天皇、皇后両陛下が太平洋戦争の激戦地、パラオへの「慰霊の旅」を終えられた。戦後70年という節目、この島国の訪問には「戦争という悲しい歴史を決して忘れてはならない」という両陛下の強い思いが込められている。その思いを共にしたい。
パラオのペリリュー島では、激しい地上戦で日本軍の約1万人がほぼ全滅、米軍にも約1700人の犠牲者が出た。両陛下は9日、同島で日本政府が建てた慰霊碑に供花、拝礼し、米軍戦没者の慰霊碑も訪問。生還した元兵士や戦没者の遺族らにもねぎらいの言葉をかけられた。
8日のパラオ政府主催晩さん会では、陛下は「先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたい」と述べられた。戦争の犠牲者は国を問わず慰霊する、というのが両陛下の姿勢だ。戦後、慰霊碑や墓地の管理、清掃、遺骨収集などに協力してきたパラオの人々への感謝も忘れなかった。
両陛下の「慰霊の旅」は戦後50年を機にした長崎、広島などの訪問に始まり、戦後60年にはサイパン島を訪ねられた。戦闘に追いつめられた日本人が次々に海に身を投げた「バンザイ・クリフ」で拝礼する両陛下の後ろ姿を、目に焼きつけた人も多いだろう。
パラオ訪問は陛下の長年の望みだった。しかし、いまはダイビングスポットとして有名な島がこれまでどんな歴史を歩んできたか、ほとんど知られていない。
陛下は出発前の挨拶で、ドイツの植民地だったパラオが第1次世界大戦後に国際連盟下で日本の委任統治領になり、第2次大戦前には島民より日本人の数の方が多かったことに触れられた。この国が親日的であることは、両陛下に対する歓迎ぶりからも伝わった。
日本とパラオが30年近く統治する側とされる側の関係にあった歴史を振り返れば、陰の部分もあっただろう。そこからも目をそらさず、両陛下訪問をパラオをよりよく知るきっかけにしたい。