「シュクシュクと進めます」。この発言からどんな場面を連想しますか。苦境にある政治家の答弁、不祥事を起こした組織のトップの記者会見など、神妙な顔つきで受け答えする場面を見たことがあるのではないでしょうか。近年よく耳にするようになった「粛々」、登場回数が増えた理由はこの言葉の使われてきた歴史と思わぬ背景にあるようです。
「粛々」を使った発言件数を国会会議録検索システムで調べると、1990年9件、2000年48件、2010年57件と確かに増加傾向にあります。直近の3年(2009年~)に限ると168件で、発言者は首相や大臣を含め多岐にわたっており、国会の場で幅広く使われていることが分かります。
■菅前首相が断トツ
竹下内閣以降、歴代首相の在任中の件数を調べてみました。菅直人氏14件、竹下登氏と橋本龍太郎氏がそれぞれ4件、森喜朗氏と福田康夫氏(それぞれ3件)と続きます。最多の菅氏はどんな状況で「粛々」を使っていたのでしょうか。大部分は2010年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件についての答弁です。事件への対応を巡って追及を受けている場面で、当時首相だった菅氏は「国内法に基づき粛々と判断を行った結果」と繰り返し答えています。
粛々は本来「(1)つつしむさま(2)静かにひっそりしたさま(3)ひきしまったさま(4)おごそかなさま」(広辞苑第6版)という意味です。しかし、「粛々と進める」「粛々と対応する」といった場合、国語辞典にある意味よりも、日本語大シソーラス(類語検索大辞典、大修館書店)にあるような「冷静、不動、平常心」といったニュアンスを含んで使われています。
使用実態が本来の意味から変化していることについて、漢和辞典編集者の円満字二郎氏は著書「政治家はなぜ『粛々』を好むのか」(新潮選書)のなかで、擬音語として用いられた流れが確実に存在すると分析しています。
森喜朗、橋本龍太郎、福田康夫、菅直人、野田佳彦
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