むかし住んでいたアパートの「未払い家賃」を突然、銀行口座から引き落とされた――。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような投稿が寄せられた。
相談者は現在、自己破産の認定を受けて、借金などの債務が免除されている。ところが最近になって、6年前に引っ越したアパートで滞納していた家賃が、銀行の口座から突然引き落とされてしまい、面食らっているそうだ。
相談者によると、大家側には相談者の連絡先を把握されていたが、支払いの請求は届いておらず、「時効の中断の連絡もきていなかった」とつづっている。相談者はお金を返してもらえるのだろうか。高橋昭広弁護士に聞いた。
●相談者が「自己破産」を受けていることがポイント
「今回の相談者がお金を返してもらえるかどうかは、ケース・バイ・ケースでしょう」
高橋弁護士はこのように述べる。どうしてそうなるのだろうか。
「まず、相談者は自己破産をしています。
もし、その破産手続において、6年前に引っ越したアパートの大家さんを『債権者』として届け出ていた場合、免責許可の決定によって、未払賃料は支払わなくてよいことになります(破産法248条3項・253条1項)。
この場合、大家さんに対して、引き落とされた分のお金を返してもらうことができます(民法703条)」
一方、破産手続において、大家さんを「債権者」として届け出ていなかったとしたら、どうなるのだろうか。
「その場合、未払賃料は免責されていないことになります。
今回のケースでは、賃料債権が消滅する時効期間(5年)が経過しているので、ポイントがそちらに移ります(民法169条)」
●「時効援用」の意思表示が必要
未払いの家賃が引き落とされたのは、6年以上が経過してからだ。賃料の消滅時効期間(5年)が過ぎたので、支払わなくてよいお金ではないのか。
「時効によって利益を受ける人、今回のケースで言えば相談者は、『時効が成立した』という意思表示をしておく必要があります(民法145条)。
ですので、引き落とされる前に意思表示をしていた場合は、お金を返してもらうことができます。
しかし、内容証明などで意思表示をしていなかった場合は事情が異なります。未払家賃を引き落されてしまったら、意思表示をする前にお金を支払ったことになります。
家賃の自動引落しを開始する際、自動引落しを依頼する書類を金融機関あてに提出していますから、その停止措置をとらない限り、自動引落しの依頼が有効のままになるのです。
大家さんには未払家賃を受け取るという『法律上の原因』がありますので、相談者が、大家さんに対して、お金の返還を求めることはできません」
今回のケースで、相談者はどのような対応すべきだったのだろうか。
「次のいずれかの措置をとっておくと、今回のような事態は回避できたと思われます。
(1)破産手続において、大家さんを債権者として届け出る
(2)6年前に引っ越したあと、銀行の自動引き落しを解除する
(3)未払家賃の支払日から5年たったあと、大家さんに対し時効援用の意思表示をする」
高橋弁護士はこのように述べていた。
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