私たちがいつも街なかで見かけながらほとんど気に留めない生き物。
ハトは都市の風景に溶け込んでいます。
道で食べ物をついばみ電線や建物の上に並んでいます。
人がハトに注意を払うのはふんによる汚れなど多くの場合やっかい者としてです。
翼のあるドブネズミですよ。
ハトは不潔で危険で健康に害を及ぼす生き物だと思われています。
都市で邪魔者扱いされているハト。
ハトに優れた能力がある事や歴史的に人間の役に立ってきた事はほとんど忘れられています。
ハトには何百キロも離れた所から元のすみかに戻ってくる能力があります。
古代のローマ人やギリシャ人がその能力に注目し連絡手段として活用しました。
ハトは鳥の中では最も古くから人間に飼い慣らされてきました。
今ではほとんど注目されていないハトですが実は驚くべき能力があり人々の敬意を集めた時代もありました。
知られざるハトの能力に迫ります。
カナダの動物行動学者リュックアラン・ジラルドはハトの優れた能力を多くの人に知ってもらいたいと考えています。
子供の頃家にハト小屋がありましたが近所から苦情が出たため撤去する事になりました。
そこでハトをケージに入れておじと一緒に車で郊外まで行き放しました。
ところが私たちが家に着くよりも30分以上早くハトが戻っていたんです。
子供だった私はとても驚きました。
都市にいるハトは厳しい環境の中で生きています。
常に食べ物が不足しているのです。
生き延びるためハトは毎日食べ物探しに明け暮れています。
巣を作りつがいになり子供をもうけるハトはごく一部です。
ほとんどは飢えや寒さが原因でまだ若いうちに死んでしまいます。
毎年ハト全体の35%が死ぬと見られています。
多くのハトはペットと同様食べ物を人間に頼っています。
ペットと違うのは毎日確実に餌をもらえる保証が無い事です。
餌をもらうためハトは人間の行動を観察し餌をくれそうな人のもとに集まります。
ハトを呼び寄せ餌をやるのが好きな人たちがいます。
ハトは人間を恐れないため人間はハトとある種の関係を築く事ができます。
ハトは人の特徴を記憶し遠くからでも見分ける事ができます。
定期的に餌をくれる人を待ち続けその人がやって来ると餌を見せなくても気付きます。
ハトはまず歩き方で人を見分けます。
毎日餌をくれるような人なら1.5キロ以上離れた場所から見分ける事ができます。
バッグからまだ何も取り出さないうちに寄ってくるんです。
ハトは餌をくれた人だけでなく嫌がらせをした人を記憶し見分ける事もできます。
小さな鳥なのに人間の顔の特徴も見分ける事ができるんです。
スザンヌ・マクドナルドはハトが敵と味方を見分ける事ができるか実験をしました。
違う色の上着を着た2人がハトにとって「いい人」と「悪い人」を演じます。
2人とも餌を与えますが1人はハトを脅かすような行為もします。
ハトは脅かさずに餌をくれるいい人の方に集まります。
2人は一度その場を離れしばらく時間を置いてから戻ってきて再び餌を与えます。
ところがハトは脅かすような行為をした悪い人を記憶していてそちらには集まりません。
ハトは上着の色によって人を見分けている可能性もあります。
次はハトが何で人を見分けているのかを確認する実験です。
2人は上着を交換します。
上着を取り替え座る場所も交代して餌を与えます。
するとハトは服装も場所も変わっているにもかかわらず最初に安全だとみなしたいい人の方に集まりました。
実験の結果ハトは人間一人一人を顔で見分けハトにとっていい人と悪い人を記憶している事が分かりました。
本当に利口な鳥です。
常に飢える危機に直面しているハトはそれぞれに縄張りを設け得られる食べ物の量に応じて住み分けをしています。
どのハトも同じ程度の食べ物を確保できるよう散らばって生息しているのです。
ある場所でハトの生息数を数え一羽のハトがどの程度の食べ物を得られるかを計算してみます。
すると食べ物の割り当て量はどんな場所に生息しているハトでもほとんど同じである事が分かります。
例えばある公園に他の公園の2倍の食べ物があったとしましょう。
