フランス:極右政党でお家騒動…父娘が反目
毎日新聞 2015年04月10日 12時05分(最終更新 04月10日 12時53分)
【パリ宮川裕章】フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首(46)と父で党創設者のジャンマリ・ルペン前党首(86)の確執が表面化している。ジャンマリ氏が繰り返す人種差別的な発言が、「普通の政党」を目指すマリーヌ氏の方針と相いれないからだ。マリーヌ氏は8日に声明を出し、国民戦線が17日に開く予定の会議で、ジャンマリ氏の12月の地方圏選挙への立候補に反対する意向を表明。政治路線を巡って父娘が対立するお家騒動の様相を呈している。
◇人種差別発言巡り
ジャンマリ氏は9日発売の週刊紙のインタビューで、第二次大戦中に仏国内のユダヤ人を強制連行するなどナチス・ドイツに協力したビシー政権のペタン元帥について、「裏切り者だと思ったことは一度もない」と擁護する発言をした。マリーヌ氏は同紙の発売を前に8日、「政治的自殺行為だ」と厳しく非難し、ジャンマリ氏の政界引退もささやかれ始めた。
両者は移民制限などの政策で一致しているが、以前から人種差別的発言が多いジャンマリ氏と対照的に、2011年に党首を引き継いだマリーヌ氏はそうした発言がなく、オランド大統領の与党である左派・社会党や、サルコジ前大統領が党首を務める右派・国民運動連合の2大政党に失望した低所得者層を中心に支持を拡大。昨年の欧州議会選では国内最高の得票率だった。
ジャンマリ氏は最近も、スペイン系のバルス首相を「移民」と呼んだほか、第二次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺について「ささいなこと」と発言し、物議を醸していた。
一部には、ジャンマリ氏が伝統的な極右思想の支持者をつなぎ留め、マリーヌ氏が新しい支持層を開拓する役割分担ではないかと推測する声も出たが、国民戦線幹部は仏メディアに「父娘の確執が決定的になった」と語っている。極右の専門家、ビルジニ・マルタン氏はAFP通信に「ジャンマリ氏を排除すれば国民戦線は一部の支持者を失うが、より大きい支持層を獲得するだろう」と予測した。複数の仏世論調査では、17年大統領選の第1回投票で、マリーヌ氏が2大政党の候補を上回ると予測している。