(消防車のサイレン)
(ガラスが割れる音)
(若宮冴子)横浜女子刑務所には総勢600人の女たちが服役している。
殺人窃盗覚せい剤取締法違反。
そそり立つ壁と鉄格子の中で自らの犯した罪と向き合っている。
おはようございます。
(刑務官)異常ありません。
おはようございます。
その時はまだ山村直美というこの服役囚とどんなに深く関わることになるか私自身も気づいていなかった。
はい。
いいですよ。
熱を抑える薬を出します。
作業は2〜3日休むように私から担当に伝えます。
美香さん「マキソニン」。
(本田美香)ありません。
「コンタール」になります。
今どき?先生が今までいらっしゃったような大病院じゃありませんから。
じゃあ3日分。
ありがとうございました。
安静にね。
(刑務官)帰ります。
薬剤も器具も少しは新しいものを購入しなくちゃね。
今から揃えても先生には関係ないんじゃありませんか?え?半年の約束で東都医大から派遣されたと伺いましたけど。
ええ。
それなら来期の設備が整う頃にはもうこちらにはいらっしゃらないでしょう。
(非常ベルの音)
(刑務官)開けなさい!開けなさい!開けなさい!おろします!
(刑務官)はい!上げて!
(服役囚たちの騒ぐ声)大丈夫ですから担架を運んで。
(美香)はい!大丈夫?
(服役因・佳代)余計な真似して!なぜ死なせてやらなかった!精神安定剤を処方しています。
意識が戻っても2〜3日はここで様子をみます。
(八村刑務官)分かりました処遇部長に報告します。
親族への連絡は?はい。
兄の岩木さんという方に近いうち面会に来るよう伝えました。
分かりました。
はい。
失礼します。
山村直美はある運送会社の社長を殺しその事務所に火をつけて死体を焼却した。
懲役13年はこの刑務所に服役する受刑者の中でも長期にあたる重罪人だった。
どうして自殺の手助けなんかしたの?あの人が手を合わせたんだ。
娘を助けてほしいって…。
自分が死んだらすぐに移植手術をしてくれって。
移植手術…!?先生…申し訳ありませんが医療関係以外のことは。
患者の事情を聞くのも医療のうちです。
どういうこと?移植手術って…。
あの人の娘が重い病気で肝臓を移植しないと命が危ないって…。
旦那は死んでるからあの人が肝臓をあげるしかないんだ。
だから移植手術の嘆願書まで出したのに…。
そういうことが?前例がないことです。
アンタたちはそんなことできないって言ったんだ。
懲役因が塀の外に出られるのは刑期が終わった時か死んだ時だけだって。
アンタ医者なんだろう?だったらその子を助けてくれよ。
あの人無実なのにこんな所に入って。
無実!?勝手なこと言うんじゃない!私はもう10年も入ってるんだ。
無実だっていうヤツやすぐに嘘と分かるヤツもいたし自分で無実だと信じ込もうとするヤツもいた。
でも…みんな震えるんだ。
震える?人を殺したヤツは寝る前に震えるんだ。
また殺した時の夢を見るんじゃないかって…。
だけどあの人は違った。
きっと本当に殺してないから震えずにすむんだ。
無実なんだ!治療が終わったのなら引き上げます。
助けてやってくれよ!無実の者が自分の命をかけて娘を…!医者ならその子を助けてやって!
(刑務官)静かにしなさい!
(直美)千夏…。
・
(田島健司)はい。
港南法律事務所です。
冴ちゃんどうしたの?ちょっと教えてほしいことがあるの。
服役中の人間が移植手術のドナーになれるかどうかなんだけど。
服役中…それは調べないと分かんないな。
かなり特殊なケースだから。
・なら調べてくれる?簡単に言ってくれるなぁ。
俺だって忙しいんだよ。
それともうひとつ山村直美さんという人の殺人放火事件も調べてほしいの。
俺は無料相談所じゃないぞ。
かわいい幼なじみが頼んでるんじゃない。
かわいい?じゃ2つともよろしくね。
ああ…。
佳代:自分の命をかけて娘を助けようとしたんだ。
医者ならその子を助けてやってくれよ!山村直美の娘が入院しているのは偶然にも私が以前勤務していた大学病院だった。
(池田恵理子)冴子先生!ああご無沙汰。
どうしたんですか?戻って来られるんですか?そうじゃないの別の用で…。
山村千夏って子が入院してると思うんだけど。
ああ1か月前に入院してきた胆道閉鎖症の女の子ですね。
胆道閉鎖症…。
だから肝臓移植が必要なんだ。
案内してくれるかな。
担当の先生は誰?
(恵理子)三枝教授です。
張本人ですよねえ先生を刑務所に飛ばした…。
どうします?お会いになりますか?行って殴ってやる。
自分の書いた論文を教授の名前で発表しろと言われそれを断わったバカな医者が飛ばされる。
大学病院ではありふれたよくある話。
(三枝教授)若宮君…。
ご無沙汰しています。
どうかね?刑務所のほうは。
忙しくやっております。
そうか。
まあああいう所で君を本当に必要としている患者たちと向き合うのが医者の本分かもしれないね。
研究や論文に追われている我々よりもカゼや腹痛を治してくれる医者のほうが上だと思っている患者もたくさんいる。
それとも詫びを入れてこっちの世界に戻る気になったのか。
いえ今日お伺いしたのは山村千夏という患者のことで参りました。
山村…?千夏です。
患者をいちいち名前で覚えちゃいないんでね。
胆道閉鎖症の5歳児です。
ああ…あの子か。
母親が私の刑務所に服役しています。
容態はどのようなものでしょうか?肝硬変が進んでいるな油断のならない状況だね。
時間はどれぐらい残っていますか?そんなことを知ってどうするんだ?生体肝移植の申請を出します。
何!?助かる方法が移植手術ならその方法を考えたいと思います。
バカなことを…母親は服役しているんじゃないか。
前例はありませんが子供の命がかかっているんです。
たとえば事情をマスコミに説明を…。
迷惑だ!そんな連中にウロウロされたら研究ができなくなる。
(非常ブザーの音)どうしたんだ!?呼吸器が!千夏ちゃん!
