サイエンスZERO「ソメイヨシノの起源に迫る」 2015.04.05


春といえばサクラ。
サクラといえば皆さんおなじみソメイヨシノですよね。
3月21日鹿児島で全国一番となるソメイヨシノの標準木が開花。
待ちに待った春の訪れです。
この人もこの瞬間を待っていました。
ソメイヨシノはある一定の気温条件になると一斉に開花します。
そこにはすごい理由があるんです。
ソメイヨシノの花が一斉に咲く理由井田さん知ってますよね?そう遺伝子が一緒。
ソメイヨシノは皆親子よりも兄弟よりももっと近い関係で結ばれているんです。
そしてソメイヨシノは一体どのように誕生したのか。
長年謎だったこの課題に今研究者たちが迫っています。
花を愛する科学者たちの探究の記録です。

(テーマ音楽)サクラ春っぽくていいですね。
いいですね。
サクラってやっぱり日本を代表する花ですよね。
はい。
僕アメリカに小学校の3年から5年まで住んでたんですがワシントンD.C.のポトマック川沿いの夜ザクラこれがねすごくきれいでいまだに強烈な印象がありますね。
そうなんですね。
ああこれが日本から来たサクラなんだっていう。
感動しますね。
このソメイヨシノなんですが日本全国に何本あるか知ってますか。
もう数万本はあると思います。
数万本。
はい。
専門家に伺うとですね数百万本あるんじゃないかっていう話もある。
それくらい多いんですよ。
確かに全国各地にありますもんね。
ありますよね。
でこのソメイヨシノがみ〜んな同じあれを持っている。
同じ遺伝子?そうなんです。
元の木のクローンっていう事なんですね。
クローン。
はい。
でクローンだとこんな感じでどんどんどんどん増えていきます。
うわ〜めちゃくちゃ増えましたね。
で仮にこれが人だとするとどうなりますかね。
えっ。
あっ竹内さん。
お〜!私のクローンがいっぱいと。
人だとちょっと異様ですね。
ちょっと怖いですよね。
怖い。
ただこれ全員が同じかどうか分からないんですよ。
他人の空似っていうのがありますから。
あ〜。
という事でこのクローンが本当かどうか今最新技術で検証が行われているんです。
ここでは全国各地のさまざまなサクラを遺伝子レベルで分類しています。
まず取りかかったのがソメイヨシノがクローンだという事を高い精度で確認する作業です。
全国10か所からソメイヨシノのサンプルを集めました。
ソメイヨシノのクローン性が遺伝子レベルで研究され始めたのは1990年代の事です。
DNAフィンガープリント法という手法が使われましたがその精度は現在ほど高いものではありませんでした。
今回用いられたのはDNA内のSSRという部分を比較する方法です。
SSRはDNAの4種類の塩基がCACACAなど単純な繰り返しを見せる部分です。
こういった単純な繰り返しはたとえ外見が似ていても個体ごとにばらつきがあります。
そのためもしSSRの繰り返しが一致していたらそれはクローンの可能性があるのです。
この研究で使われたSSRは全部で17か所。
これが全て偶然に一致してしまう確率は…つまり全て一致すると非常に高い精度でクローンだという事ができるのです。
果たして本当にクローンなのか。
SSRの特徴を捉える特殊な装置を使って分析しました。
結果はSSR1つずつについてこのようなグラフで表れます。
SSRの違いで形が変わるんです。
横軸が繰り返しの長さ縦軸が反応量です。
多くの場合2つの山が現れます。
左の山に対応するのは短い繰り返し。
右の山に対応するのは長い繰り返しです。
親から引き継いだ繰り返しの長さによって山の位置が変わります。
両親から引き継いだ繰り返し部分が全く同じ場合は重なって大きな山になるのです。
ソメイヨシノのSSRに違いは表れたのでしょうか。
これはSSR4つ分を分析したグラフです。
ここは一致。
ここも一致。
ここもここも一致。
ほかの地域のソメイヨシノも含めて調べた全てのSSRが一致しました。
やっぱりソメイヨシノってクローンなんですね!ぴったり一致してたからソメイヨシノはやっぱりクローンだったんですね。
やっぱり遺伝子解析ってすごいですよね。
最初にソメイヨシノができたのは江戸時代の後期1800年代前半といわれています。
いや江戸時代のクローンってどうやったんでしょうね。
当時のサクラの栽培の様子を知る事のできる貴重な資料があります。
江戸時代中期の園芸家によって描かれた…いわば当時の植物図鑑。
