成功しない前提なんて・・・

気温が体温に近い日々が続きます。
小まめな水分の補給と、日陰での小休憩・・・
欠かしてはおりませんね?
奈良崎で御座います。



私、この暑さを回避するために
少々レクリェーションに参加を致しました。
楽しいレクリエーションのはずだったのですが、
思わぬ結果を招きまして・・・

お伝えできる範囲で、結果報告をさせていただき、
今回の私の日誌とさせていただきます。


~条件~

期間は1週間
お給仕の無い時間の全てを使う事
リタイアは認めない
実験途中での情報の漏洩は厳罰に処す
実験とお給仕は混同をしないこと
施設内での徘徊は認めない
配属先のエリアでの行動は原則自由

実験参加者には特別手当を用意する



△1日目△

集められた参加者は
時任執事
私(奈良崎)
有村
伊達
霧生
三國

そして、サングラスと帽子、マスクをして
素性のわからない男たち。
お屋敷から6人
謎の男7人
合計13人

お屋敷のはずれの施設に集められ
衣装を渡された。

我々6人にはボーダーの洋服。
7人には黒い制服が渡されました。

我々は部屋の一面の壁がガラス張りの部屋へ
7人はその部屋のガラスの向こうへ通されます。

向こうでは何か話してるようですが、
我々には聞こえません。

レクリエーションとはなんなのでしょうか?
説明のありませんが、報酬は気になります。
どうせリタイアできないのです。
1週間すれば終わりですから、
大部屋は辛いですが我慢しましょう。

特に何もなく
伊達のトレーニングをちょっとだけ真似して寝ましょう。



△2日目△

お給仕組はお屋敷へ行きました。
残りは部屋で留守番です。
お休みの私と三國、有村で雑談をしています。

ガラスの向こうも4人しかいません。
3人はお給仕組と同じ時間に出て行きました。

犬の話で盛り上がり、その流れで
まだ履いていない支給された靴下でボールを作り
キャッチボールをしていました。
すると部屋のスピーカーから声がします。

声「何をやっているんだ!」
有村「え?・・・キャッチボールですけど・・・」
声「なんのつもりだ!!」
有村「えっと・・・ちゃんと終わったら片付けます。」
声「そうじゃない!誰に断って遊んでいる!」
奈良崎「はい?契約には特にダメとは・・・」
声「自分の立場を理解していないようだな!」


・・・有村と私は靴下を取り上げられてしまいました。


顔の見えない相手に怒鳴られても
怒られてる気がしませんが、
警棒を持って入ってきたので
思わず従ってしまいました。

夜になって戻ってきた時任執事に相談すると・・・
時任「とりあえず終わるまで我慢してくれ。」
との事、夏ですしサンダルもあります。

靴下くらい別にいりません。


△3日目△

今日はお給仕の日です。
目隠しをさせられ車でお屋敷へ・・・
暑い中車で出勤とは・・・悪くありません。
目隠しはいらないと思いますが、
自室まで連れて行かれ、着替えてお給仕です。

帰ってくると、皆無口で機嫌が悪そうです。
ガラスの向こう側では、黒い男たちが
こちらを指差して何か話しているようです。
内容は聞こえませんが何故か不愉快な気分になりました。


△4日目△

今日もお給仕でした。
伊達も霧生も、もちろん時任執事も
笑顔でお給仕をしていましたが、
帰る時間になると気が重そうです。

施設に戻ると事件が起きました。

ベッドの上でまどろんでいると
スピーカーから声がしました。

声「おい!そこの囚人!なんか芸をやれよ。」

芸なんて出来ません。
それ以上に、囚人とはどういう事でしょうか?
もちろん誰もその言葉には反応をしません。
すると・・・

声「おい!お前だよ!お前!」

男が指差した先には霧生がいました。
が、霧生は寝ていました。

霧生「はい・・・?」

寝ぼけ眼の霧生はまだボンヤリしています。

声「看守の命令だ!何か芸をやれよ。」

警棒とナイフをチラつかせて凄んでいます。
もうムチャクチャです。

霧生「眠いんで。起きてからでいいです・・・」

あさっての方向を向いたまま寝てしまいました。
こっちもムチャクチャです。

声「ふざけるな!」

怒声とともに男たちが部屋に入ってきました。
しかし霧生を掴もうとしたその時です。

声「あぁあ・・・・」

男が絶句しています。

時任が物凄い勢いで男を睨んでいます。
こんな時等は見たことありません。
髪の毛が逆立っています。
まるで親ライオンみたいに・・・

その場はそれで収まりましたが。
どうもこのレクリエーションはおかしいです。


△5日目△

今日も不穏な空気のまま終わりそうです。


△6日目△

夜、寝ていると有村に起こされました。
月明かりが入っているだけの暗い部屋で
ヒソヒソ話しています。

時任「普通の実験と聞いていたが、おかしい。」
伊達「こんなんじゃ優しくなれないですよ!」
三國「うぅ・・・ん・・・zzz」
桐生「三國寝てますよ・・・起きなって。」
奈良崎「結局レクなんですか?実験なんですか?」
有村「ちょっと・・・変ですよ・・・」
奈良崎「看守気取りのアレも行き過ぎですし。」
伊達「何の実験なんでしょうか?」
奈良崎「看守と囚人のアレ・・・だろうね・・・」
時任「何で今更、お屋敷で?必要あるの?」
有村「今やったら確実にどっかから怒られるヤツですよ。」
霧生「このまま従うのはシャクですよね・・・」
三國「・・・zzz」
時任「まぁ・・・このメンツを採用したんだし・・・」

その時・・・

声「お前ら!何を話してる!」

部屋の明かりがついてスピーカーから声がしました。

奈良崎「また出た・・・ウンザリですね・・・」
時任「同感だが、大丈夫だ!」

外野を無視して話をしていると、
苛立った声が怒声にかわりました。



おや・・・?

