【ポケモン対戦考察】改造する人、叩く人 Part1~対戦とマナーと正義~

 

f:id:first1178:20150406224318p:plain

 ●本記事について

 ポケモン対戦というゲームにおいて、おそらく史上最も問題視され炎上し続けている行為、それが「改造」である。

 BW2で行われた大会「2013 Glovbal Shadown」ではなんと大会参加者の内1558名が不正ツール(改造)を使用していたことが発覚し、ORASのネット対戦初期では使用できないはずのポケモンが使用率ランキング上位へ食い込み話題を呼んだ。

 

 本記事では主に「改造ツールによって生み出されたデータをポケモン対戦で利用すること」を改造の定義とし、ポケモン対戦に直接関わりのない内部データ解析やマップデータの改造等については特に言及しないこととする。

 

 誤解のないよう最初に書いておくが、本記事では改造したプレイヤーに対する擁護的な意味合いを含む項目を扱うもののゲーム機の外部ツールを利用した改造行為はポケモンに限らず違法性の絡む問題に発展する可能性を孕んだものであり、それらを奨励する主旨は一切ないことにご留意いただきたい。

 

 今回は読みやすさを考慮した結果Part1とPart2の2つの記事に分け、前者(本記事)では主に改造の例やそれに対する動向、マナーの問題について、後者(後述記事)ではそれらを鑑みた結果から読み取れるポケモン対戦の現状、及び考察を書き記していきたい。

 

改造とは?

 定義を定めたはいいものの、一言でポケモン対戦における改造と言っても様々なケースが存在している。

 例としては、

1、対戦環境にそもそも存在し得ない技構成のポケモン(レーティングバトルにおける噴火を覚えたヒードランなど)

 最も改造バレが起こりやすいであろうタイプで、広義的に捉えればノーガード絶対零度カイリキーなどもこちらに含まれるがこちらは最早何をかいわんやといったところであるため割愛させていただく。

 

2、技構成自体は普通だが、どこかしらに存在し得ない矛盾が相手プレイヤーから見て発生するポケモン(ダイブボール入り激流ラグラージなど)

 こちらは改造判別に際し多少の知識が必要とされるタイプの個体。こちらの個体がなぜ改造扱いされるのかというと、ダイブボールに入ったラグラージ自体は存在するのだがその個体の特性は湿り気でなくてはならないからというもの。

 

 XYよりタマゴから生まれるポケモンはいくつかの種類を除き基本的には「メスの」親から入っているボールを遺伝するようになったのだが、前述のダイブボールに入ったラグラージ系列の個体を手に入れるには現状BWのPDWでシリアルコードを入力しハイリンクに連れてきた「オス固定の」湿り気ミズゴロウをダイブボールで捕獲する以外に方法が存在しないため改造だとわかる。

 

3、技構成、個体共に全て実機で再現可能だが改造によって生み出されているポケモン

 こちらは少なくとも対戦中での判別はまず不可能となる。なぜなら、改造した本人が自ら明かすことでしか判明し得ないからである。

 

 例としてはこの辺りだろうか。

 今回は上記のように大まかに3つほどに分け、とりわけTwitter等での炎上が多く見受けられるケース2、並びに多くの使用が見込まれるケース3を中心に解説を進めていきたい。

 

なぜ改造はいけないのか?

 ポケモン対戦プレイヤーの人口のうち、多くの人間が「改造はダメなもの」だと認識していることは想像に難くない。

 その結果、改造が発覚した人間は多くのプレイヤーの目に晒され叩かれ、炎上しているのが現在の状態である。

 しかし、「なぜ改造をしてはいけないのか」という答えをポケモン公式の受け売りではなく自らの考えで持っている人間は意外に少ない。

 もしもあなたがこの行の時点でそういった考えを自分で持っているのなら、それは他よりも少しだけ物事を考える力や洞察力がある証拠であり、ここから先は読まずにPart2の記事へ飛んでもらっても構わない。

 

 ポケモン公式では毎年「改造データを使用して通信を行うと相手に損害を与える場合がある」と警告がなされているものの、これは「実際に損害を与えることが確認されたから」ではなく「制作者の手を離れた以上損害が起きてもこちらの責任ではありませんからね」という意味合いが強い。