中にはさまざまなサクラの絵が描かれています。
鉢の根元をよく見ると…。
ほら木と木が接いであるでしょ?増やしたい木の枝を切って別の木に挿しているんですね。
すると上の部分が増やしたい木のクローンとして成長していくんです。
この接ぎ木という方法は今でも一般的に行われているサクラの増やし方なんですね。
クローンって最近の技術って感じしましたけど江戸時代でも行われてたんですね。
あったんですね。
それでは専門家の方にお話を伺いましょう。
ソメイヨシノは学術的に見るとよくあるサクラの品種の一つです。
でも接ぎ木で増やしたクローンをあちこちにたくさん植えているため自然状態から見るとまさに異常状態だと思います。
ソメイヨシノは一体いつどこでどのように生まれたんでしょうか。
そもそもソメイヨシノの起源は日本に自生している野生のサクラだと思います。
野生のサクラっていうのは一体何種類あるか分かりますか?え〜そんないくつもあるんですか?へえ〜。
結構色も鮮やかなものがあったりとか結構バラエティー豊かなんですね。
じゃあこの中にソメイヨシノの先祖もいるっていう事ですね?もちろんいるはずです。
でも実際の両親を突き止めるのは大変難しいと思います。
サクラの場合は種内の遺伝変異がたくさんあると。
それから種間交雑が起こって雑種ができやすいという事と雑種同士も交雑が起こるため大変複雑な関係になっています。
となると直接の親候補は…。
10種類よりもはるかに多いと思います。
2つ目に家系図が複雑ってあるんですけどこれどういう事ですか?例えばおばあさんの世代が孫の世代と交雑して種子ができるというふうな事もあります。
それから…そして3つ目に「人による移動」ってあるんですけど。
移動させられたサクラがもともとあったサクラと交雑するという事がしばしば起こります。
だからサクラの遺伝子はとても複雑に入り乱れています。
それが親探しを困難にしている理由だと思います。
もう何と何が組み合わさってるのかって突き詰めるのはもう難しいですよね。
そうですね。
だからまずどの野生種の遺伝子がどれぐらいブレンドされているかという事から研究が始まっています。
遺伝子のブレンドですか。
ここでは全国各地から500種類ものサクラの品種を集めて保存しています。
日本最大級のサクラの保存林です。
人呼んでサクラ博士。
観光名所として有名になっているサクラです。
花の色や形木の大きさなど主に形態からサクラの分類に取り組んできました。
匂い…匂いあるの?勝木さんがソメイヨシノが日本中に広がった秘密を教えてくれました。
どこから伸びているかというと歩道の反対側。
この成長力こそがソメイヨシノが日本中に広がった理由なんです。
勝木さんたちは今ソメイヨシノなどの栽培品種の起源を明らかにしようとしています。
まず行ったのは野生種のサクラのSSRを分析してそれぞれに固有の遺伝子のパターンを割り出す事です。
この時使ったSSRの数は26か所。
目印となるポイントを増やす事で異なる品種を区別する精度を上げていきます。
これは4種類の野生のサクラのSSRを表したものです。
これがSSR1つ分。
そしてこれがまた別のSSR。
品種によってグラフの形が違う事が分かります。
次にソメイヨシノのSSRのパターンがどの野生種と似ているかを比較していきます。
この作業を26か所のSSR1つずつについて行うのです。
さあ気になるソメイヨシノはどんなブレンドだったのでしょうか。
エドヒガンが47%オオシマザクラが37%。
ヤマザクラが11%というような内訳になりましたこの結果はソメイヨシノの起源についてのこれまでの推理に修正を迫るものでした。
これまでの研究からソメイヨシノの親候補として挙げられていたのはオオシマザクラとエドヒガンでした。
今回の解析を基に勝木さんはソメイヨシノの起源について新しい推測を始めています。
ソメイヨシノの片方の親はエドヒガン。
そしてもう片方の親はオオシマザクラとヤマザクラが交雑したものではないかというのです。
そのため全くの自然から生まれたものではないと考えているのです。
すごい。
もう今ここまで分かるんですね。
分かっちゃうんですね。
今回の研究で分かったのはソメイヨシノに野生種の遺伝子がどれぐらいの割合で持ち込まれたかという事だけです。
これってウイスキーの原酒のブレンドみたいですよね。
まさにそうだと思います。
でもソメイヨシノにもお父さんとお母さんがいてそれで生まれた訳ですよね。