(三枝)誰がこんなことを…。
ストレッチャー!緊急処置をします。
お願いします。
助手が必要なら私が…。
いらん!中山君を呼んでくれ。
(鑑識官)出ませんね。
手袋をしています。
冴ちゃんいったいどういうことなんだよ。
分からないの。
誰かが入院中の子供のチューブを切って…。
その子が冴ちゃんの言ってた重病の子供なの?ええ…山村千夏。
殺人と放火で服役している山村直美の娘。
移植手術のこと調べてくれた?うん。
服役因がドナーになった前例はないね。
2年前に一度申請はあったけど法務省によって却下されている。
却下…。
まお役所は前例のないことはやらないから。
そう…。
山村直美の殺人放火事件は?事件は3年前の夏8月7日に起こっている。
殺されたのは岡本運送の社長岡本修輔。
ネクタイで首を絞められたうえに火を放たれている。
警察は放火現場でライターを手にしていた山村直美を殺人放火容疑で緊急逮捕した。
山村直美と岡本社長の関係は?直美の夫山村浩一が岡本運送の社員運転手だったんだ。
けどその夫は事件の3か月前に事故で死んでいる。
無理な運行スケジュールが原因だったのに岡本は遺族への補償をしないばかりか賠償金を求めた。
社宅からも立ち退きを迫られ山村直美は岡本社長に強い恨みを抱いていた。
動機はあったんだ。
(重松刑事)田島先生…。
重松さん…。
容疑者も特定できてないのに弁護士の出動ですか?いやまいろいろありましてね。
あ北浜署の重松刑事だ。
3年前の山村直美の事件も担当されている。
それと横浜女子刑務所で医師をしている…あの友人というか何というか…。
若宮冴子です。
横浜女子刑務所ですか?はい。
山村直美が服役しています。
驚きましたよ。
被害者が山村の娘だったなんて。
山村直美は本当に岡本社長を殺したんですか?冴ちゃん。
状況からみてそうとしか考えられません。
アンタが持っていたこのライターで火をつけたんだな?
(山村直美)はい。
凶器のネクタイは岡本のものだな?ネクタイ…?アンタが岡本の首を絞めたネクタイだよ!凶器のネクタイは直美のアパートから発見されています。
ハサミで切られてゴミ集積所に出されていました。
岡本の死亡推定時刻と事務所の火事までにかなりの時間がありますが…?岡本の死亡推定時刻は7日の昼頃です。
燃え残った胃から半分消化された昼飯の寿司が検出されてますからね。
直美は昼に岡本を絞め殺しその死体を隠すために夕方になって火をつけた。
動揺した犯人ならよくある行動です。
火をつけたのは直美だけど昼に岡本を絞め殺したのは別の人間とは考えられませんか?目撃者がいるんですよ。
目撃者?
(重松)寿司を出前した店員が事務所に入る直美を見ているんです。
本人は社宅からの立ち退きの引き延ばしを頼みに行ったと…。
いずれにしろ動機証拠目撃者…すべてすべて揃っていたんです。
(山村和人)千夏!
(岩木茂男)こらっ!千夏!こら病院を走るんじゃないっていっただろう。
目が覚めるまで千夏のそばにいる。
保護者の方でしたね?あの千夏の叔父でございますが…。
食道静脈瘤破裂の止血処置は無事成功しました。
ただ不慮の事故に対応した処置なので胆道閉鎖についてはよくなったわけではありませんから。
ありがとうございます。
大丈夫だよ。
千夏ちゃん強いもの。
今までだって何度も頑張ってきたじゃないね。
和人もういいだろう?こっちにいなさい。
千夏千夏!わがままを言うんじゃない。
おじさんにも仕事があるんだいいかげんにしなさい!待ってください。
何だよ?アンタ…。
すみません。
この子の気持が落ち着くまで千夏ちゃんのそばに…。
なんでしたら私たちがお宅までお送りしますのでお願いします。
お願いします。
きっと治る。
和人君もついてるしママだって応援してるから。
ママ!?私ね今この病院のお医者さんじゃないんだ。
和人君のママの近くにいるの。
ママなんか嫌いだ。
えっ?ママなんか大嫌いだ!和人君!和人君!
(岡本依枝)和人君!叔父さんに電話して知ったの。
千夏ちゃん大丈夫だったの?和人君のお知り合いですか?ええ失礼ですがあなたは?以前この病院の外科に勤めていた若宮と申します。
先生?それは千夏ちゃんがお世話に…。
私和人君の知り合いで岡本依枝といいます。
すみません何か興奮しているようなので私が家まで送ります。
お願いします。
冴ちゃん。
今の人は…?岡本っていう人…。
岡本って…岡本依枝?知ってるの?殺された岡本社長の奥さんだよ。
あの人が…。
ずっと子供ができなかった岡本依枝は和人君や千夏ちゃんを小さい頃からかわいがっていたらしい。
事件はまだ終わってないわ。
終わってない?何で千夏ちゃんを狙ったのか分からない。
だけどそれは3年前の事件に関わっている気がするの。
そうじゃなきゃ千夏ちゃんが襲われる理由なんかないもの。
そうだな…。
(ノック)若宮です失礼します。
(田野村所長)はいどうぞ。
ああ若宮先生…昼休みなのに申し訳ない。
午後から法務省に行かなければならないんでね。
実はこの上申書のことなんだが…。
はい。
服役因からの臓器移植なんて聞いたこともない。
前例がないからできないというのは…。
あなたのお仕事は服役因の診察をすることです。
塀の外のことは私たちの職務とは関係ない。
その子には時間がないんです。
数か月…いや容態によってはもっと短い期間しか…。
私は職務以前に医師として…。
刑務所は規律で成り立っている場所なんです。
たとえ医師であっても規律は守っていただきます。
待ってください。
東都病院を追い出されたうえにこの職場も失うようなことになればあなたのキャリアに大きな傷がつきます。
この上申書は取り下げてください。
私が言いたいのはそれだけです。
ただいま。
お母さんただいま。
やっぱりここか…。
(若宮啓介)どうした?休みじゃないだろう。
何それ…ふつうたった一人の娘が帰ってきたらもう少し嬉しそうにするんじゃない?患者がいるだろう。
何かあった時に誰が診る?ここみたいな田舎じゃないの。
医者なんて掃いて捨てるほどいるわ。
大きいわね。
肺の影がこの大きさならおそらく他にも転移してる。
ああ。
放射線と抗癌剤の併用で2年は生存できるかもしれない。
どっちにしろ大きい病院を紹介したほうがいいわよ。
抗癌剤も進んだな。
肺癌の第3ステージから2年か。
お父さんが遅れてるのよ。
最新データなんて勉強してないでしょう。
お父さん…。
2年もあれば十分だ。
東都大病院に行って!肺癌なら最新鋭のスタッフが揃ってるわ。
痛みがないうちはここで診療を続ける。
田舎だからな掃いて捨てるほど医者はいないんだよ。
(木島)先生!うちのヤツから電話で「娘が急におなか押さえて転げ回ってる」って!車か?表に停めてます。
よし分かった。
私が行くわよ。
生まれた時から診てる俺の患者だ。
オマエに何が分かる?
