サムスンの平昌冬季五輪組織委員会に対する支援規模は約1000億ウォン(約110億円)だ。2018年までサムスン生命、サムスン火災、サムスン証券など系列企業が聖火リレー、文化行事、パラリンピックなどに現金800億ウォンを支援。このほか、サムスン電子がプリンター、複合機などIT製品を現物で200億ウォン相当支援する。第一毛織も大会運営に必要な衣類を支援する計画だ。
五輪のトップスポンサー企業がローカルスポンサーまで引き受けるのは異例だ。広報効果を上げるためには、あえてローカルスポンサーとして参加する理由はないためだ。サムスンはサムスン電子が既に五輪のトップスポンサーとして活動している。1998年の長野冬季五輪から無線通信分野で五輪のスポンサーとして参加。昨年8月には国際オリンピック委員会(IOC)と2020年の東京五輪までのスポンサーとして再契約し、タブレット端末、ノートパソコン、デスクトップパソコンなどに後援分野を拡大した。
それでもサムスンはローカルスポンサーとしての後援を引き受け、平昌冬季五輪の「救援投手」となった。これまで組織委によるスポンサー企業募集が難航していたからだ。インフラ整備予算を除く運営予算は2兆540億ウォン(約2260億円)で、うち8530億ウォン(約940億円)をローカルスポンサーによる後援で賄わなければならないが、大会を3年後に控えた今年2月時点で達成額は目標の3分の1に満たなかった。
慌てて大統領までもが企業にスポンサーとしての参加を求めた。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は今年2月、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長ら企業関係者と大統領府(青瓦台)で昼食会を持ち、「大韓民国のメディチ家になってほしい。平昌五輪が世界人の文化五輪になるように積極的に後援をお願いしたい」と語った。メディチ家はルネサンス期に芸術や学問に対する支援を惜しまなかったことで知られるイタリアの名家だ。
朴槿恵大統領が企業関係者を大統領府に招いて食事を兼ねた懇談会を開いたのは1年半ぶりだ。それだけ政府内部でも平昌冬季五輪のスポンサー獲得問題が重視されていることを示している。
組織委関係者は「大統領の発言がサムスンの決定につながったと聞いている」と述べた。韓国屈指の大企業であるサムスンがローカルスポンサーとして参加した意味は大きい。これまで後援交渉を行っている企業は、サムスンが参加するかどうかや後援規模に注目していた。組織委のチャン・ハンロク・スポンサー担当部長は「サムスンの後援額1000億ウォンが今後他社による交渉の目安になる」と予想した。
組織委はまた、サムスンがスポンサーとして参加を決めたことで、他社との交渉にも弾みがつくと期待している。スポンサー契約の規模はこれまでに3500億ウォン(約385億円)で、目標額の41%を達成した段階だ。