ろーかる直送便 北海道クローズアップ「心に響く本を〜ある“本屋の親父”の挑戦」 2015.04.06


男性が大事そうに抱えるのは10冊ほどの本の包み。
砂川市で小さな本屋を営んでいます。
今この岩田さんが選んで送ってくれる本を日本全国の人々が心待ちにしています。
はい!じゃあよろしくお願いしま〜す。
岩田さんから届いたある本をきっかけに前へ歩き始めた父親と息子。
かつて心に深い傷を負った女性は岩田さんの本に人生の転機を求めています。
岩田さんが行っているのは「一万円選書」というサービスです。
注文を受ける際に一人一人の要望を聞き是非これを読んでほしいという本を選び抜くのです。
注文はこの半年でおよそ1,000件に達しました。
注文した人の多くは岩田さんが選んでくれる本に心の癒やしを求めています。
僕はそんな…「本には人生を変える力がある」。
「本屋の親父」の日々を見つめます。
札幌から北へ車で1時間。
人口およそ1万8,000の砂川市です。
・おはようございます。
おはようございます。
朝7時半。
この町の小さな本屋の一日が始まります。
岩田徹さん62歳。
砂川で56年続く本屋の2代目です。
およそ40坪の店内はどこにでもある普通の本屋さんのように見えますが実はこだわりに満ちています。
店の中で一番目につく平台です。
一般的には売れ筋の新刊本が置かれる場所ですが岩田さんは違います。
まあよく入れるのがこれですね。
「逝きし世の面影」。
岩田さんは真新しい本ではなく多少古くても読者の心に響く本にこだわっているのです。
はいいらっしゃい。
常連客の女性がやって来ました。
一番僕が薦めた本の中で…。
岩田さんは本の売り方も少し変わっています。
はいありがとうございます。
いえいえありがとうございます。
「本屋の親父の仕事は客に読んでほしい本を薦める事だ」。
岩田さんはそう考えています。
こうした岩田さん流のやり方を発展させたのがお薦めの本を選んで送り届ける「一万円選書」のサービスです。
2階の倉庫に一万円選書の注文書が山積みになっていました。
これですね。
この半年で届いた注文はおよそ1,000件。
あまりの多さに現在は一時注文を受けられない状態が続いています。
注文は東京をはじめ遠くは九州など全国各地から届きます。
客は近所の本屋ではなくわざわざ岩田さんに注文してくるのです。
岩田さんの一万円選書で生きる力をもらった人がいます。
(鈴の音)去年3月最愛の妻をすい臓がんで亡くしました。
実は島崎さんは妻を亡くした悲しみに暮れる間もなく更なる大きな苦悩に襲われました。
これ僕撮ったんです確か。
島崎さん夫婦は3人の男の子に恵まれました。
しかし仕事が忙しく子育ては妻が中心。
父親一人で息子たちとどう接すればいいのか分からなくなっていたのです。
交す言葉は最低限の日常会話だけ。
家族はバラバラでした。
そんな時テレビの深夜番組で偶然一万円選書の事を知りすぐに筆を執ります。
「残された男4人でどうすればいいのか」。
島崎さんは心の内の全てを岩田さんにさらけ出しました。
…じゃないかと思いますけどね。
これです。
そんな島崎さんに岩田さんが選んだ本がこの11冊です。
その中の一冊の詩集が島崎さんの心に響きました。
「手から、手へ」。
親から子へ脈々と受け継がれる命のバトンについてつづられた本です。
その一節。
3人の息子は大事な命のバトン。
島崎さんはもう一度息子たちと真正面から向き合ってみようと前へ進み始めました。
砂川にある小さな本屋の親父岩田徹さん。
その人生はいつも本と共にありました。
すごい雪です。
ただいま〜。
子供の頃から図書室の本を端から端まで読みあさるほどの大の本好き。
今も自宅には古い本ばかりおよそ1,000冊が並べられています。
読んで読んで。
はい。
ねえ!待っておじいちゃん読んであげる。
おいおい重たい。
実は今でこそ全国から注目を集める岩田さんですがそこに至るまでには紆余曲折がありました。
本屋の2代目に生まれた岩田さんが店を手伝い始めたのは24歳の時です。
当時は問屋から送られてきた話題の本をただ並べれば売れた時代。
岩田さんは何の疑問も持っていませんでした。
しかしそうした状況はバブル景気のあとに一変します。
全国各地に広さ100坪を超える大型の書店が次々にオープン。
更に追い打ちをかけるようにインターネットでの本の販売も登場します。
日本全国では2000年からの14年間でおよそ8,000店もの町の本屋が姿を消していったのです。
岩田さんの店も客足が激減。
岩田さんは経費を抑えようと従業員を減らしますが今度は過労で体をこわし入院してしまいました。
もがき苦しんだ末の入院。
