記事詳細
関東大震災で発行中止の幻の「紀念切手」、一部がパラオに送られ焼失免れる 90年前から続く皇室との縁
今から約90年前、昭和天皇(当時、皇太子)の御婚儀を記念した切手の発行が計画されていた。「東宮御婚儀祝典紀念切手」と名付けられた切手は関東大震災で焼失、発行中止となったが、ごく一部が日本が委任統治していたパラオへ事前に送られていたことで難を逃れ、後に皇室へ無事献上されたという。幻の記念切手がつなぐ皇室とパラオの縁。所有者は「日本とパラオの関係を改めて知る機会になれば」と話している。(稲場咲姫)
山梨県富士河口湖町の 会社社長、中村初男さん(68)が所有しているのは「東宮御婚儀 祝典紀念絵葉書」と書かれた封筒1点と、記念切手が各2枚ずつ貼付された絵はがきが2点。切手は縦30ミリ、横27ミリで、「パラオ局」を示す消印が押してある。
4年前に亡くなった父の遺品で、自宅の押し入れの中から出てきた。どのような経緯で父が持っていたかは不明という。
「郵政博物館」(東京都墨田区)や「お札と切手の博物館」(東京都北区)によると、「東宮御婚儀祝典紀念切手」は大正12年11月に予定されていた昭和天皇の御婚儀を記念して作成。1銭5厘、3銭、8銭、20銭の4種類で、筑波山や東宮仮御所が描かれている。
しかし、同年9月1日の関東大震災で、すでに印刷されていた完成品や切手の原版は焼失し、発行は中止に。御婚儀も延期された。