AppleWatchでどう変わる?ウェアラブルデバイスUXデザインの未来
いよいよ本日、AppleWatchの予約が日本時間16時01分より開始されました。
これまで様々な企業が研究開発を行ってきたウェアラブルデバイスの分野に、ついにAppleが参入するという事で世界中の大きな期待を集めているこのAppleWatch。ウェアラブルデバイスの本格的な普及によって、ユーザー体験(UX)はどのように変化していくのでしょうか?
人間とデバイスの関係性、そして未来ついて、UXデザインの観点から改めて考えてみたいと思います。
行動様式が変化するということ
電子メールが変えた朝の10分
数十年前、一般の会社員なら誰でもメールを紙ではなインターネットで送れるようになった時、人々はどのような行動をとったと思いますか?若い人はピンとこないかもしれませんが、メールが届いているかどうかを電話で確認していたのです。
今考えると非常に馬鹿馬鹿しい行動なのですが、当時としてはそれが当たり前の行動でした。何故ならば、それまでの他社とのビジネスのやり取りは電話以外あり得なかったからです。
しかし今はどうでしょう。ほとんど全ての人が、朝出社をしてまずコーヒーを飲みながらメールチェックをしていると思います。つまり、電子メールの登場が、日本中の会社員の朝の10分間を変えてしまったのです。
これまでは朝一で電話をする取引先が居るので、全ての会社が毎朝必ず同じ時間に出社しなくてはならないという暗黙の行動ルールがあったのが、電子メールのおかげで時間差出勤やフレックスタイム制でも問題なく社会が回るようになってしまったのです。
電子メールが変えたのは、たかが朝の10分間です。しかし、それを日本中の全員がやるとどうなるか?という事を意識しながら、AppleWatchについて考えていきたいと思います。
Appleが変えてきた行動様式
Appleがこれまでいくつもの革新的なデバイスを世に送り出してきた事は、皆さんご存知の通りだと思います。では、Appleが提供するデバイスによって、人々のユーザー体験(UX)にどのような変化があったのでしょうか?
Appleは、人間とコンピューターとの間にあるユーザーインターフェース(UI)のデザインを通じて、いくつかの行動様式に変革をもたらしています。例えば、Macintosh。2015年現在でも世界の主流となっている入力デバイスであるマウスと、それによるOSの直感的な操作を実現するGUIを世界で初めて導入しました。これによって、人々はコンピューターを操作する際、1次元的な文字列ではなく、2次元平面に広がる絵を見るようになりました。
次に、iPod。これまでCDショップなどで購入するしかなかった音楽という文化に、Webとそれらと連携する小さなデバイスのみで誰でも気軽に触れ合うことができるようになりました。iPodとiTunesの登場により、お金を払って合法的に電子ファイルをダウンロード購入するという事が世界のスタンダードとして定着しました。人類の買い物に対する行動様式に大きな変革をもたらしたと言えます。
そして、iPhone。これまで物理ボタンだらけで非常に使いづらかったスマートフォンというデバイスから物理ボタンをごっそり取り払い、アプリケーションごとに専用のソフトウェアインターフェースをデザインする事で、ありとあらゆるサービスをポケットの中に手を伸ばすだけで利用できる世界を作り上げてしまったのです。
Macintosh、iPod、iPhoneというプロダクトを通じてAppleが行ってきたことは、人間とデバイスの間にある「操作」という関係性からユーザー体験(UX)の部分を切り離し、その体験を達成する為の新たな仕組みを提示するという事でした。
AppleWatchが見せるUXデザインの未来
「操作」を必要としないデバイスとしての可能性
これまでのウェアラブルデバイスの設計でボトルネックとなっていたのは、その小ささが故の操作のしにくさでした。ある企業は声でコントロールする事を選択し、またある企業は身体の動きに連動する事を選択していました。
しかしこれらはいずれも、ユーザーが何らかの意思をもってデバイスを「操作」するといった意味合いが強く、常に肌に密着して身につけているというウェアラブルデバイスの利点を完全には活かしきれていなかったのでは無いかと思います。(音声認識もモーションコントロールも、ウェアラブルではないデバイスで実現可能であるため。)
では、AppleWatchはどうか?というと、もちろん物理的なUIが全く無いというわけではありません。着目すべきは、使用者の現在のバイタリティ等のステータスを常にモニタリングし続けているという点だと考えます。
ステータスをモニタリングしていると、具体的にどんな事が出来るか?というと、例えば急病で突然あなたが倒れた時。スマートフォンを常に肌身はなさず携帯していたとしても、自分で救急車を呼ぶ事が出来ない状態であれば意味がありませんよね。しかし、AppleWatchのようなバイタリティをモニタリングするウェアラブルデバイスを装着していた場合、
デバイス自体が状況を判断し、自らを操作してアクションを起こすことが可能になります。「UIの操作」を必要とするデバイスは、本質的にいくら小型で携帯性があったとしてもウェアラブルデバイスとは異なるものなのです。
Appleはついに、人間とデバイスの間にあった「操作」という関係性すらも、ユーザー体験として切り離してしまったのです。
ヒトとモノの関係性は、操作から「対話」へ
AppleWatchの発売で、どれだけの人にウェアラブルデバイスが受け入れられるかは、まだわかりません。恐らく最初は電子メールの例と同じく、他のデバイスを通じて平行運用を行う時期が続くでしょう。しかしそれも一瞬です。世界中の全員がそれを受け入れた時、何が起こるか想像してみましょう。
まず、アプリに関するUXデザインの考え方が大きくシフトする事が予想されます。これまでは「アプリの操作」を中心に据えて全体のユーザー体験を設計していたものが、「操作を必要としない体験」も含めてデザインしなくてはならなくなるためです。
ユーザーの状態がどうなったら、何をするか。ユーザーにどの感覚器官を使ってレスポンスを返すか。物理的あるいはソフトウェア上のUIありきでUXをデザインしているだけでは、ウェアラブルデバイスのUXデザインには到達できません。UI操作に対するUX、そして
UI操作が介在しないUXという視点が必要になる事は確実です。
AppleWatchだけではなく、これから登場するすべてのウェアラブルデバイスにおいてのUXデザインは、よりシステマチックでインタラクティブなものになっていくでしょう。ユーザーの状態に応じてモノが考える「ヒトとモノの対話」の時代がやってくるのです。
大切なのはそういった時代の転換期においても、常にユーザーにとっての本質的な価値は何か?という事を考え抜き、それに対してどのような体験が提供出来るかを追求していくことであると私たちは考えています。
AppleがAppleWatchを通じて世界に何をもたらすのか。UI/UXデザインの分野はこれからますます面白くなりそうです!
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