アスリートの魂「戦う使命 ボクシング 藤岡奈穂子」 2015.04.09


大勢の報道陣に囲まれる日本人女性がいました。
世界が注目するビッグマッチ。
チャンピオンの座を7回防衛した世界的ボクサーに挑みます。
プロボクサー藤岡奈穂子選手39歳。
日本の女子ボクシング界の第一人者です。
武器は強烈な右ストレート。
日本の女子選手で初めて2階級で世界チャンピオンに輝きました。
「新チャンピオン青コーナー藤岡奈穂子!」。
とにかく半端じゃないですね。
一番はパンチスピードですけどあと気持ちが強いんですね。
その拳で世界一強くなりたいという夢を追い続けています。
自分がどこまで行けるんだろうという興味もありますし。
今回挑んだのはメキシコのスーパースターマリアナ・ファレス選手。
強さと人気を兼ね備えた強敵です。
日本では脚光を浴びる事が少ない女子ボクシング。
試合に勝っても手にできる金額は僅かです。
選手たちは成功を夢みてアルバイトを続けながら厳しいトレーニングを積んで戦ってきました。
自分には世界で勝ち続け女子ボクシングを盛り上げる責任がある。
一人敵地メキシコへ乗り込んだ藤岡選手。
日本の仲間たちの誇りを背負って。
己の全てを懸けた戦いを見つめました。
高級ブティックが軒を連ねるファッションの街です。
藤岡奈穂子選手は宮城県から上京して6年。
いまだに都会の華やかさに慣れないと言います。
オシャレすぎて入れないです。
(取材者)興味ないですか?いや何かありますけど遠くで見てる感じですね。
田舎者なんでのぞけないです。
それでは藤岡さんよろしくお願い致します。
藤岡選手は多くの女性たちの注目を集めています。
この日はビジネスセミナーの講師に招かれました。
竹原・畑山ジムに所属してます藤岡奈穂子といいます。
今日はお手柔らかによろしくお願いします。
参加したのはビジネスの第一線で成功を目指す30代の女性たち。
世界チャンピオンという夢を実現した藤岡選手から成功のヒントを得ようとしています。
プレッシャーはあって。
正直試合当日人知れず震えてるんですよ。
で布団の中でもうどうしよう?勝つかな?勝つかな?みたいな。
負けるかな?そのぐらい緊張するんですけど。
絶対勝ってやるみたいな。
これは修行なんだと思ってればまあ乗り越えられるんじゃないのかなって自分はそういうふうに思いますね。
本当に精神的な強さっていうところがすごく印象的に残りました。
本当に目の前の事をやり続けられるかどうかみたいな事は大事だなって。
私もまた頑張ろうって思いました。
39歳ひたむきに夢を追う姿が女性たちの心をつかんでいます。
おはようございます。
商店街の一角にあるボクシングジムが藤岡選手の拠点です。
ジムを率いるのは元世界チャンピオンの2人。
所属するプロ選手は男女3人ずつ。
藤岡選手は身長158センチ。
WBA世界スーパー・フライ級のチャンピオンです。
(声援)
(観客)奈穂!奈穂!奈穂!プロデビューして僅か2年で世界王者の座につきました。
武器は強烈な右ストレート。
(歓声)激しい闘争心は世界を恐れさせました。
(ゴング)
(拍手と歓声)強いのとやりたいっていうのが常にあって。
まあ根底には自分がどこまで行けるんだろうという興味もありますし。
やれるとこまでやって満足しないと辞めたあとも後悔するのも嫌なんで。
やれるだけやりたいというのがありますね。
ところが藤岡選手には戦いたくても戦えないという悩みがあります。
原因は圧倒的な強さでした。
藤岡選手はもともとミニ・フライ級の世界チャンピオンでしたがその強さを恐れて挑戦者がなかなか現れませんでした。
そこでベルトを返上。
階級を上げ対戦相手を探し続けました。
ようやく試合ができたのは3階級も上のスーパー・フライ級。
4キロの体重差を乗り越えなければなりませんでした。
なかなか現れない挑戦者。
それでもいつ実現するか分からない試合に備えてトレーニングに打ち込む孤独な日々が続いています。
間もなく40歳。
体力の維持には手を抜きません。
2月中旬。
願ってもない対戦相手が現れました。
メキシコのマリアナ・ファレス選手。
世界チャンピオンの座を7回防衛したスーパースターです。
絶対的な自信を持つファレス選手。
藤岡選手との一戦は大きな話題になると踏んだのです。
変幻自在のテクニックでつかみ取った勝利は16年間で40勝。
リングを降りればモデルとして活躍。
その美貌とスタイルでバービーと呼ばれています。
来たか!今人気絶頂のマリアナ・ファレスとやれるっていうビッグチャンスですね。
ファレス選手は藤岡選手とは別のWBCという団体のスーパー・フライ級に所属しています。
両団体を合わせた世界ランキングで見ると藤岡選手はファレス選手に次いで2位。
彼女に勝てば世界ランキング1位になれるのです。
しかし試合は敵地メキシコで行われます。
観客のほとんどがファレスびいき。
ジャッジも3人中2人がメキシコ人です。
厳しい戦いは避けられません。
本当にやるかやられるかだけですね。
倒さなきゃ倒される。
試合は僅か1か月後。
ファレス対策の検討が始まりました。
やっかいなのは長いリーチで繰り出すジャブ。
ファレス選手は藤岡選手より10センチほど背が高く腕の長さも勝ります。
離れていると思っても鋭いジャブに捕まってしまうのです。
リーチ長いですしメキシカン独特の軌道のパンチです。
肩からこう来て…。
うちらはパッて出すんですけどこういう感じで伸びてくるんです。
後から伸びてくるようなパンチです。
長いリーチを封じるために考え出したのが…まず相手との距離を詰めます。