(鴎の鳴き声)
(潮騒)三枝:患者をいちいち名前で覚えちゃいないんでね啓介:生まれた時から診てる俺の患者だ。
オマエに何が分かる?医務課八村入ります。
若宮先生がこれを所長にお渡ししてほしいと…。
失礼します。
佳代:人を殺したヤツは寝る前に震えるんだ。
だけどあの人は違ったあの人は無実だよどう…?頭痛くない?千夏は?千夏の移植手術は?落ち着いて。
千夏ちゃんは大丈夫。
腕のいい先生たちがいるから心配しないで…。
でも…手術が!肝臓移植は生きてる人間からじゃないと効果が期待できないの。
あなたが死んでしまえば千夏ちゃんも助からないのよ。
だから二度と死のうなんて思わないで!生きて…千夏ちゃんを助けましょう。
本当に…千夏を助けてくれるんですか?ええ…手術できる方法をきっと見つける。
ありがとう…。
ありがとうございます。
その前にあなたにどうしても確かめたいことがある。
あなた本当に岡本社長を殺したの?いいえ…。
私岡本社長を殺したりしてません。
殺したりしてません。
冤罪!?ええ…私は彼女を信じたいの。
でも山村直美は懲役13年という地裁判決を受け入れている。
控訴しなかったのは罪を認めるのも同じだよ。
控訴すれば…判決は変わったの?誰にも信じてもらえないでそれでも闘い続けるなんて普通の人間には辛すぎるわ。
取り調べが辛くって楽になりたくて罪を認めてしまったってあの人は言ったわ。
それを弱い人間だと非難できる?千夏ちゃんの病気のことを知って必死の思いでもう一度声を上げたのよ。
確かに納得のできないことが幾つかあるか…。
凶器のネクタイのこととか…。
わざわざ自分のアパートのゴミ集積所に捨てるなんて…。
ちょっ…ちょっと…。
何するんだよ!やっぱり…。
「やっぱり」って何だよ!たしか供述調書ではネクタイを抜き取って凶器に使ったって…。
でも無理じゃない!?ボウっとしてる健ちゃんからだって抜き取れないもの。
なるほど冴ちゃんの言うとおり疑問があるのは確かだ。
でも一度判決が出た裁判を覆すのはたいへんなんだよ。
再審請求なんてよっぽどのことがないかぎり門前払いに決まってるんだ。
よっぽどって…?それこそ真犯人を捕まえでもしないかぎり再審なんてありえない。
法律的にもう全部終わった事件なんだ。
そんなことないわ。
冴ちゃん…。
何も終わってないでしょう。
彼女が殺してないなら真犯人はどこかにいるはずでしょう?無理だもう終わってしまったことだと諦めてしまったら千夏ちゃんはどうなるの?千夏ちゃんを助けるためにはこれしか方法がないでしょう。
あなたが無理だと言っても私1人で真犯人を捜すわ。
あの親子は…私の患者なんだから…。
あ〜…里中さん。
明日からの俺の予定だけど悪いけど石橋君か高橋君に代わってもらえないかな。
うん…いや…ちょっとあの…。
別件で…忙しいものだから…。
それじゃあ…。
久しぶりの民事で金になりそうな仕事だったんだからな。
恩に着る。
あ〜っ!ま〜ね…冴ちゃんにはよくガキ大将から助けてもらったから。
だって健ちゃんからっきし弱いんだもん。
あ…だから弁護士になったんだ。
ハハハ…口だけは達者だったからね。
あ〜ハハハ…。
何を言わせるんだ?健ちゃん…昔から口ばっかりだったもんね。
(戸田)はいお待ちどう…。
から揚げ弁当お待ちどうさまでした。
こんにちは…。
東都大病院の…。
ちょっとお伺いしたいことがあるんですが。
あの事件のことですか…。
千夏ちゃんを救うためなんです。
何か思い出すことがあったら…。
岡本運送の方で会社のことに詳しかった人はいませんか?亡くなったご主人と特に親しかった方とか…。
どうも…。
どうぞ…。
吉沢さんがいるじゃない。
お得意さんがさ…。
吉沢さん!?岡本運送で働いていた運転手さんです。
今は自分で運送会社を経営していてお昼と夜食をうちから配達させてもらってるんですよ。
何という運送会社ですか?「タートルサービス」って名前ですよ。
すみません…吉沢社長はどちらに?
(長谷川)社長なら裏にいますよ。
子供とキャッチボールをしてるからすぐに分かります。
あ〜…どうも…。
和人君…。
おじさんいくよ!
(吉沢)すみません!私東都大学病院に勤めていた若宮と申します。
こちらは弁護士の田島健司さん。
千夏ちゃんのことですか?ええ…まあ…。
いくぞ!
