中国企業がドル建て融資のヘッジに苦慮、人民元変動で費用急上昇
[香港 19日 ロイター] - ドル建てで融資を受けている中国企業の為替ヘッジコストが大幅に上昇している。人民元のボラティリティーが高まる中、ヘッジの必要性は大きくなっているものの、企業は負担増に二の足を踏んでいる。
人民元は2014年、予想に反して対ドルで下げ、下落率は2.4%に及んだ。2005年に人民元改革が行われて以来初めてとなる大幅な下げとなり、ドル建て債務を持つ多くの企業は損失を抱えることとなった。
銀行関係者によると、中国人民銀行(中央銀行)が昨年3月に人民元の1日の変動幅を基準値の上下2%に拡大したこと、および米利上げ観測を背景とする人民元への下落圧力により、ボラティリティーは高まる見通しだ。
その結果、一部企業はドルではなく人民元での借り入れを行ったり、ドル建て債務のコストを安定させるためにデリバティブを利用したりして為替リスクを減らそうと躍起になっている。
DBS(香港)の香港・中国企業部門責任者を務めるジンジャー・チェン氏によると、例えば、昨年に期間5年のドル建て融資を受けた中国企業が、実質的に残りの期間4年を人民元建て融資に切り替えるためにクロスカレンシースワップを購入することが考えられるという。
<割れる先行き見通し>
不動産業界を中心とする中国企業はこれまで、中国で人民元建てで借り入れるよりもはるかに低コストであることから、オフショア市場で米ドル建て債券や融資を通じた借り入れを増やしてきた。
オフショア市場では、信用力の高い中国企業は3%を下回る金利で期間3年のドル建て融資が受けられる一方、オンショア市場では人民元建て融資に6─7%の金利が設定されているもようだ。
人民元が安定的に上昇基調をたどるならドル建て融資を受けることは理にかなった行動だが、人民元のボラティリティーが高まっていることで事態が複雑化している。
人民元が1日の変動幅制限いっぱいに近い水準で取引されたり、中国と米国の金利差が大きくなっている中、ヘッジコストは高まっており、一部企業にとってはヘッジに気が回らない、もしくは全てのリスクをヘッジできない可能性があるとの指摘も出ている。
トレーダーによると、期間1年の先物 は過去最高水準となる1900ポイント前後で推移しており、ヘッジコストは約3%になることを示している。
中国系銀行の香港駐在マネジャーは「コストが高水準となっており、人民元が今年に最大3%も下落することに懐疑的な一部顧客は様子見姿勢をとっている」と明かす。
人民元の先行き見通しについてはアナリスト間で見方が割れている。強気の向きは1ドル=6元を割り込んで人民元高が進むと見込む一方、その他は年末までに6.40元に下落するとみている。
ある中国系航空会社の上海駐在幹部は「機材の購入は主にドル建てであり、影響が最近かなり大きくなっている為替のボラティリティーには非常に神経質になっている」と述べた。
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