韓国の李明博(イ・ミョンバク)前政権の失政が波紋を広げている。海外でのエネルギー資源開発を目指した「資源外交」で、最大60兆ウォン(約6兆6000億円)超の損失を出していた可能性があることが判明した。横領疑惑で韓国検察が本格捜査に乗り出す事態に発展しているが、前政権の失政が注目を浴びる背景には、朴槿恵(パク・クネ)政権の影も見え隠れする。「政権批判をかわすために利用しているフシがある」(専門家)というのだ。
「血税の浪費だ」
韓国内で、こんな批判が渦巻いている。矛先が向くのは、李明博前大統領。政権を発足させた2008年から退任する13年まで5年にわたって行った「資源外交」の実態が明るみに出てきたことが、国民の怒りの導火線に火を付けた。
「『資源外交』は、李政権が発足当初から掲げた目玉政策の1つ。海外でのエネルギー資源開発を目指し、韓国石油公社などの公営企業が先頭に立った80の事業に巨額の資金が投入されたが、そのほとんどが失敗に終わった」(外交筋)
韓国紙「ハンギョレ」によれば、09年10月に韓国石油公社が行ったカナダのエネルギー会社の買収では、1兆ウォン(約1100億円)を超える損失が発生。08年のイラクのクルド油田開発では、原油採掘が実現せず、莫大(ばくだい)な損失が出たことを苦にした開発担当者が自殺する事態も発生したという。
韓国監査院の調査では、こうした海外資源開発事業でこれまで約31兆ウォン(約3兆4100億円)が費やされ、今後も約34兆ウォン(約3兆7400億円)の支出が発生。このうち回収できたのはわずか約4兆6000億ウォン(約5060億円)で、残りの回収の見通しは立っておらず、損失は最大で60兆ウォンに上るとみられる。