(溶接バーナーの音)実は私たち3年前の岡本社長の事件を洗い直しているんです。
岡本社長の…!?でもあの事件はもう直美さんが…。
それが…冤罪の可能性があるんですよ。
冤罪…!?病院での千夏ちゃんの事件も岡本社長の事件と繋がっていると思えるんです。
それって同一犯人ということですか?いやまだそこまでは分かりませんけど…。
ま…あるいは…。
それで吉沢さんに伺いたいのはあの頃直美さん以外に岡本社長に恨みを持っている人間がいなかったかどうかなんです。
商売上のトラブルとか…。
岡本社長のことをよく思ってない人はたくさんいましたよ。
私だって待遇やなんかで始終どなり合ってましたから。
事件の後に警察に事情聴取をされたぐらいですよ。
吉沢さんがですか?ええ…結局アリバイが証明されてすぐ帰されましたけど…。
まあ私だけじゃなく雇われてた運転手はみんな岡本社長のことはよく言わないと思いますよ。
奥さんの依枝さんができた人だから我慢してましたけどね。
社長…裏にまたあの人が…。
今お客さんだからまた出直してくれって…。
そう言ったんですけど待ってるからって…。
すみません。
ちょっと失礼します。
何かあまりお役に立てなくて…。
いえ…。
あの…さっきの人は?竹中さんです。
岡本運送で一緒に運転手をしていました。
あの人も?うちで働きたいって何度か訪ねてくれてるんですがあの人人身事故で足腰を痛めてましてね。
昔の仲間だから何とか力になってあげたいんだけど…。
あの人も岡本運送に…。
じゃあ…ありがとうございました。
先生…。
昨日は突然お邪魔して…。
いえ…。
千夏ちゃんがICUを出たって聞いたものですから…。
ママ…。
ママなんか何だよ!僕たちがいるじゃないか。
どうしてかな?この前も「ママなんて嫌いだ」って言ってたよね。
どうしてママのこと嫌いなの?ママ〜…。
ママ〜…。
ママ〜!ママ〜!
(ブザー)竹中治さんですね?
(竹中)何だい。
弁護士の田島と申します。
弁護士!?弁護士がいったい何の用だ?岡本社長の事件のことで参りました。
(竹中)どうして今になってよ3年前の事件ほじくり返すわけ?何か新しい証拠でも見つかったわけ?証拠!?どうしてそう思うんですか?えっ…いや…アンタらがよ今になって昔の事件を嗅ぎまわるから何かあったと思うだろうが…。
事件があった日のこと覚えてますかね?覚えてるもなにも…俺は入院してたよ。
入院!?うん…前の日の夜に事故ってな…。
スリップしたダンプに追突されたんだよ。
仕事中にですか?あ〜だから社長が殺されたのも病院のテレビで初めて知ったんだよ。
この足も腰もその時からだよ。
じゃあ竹中さんが最後に岡本社長に会ったのは?あれは深夜便に乗る日だったから8月6日の昼だよ。
事故の時お見舞いには来なかったんですか?いくら夜中でも自分の所の社員が事故に巻き込まれれば社長としてもたいへんでしょう?もともと薄情なヤツだったからよ。
社員の心配なんかしねえで寝てたんだろう。
そりゃ薄情だな。
すみませんがちょっと火貸してもらえませんか?とにかく俺はよ…事件の時には入院してたんだよ。
アリバイってヤツは完璧だろう?もしあんたらがよ俺のことを疑ってるなら大間違いってヤツだよ。
疑ってなんかいませんよ。
疑ってんじゃねえか!おじちゃ〜ん!ほれっ!ありがとう!もういいだろう。
あっ…あ〜…。
随分辛そうですね?ええっ?あの…私一応医者なんです。
ちょっとここへ…。
失礼します。
痺れは?足背動脈の脈拍が弱いですね。
一度ちゃんと診察してもらったほうが…。
もしもし…俺だよ。
竹中だよ。
あの人…何か知ってるよね?ああ…こっちの様子を探ろうとしてた。
それにこれ…。
仕事のない人間がどうしてキャバクラなんかに行けるか?あ〜そうだよね。
あ〜ね〜…。
次に会う口実だよ。
へ〜…。
何だか金遣いも荒そうな感じだったしな…。
金の出所を調べてみるよ。
何か手掛かりが分かるかもしれない。
(車のエンジン音)冴ちゃん!
(エンジン音)痛っ…あ〜痛い!健ちゃん!大丈夫?あ〜…ちょっとひねっただけ…。
狙ってたわね?私たちのこと…。
あ〜…ブレーキの音しなかったからな。
よかった。
よかったって…狙われて何がよかったの?私たちを狙うってことは事件を調べ直されたくないヤツがいるってことでしょう?私たちの推理は間違ってなかったのよ。
岡本殺しには必ず裏があるわ。
竹中が死んだってどういうこと?
(二宮刑事)お忙しいところをすみません。
被害者の所持品にお二人の名刺があったものですから…。
ええ…。
ところで竹中さんはどうして死んだんですか?現在調査中です。
事件なのかただの事故なのか。
事故!?現場に被害者の釣り道具と焼酎の小瓶がありました。
酔って釣りをしているうちに誤って落ちたのかもしれない。
誰かに突き落とされたという可能性もあるんですよね?なぜそんなことを思うんです?何だか私たちが疑われている感じ。
警察も事件の可能性を考えてるんだろう。
ほら…あそこが現場。
ねえ…この柵…。
柵!?乗り越えられると思う?バカにするなよ。
これでもね元はバスケ部だよ。
健ちゃんじゃなくてあの男がよ。
足に強い痺れがあるのよ。
あの病状じゃこの柵を乗り越えられるはずない。
そうだよな…。
事故なんかじゃない。
竹中は殺されたのよ。
問題は誰がどういう目的で竹中を殺したのか。
すべての始まりは…3年前の岡本社長殺しだわ。
岡本社長殺しの犯人として山村直美が有罪判決を受け服役した。
ところが千夏ちゃんの病気が悪化し直美さんは自殺まで考えて移植手術をしようとした。
真犯人は恐れたのよ。
この先直美さんが千夏ちゃんのために冤罪であることを声高に叫ぶことを…。
だからそうさせないために千夏ちゃんの命まで狙った。
そして今度は竹中が死んだ。
もしかしたら竹中はかなり深く岡本事件のことを知っていたのかもしれない。
犯人を脅迫してたってことか?だとしたら全部の事件の犯人は同じ人間ってことになるわ。
そいつに辿りつけば直美さんや千夏ちゃんを助けることができる。
どういうことなんです?今度は警察の真似をして昔の事件をほじくり返しているそうじゃないか?どこからそんなことを?訊いているのは私のほうだ!あの人は…山村直美さんは冤罪かもしれないんです。
冤罪!?はい冤罪を証明できれば再審請求できるんです。
そうすれば…。
判決は確定しているんです。
山村直美は懲役13年の判決を受けた。
ならば刑期満了か仮出所の日までここで罪を償わせる。
それがここ刑務所の役割なんです。
お言葉はよく分かります。
ですが今回は子供の命がかかっているんです。
若宮先生…普通の医者と刑務所の医者…。
その違いがどこにあるかお分かりですか?普通の患者は医者に対してめったに嘘をつきません。
しかしここの患者は違う。
懲役作業を少しでも楽しよう苦痛から逃れよう…と平気で仮病も使うし嘘をつく。
我々はそういった連中を相手にしなければならない。
それでも彼女たちを更生させなければならないんです。
そのためには…厳格な規律が必要なんです。
私は…もしほんの1人でも本当の患者を救えるなら嘘をつかれてもいいと思います。
私は自分の目の前にいる患者を黙ってみていることなんかできません!医者が患者の命を助けたいと思う気持に塀の中も外も関係ありません!