するとそこに生息しているハトの数も2倍です。
食べ物が5倍ならハトの数も5倍になります。
リュックアラン・ジラルドが実験を行いました。
ジラルドと助手が数メートル離れた場所で同じ餌をまきます。
ただしジラルドは常に助手の2倍の量をまきます。
するとほぼ2倍のハトがジラルドの方に集まりました。
一羽のハトが食べる餌の量はどちらも同じになります。
ハトは餌の割り当てが同じになるよう行動しています。
映像を止めて数えるとよく分かります。
私の方にほぼ2倍のハトが集まっているでしょう?食べられる餌の量はどのハトも同じだという事です。
もし3倍の餌を与えても3倍のハトが集まるだけで今いるハトにより多くの餌を与える事にはなりません。
多くの餌を定期的に与えれば他の場所からハトを引き寄せる事になります。
だからむやみに餌を与える行為はあまりお勧めできません。
ハトの分布に影響を及ぼすだけだからです。
餌を与える場所にいるハトが増えるだけで一羽が食べる量は変わりません。
それぞれのハトに多くの餌を与えようとしても無駄だという事です。
食べ物の量によって動物の分布状態が変化する現象は海の魚や森の鳥など他の動物にも広く見られるものです。
つがいになったハトは巣を作り卵を産みます。
春から夏にかけての繁殖期には平均でひと月に2個卵を産みます。
オスとメスは交代で卵を温めます。
ハトの寿命はおよそ3年です。
ハトが巣を作るのは強い風を避ける事ができてネコや他の鳥が近づきにくい場所です。
ハトの繁殖能力は高く全世界の生息数はおよそ4億と推定されています。
ハトは面倒見のいい動物で夫婦や親子の間には強い絆があります。
ハトのつがいは一夫一妻に近いものです。
ただしオスは浮気性でクークーという求愛の鳴き声をいつも出しています。
ハトはオスとメスを見分けられないため誰彼かまわず求愛の声をかけているんです。
ハトの両親は喉からピジョンミルクと呼ばれる液体を出しひなに与えます。
哺乳類の母乳に近いものですがメスだけでなくオスも出せるのが大きな違いです。
大人のハトはほとんど何でも食べてピジョンミルクを作り出します。
ハトは味を感じる器官が非常に少ないため食べ物をより好みしません。
ふ化したばかりの時は頼りないひなも栄養豊富なピジョンミルクのおかげで1日半で体重が2倍になります。
ハトの成長の早さはあらゆる脊椎動物の中でもトップクラスです。
ピジョンミルクはハトの早い成長と高い繁殖能力に大きな影響を与えていると考えられています。
生後3週間でひなの体は羽毛に覆われ大人の姿に近づきます。
4週間たつと羽毛が生えそろい体重も最大になります。
大人のハトに生えている羽毛はおよそ1万本です。
子供のハトが巣から飛び立てるようになるとオスが面倒を見ます。
メスは次の産卵で忙しいからです。
オスは子供を連れて飛び回り食べ物を得られる場所を教えます。
多くの危険を避けながら食べ物を探し出すためにハトはさまざまな能力を発達させてきました。
その一つがおよそ40キロ先まで見えると言われる視力です。
単に遠くを見られるだけではありません。
車などの物体がどう動くかを正確に推測しぶつかるのを回避できる優れた能力があります。
ハトは人間と違い正面だけでなく周辺部もよく見る事ができます。
正面の視野と周辺部の視野をつかさどる神経はそれぞれ脳の別の部分につながっていて情報を素早く処理できるようになっています。
そのため車にひかれたりイヌやネコに捕まったりする危険を事前に回避する事ができるんです。
人間と比較した場合ハトには全ての動きがスローモーションのように見えると考えられています。
人間にとっては速い車の動きもハトの目にはもっとゆっくりとした動きに見えます。
そのため車も難なくかわす事ができるのです。
ハトが車にひかれそうになる光景をよく見かけますが実際にひかれる事はなく素早くよけてしまいます。
地上から飛び上がる時あるいは急に動きを止める時ハトは翼を打ち鳴らし空気を圧縮して推進力を生み出します。
ハトは左右の翼をこんな具合に打ち鳴らします。