そうなんですよ。
そんな事が野生のどこかではなく人が住んでいるところで起きてもおかしくないほど江戸時代の園芸文化は発達していたんです。
その事を示すヒントになる植物があるんですよ。
何か大きな箱が出てきましたけど。
ちょっと開けてみましょうか。
はい。
何か植木とかですかね。
いいですか。
はい。
(2人)せ〜の。
ん?お?何これ?タネですか?はい。
あのタネは一体何?訪ねたのは…迎えてくれたのはアサガオ博士の仁田坂英二さん。
アサガオのタネだったんですね。
これは…花びらが細く切れています。
そしてこのアサガオは茎がリボンのように幅広に。
上を向かずなんとしだれて咲くんです。
それが昔から興味があった理由ですね。
私たちがよく知っているものとは全く異なる形のアサガオの変異体。
そのほとんどが江戸時代に誕生したといいます。
ここでは世界でも最大規模でアサガオの遺伝情報を保存しています。
壁一面にラベリングされた紙袋。
中に入っているのはタネです。
この部屋だけでなんと1,500種類以上にもなるそうです。
そしてここで仁田坂さんの口から衝撃的なひと言が!えっタネができない?アサガオなのに?どう見てもできないですね。
おしべめしべがなければタネはできようがないですね。
タネができないのに今も咲いているって事はまさかこのアサガオ江戸時代から今まで枯れずに残っていたって事?江戸時代から枯れずに残ってたらすごいですけどでもタネがないのに今まで残ってるってどうしてなんですか?タネができないアサガオの変異体はある特定の劣性遺伝子ですね。
それがホモっていいます。
つまり2つそろった時に発現している。
それはタネができないんですけどもメンデルの法則に従っている訳です。
メンデルの法則やりましたね。
そういうアサガオですけども…それがまた変異体を生み出す要素を持っている訳なんですね。
ここでは変異した遺伝子を白で表しています。
白が2つそろうと変異体になるんですけども1つなら普通のアサガオという事ですね。
だからその兄弟のタネには…。
あ〜白と白の遺伝子を持ったタネありますけどこれが変異体ですかね。
はいそうなんです。
兄弟だと自分が変異体でなくてもその子どもが変異体であるという事は結構あるんです。
へえ〜。
これ江戸時代の人もこの遺伝子の事を知ってたって事ですかね。
江戸時代の人々っていうのはメンデルの法則の直前まではいってたっていう感じですか?遺伝子という概念はなかったと思います。
変わったアサガオを翌年また再現するという事に主眼を置いてもう血眼になって観察。
何かここまで園芸技術が発展しているとなるとソメイヨシノも人の手で作られたのかなってやっぱり気になってきましたけど。
アサガオの場合は1年生で自家受精できますよね。
サクラの場合は自家受精できませんしタネから花を咲かせるようになるまで何年も時間がかかります。
アサガオのように簡単にはいかないと思います。
実はこの自家受精をしないという事を手がかりにして新しい仮説が登場したんですよ。
新しい仮説ではなんとソメイヨシノの原木を特定したというのです。
従来ソメイヨシノの発祥とされてきたのは山手線駒込駅の近く旧染井村です。
江戸時代後期染井村の職人が発見し全国に広がっていったと考えられてきました。
しかし新しい仮説では駒込ではなくて上野に原木があるというのです。
多くの人々が行き交う上野公園。
その一角にソメイヨシノの起源だと推定された木があるのです。
この場所当時は上野寛永寺の敷地。
花見の名所でした。
ここがソメイヨシノの起源だという新説を唱えた…管理番号136番のこの木。
確かにこの辺りでは一番古そうに見えるソメイヨシノですが…。
中村さんが注目しているのはサクラ同士の位置関係です。
この周辺には原木候補のソメイヨシノのほかにも古いサクラが並んでいます。
注目すべきはその種類。
4本のソメイヨシノのほかにコマツオトメをはじめエドヒガン系のさまざまな種類が並んでいるのです。
どうしてこんなに多様なサクラが1か所にあるのか。
中村さんは疑問に思いました。
中村さんが注目して分析したのは自家受精できないという性質自家不和合性。
そしてその機能を担うS遺伝子です。
2組の遺伝子を持つサクラは2つのS遺伝子を持っています。
例えばSSという遺伝子を持つサクラには同じSやSを持つ花粉は受精できません。
違う遺伝子を持つ花粉だけが受精できるのです。
