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The meaning of waltz

全体公開 2015-03-12 19:50:55 15views

パーティー会場に流れる優雅な曲。
ヒラヒラのドレスと燕尾服の裾がクルクルと回る。
壁際の席でそれをボーっと見つめた。

従姉妹の絵里奈は真っ白なドレスを着てホールの真ん中で楽しそうにダンスを踊っている。
相手は彼女の恋人である透弥。
彼もまた燕尾服を優雅に着こなし、彼女と楽しそうに踊っている。

一体、二人は何処でそんなダンスなんかを覚えたのだろうか。
そう、思えるぐらい、ダンスを踊る二人の姿は良く栄える。

それにしても、着慣れない服は本当に窮屈だ。
本来なら、女性である自分も絵里奈の様なドレスを着るべきだったのだろうが、
それだけは絶対に嫌だと、周りの反対を押し切って燕尾服を着た。
しかし、いくら普段男の格好をしているからとは言え、
流石にこの様な席で男装する自身の姿は完全に周りから浮いて見えるだろう。
服そのものも窮屈だし、こんなに窮屈な気持ちをする位なら、
絵里奈の言う通りに大人しくドレスを着ていれば良かっただろうか?
否、ドレスを着た所で、嫌いなスカートを履く羽目になるのだから、
気分は余り今と変わらなかったかも知れない。
そう、思いながら小さくため息を吐いた。

チラッと、隣を見えると、自分と同じ様にダンスを踊れないカイや飛鳥も
同じように退屈そうに燕尾服だけ着て椅子に座っている。

やっぱり、無理してまで来る所じゃないよな……。
そう、思いながら再び小さなため息を吐いた。
そんな時だった。

「踊らないのですか?」
スッと、白い手袋を嵌めた手が差し出された。

「いや、俺、踊れないし……」
そう返しながら、差し出された手から辿ってその顔を見た。
すると、同じように燕尾服を身に纏い、男性にしては長めの黒髪を後ろに束ね、
にっこりと柔らかい笑みを浮かべた青年の姿が。
従兄妹の領夜だった。

「おまっ……なんでこんな所に?!」
「偶々、大学の友人に誘われたので来たのですよ。
そうしたら、絵里奈くん達が踊っているのを見つけましてね。もしやと思い来て見たら貴女が居たんですよ」
領夜がそう言い終えたと同時に次の曲が流れ始めた。

「どうか、私と一曲踊って頂けませんか?」
「――でも、俺、踊れないけど?」
「大丈夫です。私が上手くリードしますよ……さぁ、こちらへ」
そう言われ、こちらの返事も聞かずに半ば無理矢理手を掴まれホールの真ん中へと連れて行かれる。

腕を組み、身体を反らされる。
全く知らない筈なのに、彼のステップに合わせて足が勝手に動く。

いくら男女だとは言え、燕尾服姿同士で踊るなんて……。
しかも、片方は踊れないのだから絶対に浮いて見える。
そう思いながらチラッと回りを見ると、物珍しそうに見る観客達や
驚いた顔をした絵里奈やカイ達の姿が見えた。
そう思った瞬間に足がもたついた。

「大丈夫ですか?周りの視線なんか気にしないで下さい」
そう、優しく心地良い声で言ってくる領夜。
その声を心地よいと感じた自分にハッとした。

「夕鶴くん、知っていましたか?」
「え?」
「何を?」そう問いかける前に、領夜が耳元で優しく囁いた。

「ワルツの意味は、求愛なんですよ」
「……はい?」
「私は貴女にプロポーズをしているんですよ。愛しています。夕鶴くん」
「おまっ……何言っているんだよ!?また、そう言って俺をからかって……」
「いいえ。私は本気ですよ?」
「――は?」
ニッコリと、でも、意味深な笑みを浮かべる領夜。
その彼の色素の濃い真っ黒な瞳に見つめられ、言葉が出せなくなった。


そんな時、曲が終わった。


「おーい!領夜!」
彼の友人の声だろうか。遠くで彼の名を呼ぶ声が聞こえた。

「嗚呼、今行きますよ。――夕鶴くん」
「?」
「   」
次の曲への準備の為、入り乱れる人の中、領夜が一言残してゆく。

「――では、私は此処で失礼します。次にこう言う場でお会いする時は、
是非、貴女のドレス姿が見たいですね」
そういつもの優しい笑みを浮かべて彼が去ってゆく。

同時に絵里奈達が近づいてくる。
その中で、なんだか、カイと飛鳥が物凄く不機嫌そうなのは何故だろうか?
しかし、それよりも気に成るのは領夜のあの言葉だった。

『さっきの言葉ですが、私は本気ですよ。
いつか、貴女を皆から奪ってみせます。覚えておいて下さいね?』

「……」
「夕鶴?大丈夫?ねぇ、夕鶴??」
心配する絵里奈の声にハッと我に返る。

「……俺は誰のモノにもならないよ」
ボソッと、誰にも聞こえない声でそう呟いた。

それでも、彼にならこの身を……。
この心を委ねても良いかもしれない……。
――そう、一瞬でも思ってしまったのは、このパーティー会場の雰囲気と
先ほどのワルツ曲の所為だと、自分に言い聞かせてホールを絵里奈達と共に去った。

<終>


-あとがき-
そんな訳で、初の領夜×夕鶴でした。(寧ろ、領夜が初登場作品になるとは…)
長い筆記活動の中、実は今まで敬語で話すキャラクターを書いたことがなかったので、
領夜の口調が難しく感じました。
敬語キャラって難しい……。

基本設定の領夜は”夕鶴を気に入っている”だけであり、
本当に恋愛感情を抱いているのかは微妙なラインだったりします。
(私の中では、領夜にとって夕鶴は「好きな女性」というよりも「妹みたいに可愛い人」とのイメージな為)
でも、好きでもない女性にちょっかい出したりとかしないのでしょうから、きっと、好きなんでしょうね。(※言い訳)

因みに、領夜の友人は現在筆記中の小説に出てきているので、お披露目も近いかと……。
(ネタバレですが、実はとあるキャラのお兄さんです)

そんな訳で、お目を通して頂き、有り難う御座いました!

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趣味で小説書いています。 NL・GL・BL等なんでもいける雑食ですが、 基本的書いているのはNLかGLらしきもののみ。 (BLは書いていません)※現在、フォロバは知り合いのみです。すみません。

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