その時の病室で岩田さんは自分が目指すべき本屋に気付いたといいます。
一般的に。
だからそうじゃなくって…「売れ筋の本を売るのではなくお客に本当に読んでもらいたい本を売りたい」。
その思いが一万円選書の原点になったのです。
今岩田さんは多くの時間を客から送られてくる一万円選書の注文書を読む事に費やしています。
一万円選書の最大の特徴とも言えるのが「カルテ」と呼ばれるこの注文書です。
カルテには「何歳の時の自分が好きか」そして「うれしかった事」や「苦しかった事」など事細かく書いてもらいます。
このカルテを書く事で読者は自分自身を知る事ができます。
心に響く本に出会うためには最も大切だと岩田さんは考えています。
そうすると何となく…ここに岩田さんにカルテを送った女性がいます。
22歳の直美さん。
名前を伏せる事を条件に取材に応じてくれました。
直美さんは小学校から高校までイジメに苦しんできました。
心に負った深い傷は大人になった今も癒えません。
直美さんが岩田さんに宛てたカルテです。
「小学校の頃からイジメの標的にされました」。
「何度も『消えたい』と思っていました」。
これまでのつらい日々が赤裸々に記されています。
直美さんのカルテを読む岩田さん。
一万円選書はこうしたカルテの読み込みから始まります。
岩田さんが注目したのは意外な部分でした。
「自分は天才だ」という記述。
他にも「世界に喧嘩を売っていた」という記述。
強気な言葉が逆に気になったのです。
ちょっとやってみましょうか。
心に深い傷を負った直美さんに響く本。
ただパッと頭に思いついたのでこれと…これと…。
岩田さんは1万2,000冊の中から本を選び抜きます。
こういきます。
これでどんな感じかな。
この11冊を選びました。
主人公が自信を回復していく物語が中心。
息抜きのための時代物や歴史書もありました。
はい!じゃあよろしくお願いしま〜す。
3日後直美さんのもとに岩田さんの本が届きました。
は〜いありがとうございます。
あっ何か入っていました。
お手紙かな?わ〜なんか泣きそうになりますね。
しかも…待ち焦がれていた本を直美さんは一心不乱に読み始めました。
直美さんは大切な一冊を見つけていました。
一番なんか自分に近いというか面白かったなって思うのがいしいしんじさんの「トリツカレ男」という本なんですけど。
「トリツカレ男」は一度何かに夢中になると我を忘れてしまう男が主人公の物語です。
クライマックスは主人公が絶望していた少女ペチカを慰めるシーン。
そこに岩田さんから直美さんへの思いが詰まった一節がありました。
開かれた未来に向かってしっかりと自分の足で立つ少女ペチカの描写。
直美さんは自分自身の姿を重ねました。
直美さんは子供の頃から漫画を描くのが大好きでした。
この春東京での1人暮らしを始め本格的に漫画家を目指します。
妻の死をきっかけに子供たちに向き合う事を始めた島崎さん。
三男の勝さんと5年ぶりに2人きりの時間を過ごしました。
「どんなにやさしいちちははもおまえたちとは一緒に行けない」。
あの本に出会って以来島崎さんはいつもこの言葉を胸に子供たちと接しています。
もう少しでママの一周忌だぞ。
あぁそうだな。
3月9日でしょ?そうそうそう。
よく覚えてるな。
そりゃ覚えてるよ。
そう。
そう。
うん。
「本には人生を変える力がある」。
小さな本屋の親父岩田徹さんは今日も本を選び続けます。
いや〜だから…フフフフフ…。
2015/04/06(月) 15:15〜15:41
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 北海道クローズアップ「心に響く本を〜ある“本屋の親父”の挑戦」[字]

砂川市の本屋が9年前に始めた「一万円選書」。お勧めの本を選んで送るこのサービスに、悩みを抱える人から注文が殺到している。心に響く本を選び続ける、ある本屋の物語。

詳細情報
番組内容
砂川で小さな本屋を営む岩田徹さんが始めた「一万円選書」が、全国の注目を集めている。人生経験や悩みを“カルテ”と呼ばれる注文書に書いて送ると、岩田さんが選び抜いた1万円分の本を送ってくれるサービスだ。妻を亡くし、残された息子との関係に悩む男性。小学校時代からイジメにあい、今も心の傷が癒えない女性。深い悩みを抱える人たちに岩田さんはどう向き合い、どんな本を送るのか?“本屋のおやじ”の挑戦を見つめる。
出演者
【語り】小林孝司

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
趣味/教育 – その他

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