日経平均株価が10日、15年ぶりに一時2万円台を回復した。「アベノミクス」を掲げた第2次安倍政権が発足してから2年4カ月で2倍になった。今年だけで15%上昇している。

 株式市場の関係者たちには「さらに相場は上がる」とはやす声が少なくない。株高を景気回復の原動力にしたい政権はこれを歓迎、菅義偉官房長官は「まあ、よくここまできたものだ」と述べた。

 もちろん、株価は下がるより上がるほうがいい。ただ、この株価上昇がどんな経済の実態に裏打ちされたものか、この先どのくらい確かなものなのかを考えるとき、必ずしも喜んでばかりはいられない。

 株価は本来「経済の体温計」だ。景気が良ければモノやサービスの消費が増えて企業の業績が上向く。それを評価して株価は上がる。

 だが現実はどうか。実体経済と株価水準の結びつきは希薄だと言っていい。さまざまな経済指標が、株価ほどに改善しているわけではないからだ。

 たとえば、ものづくりの動きがわかる鉱工業生産指数は一進一退を繰り返している。日銀短観からみる企業の景況感は規模や業種によってまだらで、全体では良くも悪くもない。

 春闘で大手企業の賃上げが進んでも、物価上昇を考慮した実質賃金指数は22カ月続けて減っている。人々の暮らしが豊かになっているわけではなく、消費の先行きは楽観できない。

 それでも株価が上がる背景に公的マネーの存在がある。

 約137兆円の運用資産をもつ年金積立金管理運用独立行政法人などの公的年金が株を買い増している。また日本銀行が大規模な金融緩和で巨額のおカネを金融市場に投じ、みずから上場投資信託(ETF)の購入に乗り出している。きのうの株高の要因だった円安も、日銀による緩和がもたらしたものだ。政策が株価を支えているのだ。

 似たような状況は米欧でも見られる。中央銀行による金融緩和政策が生みだした膨大なおカネが株式市場に流れ込んで株価バブルを生みだしている。

 この結果、米国では景気がよくなると株価が下がる、という倒錯した状況も生まれている。金融政策が引き締められることを恐れた投資家たちが、株を売ろうとするからだ。

 先行きが不確かな実体経済と、持続可能かあやしい政策。「株価2万円」はそこに乗って生まれた産物だ。株価に即した経済へと底上げすること。それが政権の課題である。