(ドアが開く音)直美さん…どうだった?だいぶ落ち着きました。
安定剤の処方やめましょう。
はい。
先生!何?この前は…すみませんでした。
先生がすぐ辞めるみたいなことを言ってしまって…。
今までの先生がみんなそうだったから…。
刑務所の勤務なんか早く辞めたいって人ばかり。
だから先生もきっと同じだろう…って。
所長に何を言われてもずっとここにいてください!この人と千夏ちゃんを助ける…。
そのことでここにいられなくなってもきっと父は許してくれるだろう。
目の前の患者を命がけで助けること。
それが医者の仕事だ…と。
・
(ホステス)いらっしゃいませ。
竹中さんはいつもあずみちゃんを指名していたの?
(あずみ)ええ。
どのぐらい店に来てたの?週に…一度か二度。
結構ここにはよく来てくれた人やけど何やろ…あずみ気に入られたんかなぁ。
でもあずみホンマはあまりオジサン好きじゃないんやけど…。
ハハハ…あずみちゃんからみていくつからオジサン?アンタは十分オジサン!竹中さんはいつも1人で来てたの?何回か男の人と一緒やったけど…。
一緒の時は相手の人がお会計してましたね。
(ホステス)また来てね。
(客)うん…来ちゃうよ〜。
その人の名前分かるかな?名前は分からへんけど会社は分かるよ。
領収書にタートルサービスって書いたもの。
タートルサービス?お仕事お忙しそうですね。
社長がヤリ手ですからねえ。
まだ会社できて3年目でしょう?岡本運送から引き継いだお得意先が大きいんじゃないかな大口ばかりでしたから…。
岡本運送の?俺が入る前のことだからよく知らないけど岡本運送の社長が何かの事件で死んだ後うちの社長がその取引先を引き継いで独立したそうですよ。
トラックも岡本運送が使ってたのを相当安く買ったらしいし…。
こんなこと言っちゃなんだけどうちの社長にしてみれば岡本運送が潰れてラッキーだったんじゃないかなあ。
繋がってきたよね。
吉沢が怪しいっていうんだろう?吉沢が岡本殺しの犯人だったらツジツマは合うわ。
竹中はそのことを知っていて吉沢から金を脅し取っていた。
和人君と仲良くしてるのだって何か理由があるのかもしれない。
直美さんの様子を探るとか…。
だけど…。
吉沢が犯人だという推理には絶対的な欠点があるよ。
アリバイ?ああ。
警察の調書によると吉沢は岡本社長が殺された8月7日の朝7時に会社を出て船橋から津田沼市原まで配達している。
車庫に戻ってきたのは事件直後で複数の配達先の人間がそのアリバイを裏付けている。
完璧なアリバイだよ。
殺された時間に千葉にいたなら…。
(窓ガラスを叩く音)・
(和人)おじさん!よお!キャッチボールやろうよ〜やろうよ!いらっしゃいませ。
先生!?どうも…。
え〜とから揚げ弁当と健ちゃんは?スタミナ弁当お願いします。
わざわざお弁当を買いに…?美味しいって評判だから。
美味しいですよ。
うちは米も野菜も有機農法のいいのを使ってますからね。
から揚げ弁当とスタミナ弁当1つずつです。
はい。
ありがとうございます。
あいいよいいよ高い所に乗るなよ。
ああ…ごめん。
今日吉沢さんに会ってきました。
吉沢さんに?ええ。
タートルサービスは岡本運送の取引先を引き継いで独立したそうですね。
ええいちばん実力のある社員さんでしたから…。
依枝さんが引き継ごうとは思わなかったんですか?もともとはお父さんが作った会社なんでしょう?あそこにいるといろんなことを思い出しますから…。
そうか!今のほうが幸せなんだ。
えっ!?ああ…。
依枝。
何?さっきはありがとう。
何のこと?聞こえてたんだ。
あの人たちにこの店がいいと言ってくれたこと…。
こんな小さな店で朝から晩まで忙しく働かせてるのに…。
そろそろ真剣に考えてくれないか?
