与えられた機会と培った力
すっかり秋の気配も濃くなり冬がまもなく・・・で、ございますね。
お嬢様、お坊ちゃま、御機嫌如何でございましょうか?
奈良崎で御座います。
私の手元に真新しい箱がひとつ・・・
蝶のエンブレム入りですね。
手紙が一枚・・・
君ももうすぐお屋敷に来て二年。
もうピンときてると思うが、そういう事だ。
宜しく頼む。by 雪村
・・・と、書かれた手紙が一枚。
・・・さてどうしましょう?
・・・頼まれてしまいました。
・・・ふむ。
・・・うん!
紅茶でも飲みながら考えましょうか。
紅茶場で箱とにらめっこ。
開けてみましょうかね・・・
箱の中に色々な小さい袋と手紙が一枚。
「自由に使って構わないが、乱用は控えめに!」
さて・・・
そう言われると、乱用したくなるのが人情。
しかし、雪村執事から来た依頼で怒られるのも避けたいところ。
真面目にやりましょう。
いつもの紅茶場の椅子の上で胡座をかき、腕を組み、唸ること唸ること・・・
頭がショートしそうです。
そんな時、人影が・・・
奈良崎「堤さんでしたか。」
堤「どうしたんだい?こんな時間に。」
奈良崎「実は・・・」
~中略~
堤「なるほどね・・・自分したい事をどう伝えるかを考えてごらん。」
奈良崎「はい。」
堤「そうすれば答えはすぐに出るはずだから。」
奈良崎「ありがとうございます。」
流石、堤さん!頭の霧が少し晴れてきました。
さて、目的と・・・言いたいことですか・・・
おや?気がつくと隣に荒垣が・・・
荒垣「この袋はなんですか?」
奈良崎「ああ、これはね・・・」
~中略~
荒垣「プロテインの袋だったんですね。」
奈良崎「違います。」
荒垣「え?でもコレって・・・」
奈良崎「違います。」
そんなに筋肉が欲しいのでしょうか?
残念ですが、私に聞かれても困ります。
伊達の部屋に行ってもらいました。
ふむ・・・
大分出来上がってまいりました。
しかし、何かしっくり来ません。
休憩してお酒でも飲みましょうか。
そんな時・・・
時任「待ちたまえ!」
奈良崎「時任さん。」
時任「相談したまえ。」
奈良崎「ありがとうございます。」
時任「そして君が持っているのはお酒ではなく麺つゆだ。」
奈良崎「そんな・・・何でお酒の瓶に・・・」
時任「それは・・・」
~中略~
奈良崎「ありがとうございます。」
時任「うん!伝えたのはカクテル的な意見だが、後は応用次第だな。」
時任さんの言う通りかもしれません。
自由な発想と視野・・・勉強になりました。
完成までもう少しですね。
そろそろ誰かアドバイスを私に・・・
おお!伊織さんではないですか。
奈良崎「伊織さん・・・実は・・・」
~中略~
伊織「まぁ、僕の主観だけどね。」
なんというアドバイス。
なんというスマイル。
なんという優しさ。
胸が熱くなります。
これなら、予定よりも早く雪村執事に報告できそうですね。
~中略~
うん。
私にできる最大限。
私にしたい事。
私なりのメッセージ。
うまく伝えられそうです。
気がつけば朝日が窓から注いでおります。
おはようございます。小鳥さん。
おはようございます。茅ヶ崎さん。
おはようございます。いつもより少しだけマッチョな荒垣くん。
茅ヶ崎「おや、奈良ちゃんそれは噂の・・・」
~中略~
茅ヶ崎「ほほう、ではまず私から・・・」
~中略~
茅ヶ崎「ふぅむ。これは・・・」
~中略~
茅ヶ崎「いやしかし、奈良・・・」
~中略~
茅ヶ崎「いやいや、なんと・・・」
~中略~
奈良崎「ありがとうございました。」
茅ヶ崎「何をおっしゃる。」
荒垣「がんばって下さいね。これは僕からのプロテ・・・」
奈良崎「きもちだけもらっておくね。」
さて。
当家のエンブレムの入った箱を貰ってからどれくらいの時間が経ったのでしょう。
どれくらいの人に助けられたのでしょう。
その全てを背負って、私は執事室のドアを叩くのです。
おや。
ずいぶん長くなってしまいましたね。
続きはまた次の機会に。
奈良崎で御座いました。