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香港で進む独立禁止法制定 中国の意向色濃く

産経新聞 4月10日(金)7時55分配信

 【北京=矢板明夫】香港の与党、民主建港協進連盟(民建連)など複数の親中国系政治団体が反中活動を規制する「香港独立禁止法」の作成を進め、大きな波紋を広げている。香港で昨年、大規模な反中デモが起きて以降、市民の間に現れた香港の独立を目指す動きを牽制(けんせい)する狙いとみられる。背後に中国当局の意向が存在している可能性が高く、法案が立法会(議会、定数70)に提出されれば市民の反発は必至の情勢だ。

 法案の作成を担当する民建連幹部の馬恩国弁護士が4月上旬、人民日報傘下の環球時報の取材に対し、法案の構想と内容の一部を明らかにした。

 それによると、法案は4つの部分で構成される。(1)香港の独立を求め、国家の分裂を企てた者は10年から無期懲役の刑(2)香港の完全な自治を求める者は最高で懲役20年(3)中国大陸から来た観光客などを攻撃したり、買い物などの経済活動を妨害したりした場合は最高で懲役3年(4)香港独立を求める団体や組織に資金援助などをした場合は最高で無期懲役−といった内容になるという。

 香港の独立を求める勢力が今年に入り、英国で「香港独立党」の設立を模索する動きもあるが、現在の中国の国内法「反国家分裂法」が、一国二制度の香港に適用しづらい背景が法案作成の背景にあるとみられる。中国当局の指示で香港の親中派が作成したとみられるが、内容が明らかに中国寄りであるため、香港と中国本土の民主派が反発している。

 北京の人権派弁護士は「法案は香港の価値観を否定するものだ。馬弁護士たちは中国政府の用心棒にすぎない」と批判した。

 香港の立法会は現在、親中派が過半数を占めているが、反中デモ以降、香港市民の間では嫌中感情が高まっており、民意を受けて法案が修正される可能性もある。

 8日付の香港紙、東方日報は「早ければ6月にも成立する」と報じたが、香港の梁振英行政長官は「そのような計画は今のところはない」と否定した。

最終更新:4月10日(金)8時1分

産経新聞