歌舞伎町浄化作戦が完了!風俗店を潰し、街と人々の生活を破壊 再開発という愚行
東京・新宿区歌舞伎町の新宿コマ劇場が解体され、その跡地に4月17日、TOHOシネマズ新宿がオープンする。この施設には実物大のゴジラ模型が併設されることも話題を集めている。これにより、2004年に石原慎太郎東京都知事(当時)によって開始された「歌舞伎町浄化作戦」と呼ばれる大規模な改革は、ひと区切りを迎えることになった。フィリピン・スモーキーマウンテン(「Thinkstock」より)
この作戦では、違法な風俗店の摘発やヤクザの締め出し、スカウトやキャッチ行為の規制など、歌舞伎町の悪評を払拭するべく、さまざまな施策が取られた。また、昨今強化された危険ドラッグの取り締まりも追い風となり、街からは薬物を扱う店も次々と姿を消している。
このような傾向は新宿だけのことではなく、アジア全域で起きている。
アジアに広がる浄化の流れ
東南アジアを代表する風俗業界を有するタイでは、14年のクーデターによって軍部が政権を握ったことで、強烈な締め付けが始まっている。飲食店は慣習的に、深夜でも客がいる限り営業するような店が少なくなかったが、通報や摘発を恐れて深夜0時から1時頃には閉店するようになった。
ほかにも、店舗内で女性従業員がトップレスになることが禁止されるなど、ノリの良さが信条のエンターテインメント系の風俗店にとっては大きなダメージとなっている。
タイのほかにも、風俗店の摘発で注目を集めたのは、インドネシア第2の都市、スラバヤである。この街には、ドーリーと呼ばれる置屋街があった。置屋とは、女性を店内で選んでから連れ出すスタイルの古くからある風俗業態である。ドーリーの規模は2000軒ともいわれ、「東南アジア最大の色街」と呼ばれていたが、女性市長が就任した13年末に一斉摘発が行われた。
これにより置屋はすべて閉鎖され、結果として働いていた女性だけでなく従業員や置屋のまわりにあった食堂、ヘアサロン、ネイルサロン、洋品店などの周辺産業も打撃を受けた。単純に売春を肯定することはできないが、そこが一大産業となっていた場合に、浄化によって街が受けるダメージは計り知れない。
実際に、神奈川・横浜市黄金町にあった置屋街は、05年の通称「バイバイ作戦」によって警察に集中摘発されて全店舗が閉鎖され、売春行為は激減した。その後、アートを前面に押し出した街づくりが進められているが、目覚ましい成果は上がっていない。それどころか娼婦や客を目当てに出店していた飲食店が軒並み撤退したことで、街の活気はすっかりなくなってしまったという。
ドーリーでは、代替産業として仕立ての職業訓練所のような施設をつくったが、それひとつでは十分な雇用を生み出すことはできていないのが実情だ。