怪談は英国では冬の風物詩・・・もう春ですけど

寒い日と暖かい日が交互にやってくる季節になりました
お嬢様、お坊ちゃま方
如何お過ごしでございましょうか?
奈良崎で御座います





さて、先日の事でございますが
私の身に起きた出来事をお伝えしようと思います




私の部屋はお屋敷の地下にあります
大旦那様、大奥様のコレクションギャラリー
その奥の警備室を少々改造した部屋が私の部屋でございます


私はその日のお勤めを終え
軽い食事を終え
シャワーを浴び終え
夜の散歩を終え
部屋に戻り
ベッドの中に潜り込もうとした時の事でございます
ギャラリーを監視しているカメラに黒い影が一瞬だけ映りました
はて・・・?
鋒崎執事が侵入する防犯訓練は来月の予定ですし
お屋敷の防犯体制は万全の筈です


もしやオカルト的な何か・・・なはずはありません
お屋敷に限ってそんな事はありません
ありません!!
しかし今後の憂いは絶っておかねばなりません
ですが私一人では少々不安ではあります


まずは瀬戸を訪ねました


奈「瀬戸さ~ん お化けっぽいのを退治しましょう」
瀬「っぽい・・・ってのはどういうこと?」
奈「まだ疑惑の段階なので断定できないのですよ」
瀬「そうなんだ でも僕は奈良崎君みたいに柔道とか出来ないよ?」
奈「じゃあ何か武器でもあれば・・・」
瀬「なら・・・コレだね(ニヤリ)」


瀬戸が持ち出したのは二本のドラムスティックでした
先日私が瀬戸にやった軽いイタズラを根に持ってるのでしょうか?
ただ満面の笑みを浮かべる瀬戸に私は何も言えませんでした


とりあえず仲間が一人




次は牧村です


瀬「牧村く~ん 起きてる?」
牧「起きてますよ~ どうしたんですか?」
奈「今からお化け退治っぽいことを・・・」
牧「行きます!!」
奈「決断早いね・・・」
牧「任せてください!!」
奈「・・・はい」
牧「じゃあ武器を持っていきます」


部屋の隅をさぐる牧村
瀬「・・・それは何?」
牧「ゴルフクラブですよ~」
瀬「牧村君ゴルフやるの?」
牧「やりませんよ~」
瀬「何で持ってるの?」
牧「買ったんですよ~」
奈&瀬「・・・」




よくわかりませんが
これで仲間が二人


奈「そういえば三木君は?」
牧「ハの湯を探しに行っったまま戻ってません」
奈「いつから?」
牧「昨日の朝からです~」
奈「・・・」


まぁ
三木の事ですから問題は無いと思います




次は服部を訪ねました


瀬「服部さ~ん」
奈「いますか~?」
瀬「返事が無いですね」
牧「部屋のカギは開いてますよ~」
奈&瀬「・・・」
牧「でもドアが開かないですね~」
奈&瀬「・・・」
牧「あ~ドアノブ取れちゃいました~」
奈&瀬「・・・」


そっと服部の部屋を離れました




次は常盤です


常「面白そうですね 行きますよ」
瀬「ありがとうございます」
奈「武器はどうしますか?」
常「そうですね・・・じゃあ僕はこれで」


空のビール瓶を二つ持ち出す常盤


奈「えっと・・・それはどう使うのですか?」
常「コレはですね 二つをぶつけて割って・・・」

パリンと二本の瓶同士をぶつけて割る常盤


常「この尖ったところを・・・」
瀬「本格的過ぎます!」
常「こんなの序の口ですよ~」


満面の笑みを浮かべる常盤に私と瀬戸は何も言えませんでした・・・
そして何故に牧村は感心していたのでしょうか?


これで三人目の仲間を得ました




パーティは
私、瀬戸、牧村、常盤の四人
この四人で第一次お屋敷オカルトGメン(仮)結成です


現場である地下ギャラリーに到着してみると
やはり何も問題はありません


すると私の部屋の方から


声「だれか・・・だれか・・・」


凍りつく私たち


恐る恐る部屋に入ってみると・・・なんと






三木がいました


奈「なんで三木君が私の部屋に?」
三「ハの湯を探して・・・」
奈「ここはお屋敷の地下なんですけど・・・」
三「お屋敷に迷って・・・」
奈「遭難したと?」
三「・・・はい」
奈「私の部屋で?」
三「入ったら出られなくなっちゃって・・・」
奈「どうやって入ったんですか?防犯装置もあったでしょう」
三「わかりません 死ぬかと思いましたけど・・・」


よく見ると三木の周りには食べ物が散乱しています


瀬「三木君口の周りがすごい汚れてるね」
三「食べ物だけは沢山あって助かりました」
奈「それ私の明日の食事なんですけど・・・」
瀬「餓死しなくて良かったよ」
三「こんな牢獄みたいな場所に食べ物があるなんて天の助けですかね~」
奈「・・・私の部屋ですって」
三「でもそれ以外は何もなかったです」
瀬「確かに何も無い部屋だね」
牧「ぬいぐるみは・・・いっぱいあるんですけどね~」
奈「・・・」




何だか酷い言われようでしたが一段落
お化けの正体が三木だった事が判明し安心する私
監視カメラのモニターから死角を割り出そうとする瀬戸
持って来た割れたビール瓶を分別して捨てる常盤
冷蔵庫の中から勝手に私の食事を漁る牧村


そんなこんなで夜は更けていき
地下ギャラリー&私の部屋のお化け騒動は幕を閉じたのでございます






翌朝


奈「あの時モニターに移った黒い影は三木君だったんだね」
三「モニター・・・ですか?」
奈「そうそう ギャラリーの監視カメラの映像だよ」
三「私は奈良崎さんの部屋から出られなくなったので
あの時間ギャラリーにはいませんでしたよ・・・」
奈「・・・」


その日私のベッドに更に新しいぬいぐるみが来た事は誰にも言ってません




そしてモニターの影はモニターの不調ではなく
私の部屋の照明の不調だと判明しました
これで一安心です
防犯装置も更に強固にした事は言うまでもありません




だから


牧村君
置いていったゴルフクラブを早く持って帰って下さい




奈良崎で御座いました

カテゴリー: 奈良崎 — Swallowtail 21:59