日米防衛相会談:政府「負担軽減協力を」辺野古にじむ苦悩
毎日新聞 2015年04月08日 23時36分(最終更新 04月08日 23時53分)
安倍晋三首相が8日のカーター米国防長官との会談で米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設作業の確実な実施を表明したのは、沖縄県の反発に対する米側の懸念を払拭(ふっしょく)するためだ。菅義偉官房長官もカーター氏に対し、基地負担軽減への協力を要請した。沖縄重視の姿勢を示し、反発する沖縄の理解を引き出したい考えだが、「同盟最優先」の姿勢は沖縄を刺激する可能性もあり、政府は難しい対応を迫られている。
菅氏はカーター氏に対し、沖縄県の翁長雄志知事との5日の会談内容や、沖縄の厳しい世論を説明。米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)以南の米軍施設・区域の返還を早期に実施するよう要請した。
菅氏が「嘉手納以南」に言及したのは、翁長氏が返還時期の「先送り」に懸念を示したことを踏まえ、「前倒し返還」を探る狙いがある。首相も8日の参院予算委員会で「嘉手納以南の米軍用地返還を進めるためにも(移設の)判断をした」と理解を求めた。
ただ、カーター氏は一連の会談で負担軽減について「引き続き協力していく」と語るにとどめる一方、中谷元防衛相との会談の冒頭で、辺野古移設が日米同盟にとって「極めて重要な要素」と強調。日本政府に移設推進を強く促した。
政府は沖縄の理解を引き出す新たな宿題を背負った形だ。中谷氏は会談後の記者会見で「住宅に囲まれた普天間の固定化は絶対に避けないといけない。環境保全に万全を期して作業を進めていく」と述べ、政府の対応に理解を求めた。
移設をめぐる沖縄の反発が収まる気配はない。名護市の稲嶺進市長は8日の記者会見で、工事を進める政府の姿勢を「有無を言わせず進める手法は民主主義の世の中で通らない」と強く批判した。
政府は、基地負担に苦しむ沖縄の世論を味方につけたい考えで、中谷氏は同日、普天間の地元・宜野湾市の佐喜真淳市長と会談。「辺野古移設はいろいろ検討したうえの唯一の解決策だ」と協力を求めた。【飼手勇介、木下訓明】