これだけ近寄ると得意の右ストレートは出せません。
そこで近い距離でも打てるパンチを連打します。
アッパー。
フック。
そしてボディー。
一発で倒すのではなく連打を続けてダメージを蓄積しファレス選手を倒す作戦です。
狙うはノックアウトただ一つ。
早速実戦練習が行われました。
相手は2階級上のバンタム級…身長は6センチ高くリーチの長いファレス選手を想定して選ばれました。
じゃあいきます。
慣れない接近戦。
距離を詰められません。
リーチの長いジャブで懐に入れさせてもらえません。
距離が遠くても焦ってパンチを当てようとしてしまいます。
いらだつあまりますます大振りに。
簡単によけられてしまいます。
動きが鈍いですねちょっと。
あんまり納得いかないです。
パンチが当たんなくなった時に大振りになるのが悪い面ですね。
やっぱり疲れたりしたら大振りになっちゃいますよね。
どうしても自分のパンチに頼ってしまうんで。
そこを冷静に脇締めて小さなパンチでいければ自然と倒せる事できると思うんですけど。
練習を終えた藤岡選手はこの日ある場所に向かいました。
試合に出る後輩たちの応援です。
(拍手と歓声)日本の女子ボクシングはプロ化されてまだ6年。
男子選手の前座を務める事がほとんどです。
テレビや新聞に取り上げられる事が少ないため観客は多くありません。
そのためファイトマネーはごく僅か。
世界チャンピオンになっても100万円に届きません。
それでも選手たちは安定した暮らしを捨ててアルバイトで生計を立てボクシングでの成功を追い求めているのです。
全ては自分の夢のため。
(拍手と歓声)藤岡選手もデビューから6年間この場所で戦い続けてきました。
(拍手)藤岡選手は32歳の時両親の反対を押し切って宮城県から上京しました。
一度でも負けたら家に帰る。
そう説得して内装業のアルバイトをしながら毎晩ジムに通いました。
切るってもこれだけですけど…。
そんな毎日を支えてくれたのは同じ志を抱く選手たちの存在でした。
山口直子選手。
3階級上のクラスの世界チャンピオンで女子ボクシングを共に盛り上げようと誓い合った仲間でした。
ところが皮肉にも2人は戦う事になりました。
藤岡選手の対戦相手がなかなか現れないと聞いてそれならばと山口選手自ら試合を受けてくれたのです。
ライバルでもあり仲間でもあったので一緒に頑張っていきたかったっていう気持ちはありましたね。
やっぱりプロなんでそこは切り替えてお互いもし決まったらやるしかないよねって感じです。
そしておととし世界スーパー・フライ級タイトルマッチ。
手加減は一切なし。
(声援)そして…。
藤岡選手はベルトを奪い2階級を制覇。
山口選手は引退しました。
ずるい言い方ですけど…あの試合から2年。
おはようございます。
山口さんは12年間続けたボクシングを離れエステサロンで働いています。
今藤岡選手と戦った事に後悔はないといいます。
強い人とやりたいというのはあったので複雑だけど盛り上がるよねという感じではありましたね。
面白い試合にはなるよねっていうのは…。
一般の人がやってるっていうのを知らないというのがすごく大きいと思ったのでそうですね例えばテレビで試合をやってもらうとかそういうのがあればすごくいいなとは思いました。
よき友でありながら敵として戦った2人。
思いは今もつながっています。
出る機会が増えれば見る人も増えると思うのでそれでちょっと勝ち続けてほしいなと思います。
(取材者)勝ち続けてほしいですか?そうですね。
自分に勝った人なんで。
この日再び背の高い三好選手とのスパーリングが行われました。
前回はリーチの長いジャブに距離を詰めきれなかった藤岡選手。
相手のパンチをかわして近寄り…。
連打。
6ラウンドをまずまずの手応え。
スパーリングはこれで終わるはずでした。
スパーリングの延長が命じられました。
ファレス選手を倒すには長いラウンドにわたって連打し続ける体力が不可欠なのです。
今度の相手は男子の丸亀光選手。
戦歴は3戦3勝。
ファレス選手と同じ168センチです。
大きい相手にもひるまず接近を試みます。
既に第9ラウンド。
疲れが見え始めました。
またも大振りになり簡単によけられます。
まだ終わりません。
次は第10ラウンドです。
力を振り絞り前へ出て連打。
はいラスト10秒!本番と同じ10ラウンド。
なんとか乗り切りました。
あ〜!はあ〜!3分間全力で連打し続けるトレーニング。
これを数セット。
スタミナをつけるため毎日繰り返しました。
はあ〜!はいOK!メキシコへ出発する日。
空港に向かう車の中で藤岡選手は勝利を誓うメールを送っていました。
メールの相手はかつて戦い辞めていった選手たちでした。
やれるとこまで。
行ってきます。
決意を胸にメキシコへ旅立つ藤岡選手です。
決戦の舞台メキシコ。
市民が飛び入りで試合をする街角のリング。
ボクシングが多くの国民に親しまれています。
記者会見には大勢の報道陣が集まりました。
世界のトップを決めるビッグマッチ。
試合はアメリカ大陸全土で中継されます。
単身メキシコに乗り込んだ藤岡選手。
敵地の洗礼が待っていました。
練習用のジムが用意されなかったのです。
急きょ泊まっていたホテルの駐車場でトレーニングをしなければなりませんでした。
ラスト10。
OK。
普通に動ければどこでもいいです。
でもジムで下手に動いて関係者に見られても嫌ですし。
9,000人の観客が試合会場を埋め尽くしました。
敵地の真っただ中藤岡選手の戦いが始まります。
鉢巻きにはかつて戦った選手の名前が書き込まれていました。
勝利を仲間たちのために。