それが強い空気の流れを生みだし推進力となります。
地面に降りる時にはブレーキとしても役立ちます。
カメラマンのジョナサン・ワッツは特殊なカメラをハトの背中に取り付けハトの視点から見た景色を撮影しようとしています。
飛び立ったハトは街なかを素早く飛んでいきます。
ハトの飛行速度は最高で時速150キロ近くになります。
優れた視力は空の上でも役立ちます。
ハトは視野が広く背後の大部分を見る事ができます。
そのためハトを獲物として狙うタカやハヤブサが近づいてきてもすぐに気付く事ができるのです。
危険を察知するとハトは空中で群れを作り敵が標的を1羽に定めにくくします。
また敵に追跡されると突然地上に向かって真っ逆さまに落ちる危険な飛び方をして敵を振り切る事があります。
ハトの世界はさまざまな危険に満ちています。
しかし今回撮影された映像は平穏なものでハトの視点から見た興味深い景色が収められていました。
ハトはとても賢い鳥です。
教えればアルファベットを認識できるようになります。
座礁した船を遠くから見つける事もできます。
かつてハトは戦争の際に重要な手紙を運ぶ役割を果たしました。
緊急に必要な薬を病院に届けたりウォール街の投資家がひそかに連絡を取るためにハトを活用した事もあります。
いわゆる伝書バトです。
まず互いが飼っているハトを交換しておきます。
連絡をしたい時はハトの足に手紙を付け空に放します。
するとハトは元の小屋に戻るため手紙が届けられるという訳です。
ハトは歴史上の記録にも登場します。
5,000年前のメソポタミアの石板や古代ローマのユリウス・カエサルモンゴルのチンギスハンなどを描いた絵に伝書バトが登場し最初のオリンピックの結果もハトが届けました。
国立アメリカ歴史博物館には有名なハトの展示があります。
1918年第1次世界大戦の戦場でアメリカの部隊が誤って味方から攻撃を受けていました。
部隊は味方に攻撃をやめさせるため3羽の伝書バトにメッセージを付けて放ちました。
そのうち2羽は撃ち落とされましたがシェールアミという最後の1羽は片足を失う大けがを負いながらもメッセージを届けました。
メッセージを受け取ったアメリカ軍は直ちに攻撃をやめました。
こうして伝書バトのシェールアミは194人の兵士を救ったのです。
現在街なかで見かけるハトはもともと人に飼われていたものの子孫です。
20世紀の初め人々はハトを飼う事に興味を失い多くのハトを空に放しました。
自由になったハトは主に都市部に住むようになりました。
野生のハトは海辺の崖などに生息します。
それとよく似た環境がビルが建ち並ぶ都市に多いからだと思います。
今では伝書バトもほとんど利用されなくなっていますがハトの優れた能力に変わりはありません。
ハトは常に食べ物を探し回っていますが毎日どれほどの範囲を見て回りどれくらいの距離を飛んでいるのでしょうか?カナダグエルフ大学の鳥類生物学者ドミトリー・キシキネフが調査を行っています。
この近辺に生息しているハトの行動範囲を把握するのが目的です。
カナダ最大の都市トロントの街なかで捕獲したハトにGPS携帯電話インターネットなどの技術を利用した追跡装置を取り付けます。
ハトがいる場所を細かく記録しスマートフォンの画面からでも確認する事ができます。
準備完了。
では始めます。
実に面白い装置ですよ。
一種の携帯電話になっています。
ハトに電話するとそのハトが立てている音を聞く事ができるんです。
2番のハトにかけています。
(携帯電話の呼び出し音)調査の結果ハトの行動範囲は意外と狭く街の中心部の数ブロックに限られている事が分かりました。
ただし同じ所に長くじっとしている事はなく頻繁に移動するため一日の飛行距離は平均で40キロになりました。
ハトの行動範囲が狭いのは定期的に餌をもらえる場所を回っているためだと考えられます。
ハトは長い距離を飛ぶ事もできます。
更に全く知らない場所で放してもすみかに戻ってくる能力もあります。
ハトが迷う事なく元の場所に戻ってくる秘密は長年にわたって研究されてきました。
