだ顔色変えちゃって。
父親のジェラシーってみっともないなぁ。
友子ちゃんの彼氏…おおー!ちょっとおばちゃん見せて!わあイケメンだなぁ。
イケメン!?ちょっと待てよ!かっこいいなぁ!あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
では始めます。
2015/04/10(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
[終]京都地検の女5[再][字]
「主婦の勘への挑戦!夜歩いた死体の謎!!」
詳細情報
◇番組内容
“主婦の勘”を武器に難事件に立ち向かう京都地検検事・鶴丸あや(名取裕子)の活躍を描く大人気シリーズ第5弾!春の京都を舞台に、事件の裏に隠された心の奥深くを描き出す大人のミステリー。
◇出演者
名取裕子、寺島進、益岡徹、渡辺いっけい、蟹江敬三 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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