受精が高い確率で成功するように本来S遺伝子は多様です。
オオシマザクラだと60エドヒガンでは100ほどの種類があると考えられています。
無関係の個体のS遺伝子が一致する事はあまりないのです。
上野公園のサクラの場合はどうだったのでしょうか。
S遺伝子を抽出し比較しました。
するとソメイヨシノを含む7個体は片方のS遺伝子が同じでした。
更にソメイヨシノと142番はもう片方も一致。
たまたま一致する確率は1万分の1程度だと中村さんは考えています。
そして141143144の3個体も両方が一致しました。
これら合わせて5本のサクラには遺伝的にただならぬ関係があるのではないかと中村さんは考えました。
同じ場所に2つのS遺伝子ですか不和合性遺伝子が2つ同じ個体が生えるという事は…ほかの分析と合わせると5本のサクラの片方の親はSS。
もう片方の親はSを持つと推定したのです。
つまりその両親の子どもたちがここには並んで植えられていたのです。
今中村さんはソメイヨシノの起源について次のように考えています。
染井村の園芸職人の庭先でサクラの木が実をつけた。
これが兄弟。
どのような花をつけるのか。
それを見るために植えた場所それが上野。
その中の一本のサクラの咲き方が気に入られ各地に接ぎ木され始めた。
それが後のソメイヨシノなのではないか。
わ〜これがソメイヨシノ最初の一本だとしたらすごいですね。
数百万本の元になったんだとしたらすごいですよね。
中村さんはS遺伝子のほかにも葉緑体のDNAの分析などもされていて今のところ結果に矛盾はないそうなんですね。
ただこれ学会発表をした段階なので今後どうやって検証されていくのか非常に興味深いですね。
ですからあの場所のサクラの解析だけで結論を導くのはサンプル数が少なすぎるんじゃないかなと。
私もサクラ専門ではないんですけどもアサガオだけ見てもものすごい観察眼で例えば交雑を起こした雑種とかも見極めてバリエーションを増やしていってるんですね。
だから当時の人はサクラの原種とまたそれが交雑した雑種ですねそういうのは明確に区別できるような目を持ってたんだと思いますね。
上野が実験場だったっていうのはどうご覧になりますか?私もアサガオだけではなくいろんなものを育てたりするんですけども普通に考えてそのバックヤードというかすぐ染井村なら染井村の近場でいろいろやるんじゃないかと思うんですね。
種まいたりとか。
だから苗を例えばちょっと経過観察したいから上野のお寺に例えばあげてあと追跡調査したとかね。
そういういろんな可能性はあると思うんですけども。
もし本当に染井村から上野に苗を持っていったんだとしたらその理由も知りたいですよね。
科学だけじゃなくて…このソメイヨシノの起源については本当に今後の研究が楽しみですよね。
仁田坂さん向井さん今日はどうもありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2015/04/05(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「ソメイヨシノの起源に迫る」[字]

原木は上野公園にある!?3月に発表された新説によると、ソメイヨシノは江戸時代の園芸技術のたまものではないかという。どのような根拠なのか?江戸時代の園芸技術とは?

詳細情報
番組内容
日本各地に植えられているソメイヨシノ。接ぎ木で増やされているため、今の言葉で言えば全て「クローン」。最新のDNA分析でも、クローン、全く同じDNAを持った分身だと確認されている。そして3月、このクローンの最初の1本、つまり原木が上野公園に今もあるという新説が発表された。江戸時代に世界トップレベルに発達していた園芸技術のたまものではないかという。はたしてどんな根拠で原木を推定したというのか?
出演者
【ゲスト】岐阜大学応用生物学部教授…向井譲,九州大学大学院理学研究院講師…仁田坂英二,【コメンテーター】気象予報士…井田寛子,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】土田大

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
情報/ワイドショー – その他

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