未成年者の交通事故における親の責任

 片井 輝夫

2013年08月01日

<ポイント>
◆概ね小学生以下の未成年が起こす事故については、親が責任を負担する
◆概ね中学生以上の未成年が起こす事故については、親は責任を負担しない
◆自転車事故でも賠償額が過大になることがある

神戸地方裁判所は、平成25年7月4日、小学校5年生の男の子が、マウンテンバイクに乗って坂道を下っているときに歩行中の60代の女性と衝突し、意識不明の後遺症を残す頭蓋骨骨折を負わせた事故について、少年の母親に総額9500万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。

未成年者が交通事故や犯罪を起こした場合の本人と親の民事責任について、民法はつぎのように定めています。
まず、未成年者本人については、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、賠償の責任を負わないと定めています(民法712条)。そして、この場合は、親権者などの子を監督する法定の義務を負う者が、賠償責任を負います(同714条)。但し、親は、監督者の義務を怠らなかったとき、又は義務を怠らなくても損害が生ずべきときは責任を免れます(民法714条但書)が、監督を怠らなかったことの立証責任は親が負うことになっています。

例えば、5才の子供が、友達とマンションのベランダでふざけていたところ、友達を過って突き落として死亡させたというような事例を想定するとわかりやすいと思います。
このように、子がまだ善悪の判断や、加害行為によってどのような法律上の責任が発生するかについて認識・判断する能力(これを、責任弁識力といいます)を持っていない場合は、未成年者本人は全く賠償責任を負担しません。しかし、それでは不公平なので、この場合は、監督者である親に賠償責任を負担させているのです。また、親は、十分に監督をしていたことを自ら立証できなければ、責任を免れないことになります。

この民法の定めは、逆にいうと、未成年者が責任弁識能力を持っている場合は、未成年者であってもその本人が賠償責任を負担しますし、親は特殊な場合を除き賠償責任を負担しないことを意味します。前記の例で、17才の少年の場合でいうと、未成年者であっても責任弁識力があると考えられますから、未成年者本人が賠償責任を負担し、親は賠償責任を負担しません。

何才になれば責任弁識力を持つといえるのかについては、法律は明確な定めをしていませんし判例もまちまちですが、一般的には小学校を卒業する12,3才で責任弁識力を持つようになるといえます。
今回の神戸地裁の判決事例は加害者の年齢が11才の小学校5年生ということですので、責任弁識能力がないと判断したことは特に異例というわけではありません。また、親が監督責任を果たしていたことを反証できなかったということも、立証責任の観点からして頷けることです。想像ですが、おそらく、その母親は、子供に対して「自転車に乗るときは気をつけてね。」とか「スピードをださないようにね。」といった程度の注意をしていたでしょうが、その程度で十分な監督責任を果たしたとはいえないのです。

未成年者が重大な事故や犯罪を起こした場合、親が当然に賠償責任を負担すべきだとする世論もありますが、現行の法律制度では、13才以上の未成年の事故や犯罪の場合、親であるからというだけで責任を負担することにはならないことも留意すべきです。
本件は、最近増加傾向にあるとされる自転車による重大被害例としても、注目されました。自賠責保険がない自転車事故は、事故発生の場合に多額の賠償責任を負担することがありますので、ファミリー保険などの賠償責任保険でカバーしておくことが望ましいと思います。