【香港=粟井康夫】中国の銀行の収益が伸び悩んでいる。国有四大銀行が30日までに発表した2014年12月期決算では純利益の合計が8526億元(約16兆2千億円)と前の期に比べ6.5%増にとどまり、これまでの2ケタ成長にブレーキがかかった。一方で国内景気の減速による企業の業況の悪化を映し、不良債権は昨年1年間で36%も増えた。
「銀行にも新常態(ニューノーマル)に合わせたビジネスモデルが必要だ」。中国農業銀行の張雲行長(頭取に相当)は香港での決算記者会見で、かつてのような高成長は望めず、事業の抜本的な見直しが必要になるとの考えを強調した。
中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行の4行は国内経済の拡大や金利規制を背景に、2ケタ成長を続けてきた。最大手の工商銀で純利益の伸び率が1ケタ台になったのは、06年の上場以来初めてだ。
収益を圧迫したのは、不良債権だ。昨年末時点の不良債権残高は計4631億元と1年前に比べ36.2%膨らんだ。
習近平指導部は「新常態」を掲げ、成長の鈍化を容認してでも構造改革を優先する方針だ。石炭や鉄鋼、造船など過剰供給の体質を抱える業種向けを中心に、不良債権が増加した。中国建設銀行の王洪章董事長は「経済を高度化するため、ある種のバブルを取り除いている」と認める。
純利益 | 不良債権 残 高 | 不良債権 比率(%) |
|
---|---|---|---|
中国工商銀行 | 2,758 (5.0) | 1,244 (32.9) | 1.13 (0.94) |
中国建設銀行 | 2,278 (6.1) | 1,131 (32.7) | 1.19 (0.99) |
中国農業銀行 | 1,794 (7.9) | 1,249 (42.4) | 1.54 (1.22) |
中国銀行 | 1,695 (8.1) | 1,004 (37.2) | 1.18 (0.96) |
(注)単位億元。カッコ内は純利益が前の期比伸び率%、不良債権残高が2013年12月末比伸び率%、不良債権比率は2013年12月末時点の数字
融資全体に占める不良債権の比率は4行平均で1.26%だ。工商銀の易会満行長は「中国を除く世界の大手銀行30行の不良債権比率は平均3%台後半。国際的な競合相手と比較しても資産内容は良好だ」と強調する。
比率が低い一因には、バブル崩壊直後の日本の銀行と異なり、中国の銀行は不良債権を抱え込まずに外部への売却を積極的に進める傾向がある。国有の不良債権処理会社大手、中国信達資産管理では商業銀行からの債権買い取り額が急増し「新常態でビジネスチャンスが広がっている」(呉松雲副総裁)という。
だが中国の銀行による資産査定は甘いとの見方も強い。農業銀のリスク管理担当幹部は「新常態下では不良債権比率が2~3%になっても正常な範囲だ」として、不良債権の拡大傾向は当面続くとの見通しを示した。
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