(汽笛)おいちょっと!それ俺んだろ。
ケチくさいこと言わないの!焼き肉の1つや2つで…。
どんな小さな物でも窃盗罪は成立するの!刑法235条他人の財物を窃取した者は10年以下の…。
あぁ〜っ!ところでさっきから何書いてるの?ねえ…何か気がつかない?何かって?誰も岡本社長を見てないのよ。
いい?事件のあった日の夜明け前に竹中が事故を起こしてるでしょう?なのにその日の昼になっても岡本は見舞いに行ってないの。
薄情な人間だってことだろう。
そんなことじゃなくて事件の日に生きてる岡本を誰も見てないってことよ!寿司屋の出前は?メモがあって出前を置いてっただけでしょ?空白の1日か…。
もう一度岡本の行動を洗い直したほうがいいわ。
ここに岡本運送の事務所があったのね…。
(スナックのママまゆみ)岡ちゃんも可哀想だよねえ。
ええ…。
最初は…火事で死んだっていうからてっきり子供の火の不始末だと思ったの。
夏になると子供たちはよく花火するからその残り火で…。
でもよく聞いてみたら殺されたっていうので…。
でもね前の日店に顔出してくれたのよ。
前の日?それって…殺される前の日8月6日のことですか?岡ちゃんが殺される前の日よ。
何か嫌なことがあったみたいで昼間から飲んでた。
昼から?うん。
ここに何時頃までいましたか?たしか…6時頃。
いつものようにお寿司を食べていたら奥さんから電話があって…。
そうだ!ちょっと待ってね。
これ…。
これは?岡ちゃんの忘れ物。
これ…あの日忘れてったの。
まあ今度来た時に返せばいいかなと思って…。
でも突然次の日に死んじゃったでしょう?それで…捨てるわけにもいかないし困ってたのよ。
冴ちゃんこれは…。
インシュリンの注射器だわ。
岡本社長は糖尿病だったんですね?ああ…そう糖尿。
血糖値がどうのこうのと気にして飲んでた。
それなのにこれを忘れて取りに来なかった…。
ねえちょっと待ってよ!ひとりで興奮してないで俺にも説明してよ。
インシュリンを忘れたことがそんなに大きなことなの?大きいわよ!糖尿病患者ならインシュリンは肌身離さないはずだもの。
ちょっと…冴ちゃん。
いい?糖尿病の患者は血糖値を安定させるために食事の前に必ずインシュリン注射をするよう習慣づけられてるの…。
慢性の患者ならそれを忘れて食事をするなんてありえないわ。
なるほど…じゃあ事件のあった日に寿司を食べるならインシュリンをスナックに取りに行くはずなのに…。
岡本は現れなかった。
それじゃ…つまり…。
岡本は6日のうちに死んでいたんじゃないかしら?7日じゃなくて6日…?そう考えればインシュリンを取りに戻らなかったことも竹中の交通事故を放っておいたことも全部ツジツマが合うわ。
生きていたら放っておけない大事なことを2つもほったらかしにしてたのは前日に死んでいたから…。
それじゃ岡本は2度死んだと言うのか?ううん…本当に殺されたのは6日。
う〜ん何かの方法で死亡推定時刻を狂わせたのよ。
たしか岡本の死亡推定時刻は胃の内容物…寿司の消化具合で調べられてたな。
お寿司…。
ねえ…さっきのママ岡本はいつものようにお寿司を食べていったと言ってたわよね?ああ…。
あっそうか!トリック!トリック?そう…岡本の胃の中にあったお寿司は殺された前の日の夜スナックで食べたものだったのよ。
それを翌日の昼頃に食べたように見せかけた。
7日のお寿司の出前は死亡推定時刻をごまかすためのトリックだったのよ。
ちょっと待てよ!事件は真夏に起きてんだ。
遺体の腐敗具合とかですぐに見破られるだろう。
吉沢の仕事を考えてみてよ。
すみません3年も前のことで。
いいよいいよ。
間違いなく保冷車で運ばれてきたんですね?そりゃあ夏だもの保冷車でなきゃ…すぐに腐っちゃうよ。
ああ…ホラホラあんな車だよ。
冴ちゃんの推理どおり吉沢の乗っていた車は保冷車だった。
アイツ岡本社長の死体を乗せたまま配達に回ってた。
崩れたよアイツのアリバイ…。
ご苦労さま。
ありがとう!気分はどう?先生…。
明日から仕事に戻りましょう。
ええ。
今日は和人君のお誕生日なんだ…。
私なんか…和人に何もしてあげられないんです。
私なんか…駄目な母親なんです。
山村さん…。
・はいタートルサービスです。
ああ和人君かどうした?分かった…電話じゃなくて会って話そう。
(駐車場のシャッターが開く音)乗れよ。
どうしたの?依枝さんから電話で和人君が行方不明だと…。
えっ!?学校が終わっても和人君が帰ってこないと岩木さんから電話があって…。
和人君まだ戻ってないんですね?心配ですけど私もお店があるから…。
僕たちで捜しますよ。
見つけたらすぐ連絡を…。
お願いします。
和人く〜ん!和人君!いないなぁ…どこに行ったんだろう。
ああ!何で気づかなかったんだろう。
病院よ!千夏ちゃんの。
和人君乗って。
和人君!その車に乗っちゃ駄目!和人君。
和人君もうあの男に近づいちゃ駄目だよ。
どうして叔父さんの家に戻らなかったのかな?吉沢さんに電話して何を話そうとしたの?ねえ…その話は後にして買ってきてくれた?あれ…。
ああ。
和人君今日お誕生日でしょう?どうして知ってるの?ママが教えてくれた。
ママが…?うん。
ママね…ずっと和人君と千夏ちゃんのこと思ってるの。
ほ〜ら。
うわあ〜お誕生日おめでとう!和人君!?
(泣き声)和人君…。
この子前にも火を見て震えてたわ。
えっ!?そうなんだわ。
何?直美さん裁判で岡本社長を殺してないけど事務所への放火は自分がやったと言ったんでしょ?もしもそれが誰かを庇っているとしたら…。
まさか…。
あのスナックのママさんが言ってたでしょう?最初は子供の花火の不始末かと思ったって…。
健ちゃんこれ消して!和人君…聞いて。
大事な話があるの。
本当のことを話してほしいの。
あの火事のことを…。
あの時あなたと千夏ちゃんはあそこで花火をしてたんじゃないの?千夏ちゃんを助けるためなの。
本当のことを言って。
してないよ…。
僕…してないよ。
(和人)2人だけで花火しちゃ駄目だって言われてたけど千夏がどうしてもって言うから家にあった花火を持ち出したんだ。
やっぱり駄目だよお母さんと約束しただろ?
(事務所から大きな物音)千夏逃げるぞ!
