わかりやすくすると失うもの
さて唐突ですが、一般的に
「わかりやすいこと」は「良いこと」と
されることが多いようです。


わかりにくい話は、聞きづらいですし、
わかりやすい話は、聞きやすいですから、
当然と言えば、当然かもしれませんね。


その「わかりやすい」についてですが、
わかりやすくものごとを伝えるコツとして
よく知られるものの1つに、
「分ける」という手法があります。


例えば、
「人材育成を成功させるには、3つの秘訣があります。
1つは~、2つ目は~、3つ目は~です」
と分けて話すと、聞き手としては、
頭が整理されてわかりやすい、ということですね。


「分けることは分かること」と言ったりしますが、
分割することは、分かりやすさにつながるわけです。


しかしながら、どんなことにも短所があるもので、
分けてわかりやすくすることにも短所があります。


それは、どんな短所かというと、
「微妙なニュアンスが伝えられない」
という点です。


例えば、
「同僚のAさんの特徴は2つあります。
1つは顔立ちが良いこと、もう1つはやさしいことです」
と話したとしますね。


たしかに、これは分かりやすい話し方ではあります。


しかし、こういった話し方で、その人の個性を
どこまで正確に伝えられるでしょうか?


もしかすると、その人は、一見顔立ちが良くても、
顔の端に目立つほくろがあって、そこに注視すると、
何となくおかしな顔に見えてくるかもしれません。


「やさしい」という特徴も、職場ではそうでも、
プライベートでは、ときどきブラックな冗談を言う一面が
あるかもしれませんよね。


わかりやすくポイントに分けて話すということは、
こういったポイントとポイントの間にある微妙なニュアンスを
そぎ落としてしまうことにもなるわけです。


このブログは人材育成がテーマですが、
人にまつわることほど、その微妙なニュアンスの方に
本質が隠れていることがあるものです。


整理されたわかりやすい話を聞いたとき、聞き手としては、
「そぎ落とされた部分の方に、
実は本質が隠れているのかもしれない」
と意識しておくのも、大切なことかもしれませんね。