満身の慢心

雪が水に姿を変え消え去る様が
春を連れてくる今日この頃
お嬢様、お坊ちゃま如何お過ごしでしょうか?
奈良崎で御座います。





誰もいない夜の屋敷は怖いものでございます。
臆病な奈良崎は一人での戸締りが苦手です。
寒さのせいでしょうか?
鼻を中心にじんわりヒリヒリします。
さっさと戸締りをして夕飯に行きましょう。
皆が待ってます。
ガチャガチャ・・・
あれ?
おかしいですねぇ・・・
鍵をかける前からもう施錠されてる。
内側には私がいて・・・外から・・・?
外から施錠できないのに?
もう誰かが先に施錠した?
登板は私なのに・・・
親切でしょうか?
まぁ・・・ありがたく受け取っておきます。



ん?
手にべっとりとした何かが・・・
いけませんね
お掃除しておきましょう・・・
赤いシロップ?インク?
いけませんね

おや・・・外の景色に違和感を感じます
また・・・
別の世界ですか・・・
そうですか・・・
ドアの隙間から身も縮むような冷気が・・・
そうでしたか・・・
別の世界でしたか・・・
目頭が熱くなります
私の第六感がヒリヒリ・・・する気がします

扉とは反対方向・・・
お屋敷の奥からガンガンと音がします

はいはい
戻ることは許されないんですね
わかります
扉の外へ出ないといけないんですね
わかりました
はいはい
そうしないと帰れないんですよね
ドアを開けて外へ行きましょう

・・・
その時
「開けちゃダメです」
声がしました
聞こえません
出ないと帰れないのでしょうから
ドアは開けますとも


ガチャリ・・・


ドアはすんなり開きました

「あ~あ・・・開けちゃいましたね」
後ろからまた声がします
振り向くと・・・松平執事でした

「寒いから閉めてくださいね」
扉の外は真っ白な雪景色でした

「奈良崎さん・・・鼻血は拭いたほうが・・・」

おや?
さっきボーッと歩いてて水瀬にぶつかって・・・
鼻血がでてましたか
扉の汚れは私の鼻血でした
床と雪の上には赤い点々が・・・


大変失礼をいたしました
気をつけなければいけませんね
首の後ろをトントンしながら歩くと
上のほうがよく見えます。
もうぶつかりません。


古谷
隈川
大河内


大友・・・
おっと遠くに芥川執事が見えます
ふはははははは!
今の私は誰にもぶつからない!
私は奈良崎!同じ間違いはしない男!
この華麗な身のこなしを見るがいい!!
ふはははははははははははははははは!



ドンッ!!

・・・・

ばかな!今の私には死角はないハズ!
そんな
上を向いている私の顎に鈍い痛みが・・・
唇を少しだけ切ってしまいました
鉄の味がします


お嬢様・・・
お坊ちゃま・・・

慢心にはお気をつけ下さいませ。

アレは突然やってきて・・・
鼻をヘシ折っていくのです・・・
億分の一以下の可能性でも
用心に越したことはない・・・
と、知らされました。
奈良崎で御座いました。





追伸
春馬・・・ごめんよ・・・

今度からは下にも気をつけます。
クッキーは今度弁償します。

カテゴリー: 奈良崎 — Swallowtail 16:00