(和人)だから本当に花火はしなかったんだ。
ママとの約束破ってないよ。
それなのに火事になって人が死んだっていうから…。
怖くなって千夏と2人で家で泣いて…。
僕約束守ったのにママが火をつけたって言うから…。
だからママなんか…。
吉沢の声がしたっていうのは本当なのかい?怖くてず〜っと思い出せなかったけど…。
それを今日確かめに行こうとしたんだね?分かった。
そうか…そうだったんだ。
和人君は?見つかりました。
今…家に送ってきたところです。
そうですかよかった〜。
和人君よかったなあ。
さあ冷えるから中へ…。
よかったらどうぞ。
依枝:あそこにいるといろんなことを思い出しますから…ちょっと2人きりで話をしたいの。
はい。
再審請求?ねえそれで無罪になればすぐにここから出られる。
そして千夏ちゃんの手術も…。
はい。
あなた本当は何もしていないんでしょう?いいえ…。
和人君を庇って自分が火をつけたことにした。
違います!よ〜く聞いて。
和人君は本当に火をつけてなんかいないわ。
あの火事は和人君のせいなんかじゃないの!えっ!?和人君はあの火事に何も関わっていないわ!和人!千夏!事務所が火事だって!
(2人の泣き声)どうしたの?
(2人の泣き声)
(2人の泣き声)和人!ここに置いてあった花火とライターは…?
(消防車のサイレン)和人…和人君を庇ってすべての罪をかぶった…。
はい。
和人君はあなたとの約束を破ったりしてなんかなかった。
和人…。
和人…。
和人…ごめんなさい…。
でもあの親子の誤解が解けてよかったね。
ああ明日朝イチで再審請求を出すよ。
吉沢が真犯人だって分かればすぐに出所できるはずだから。
うん…。
(悲鳴と転落した音)
(救急車のサイレン)冴ちゃん!吉沢がビルから転落したって!?意識不明の重体だ。
どういうこと?まだ分からない。
自殺しようとしたのか事故なのか…。
じゃ千夏ちゃんはどうなっちゃうの?吉沢が死んだら3年前の事件の真相はどうやって…!?落ち着いて!まだ吉沢は死んだわけじゃないんだから。
千夏ちゃんのチューブを切ったのは吉沢でした。
さっき押収した靴と非常階段に残っていた靴跡が一致しました。
吉沢は逃げ切れないと覚悟して…。
竹中の事件でも現場付近に同じ足紋が発見されています。
吉沢は千夏ちゃんを狙い竹中を殺した。
千夏ちゃんが生きていれば母親が移植手術のために再審請求をするかもしれない。
そうなるとせっかく逃げ切れたはずの岡本殺しが調べ直されることになる。
和人君と仲よくしてたのもその情報を探るため…。
ひどいヤツだ。
あなたたちの言うとおりなら3年前の捜査の責任は私にあります。
・
(刑事)重松さん!どうしたの?全部吉沢が1人でやったのかしら…。
えっ?和人君はあの火事の時吉沢の声を聞いたって言ったでしょ。
吉沢は誰と話をしてたのかしら?共犯者がいるって言いたいの?その再審請求が通れば直美さんは出て来られるんですね?ええ。
そのためにも吉沢には意識を取り戻してもらわないとなりません。
自分が犯人だったってひとこと言ってくれればその日のうちにだって出所できるかもしれませんから。
容態はどうなんですか?意識が戻るか戻らないかは何とも言えない状態です。
やっぱりあなただったんですね。
3年前の事件の真相…話していただけますか?
(ナイフを落とす音)待って!やめて!お願い。
自首して本当のことを言ってくれれば千夏ちゃんが助かるの。
手術することができるの。
来ないで!お腹の赤ちゃんまで一緒に殺すつもりなの!赤ちゃん…いるんでしょう?赤ちゃんって…?お弁当屋さんで気がつかなかった?高い所に登らせないようにしてたでしょう。
あなたに2人の命がかかっているの。
来ないで!来ないで…。
岡本社長のことは写真を燃やすほど憎んでいたんでしょう?そうです。
私が…岡本を殺したんです。
どうしようもない男だった…。
(依枝)あの会社は父の宝物でした。
オート三輪というタイヤが3つしかないトラック1台で始めたんです。
1日の運転が終わると肩も腰もパンパンに張って…。
母と私が交代で肩をたたいて…そうやって大きくした会社だった。
それなのに…。
・依枝:銀行に行ってくれなかったの?昼から酒を飲んでお寿司を食べて…。
山村さんの事故の補償だって…。
(岡本)うるせえっ!どうせ1円だって貸しちゃくれねえのにヘコヘコ頭さげていられるかよっ!それじゃあ会社はどうなるの?お給料はどうするのよっ!何するの?こんなもの…。
家も会社も売っぱらってオマエとも終わりってことだ。
ふざけたこと言わないでよ!家も会社も私のものでしょ!あなたのものじゃないでしょ!