 

 事実として改造で生み出されたポケモンを手に入れてデータが破損したという話はほとんどない(もしもそんな簡単に壊れるならそもそもGTSやミラクル交換で簡単に改造産ポケモンが手に入るようにはしない)。

 また、ゲーム業界に限らず商品として売り出された物には必ず「正規の用途以外に手を加えた場合の補償はしない」といった旨の文の記載がなされているはずであり、ポケモンにおけるその文章が上記のそれであるのは火を見るよりも明らかだろう。

 

 つまり、「ポケモン公式がこう言っていたから」というのは改造をしない理由、改造を嫌う理由にはなるものの、実際にデータへの損害が出ていない以上改造した人間本人を叩いていい理由にするには力が弱すぎるということである。

 

悪意の立ち位置

 勘のいい人はもう気がついているかもしれないが、実はポケモン改造を行った人間に対して批判できる権利を持つ人間は実際に被害を受けた人間、つまり対戦においてケース1、2のような相手を引いたプレイヤー、ただ1人のみなのである。というより、これは世の中の悪事ほぼ全てに対して言えることなのではあるが。

 

 例えば、あなたは働いている会社で1つミスを犯したとしよう。すると、その場を受け持つ上司から注意ないしお叱りを受けるはずだ。この時、上司にはあなたから被害を受けた分だけあなたを批判できる権利が生じるのだから当然だ。

 しかし、あなたのミスを聞きつけた他の部署の人間がわざわざあなたの元へやって来てあなたの批判を始めたらどう思うだろうか?

 そう、明らかにおかしいことに気がつくはずだ。例え他所からやってきた人間に正義があったとしても、関係のない人間に正義を振りかざす権利はどこにも発生し得ないということに。ポケモンの改造事件にも、これと同じことが言える(不特定多数の人間と接するゲームであるため、当然ながら規模は変わってくるが)。

 改造を行った人間は悪かもしれないが、それを叩く人間が悪でないとは限らない。

 

 かの閻魔大王には、「一日に三度、焼けた銅を飲まされる」という伝承が存在する。この罰はどの地獄人の受ける罰よりも厳しく辛いものだという。

 なぜ悪人を裁く閻魔大王が罰を受けるのか。答えは至極単純にして明快であり、悪人を地獄へ落とすことそのものが悪行だからである。

 

 閑話休題

 昨今、誰かの悪意に流され自分の知らぬ間に「悪人」に仕立て上げられていく人間はインターネットを通じて急激に増加している。

 そんな人間の末路は当然、次なる「あなた」を生み出すために用意される「叩いてもいい悪人」像でしかない。

 そして、もし正義の心から出た行動で意識的にではなく集団的にただただ他人を叩くだけのような「悪人」があなたの周りにいたのなら、人は正義のためならどこまでも残酷になれるものなのだと教えてあげてほしい。勿論、それがポケモンや改造に関係のない人間であったとしてもだ。

 

ポケモン対戦マナーについて

 ポケモン対戦をSNS等の人の集まるコミュニケーションの場で行っていると、だんだんと仲良くなる相手や実際に友人関係になるような人間とも出会うだろう。ゲーム開発者がそうなるように作り上げたのだから、避けては通れぬ道とも言える。

 そんな中でもしも集団心理に惑わされて「正義の悪人」になってしまった他人がいたとしたら、普通の人間ならどう思うだろうか?

 おそらく、距離を置いて離れていってしまうはずだろう。

 もしもそんな人を見かけたら、「自分はそうなっていないか」とチェックしてみてほしい。あなたが誠実であるなら、自然と他の誠実な人との繋がりが生まれやがてあなたが困った時に6V孵化余り個体を差し出してくれるようになるかもしれない。

 人というのは普段の他人のマナーほどよく見ているものなのだ。

 

Part2へ

 まずはここまで読んでいただけたことに対しての感謝を。

 どちらの記事も扱った問題は同じもののテーマ自体は違ったものを書いているので、個々として完結した内容にしたつもり。

 

 Part2では改造ケース3に触れると共にポケモン本編の対戦システムそのものへ少し突っ込んだ話になりますが、もうしばらくお付き合いいただければ嬉しいです。

 Part2はこちらから↓

first1178.hatenablog.com