「決して完成はしない。ファッションと同じだよ」。──映画『ソーシャル・ネットワーク』におけるマーク・ザッカーバーグのセリフです。しかし、現実の「Facebook」は10年で成熟した大人になり、ユーザーとともに年を重ねて変化に乏しくなっています。
「Instagram」や「WhatsApp」の買収は、年を取り始めた人が、若返りの薬を飲んでいるかのようです。でも、裏を返せば、Facebookは浮き沈みの激しい世界で、しっかり年を取れるくらい、順調にポジションを築いてきたとも言えます。
その影には、若いまま消えてしまう多くのサービスがあります。かつてFacebookに敗れたSNS「Myspace」もそのひとつ──次のピック記事を見るまでそう思っていました。
“The digital media comeback story of last year? Myspace”
Quartzの記事には、1年間(2013年12月と2014年12月の比較)でMyspaceのユニークビジター(アメリカ)は469%増加したとあります。
ユニークビジター総数では、LinkedInやBuzzfeedに遠くおよびませんが、ユニークビジターの増加率をみると、Myspaceは脅威的。他サービスを圧倒しています。LinkedInが68%増、Buzzfeedが43%増であるのに対し、Myspaceは469%増と突出しています。
基準としている2013年12月のユニークビジターが少ないというのもありますが、一度は存在感を失ったサービスが再び成長軌道に乗ろうとしている動きには驚きました。
次のピックでは、Myspaceに近年どのような変化があったのか、その軌跡をたどります。
“IS MYSPACE DESTINED TO FAIL(AGAIN)?”
サービスの立ち上げは2003年で、SNSの草分けです。2005年にNews Corporationが5億8000万ドルで買収し、アメリカでのユニークユーザーのピークは、2008年10月で7600万ユーザーを集めました。
しかし、その後、Facebookの台頭などで低迷。従業員の解雇を重ね、2011年にオンライン広告会社のSpecific Mediaに3500万ドルで買収されます。
この時、アーティストのジャスティン・ティンバーレイク氏(映画『ソーシャル・ネットワーク』のショーン・パーカー役)が資本参加し、クリエイティブ面で協力するようになりました。
<参考>
・ジャスティン・ティンバーレイク、MySpaceに資本参加
新生Myspaceは、「s」を小文字にし(それまでは「MySpace」)、コンセプトの再定義とそれに合わせたデザインの変更に着手しました。「音楽」に再びフォーカスし、キーワードに「発見」を据えたほか、Stream(Facebookで言うところのニュースフィード)には大胆な横スクロールを取り入れました(Web版)。
2008年ごろ
2013年リニューアル後
音楽は、検索やジャンル、アルバム、アーティストを切り口に聴きたいものを探せるようになっています。
Web版が音楽を「発見」する場だとしたら、モバイル版はどちらかと言えば、投稿を促すデザインになっていて、Web版(音楽ストリーミング寄り)とモバイル版(ソーシャル・ネットワーク寄り)で性格をわけている印象を持ちました。
プラットフォームの大きなデザイン変更は、既存ユーザーの離反リスクを伴いますが、思い切ってコンセプトを指し示す転換を行ったことが、Myspaceの場合は功を奏しました。
ここから先、Myspaceには2つの道があります。1つは、Facebookのようにユーザーと一緒に年を取っていくサービスになる道。もう1つは、感性が強い層(主に若年層)をターゲットにしたまま、合わなくなったユーザーを卒業させていく道です。これは冒頭の映画のセリフにある「ファッション」ブランドにもよく起こる悩みです。
一緒に年を取る方が安定するものの、以前同様「音楽」にフォーカスしていくことが難しくなり、前と同じ失敗の轍(てつ)を踏む可能性が高いです。
そこでMyspaceには、「Instagram」や「Pinterest」と同じ層に向けて、質の高いコンテンツ、アーティストとの接点、Myspaceにしかないオリジナルコンテンツを用意することなどが求められます。ここまではリ・ブランディングに成功したMyspace。この先の挑戦にも期待したいです。
※Weekly Briefing(デザイン編)は、毎週金曜日に掲載する予定です。