(歓声)試合開始。
距離を詰めて主導権を握りたい藤岡選手。
しかし…。
長く伸びるジャブ。
ファレス選手に近づけません。
(ゴング)序盤なんとか距離を詰めようとします。
接近戦。
ところがよく見るとファレス選手が藤岡選手の左腕を抱え込み連打を打てないようにしています。
なかなかペースがつかめません。
第4ラウンドまでの採点結果は2対1でファレス選手リード。
3人のジャッジのうちメキシコ人の2人がファレス選手優勢と判定しました。
試合は後半へ。
もう前へ出るしかない。
顔面にパンチをもらっても前へ。
3発打ち返します。
ところがそのあとは近づいても連打を許してくれません。
足を使って距離を取るファレス選手。
更に上体を巧みに動かしてパンチを避けます。
(ゴング)残りは2ラウンド。
藤岡選手ここで一つの決断をしました。
ロープ際で相手の身動きを封じ自分も一歩も引かない。
捨て身の作戦です。
ロープ際へ追い詰めます。
顔面へ強烈な連打。
しかしKOには至らず。
体力は限界を迎えていました。
勝負は最終ラウンドにもつれ込みました。
根性比べというか全部出し切ろうっていう。
動き続けようと。
止まったら負けると思って。
気持ちですね。
それだけですね。
両者必死の攻防。
(ゴング)試合終了。
結果は判定に。
叫んだのはかつて戦った仲間たちの名前でした。
グラシアス!グラシアスグラシアス!藤岡選手をたたえるメキシコの人々。
そのファイティングスピリットが本場のファンに認められたのです。
翌朝。
一睡もできなかったという藤岡選手。
日本の女子選手たちからたくさんのメッセージが届いていました。
女子ボクサーたちの希望にはなったのかなって。
やっぱりメールとかもふだんしないようなボクサーたちもメールをくれたりとかあったんで海外に出てどんどん世界で活躍していけば嫌でも日本で話題になると思うので誰しもが成し遂げられないような事をやりたいですね。
成し遂げたいです。
藤岡奈穂子選手39歳。
どこまでも勝ち続けてやる。
女子ボクシングの希望を背負って。
2015/04/09(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「戦う使命 ボクシング 藤岡奈穂子」[字]

日本女子ボクシングの第一人者、藤岡奈穂子選手がこの春、ボクシング大国メキシコのスーパースターと“真の王者”を決める闘いに挑んだ。誇りをかけた女の闘いに密着した。

詳細情報
番組内容
WBA世界スーパーフライ級女王の藤岡奈穂子選手。強烈な右ストレートで女子初2階級制覇した。39歳の彼女を支えるのはハングリー精神だ。五輪を目指したが北京は不採用。世界王者とはいえ、わずかなファイトマネーと6畳一間の厳しい生活。40歳を目前に「誰もが認める真の王者」になるため、ハリウッドスター並みの人気と実力のマリアナ・ファレス選手とのビッグマッチに挑んだ。誇りをかけた闘いの行方は…。語り:杉本哲太
出演者
【語り】杉本哲太

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – 相撲・格闘技

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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