青函トンネル白煙:「避難5時間」救援列車の活用めざす
毎日新聞 2015年04月09日 23時27分(最終更新 04月10日 06時16分)
青函トンネルで3日に起きた特急スーパー白鳥34号(6両編成)の発煙事故。火災の予兆がありながら運行を継続し、消火設備や避難所を備えた旧海底駅を通過したことに識者から疑問の声があがる。1988年の開通以来初となった乗客の避難事故は、北海道新幹線(新青森−新函館北斗)に向け大きな課題を残した。
■出ていた警告
JR北が青函トンネルでの避難手順を定めたマニュアルでは、火災や発煙を検知した場合、「定点」と呼ばれる2カ所の旧海底駅で停車することになっている。定点付近には車軸の温度を検知して220度以上の場合は列車を止める装置があるが、今回は旧竜飛(たっぴ)海底駅で160度だったため作動しなかった。この点についてJR北は「通常のブレーキをかけても200度近い温度になることがある」として、やむをえなかったとする。
特急の運転席では、JR函館駅を出発後、非常ブレーキで停止するまでの間に4回、モーターの制御装置の異常を示す警告が出ていたが、運転士は警告表示がすぐに消えたため運行を続けた。JR北の難波寿雄車両部長は「表示が消えれば正常に戻ったことを意味する。運転を継続しても問題ない」とするが、JR北は4日付の文書で同様の警告が出たら緊急停車するよう乗務員に指示した。
■火花で停車
トンネル内で火災が発生した場合、列車はその場に停車しないのが鉄則だ。これは、72年に旧国鉄北陸線北陸トンネルで列車がトンネル内に停車して乗客30人が死亡した火災の教訓で、JR北のマニュアルでも、定点で停車できない場合はトンネルを走り抜けることになっている。
今回は車内に異臭や白煙が立ち込め車掌が火花を目撃したため、非常ブレーキをかけ緊急停車した。旧竜飛海底駅を1.2キロ過ぎた地点で、トンネルの出口までは11.7キロ。そのまま走行していれば10分足らずで走り抜けられたはずだった。
JR北では2011年5月に石勝線脱線炎上事故が発生。現場で社員が危険を感じたら列車を止める「安定運行より安全最優先」を提唱しており、島田修社長は8日の記者会見で「停車位置はベストだった」と述べた。これに対し、鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「警告などのサインがあったのだから、定点で停車すべきだった」と指摘する。
■ケーブル9往復