設計力向上 開発手法と支援ツールの動向・事例
 
プロフィタブル・デザイン -利益獲得設計-

「iPhone」がもうかる本当の理由

過去の日本企業が実践していた「固定費マネジメント」を取り戻せ

北山 一真=プリベクト 代表取締役
2015/04/09 00:00
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 イノベーションを生み出し続ける米Apple社は、業績面でも超が付くほどの優良企業だ。直近の2014年度(2014年9月27日を末日とする会計年度)では、売上高が約18兆円、営業利益率が約30%と驚異的な数値をたたき出している。

 革新的な製品である「iPhone」が、莫大な売り上げをもたらしていることは理解できる。しかし、30%もの営業利益率を実現している理由は、あまり知られていないのではないか。一般に、販売台数が多いからといって、必ずしも利益率が高いとは限らない。Apple社には、もうかるための仕組みがある。そして、それは1970〜1980年代の古き良き日本のメーカーが実践していた設計手法と極めて似ているのだ。

 現在、日本のメーカーは、「技術力はあるのにもうからない」「コンペで負ける」といった課題を抱えている。そうした状況を打破するためにも、Apple社のもうかる仕組みを学び、自社に取り入れなければならない。

製造業は「固定費回収モデル」

 そもそも、製造業において「もうける」とはどういうことなのか。まずは、そこから解説しよう。以下の図は、製造業のコスト構造を模式化したものである。

製造業の「もうけ」の本質
[画像のクリックで拡大表示]

 製造段階以降に部品費などの変動費(生産量に応じて増える費用)が発生するのに対し、製造段階以前は研究費/設計費/設備費/金型費などの固定費(生産量と関係なく一定の費用)が発生する。そう考えると、製造段階よりもかなり上流で多額の固定費を投資していることになる。そして、時間をかけてさまざまな製品でこの固定費を回収し、もうけを得ているのである。言い換えれば、製造業は「固定費回収モデル」である。

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コメント
かず
確かに垂直統合は儲かる。流通を一段噛ませるだけで15〜20%はピン跳ねされるから。製品の良さをアピールできず値段だけに走っている小売は最低だね。製造業は、固定費を回収するビジネスである事は確かだが、ちょっと表現が分かり難い。収益=売価−固定費−変動費なので、売価をきちんと出せないと収益が取れない。ここは大原則。
でも安売り合戦で売価が崩れるのが実情。その点、アップルは卸価格が高く、実質売価を強制しているのと同じで、上手いマーケティングをしている。日本の家電は、逆に大手量販に決別しアマゾンでの販売に絞れば、そこそこ生き残れるのではないか。
固定費の内、設備や金型、ソフトウェア開発費は原価償却という形で回収するので、償却設定台数を生産すれば、後は利益になる。これこそが製造業の旨みである。情報家電でも、昔は自動化とかしていたので、メーカーは旨みを享受できたが、中国で手組みするとこれが無い。
経営者が初期投資せずに儲けようと企んだのが、結局競争力の低下につながった。その点、自動車メーカーなどは安易に中国には出て行かなかった。そこが家電と明暗を分ける結果になったのではないか。

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