伊達の様子が・・・



霧生「伊達やん?」
時任「あ~あ」
有村「えっと・・・伊達さん?」

伊達がガラスに向かって歩き出しました。
黒い男がガラス越しに警棒を振りかざしたとき・・・
パイプベッドを伊達が蹴り飛ばし、

ガシャーーーーーーーーーーーン!!!

大きな音を立てガラスが割れました。

声「強化ガラスだぞ?ひぃぃぃぃ・・・」

男たちは明らかに動揺しています。

伊達が男達に向かって吠えました。
鼓膜がビリビリいう程の咆吼です。
こっちもライオンです。

声「うわぁァァァァァァァァァァ!」

男たちは散り散りに逃げ出しました。

伊達は怒ったような笑ったような顔をしています。

奈良崎「えっと・・・追いかけて懲らしめますか?」
時任「一応実験って話だし・・・それは・・・」
有村「戦場ならお咎めなしですよ?」
霧生「戦場なら・・・ね・・・」
伊達「また壊してしまいました・・・」
奈良崎「仕方ないよ・・・」
伊達「まだ優しくなれませんね・・・」
時任「構わないさ。伊達・・・よくやった。」
伊達「いいんですか?そんなコト言って・・・」

実験は失敗でしょう。
報酬もパアです。
せっかく我慢してたのに・・・

時任「伊達を採用している時点でこうなる事は・・・」
霧生「予測の範囲内ってコトですね。」
時任「正解!」
有村「ならば・・・この後、伊達さんが暴れても・・・」
奈良崎「実験で収まると・・・」
伊達「ホントですか?いいんですか?いいんですか?」
時任「怪我させるのはまずい・・・」

どうにも納得できません。

ふと、地面に目をやると、
黒い男たちの警棒が落ちています。
ふむ・・・どうにも柔らかい・・・
スポーツチャンバラの竹刀のようです。
落ちているナイフも刃が引っ込むオモチャでした。

こんなオモチャで脅していたなんて・・・
こんなオモチャで気が大きくなって・・・
こんなオモチャで・・・

フツフツと感情が湧き上がります。

しかし、ここで怒ってしまっては仕返しになります。
それは・・・あまりよくありません。

実験とは言え悪は正義によって成敗されねばなりません。


私は、スポチャンの竹刀を2本手に取りました。
大きく息を吸うと・・・霧生と目が合いました。
霧生も同じことを考えているようです。

軽く頷きあうと・・・

霧生&奈良崎「たすけてーー!スカイウォーカーーーー!」

二人で大声を出しました。

すると、我々の横を一陣の風が通り過ぎました。
私の手にあった柔らかい竹刀を奪って・・・




ヒーロー登場です。



三國が柔らかい竹刀を持ってポーズを決めています。

時任「・・・三國?」
三國「・・・zzzz」
有村「寝てます・・・ね・・・」

霧生「悪人はあっちに逃げました!」
奈良崎「助けて!スカイウォーカー!」

三國改めスカイウォーカーは軽く頷くと
風のような疾さで駆け抜けて行きました。


声「うわああああああああああ!」

遠くで声がします。
聞こえるけど、聞こえません。


ゾロゾロと帰る準備をしました。
実験終了のアナウンスが聞こえます。
中止ではなく終了の・・・
夜が開ければ終了のようです。


帰る準備を終えて、
夜が明けるのを待ってます。

有村が上機嫌で帰ってきました。

有村「もう出たほうがいいですよ。」
霧生「でも夜明けまでダメなんじゃないの?」
有村「無事に実験を終わらせるなら、出ましょう。」
霧生「どゆこと?」
有村「危険ですよ?」
時任「危険があるなら・・・出たほうがいいな・・・」

半信半疑で外に出ると・・・
いまだ正義と悪の戦いが続いています。

建物から離れたベンチでそれを見ていると・・・


・・・ドンッ!


後ろで音がします。


施設が・・・


施設が沈んでいきます。


有村「思ったより上手に壊せました。」
霧生「壊せたって・・・」
有村「まだ実験中ですから。」
霧生「ってコトは・・・」
有村「これも実験の範囲です。」

有村もムチャクチャです。

有村「地下に施設破壊のマニュアルがあったので・・・」

何の実験でしょか?
もう本当に意図がわかりません。

お屋敷に来てから、来る前以上におかしな事ばっかりです。


施設が壊れた粉塵が収まると、朝日が見え始めました。


寝ながら悪を倒し、太陽をバックにポーズを決める
スカイウォーカーがとても格好良く見えました。


そんなスカイウォーカーを担いでお屋敷へ歩く我々。
30分も歩くと迎えの車が来ました。

車の中で色々聞かされました。

実験の意図は話せないこと。
報酬は出ないこと。
三國の行動以外が全て予想の範囲だったこと。
添削さることを前提とした日誌なら書いても構わないこと。



かなり長い日誌になってしまいましたが。
今回は、不可思議な事件の報告でございました。

長々と、書いてしまいました。
乱文失礼いたします。

奈良崎で御座いました。

平穏が恋しいこの頃でございます。



熱帯夜が続くと耳にしました。
くれぐれも体調にだけはお気を付け下さいませ。








追記

最近スポーツチャンバラの竹刀を怖がる使用人が
複数いると聞きました。
お嬢様、お坊ちゃま、柔らかくても竹刀でございます。
お持ち運びの際は専用のケースにてお運びいただき、
お屋敷ではクロークで執事にお預け下さいませ。
決してお屋敷でお手入れなどなさらぬようお願い致します。

カテゴリー: 奈良崎 — Swallowtail 16:30