暗い箱の中に入れて100キロ先まで連れていったとしても空に放すと元の場所に戻ってきます。
ハトが帰る方向を知る能力についてはいくつかの説があります。
アメリカボーリング・グリーン州立大学のヴァーン・ビングマンは新たな実験を行いました。
数百キロ離れた見知らぬ場所からでもハトが戻ってくるのは周りの環境に何か手がかりがあるからでしょう。
それを突き止めたいと思います。
私が特に興味を持っているのは地磁気の変化を頼りにして帰る方向を見つけているという説です。
ハトは地磁気を感じ取る能力によって自分が今いる場所や元いた場所を知る事ができると言うのです。
今回の実験はハトから地磁気を感じ取る能力を奪ったらどうなるかを観察するのが目的です。
くちばしに強力な磁石を取り付ける事で磁気を感じる能力を妨害します。
もしハトに磁気を感じる能力があるとすればくちばし付近の感覚器官が関係していると考えられています。
そこでくちばしに磁石を取り付ける訳です。
磁気を感じる能力を妨害すればハトは迷うかもしれません。
そうなれば地磁気を頼りにしている事が分かります。
GPS装置も付ける事でハトの飛行ルートが記録され正しいルートから少し外れただけでも分かります。
ハトは匂いを感じ取る能力嗅覚を利用して見知らぬ場所から戻ってくるという説も有力です。
ハトの嗅覚を妨害する実験も同時に行います。
これによってどちらの能力が重要なのかが分かります。
使うのはこの局所麻酔薬です。
左右の鼻の穴に数回ずつ麻酔薬を入れます。
これによって嗅覚がまひし匂いを感じ取る事ができなくなります。
これで方向に迷ったら嗅覚が大きな役割を果たしている事が分かります。
実験用の処置をした2種類のハトと何の処置もしていない通常のハトが何キロも離れた見知らぬ場所まで運ばれました。
ここで空に放ち迷う事なくすみかに戻ってくるかどうかを試します。
この実験によってハトがすみかに戻ってくる謎が解明されるかもしれません。
ハトが戻ってきたらGPSのデータをダウンロードし地図と照らし合わせます。
これによってハトが戻ってきたルートを確認する事ができます。
実験に使われたハトは3種類です。
磁気を感じる能力を失ったハト。
嗅覚がまひしたハト。
そして通常のハト。
最初は通常のハトです。
出発点からハト小屋までごく当たり前のルートをたどっています。
最初に出発点の周りを少し飛び回りその後はほぼまっすぐ目的地に向かっています。
伝書バトとして予測される動きそのものです。
次は磁気を感じる能力を失ったハトです。
地磁気は2つの空間的な情報を提供している可能性があります。
一つは方角です。
鳥には方位磁石の働きをする器官があり東西南北を判別する事ができます。
これについては学者の意見はほぼ一致しています。
今問題になっているのはもう一つの情報。
居場所の感覚とでも言うべきものです。
自分は今Aという場所にいる。
そこからBという場所に向かって戻ろうというような感覚でこれについてはまだよく分かっていません。
今回の実験では磁気の感覚を失ったハトは通常のハトとほとんど同じルートをたどってまっすぐハト小屋に戻りました。
ハトが地磁気の変化を感知して帰る方向を見つけている証拠はこの実験では発見できなかったという事です。
最後は麻酔薬で嗅覚を失ったハトです。
実に興味深い結果が出たのは嗅覚がまひしたハトです。
ルートを見ると戻るのに非常に苦労している事が分かります。
特別な科学知識などなくてもこの図を見ただけで判断できるでしょう。
ハトはさんざん道に迷いあちこちを飛び回っています。
後半でいくらか調子を取り戻しているのは恐らくハト小屋に近づいてきて見覚えのある建物などが目に入ったからだと思います。
つまり嗅覚以外の情報が使えるようになったためです。
前半は帰る方向を見つけるのに恐ろしく苦労しています。
今回の結果を総合するとハトが帰る方向を見つけられるのは嗅覚のおかげだという事になります。
ハトはさまざまな匂いが空中にどう拡散するのかを理解できると考えられています。
