社説:通常国会後半へ これからが正念場だ

毎日新聞 2015年04月10日 02時32分

 2015年度予算が成立し、通常国会は後半の日程に入る。最大の焦点となる安全保障法制など重要な懸案が目白押しで、政府・与党は6月24日までの会期を8月上旬まで延長することを検討している。

 国の針路にかかわる安保法制、戦後70年を迎えての歴史認識の議論など、国会はむしろこれからが正念場だ。「政治とカネ」をめぐる規制強化や衆参両院選挙制度の1票の格差是正など、避けて通れぬ課題もある。岐路にふさわしい議論を求めたい。

 集中審議を5度行った参院での予算案審議だったが、政治献金問題を追及された西川公也前農相が辞任に追い込まれた衆院に比べ、緊迫感は乏しかった。この間、上西小百合衆院議員の国会欠席問題で維新の党が除名を決めたり、自民党の片山さつき参院外交防衛委員長の会議遅刻が批判を浴びたりするなど、政策と無関係な問題が目立った。論戦の埋没を反映するかのようだった。

 政権の命綱とも言える新年度予算が成立すれば、通常国会はヤマを越すのが通例だ。だが、今国会にそうした図式は通用しない。

 安倍政権は集団的自衛権の行使容認を具体化するなど安保法制の与党協議を近く再開し、5月中旬に関連法案を提出するとみられる。政府は原発や再生可能エネルギーなどの割合を示した2030年の電源構成(エネルギーミックス)も近く決定する。日韓国交正常化50年の節目を6月に迎え、戦後70年の終戦記念日にあたり安倍晋三首相が発表する談話をめぐる動きも本格化する。

 派遣労働の期限を事実上撤廃する労働者派遣法改正案や、今国会で成立を目指す動きがあるカジノなど統合型リゾート(IR)整備推進法案はいずれも成長戦略のありかたの是非に関わるテーマだ。

 一方で、必ず結果を出すべき課題も多い。政治とカネの問題はいまだ有効な手立てが講じられぬままだ。補助金を受給した企業による献金の規制を強化する法改正すら実現しないのは、到底理解できない。

 「1票の格差」是正など選挙制度改革は、とりわけ参院は今国会で措置を講じないと来夏の選挙に是正が間に合わない。意見集約を怠ってきた自民党の責任は極めて重い。

 野党が議論を構築する力も問われる。国会の存在感が薄い背景には、安保法制をめぐる民主党の軸足が定まらず、踏み込んだ議論が行われにくい事情もある。複雑で多岐にわたる法制をめぐる論点や問題点が国民に十分認識されるためには、開かれた国会の場での徹底した議論が欠かせない。そのためにも、民主党は党の具体的見解を早急にまとめなければならない。

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