国立大学:入学・卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を要請へ

毎日新聞 2015年04月10日 20時30分(最終更新 04月10日 23時30分)

 ◇下村文科相が明らかに 小中高校では学習指導要領に規定

 下村博文文部科学相は10日、国立大学に対し、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱の実施を要請することを明らかにした。入学式などでの国旗掲揚・国歌斉唱は小中高校では学習指導要領に規定があるが、大学にはない。下村文科相は「(要請通りに)するかしないかは各大学の判断」と強制はしない方針だが、「大学の自治」とも関連し、国立大の学長からは「難しい問題だ」と戸惑う声も聞かれた。

 安倍晋三首相は9日の参院予算委員会で、次世代の党の松沢成文幹事長が国立大の卒業式や入学式での国旗掲揚・国歌斉唱に関して質問したのに対し「学習指導要領がある中学、高校ではしっかりと実施されている。(国立大学が)税金で賄われているということに鑑みれば、教育基本法にのっとり、正しく実施されるべきではないか」と述べ、国立大学でも実施すべきだとの認識を示していた。

 下村文科相は、要請内容について「国会における議論の内容や国旗国歌の意義を踏まえ今後の入学式などにおける国旗国歌の取り扱いを検討してもらう」と述べた。通知ではなく、学長が参加する会議で要請することを検討している。

 文科省の調査では、国立86大学のうち昨春の入学式で国旗を掲揚したのは73大学、今年3月の卒業式では74大学。国歌斉唱は昨春の入学式と今年3月の卒業式はそれぞれ14大学で、国旗掲揚に比べ国歌斉唱の割合は低い。

 ある国立大学長は「強制されるものではない。大学は学生のための公共の組織なので学生や保護者、社会がどう考えるのかが重要だ」。別の学長は「小中高とは別の対応が必要だ」と強調しつつ「難しい問題。要請があれば学内で慎重に検討する」と話した。

 下村文科相は記者会見で「要請は圧力にならない。国立大は決まりがないので強要することではない」と話した。

 国旗掲揚、国歌斉唱を巡っては日の丸を国旗、君が代を国歌と定めた国旗・国歌法が1999年に成立。2006年には第1次安倍内閣で「愛国心」条項を盛り込んだ改正教育基本法が成立した。【三木陽介、坂口雄亮】

 ◇なぜ今、要請する必要があるのか疑問だ

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