匂いは空気中にでたらめに広がる訳ではなく風の状態などに従って規則的な広がり方をします。
そこでハトは初めて連れてこられた場所の匂いを元の場所と比較します。
その比較によってハトは自分がどちらの方向に連れてこられたのかを判断します。
そして元の場所との位置関係が確認できたらあとは目標に向かってまっすぐに飛んでいくという訳です。
なぜハトは道に迷う事なく元の場所に戻ってこられるのか?嗅覚こそが唯一の答えだと断言するつもりはありません。
しかし今回の実験で確認できた要素は嗅覚だけでした。
人間は昔から伝書バトとして活用するためにハトを飼い慣らしてきましたが実用目的ではなく観賞用の飼育も盛んに行われてきました。
王族著名人から一般の人々に至るまでハトの愛好家は数多くいます。
カナダにもハトの愛好家協会がありさまざまな姿をしたハトを品評会に出して美しさや珍しさを競い合っています。
ハトは品種改良によってとても多くのバリエーションが生み出されています。
イヌと同じです。
あなたの好みがどんなものでもきっとお気に入りが見つかるはずです。
ハトの愛好家たちの情熱にはすごいものがあります。
人間は何千年もの間ハトの品種改良を続けてきました。
今では本来の姿からはかけ離れたようなものまで見られます。
羽の形も色もさまざまでイヌで言えば祖先に当たるオオカミからチワワに匹敵するほどの幅広さがあります。
観賞用に品種改良されたハトはチャールズ・ダーウィンの進化論にも登場します。
自然環境に最もよく適応したものが子孫を増やし栄えていくという「自然選択説」の説明に使われているのです。
進化について研究していたダーウィンはハトを観察するうちに多くの品種がある事に気が付きました。
ハトの豊富な品種はダーウィンが「進化論」を生み出すためのヒントになりました。
品種改良によって芸術品のようなハトを作り出す。
それが私たちの喜びであり愛好家の腕の見せ所です。
品種の違いには色や形大きさ羽の生え方などいろいろな要素があります。
尾が普通より大きいものもいます。
足に羽があるものもいます。
胸や首に飾り羽があるもの。
あるいは変わったくちばしをしているものもいます。
頭の上の冠のような羽などいろいろな装飾もあります。
本当にさまざまです。
ハトは馬と同様レース用にも飼育されています。
ハトのレースは競馬ほど一般的ではありませんが関係者の熱気は引けを取りません。
レース用のハトは優秀なものになると1羽数千万円で取引されます。
カナダの「北部ハトレース連合」では160キロから800キロ程度の距離でレースを行っています。
レースに勝つには頭が良く方向感覚のいいハトが必要です。
見た目も大切です。
競馬の馬と同じで皆速くて美しいハトを求めます。
カナダのオンタリオ州では週末ごとにハトのレースが行われています。
同じ場所から一斉にスタートしますがゴールはそれぞれのハト小屋です。
ゴールまでの時間と飛行距離を計測し平均速度が最も速いハトが勝利します。
ハトの目を見ると健康状態が分かります。
どんよりとした目や涙目は呼吸器系の病気など体調が悪い印です。
レースに勝つには健康なハトが必要ですから最高の餌を与え獣医のもとで定期的に健康診断をしてもらいます。
ハトのレースに勝ったからと言って私たちが何か得をする訳ではありません。
ハトを速く小屋に戻す競技が楽しいからやっているだけです。
お金を稼ぐためではなく純粋な娯楽です。
レースが開催されようとしています。
参加するハトはおよそ1,500羽。
トレーラーに載せられおよそ250キロ離れたスタート地点まで移動します。
そして翌朝一斉に空に放たれます。
ゴールはそれぞれのハト小屋です。
このトレーラーは98の箱を載せています。
1箱に最大40羽入りますが今はそんなに詰め込んでいません。
全部でおよそ1,500羽です。
スタート地点に到着しました。
いよいよレースの始まりです。
この仕事で最高の瞬間はスタート地点で扉を開ける時ですね。
ハトが一斉に飛び出していく姿は何度見ても飽きませんよ。