(叩く音)
(依枝)バクチと女に入れあげたあげく父のつくった会社まで人手に渡そうとする…。
そんなあの男が許せませんでした。
あお疲れさまです。
吉沢さん…。
(電話のプッシュ音)
(電話を切る音)慌てちゃ駄目だ。
今この電話をかけたら全部おしまいになる。
(受話器を置く音)助けますよ。
奥さんは俺の言うとおりにすればいい。
吉沢さん…。
ずっとアンタのことを思ってた。
どんなことがあっても俺がアンタを守る動転していた私はその言葉にすがりました。
(依枝)吉沢は岡本の死亡推定時刻をごまかすために「遺体を保冷車に乗せろ」と言いました。
死んだ日にお寿司を食べたと思わせる偽装トリックも吉沢が考えました。
竹寿司です
(依枝)私は「言われたとおり2〜3日留守にして完璧なアリバイを作れ」と言われたのですが心配になって次の日の夕方には戻って来てしまったんです。
なんで来たんだっ!あれほど言ったのに!やっぱり駄目よっ!こんなこといつかは…。
俺はアンタを助けようとしてるんだ。
なぜ分かってくれないんだ!あの時和人君が聞いたのはあなたと吉沢のやり取りだったんですね。
吉沢は和人君たちが残していった花火を見て「事務所ごと死体を焼いてしまおう」と言いました。
火事を和人君たちのせいにしようとしたんですね。
必死に抵抗しましたが吉沢は言うことを聞かず事務所に火をつけました。
お父さんの会社を守ろうとして犯した殺人を隠すために結局はその会社を燃やしてしまったんですね。
そしてその火事を和人君のせいだと思い込んだ直美さんが和人君を庇おうと警察に捕まった。
そんなつもりはなかったんです!直美さんには取り返しのつかないことをしました。
凶器のネクタイを直美さんのゴミの中に置いたのは吉沢だったんですね?はい…。
どうして直美さんに罪を着せるようなことを…。
犯人は必要でしょう。
警察が納得して事件が終わるような犯人がね。
そうすれば…2人で…やり直せます。
2人って…?俺たちのことですよ。
あやめて!ふざけるな!オマエのために何をしたか分かってるのか?人殺しのオマエのために!吉沢は豹変しました。
ついには「会社と家を売ってそのお金を渡せ」と言いました。
その金で自分の会社をつくったのか…。
事件から1年が過ぎて戸田さんと知り合いました。
私にはもったいないような人でこの人との生活をなくしたくないと思いました。
だけど吉沢は…。
直美さんが千夏ちゃんの病気を治すために自殺までしようとしたことを吉沢は知った。
そのうち直美さんが冤罪を主張するのではと恐れそうさせないために千夏ちゃんの命まで狙った。
(チューブを切る音)
(依枝)生きていられないと思いました。
千夏ちゃんが死んだら私も生きていられないって…。
竹中治はあなたと吉沢から金をゆすっていたんですね?吉沢の事務所で話をしているのを偶然立ち聞きされたんです。
それからずっとお金を払っていました。
だけど吉沢はいつか隙をみて竹中を殺すつもりでした。
それがあの夜だった。
竹中:奥さんじゃない?うわっ!吉沢に脅迫されてしかたなく手をかしました。
酔った竹中を事故にみせかけて川へ投げ込みました。
冴子さんたちを狙ったのも吉沢です。
もう我慢できませんでした。
すべてを失うことになっても千夏ちゃんと直美さんに償いをしなければならないって…。
自首する!?そうすれば千夏ちゃんは助かるわ。
直美さんが出てこられれば…。
今更きれいごと言うなよ!誰が最初に旦那を殺したんだよ!もう後戻りはできないんだよ。
俺たちが破滅しないためには邪魔なヤツを1人ずつ消していくしかないんだ。
バカなこと言わないで!警察に行くわ。
俺はオマエのために人生を狂わせたんだよ。
全部オマエのためにやったんだ。
なのにオマエはあんな男と…。
オマエも…戸田も…殺してやる!ううっ!ううっ!
(悲鳴と転落した音)
(依枝)私は卑怯な女です。
全部私が岡本を殺したことから始まったことなのに…。
吉沢一人の罪にすれば…あの人との暮らしを失わずにすむと思ったんです。
私にはもったいないくらいの幸せだったから…一度手放したらもう絶対取り返せないって…。
(依枝)あの人が新しいお料理を考えてお客さんがそれを喜んでくれて…。
今日は昨日より売り上げが1000円多かったってそんなことがなんだかとても嬉しくて…。
その暮らしを…なくしたくなかった。
なくならない。
なくなったりしない…。
あなたにはお腹の赤ちゃんがいるじゃない。
あなたの…千夏ちゃんの病室で流してた涙…。
和人君の無事を聞いて流してた涙…。
あの涙は…全部嘘じゃなかった。
そんな涙を流すあなたなら…絶対…絶対…幸せになれる。
生きて!生きてその子や千夏ちゃんの命を救って!
(戸田)依枝!あなた…私…。
待ってるから!たとえオマエに何があっても絶対に別れたりはしない。
そう言おうとずっと思ってたんだ。
先生!赤ちゃん産めますよね?刑務所に入っても…。
ええもちろん。
俺…あの場所で…あの店で…オマエの産んだ子と2人で…待ってるから…。
ずっと待ってるから…。
(パトカーのサイレン)俺…あの人の弁護をするよ。
ママ!和人!和人…。
ごめんね。
ママ信じてあげられなくて…。
ママがバカだったから…。
ママ…。
和人に寂しい思いをさせて…ごめんね。
和人…。
あの病院に勤めていた頃は人を殺す人間なんて自分とは全く違う存在だって思ってた。
生まれつき自分たちとは違う特別な人間だって…。
(汽笛)刑務所の診察室で私初めて分かった。
ここの人たちと私と何も変わりはないって…。
普段普通に暮らしていた人間がほんの小さなきっかけで罪を犯す側に回ってしまうんだって…。
そして人間は一度つまずいても起き上がることができると知った。
過ちを償い自分を変えてもう一度新しい幸せを見つけることができる。
ここがそのための場所なのだと知った。
お父さんその後体調はどうですか?私もやっと自分の居場所を見つけました。
この場所でお父さんのように自分の患者さんたちと向き合うつもりです。
ここかな?はい。
ここ…。
はい。
4日の14時とりあえず横浜地検のほうで取り調べがあります。
包み隠さず正直に検事に話してください。
2015/04/08(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「刑務所の医者・若宮冴子」[字]
切ない事件の真相。子を慮る母親の深い愛情…。
詳細情報
番組内容
東都医大から半年の約束で、横浜女子刑務所に医務課長として派遣されている若宮冴子は、放火殺人の罪で服役している山村直美の自殺未遂を助ける。直美は運送会社の社長を殺し、その事務所に火をつけて死体を焼却。懲役13年の重罪人だった。直美が自殺を図った理由は、胆道閉鎖症である娘の千夏に、自分の臓器を移植するためだった。
番組内容続き
服役中の人間がドナーになるのは認められず、自分が死んで娘に肝臓を移植しようとしていたのだ。直美の真剣な思いに、冴子は「何とかしてあげなければ」と立ち上がる。
出演者
若宮冴子…浅野温子
田島健司…布施博
吉沢隆…渡辺裕之
山村直美…渡辺典子
田野村和夫…寺田農
竹中治…深水三章
本田美香…鈴木美恵子
三谷佳代…大島蓉子
奥寺美代子…棟里佳
戸田栄作…阿南健治 ほか
原作脚本
【原作】二条睦
【脚本】安井国穂
監督・演出
【監督】児玉宣久
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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