方向感覚をつかむとハトはできるだけまっすぐなルートをたどって自分のハト小屋に飛んでいきます。
このレースではハト小屋に戻るまでの平均速度で勝利が決まります。
飼い主はハトが戻ってくるのを今か今かと待ち続けています。
レース用のハトは十分な餌を与えられ健康も管理されている点では恵まれています。
一方街なかに生息するハトは常に飢えと闘う過酷な環境で生きています。
かつては伝書バトとして活躍したハトですが今は違う分野で活用されています。
ハトはネズミと同様に学習や認識の動物実験にしばしば使われているのです。
年老いたハトの中には人間と同じように認知機能が衰え自分の居場所が分からなくなるものがいます。
そのためアルツハイマー病の研究ではハトが重要な役割を果たしています。
ハトの脳で記憶をつかさどる部分が年齢と共にどう変化するのかを観察し人間と比較しています。
この研究を通じてアルツハイマー病の新しい薬が開発できるかもしれません。
まだ何年もかかると思いますがハトは重要な研究対象になっています。
ハトは昔から学習の実験に活用されてきました。
学習の実験に使われる動物が愚かなはずはありません。
人間は何千年にもわたってハトと密接な関係を築いてきました。
情報の伝達。
娯楽。
科学実験。
しかしハトの重要性が広く理解されているとは言えません。
人間はハトにもっと敬意を払うべきだと思います。
ハトには優れた適応力や他のどんな動物もまねできない特別な能力があります。
ほとんどの人はその事を知らないんです。
優れた能力にもかかわらずハトは世界中の街角で食べ物探しに明け暮れています。
ハトは頭が悪いというのは全くの間違いです。
優れた能力があるからこそこれほど繁栄しているんです。
ハトが置かれている状況を想像してみて下さい。
複雑な構造をした都市の中を迷わず飛び回り乏しい食べ物を見つけて生き抜いている。
優れた適応能力があるからです。
ハトにはものを考え工夫する能力があります。
都市の中で巣を作る場所や食べ物を見つけ出してきます。
オスとメスは良きパートナーとして協力し合い過酷な環境の中で子供を育てています。
ハトが現代の都市で生き抜いているのは驚くべき事です。
都市は生息環境として過酷な場所です。
そこで生き抜いているのはハトが優れた生き物である事の証明だと思います。
都市に住むハトはほとんどの場合食べ物を人間に依存しています。
イヌやネコと似た立場ですが決まった家はありません。
今街なかに生息しているハトは人間が作り上げた生き物です。
野生の鳥を飼い慣らし人間なしでは生きられないように作り替えてきました。
ハトが人間に依存するようになったのは私たち自身の責任です。
ハトは単なるやっかい者ではありません。
今度公園に行ったらハトをじっくりと観察してみて下さい。
今まで気が付かなかったハトの意外な一面を見つけられると思いますよ。
2015/04/06(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「意外と知らないハトの話」[二][字][再]
ハトは人の顔を認識し、エサをくれる人を識別している!?抜群の視力で数十キロ先まで見え、背後も見えている!誰もが知っている鳥、ハトの知られざる驚きの能力に迫る。
詳細情報
番組内容
フンが汚いなど、都市では邪魔者扱いされがちなハト。非常に賢く、教えればアルファベットを識別し、エサをくれる人間の顔も認識している。歴史的にも伝書ばととして人間の役に立ってきた。なぜ何百キロも離れた所からすみかに帰れるのか?地球の磁場や匂いを頼りにしているなど諸説ある。番組で実験をしたところ、興味深い結果が得られた。アルツハイマー病の研究にも役立っているハト。優れた能力を紹介。(2014年カナダ)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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